ここは忘れ去られた者がたどり着く場所、幻想郷―――――――。

 

今日も夜に輝く月を見て平和に寝る事のできる日だと誰しもが思った。

幻想郷のとある場所、大きな湖の近くの紅くて巨大な屋敷、紅魔館

その紅魔館の建物内の奥にある通称「大図書館」のまた奥の階段を下った檻をあけた所にある地下室。

それが、フランドールの部屋だ。暗くて風通しが悪く、じめじめしている。

この日も、フランは退屈そうにしていた。いつも通りにこのままゴロゴロして、朝になって寝るのだろうと…。

「…暇だなぁ。いったいいつまで続くんだろう。」

泣き声に近いか細い声が独りぼっちの部屋に響く。この閉じ込められた部屋から壊して出ようと思えば簡単なのだが、気が乗らない。

ふと、頑丈な扉の向こうに気配を感じた。コンコン、小さく叩かれた扉が開く。

「失礼いたします。お茶の時間です、紅茶をご用意いたしました。」

少々無愛想な言い方をする人間メイド長、十六夜咲夜。フランはこの人間の事を詳しくを知らないし、あまり好んでいない。

「………。」

暫く、紅茶がカップに注がれる音だけが聞こえていた。フランは咲夜に目も向けずぼーっとしていた。

フランは考え事をしているうちに咲夜が居なくなった事に気づいた。…あいつ(姉)に言いなりの人間など、大嫌いだ。

フランはムシャクシャする気持ちを抑え、扉を易々と破壊すると地下室を出て行った――――。

 

紅魔館の門番は辺りに何者もいないか、怪しい奴がいないか今日も見張っていた。

だが今日は珍しく差し入れを持った咲夜が隣にいた。昼間はよく来るが、夜に来るとは珍しい。

何かあったのだろうと美鈴は咲夜が話し始めるのを待つ。咲夜がこちらを見る。

「美鈴…、私って妹様に嫌われ… !!」

咲夜がぎょっと美鈴の後ろを見る。美鈴がきょとんと腕を組む。後ろの人物も真似をする。

美鈴が振り向くと、「うわぁっ」と悲鳴を上げる。それをまた真似をする、妹様。

「どうも、妹様。どういたしましたか?」

美鈴がにっこりと問いかける。咲夜は態勢を直し、引きつりながら笑った。

「あはは、変な美鈴。今日は涼しいね、丁度良い位だよ。

質問を軽くスルーした妹様は、純粋無垢な笑顔で言う。

妹様とは良く会話が成り立たず、気まぐれで動き回り、時にいきなり意味不明な事を一人呟く。

だから、紅魔館で孤立し、気が狂っていると言われるのだろうか。本人はどう思っているかさっぱりだが。

「お外は気持ちが良いね。」

そういうと、ニコニコと美鈴を見つめる。…本当に訳が分からない。それに神出鬼没とは…紫じゃあるまいし。

「あ、あれなんだろう。凄いよ。」

ん?と咲夜と美鈴はフランが指差す方向を見る。なんと、遠くで魔法の森の一部が燃えていた。夜に輝く炎が綺麗なのか、のんびりフランは眺めていた。

「大変です、美鈴すぐに火事現場に向かって!私はお嬢様に一応報告していきますわ!さ、妹様いきましょう。」

「はい、妹様を宜しくお願いします。」

「んー。」

美鈴の言葉になぜかフランが返し、咲夜はフランの手を掴んで紅魔館に入りレミリアのもとに向かう。

部屋にノックをする前に妹様はここで待っているといったので手を離しノックをして入った。

「失礼します。ただいま魔法の森の一部で火事が起こったので急遽美鈴を向かわせました。」

「ククク、助け合いとでも言うのか。ま、良い。終わったら報告してすぐ仕事に戻しておいて。」

「かしこまりました。それでは失礼しました。」

ガチャン、ドアを閉めるとさっきまでいた妹様がいなかった。念のため館の中を探し、地下室にも行ったがいなかった。冷や汗がどっと出てきた。

大慌てでレミリアの部屋に行き、ノックをして入る。平装を保ちながら今この妹様がいない状況を話す。レミリアが椅子から立つ。

「人騒がせなもんだ…、こんなときに。咲夜、念のため私の日傘をもってこい。支度をしてくれ。」

「かしこまりました。…大変申し訳ございません…。」

謝る咲夜を一瞥し、着替えをしはじめた。咲夜は「失礼しました」と出て行くと数秒後、また驚きの声が聞こえた。

レミリアが、ため息をつき着替えを済ませて部屋を出る。

「今度はなんなんだ、咲夜。」

呆れて気だるそうに聞くと、

「お嬢様の…、お気に入りの日傘がございません。予備はありましたが…」

レミリアはチッと舌打ちすると玄関に向かった。咲夜も予備の日傘をもち、後についていく。

 

美鈴はその頃、魔理沙と他の妖精たちと一緒にバケツリレーをして火を消したところだった。

「助かったぜ、中国。火が広がっていたら取り返しがつかなくなっていたところだったぜ☆」

「そうです、良かったのですが…、放火っぽいですよね~。」

「火元が全く無い森の中だしな。紙とか小枝が集められていたし、その可能性が高いぜ!」

「…(呑気だな、全く。)そうですよね。」

呑気な魔理沙を少し睨んだ。魔理沙だって家は遠くは無いはずだ。

「ま、紫とかが何とかするに決まっているさ。」

「あの方たちに任せれば大丈夫ですよね!」

少し安心できるようになり落ち着くと、珍しく真剣な顔をした魔理沙がいた。

「…というか、霊夢が来なかったのが妙だぜ?」

「まあ…、確かに…。でも霊夢の神社は近くも無いしきづかなかったのでは?」

それに、彼女も立派な人間なのでこの時間には起きているか…?と、思った。もう深夜はとっくに回っている。

「そりゃそうだが、やはりすこs「美鈴ーー!妹様をみませんでしたか?」……。」

「え!?咲夜さんにお嬢様?妹様はみませんでしたが…。」

いきなりの登場に魔理沙は黙らざるおえなくなる。急な質問だったが特に驚く事は無い。

「そう。また、あいつったら逃げ出したのよ。はぁー、本っ当に迷惑。」

「ぎゃははははははっ、あーーーっ。遂にやったか、フランの奴。」

魔理沙がレミリアを刺激するような大きな声で笑い馬鹿にする。レミリアと咲夜から睨まれる。動じもしない魔理沙。

「とにかくっ、探すわよ中国!魔理沙も見つけたら言いなさいよ!?分かったわね!」

ご立腹のお嬢様。魔理沙の笑いを制するように大声で怒鳴る。魔理沙の笑いが止まるとレミリアはドスドスと歩いていった。

美鈴はそれを見送ると自分も広い森に消えていった。魔理沙はそんな皆を見て自分も家に帰る事にした。

 

 

後編に続く―――――――。