――茜色の光が差し込む紅魔館の奥に存在する、巨大な図書館。
本が所狭しと並べられたこの場所は、
知識と日陰の少女、パチュリー・ノーレッジとその従者兼司書の空間だ。


「パチュリー様、紅茶をお淹れしました」


そう言って優しい微笑みを浮かべる、美しい赤髪の小悪魔少女。
ありがとう、とだけ言って、パチュリーはティーカップを受け取り、
湯気の立ち上る紅茶を一口、喉へと運んだ。


「……やっぱり、あなたの紅茶が一番好きよ」
「! あ、ありがとうございます、パチュリー様!」


赤面しつつも心底うれしそうな様子の小悪魔を見て、パチュリーも笑みを浮かべる。
パチュリーにとって小悪魔は、たったひとりのかけがえのない従者であり司書であった。
小悪魔にとってパチュリーは、たったひとりのかげがえのない主人であった。



パチュリーの空いている左手が、本のページをめくる。
瞬間、図書館のドアが開かれ、淡い瑠璃色の髪を揺らす紅色(くれないいろ)の悪魔が顔を出した。



「パチェ、咲夜がケーキを作ってくれたの。一緒に食べましょうよ」
「……ありがとう、そこへ置いてくれる?」
「ええ」



お盆を抱えていた小悪魔を軽く押しのけて、レミリアがパチュリーの隣に座る。
パチュリーの紫色の瞳が暗く淀んだことに、レミリアは気づかなかった。



「あ、それでは私は……」
「……そう。お仕事はもういいわ……こぁ、あなたにも紅茶を淹れましょうか」
「ありがとうございます、パチュリー様」


パチュリーが小悪魔に紅茶を淹れるのもまた、いつもの日課だった。
もちろん、小悪魔がお願いしたわけではない。
小悪魔のことを好いているパチュリーから、日課にしようと提案したことである。



「小悪魔、あなたは主人に紅茶を淹れさせるの?」


レミリアが冷たく言い放つ。
真紅の瞳をぎらりと光らせる彼女を目の前にして、小悪魔は何も言えなくなってしまった。
そこに、レミリアがさらに追撃する。


「いつからそんな良い御身分になったのかしら」


「も、申し訳ありません……」

館の主を相手に反論など出来るはずもなく、小悪魔はしゅんとうなだれた。
はぁ、と深いため息をつくレミリア。
そんな彼女を止めたのは、パチュリーの暗く冷たい声だった。



「やめなさい、レミィ。
 これは私が提案して、それから毎日続けている日課よ。
 こぁを責めないで頂戴。この子は何も悪くないわ」


「……あら、そうだったの」


それだけ言うと、小悪魔に謝るどころか、小悪魔を見ることすらなく、
レミリアは自分の分のケーキを口に運んだ。
かちゃかちゃと、フォークの音だけが響く。
小悪魔は気まずそうな顔をして、その場を去っていった。



「ねえ、レミィ」
「なぁに、パチェ」
「……あなたは、こぁが嫌いなの?」
「別に嫌いじゃないわよ」
「……そう」




嘘つき。
パチュリーは、その言葉を三口目の紅茶と一緒に飲み込んだ。
彼女はなんとなく勘づいているのだ。

――自分と親しくする小悪魔を妬み、邪魔者とみなしていることに。


にもかかわらず、そんな我儘なレミリアの前で迂闊なことを口にしてしまった自身を恥じた。
レミリアを視界に捉えたその瞬間、パチュリーはなんとなく気分が沈み、
つい、自らの愛しき従者である小悪魔に声をかけたくなってしまったのである。


いつからだろうか――レミリアに不信感を抱き、小さな憎しみをおぼえるようになったのは。
そんなことをぼんやりと考えつつ、彼女はぱらぱらと本のページをめくる。
その暗い瞳はしかし、本の文字などほとんどとらえていない。

かちゃん。
フォークが置かれたその音を耳にして、彼女は思いだした。



(そうか……そう、フランに本を持って行って、初めて言葉を交わしたあの日だわ)


本を閉じる。
パチュリーの意識が、現実から切り離される。
そして、あの日へと戻ってゆく。




狂気に囚われた破壊の少女、フランドール・スカーレット。
レミリアが自らの妹にもかかわらず幽閉してしまうと云うことは、その狂気は相当のものだろう。
そう考えながら、応戦準備を整えつつ地下室のドアを開いたパチュリー。

彼女を出迎えたのは、なんのことはない、デディベアを抱えて歌を歌う幼い少女だった。




『あれ、地下室に人が来るなんで珍しいね。誰?』

『私はパチュリー・ノーレッジ。退屈だろうと思ってね、本を持って来たのよ』

『ありがとう、少しは退屈せずに済みそうね』

『……ねえ、フランドール、あなたどうして幽閉されてるの?』

『狂ってるからって、危険だからってお姉さまは言うけど。パチュリーは言われてないの?』

『言われてるわよ。けれど、あなたが狂ってるようには見えないのよね』

『あ、うれしいな。それ正解。
 ……じゃあ、ほんとのこと教えてあげる。
 たぶんね、私がお姉さまより強くなっちゃったから。これが幽閉された理由』

『……レミィは、身の危険を感じた、ということ?』

『違うよ。お姉さまは、……少し、プライドが高いから。
 自分より強い妹を、私の存在を許せなかった、それだけ。
 お姉さまは必死に隠してるけど、見てればわかっちゃううんだよね』

『……また、本を持ってくるわ、今日はありがとう』

『……? お礼を言うのは私の方だよ、パチュリー。
 お話が出来て楽しかったわ。……そうそう、フランって呼んでいいよ』

『……そう。私のことも、“パチェ”で構わないわ』

『あはは、なんだかうれしいな。ばいばい、パチェ』





「……! ……パチェ! ちょっと」


頭の中であの日を繰り返していたパチュリーは、レミリアの声で我に返る。
心配そうな表情のレミリアに顔をのぞきこまれて、パチュリーは静かに言った。


「ごめんなさい、大丈夫よ。少しぼうっとしていただけ」


無意識に、レミリアを見つめる。
その真紅の瞳から、デディベアを抱えて微笑むフランドールの姿を連想する。
だが、同じ色をしているはずの姉妹の瞳は、全く違うものに見えた。



「そう? ……念のため、咲夜にお薬をもらってきましょうか?」
「……いえ、いいわ。それより、しばらく一人にさせて」
「……わかったわ、それじゃあ、小悪魔……」


はい、と返事をして顔をのぞかせる小悪魔。


「あの子はいいのよ」


いつもより、強く冷たい声が響く。
小悪魔がびくりと身を震わせた。


「……そう、それじゃあね、パチェ」


どこか不安げにそう言って、レミリアは図書館を後にした。

“パチェ”

フランドールにそう呼ばれた時は、心があたたまるのを感じたのに。
レミリアに呼ばれると、心の中に暗雲が広がってゆくような、そんな感覚に囚われる。


親友だったはずなのに。
フランドールを幽閉している本当の理由を知った時。
フランドールの優しげで純粋な澄み切った瞳に見つめられた時。
嫉妬心から、愛しい小悪魔につらくあたるのを見たとき。
パチュリーの中の何かが、確実に壊れたのだ。

彼女は深い溜息を吐くと。
置きっぱなしにされていたティーポットに手を伸ばして、小悪魔のための紅茶を淹れ始めた。




――わずかに欠けた真白い月が、闇色の空に輝く真夜中。
門番の交代を終えた美鈴は、紅魔館から少しばかり離れた木陰で、星空を眺めていた。


「綺麗な星空ね」

しっとりとしたか細い声を耳にして、美鈴が振り返る。
月光にその身を濡らしたパチュリーが、ひっそりと佇んでいた。


「こ、こんばんは!」
「今晩は」
「パチュリー様、これからお出かけなさるんですか?」
「いえ、あなたに用があるのよ」
「そうでしたか、それでは中へ入りましょうか?」
「……此処で良いわ。その方が都合が良いのよ」
「わかりました」


「あなた、フランが幽閉されているのは知ってるわよね」
「ええ……レミリアお嬢様いわく、気がふれている、とのことでしたが……」
「単刀直入に尋ねるわ。あなたは、そう思っている?」


しばしの、間。
風が吹き過ぎる。
木の葉がさわさわと音を立てる。


美鈴は、言いにくそうにしながらも、正直に自分の思いを伝えた。



「正直に申し上げますと……とてもそうは感じられません。
 一度だけ、フラン様の弾幕ごっこのお相手をしたことがあるのですが……
 あの際限のない魔力をうまく制御していたようですし、
 誤って私の命を奪ってしまうことのないよう、細心の注意を払っていらっしゃいました。

 何より、あの純粋無垢で優しげなフラン様を見ていると、とてもそうは思えないのです」


「……フラン」

「え?」

「あなたも、そう呼ぶのね。
 ……あなたの本心はわかったわ。
 それと、フランが狂ってないって……その答え、正解よ」


少しだけ前置きをして、彼女はレミリアがフランドールを幽閉した本当の理由と、
独占欲にかられて小悪魔につらくあたっていることを話した。



「……そうですか……小悪魔の件は知りませんでしたが……
 お嬢様にも困ったものです。
 最近は、咲夜さんにも遊びで無理難題をふっかけるものだから……
 咲夜さん、仕事に追われてろくに眠れてもいないんですよ。
 たぶんもう、能力を使っても時間が足りてないんじゃないかって思うんです」



そう言ってため息をつく美鈴の瞳には、たしかな怒りが浮かんでいた。
それを理解しているのかしていないのか、パチュリーは黙ってうつむく。



数秒の間をおいて、パチュリーが勢いよく顔を上げ、美鈴に向かって一歩踏み出した。
頭を飾っていた淡い紫色のナイトキャップが、風にさらわれる。

彼女の暗く鋭い瞳に射抜かれて。
美鈴は身動きが取れなくなった。
パチュリーも、動かない。



「私ね、革命を起こそうと思うの」

「当主になったフラン」

「そして、フランと笑いあう私とこぁ、咲夜と美鈴」

「――あなたは、どう思う?」



静寂が二人を包む。
風が消える。木の葉がぴたりと動きを止める。


しばしの間ののちに、風が再び吹き始めて。
美鈴が、口を開いた。




「……ひとつだけ、申し上げます」

「何かしら?」

「フラン様が救われるためには、レミリア様を殺さなくてはならないでしょう。
 しかし、……出来る限り、フラン様にショックを与えないよう、お願いします」


「ええ……。ただね、今、やっと気付いたのだけれど。
 私たちは今日この日まで、フランを救おうとしなかったわ。
 ……もし、殺されたとしても、文句は言えない」


「……ええ、でも……フラン様は、お優しいですから。
 虫が良すぎるかもしれませんけど、許してくれるような気がするんです」


「……奇遇ね、私もちょっと、そう思っていたの」

「そうですか」



二人は何も言わずに、空に浮かぶ月を見つめる。
明日は、満月だ。



「……決行は明日の夜。レミリアには、存分に本気を出し切ってもらいましょう。
 そして、絶望に包まれて死んでもらうわ。……フランのためだもの、私は絶対に負けない」

「決行の際は――私にもお声をおかけください」

「勿論よ、それじゃあね」






美鈴の返事を待たずに、パチュリーは風に乗ってあっという間に立ち去ってしまった。
パチュリーの静かな狂気と怒りを垣間見た美鈴は、いまだ動けずにいる。

ひときわ強い風が吹いて、持ち主に忘れ去られた哀れなナイトキャップが宙を舞い。
反射的にそれを掴んだ美鈴は、ようやくパチュリーが帽子を忘れていったことに気づくのだった。










――レミリア・スカーレットの自室――


レミリアは、不機嫌そうな様子で窓の外を眺めていた。
夜空には、無数の星がきらきらと輝いている。
そんな美しい光景を目にしても、レミリアの心が晴れることは無かった。


(どうしてっ……! どうしてパチェは、小悪魔なんかに構うのよ!
 あんな奴、ただの契約者に過ぎないくせに! 弱いくせに!
 それに、最近は私に隠れてフランドールのところへ行っているようだし……
 妹なんていらなかった! あの忌々しい小悪魔もいらないわ!)


なんとも身勝手なことを考えながら、拳を強く握りしめる。
――最近はパチュリーが少し冷たいのを、レミリアもなんとなく理解しているのだ。
自然と、歯噛みをして――レミリアは、もうひとつ思い出す。



(……そう言えば、頭に血が上っていて気がつかなかったけれど……
 ここ最近、美鈴や咲夜もどこかよそよそしかったような……)


どくん、と心臓が大きく波打つ。
嫌な胸騒ぎをおぼえた彼女は、自身の能力を用いて運命を視ようとした。
けれど、何も浮かんでくることは無い。
――能力が機能しないのだ。



「何故……!? 何故なのよ!」



運命を操るということは、一歩間違えれば運命を“弄ぶ”ことになる。
そして、運命を弄ぶ者は、いつか運命による報復を受ける運命にあるのだ。
――精神的に幼いレミリアは、今日この日まで、それを知ることはなかった。



「……仕方ないわね、とにかく、咲夜……いえ、パチェか美鈴を探さないと……!」



――運命を視ることはかなわない彼女だったが、優れた直感だけはかろうじて残っていたらしい
そうでなければ、また違った結末を、ひょっとすれば救いを得ることも出来たかもしれない。
だが、それはもはやかなわぬこととなってしまった。
これもまた、彼女が弄んだ運命による報復――つまりは、運命だったのかもしれない。


直感に従うレミリアが向かった先は、フランドールが幽閉されている地下室だった。
漆黒の翼を羽ばたかせて、月光躍る廊下を駆け抜ける。
階段を降りてゆく。月光が途絶える。
夕焼け色のランプが、フランドールの部屋へと続くドアをぼんやりと照らし出していた。


今までずっと開くことのなかった、美しい装飾が施された重いドア。
震える手でドアノブをひねり、一気に開く。



レミリアの視界に飛び込んできたのは、自らの妹であるフランドール。
そして――咲夜、美鈴、パチュリー、小悪魔だった。



「……お、お嬢様!?」

美鈴の慌てた声。
レミリアの様子と今の状況を見極めて、一番早くレミリアの心境を察したのは、咲夜だった。
フランドールに危害が及ぶ可能性が高い。そう判断して、彼女はフランドールを背にかばう。
パチュリーは小悪魔を一番後ろへ押しやって、さらに咲夜の目の前に立った。
その隣に美鈴が立ち、臨戦態勢をとったのは、ほぼ同時。



――結局は。
親友も、従者も、門番も。そして、彼女が見下し、嫌った小悪魔さえも。
レミリアではなく、フランドールを求めていたのだ。



「あぁぁぁあぁああああああっ!!」



残酷な真実を知ったレミリアが、叫ぶ。
深紅の瞳から、涙があふれ出していた。
彼女の咆哮は、スペルカード宣言のかわりだった。


――天罰 スターオブダビデ――


レミリアから魔力があふれ出すと同時に、
咲夜と美鈴、それにパチュリーがスペルカード宣言を行う。



奇術「幻惑ミスディレクション!」
幻符「華想夢葛!」
日符「ロイヤルフレア!」


咲夜の銀のナイフが、レミリアの放った光弾を次々に相殺してゆく。
3対1では、勝ち目などあるまい。
レミリアの光弾と光線はほとんど消えてなくなり、
パチュリーと美鈴の放った光弾が、レミリアめがけて飛んでゆき。


――跡形もなく、砕け散った。



「お姉さま」

握りしめた右手をひらいて、静かな声で語りかけるフランドール。
星の雨のように輝きながら降り注ぐ光弾の破片が、彼女の毅然とした美しさを引き立てる。



「咲夜も、パチェも、美鈴も、小悪魔も悪くない。
 ……みんなを傷つけないで。
 そこまでするのなら、私と殺し合おう。……それでぜんぶ、決着はつくよね?」




フランドールの言葉を聞いて、レミリアは少し落ち着きを取り戻したらしい。
未だ殺意の宿った深紅の瞳で、何も言わずにフランドールを鋭く射抜いていた。



「フ、フラン様、おやめください、危険です!」
「そうよフラン、お願いだからやめて!」


咲夜とパチュリーが、必死にフランドールを止めようとする。
だが、美鈴がそれを制した。


「……フラン様がご決断なさったことです。邪魔をするのは止しましょう」


彼女は、フランドールが殺される、即ち負けることは無いと信じている。
だからこそ、フランドールの意思を尊重したのだ。
その思いとフランドールの覚悟を察して、咲夜とパチュリーは身を引いた。



「もう、あなたなんかに負けないわ! 今日は殺して殺して殺しつくしてあげる!」
「いいよ、お姉さま。……私も、本気でやるわ!」



二人の少女が、高く高く飛翔する。
二つの紅色がぶつかりあって、血濡れの舞踏会は幕を開けた。




次々に撃ち出される無数の光弾が飛び交い、互いの体をかすめてゆく。
光線が互いの体を貫こうと、空を駆け抜けた。
途切れることの無い弾幕と、漆黒の翼と七色の輝羽の羽ばたきによって奏でられる音が響き渡る。
ここは、狂気のダンスホール――。


「……お姉さま、昔よりずっと強いのね」
「ええ、いつかあなたを殺すために、ずっと経験を積んできたのよ!」


2人の吸血鬼の舞踏を、館の住人達は固唾を飲んで見守っていた。
パチュリーと小悪魔によって張られた結界が、流れ弾をはじき返す。
決して途絶えることのない流れ弾の雨の中、咲夜が声を上げた。


「……フィナーレ、のようですよ」


レミリアがその手に握るのは、血に染まったような紅色の神槍、スピア・ザ・グンニグル。
フランドールがその手に握るのは、燃え盛る炎獄の炎の剣、レーヴァティン。




「……これで最後だね、お姉さま……私たち、どんな結末でも、受け入れようね?」
「おかしな子ね、悲しむことなんて何も無いでしょう? ……さあ、殺してあげるっ!」




槍と剣のそれぞれの魔力が、勢いよくぶつかり合う。
――反発ののちに、再び衝突。そしてまた、反発。
――それならば、と互いの胸へ伸ばした槍が、空を斬る。

再び光弾が飛び交うが、いずれも相殺。






死闘を制したのは、七色の輝羽を揺らす金髪の少女、フランドール・スカーレットだった。
グンニグルを葬った炎獄の槍を、レミリアの胸に突きつける。


「……何故よっ! なんで、私が……妹なんかに、負けなきゃならないのよぉぉっ!」


フランドールの左手で床にねじ伏せられたまま、レミリアが叫ぶ。
必死に身をよじるが、体勢を立て直すことなど出来なかった。



「パチェ、助けてよ、ねえっ! 私たち親友でしょう!?
 美鈴、咲夜ぁ! どうして! どうしてみんなこいつなんかを求めるのよっ!」



惨めにもがくレミリアの瞳をしっかりと見据えて、フランドールは槍を突き刺した。
レミリアの心臓が、鼓動を止める。
動かなくなった姉の髪を優しく撫でると、フランドールは悲しげに言った。



「私……お姉さまのそんな姿、見たくなかったよ……
 たとえ虚勢だったとしても……お姉さまの強い姿が……大好きだったのに」
















――紅魔館に、朝の光が差し込む。
新しく作られた、紫がかった桜色の日傘をさして歩いていたフランドールが、ふと足を止めた。


「咲夜、おはよう」
「お早うございます、フランお嬢様」
「咲夜は起きるの早いね。時間を操れるとしても、ちゃんと休まないとだめよ」
「お気遣いありがとうございます」


ううん、と言って笑うと、フランは窓から身を乗り出して、門番に声をかけた。


「おはよう、美鈴!」
「おはようございます、フラン様」
「今日もまた遊んでくれるかしら?」
「ええ、もちろんですよ。お仕事が終わるまで待っていてくださいね」
「わかった、楽しみにしてるわ! 門番のお仕事、頑張ってね!」
「はい!」


最後に手を振って、くるりと窓に背を向け、ふたたび咲夜に視線を向ける。


「それじゃあ、私は図書館に行ってくるね」
「かしこまりました、朝食はそちらへ運ばせていただきますね」
「うん、いつもありがとう。じゃあ、行ってきまぁす」


ふわりと空気に乗って、図書館へと急ぐフランドール。
彼女の笑顔に顔をほころばせながら、咲夜はより一層気合を入れた。
何の気なしに美鈴の様子をうかがってみると、美鈴も頬を叩いて気合を高めている。
咲夜はくすくすと笑うと、厨房へ向かう足を速めた。







「パチェ、こぁ、おはよーっ」
「お早う、フラン」
「お早うございます、フラン様」


図書館のドアが開いて、フランドールが顔を出す。
彼女は、嬉しそうに出迎えるパチュリーと小悪魔に駆け寄っていった。


「ねえこぁ、この前借りたこぁのおすすめの本、すっごく面白かったよ! はい、返すよ」
「もう読んでしまわれたのですか? ……パチュリー様に劣らないほどの読者家ですね」
「うん、面白い本はすぐに読み終わっちゃうの!」



楽しそうに談笑する二人を微笑ましそうに見つめていたパチュリーの表情が、ふいに翳る。
そして――どこか陰鬱な声で、しかし、あくまで優しくフランドールに尋ねた。



「……ねえ、フラン」
「なぁに?」
「フランは……レミリ……レミィのこと、好きだった?」


しばしの間。
小悪魔が気まずそうに様子をうかがう。
しかし、彼女の予想に反して、フランドールの答えは前向きなものだった。



「……一度も、私を見てくれることは無かったけど。
 いろんな人に迷惑をかけちゃったみたいだけど。
 私のたったひとりのお姉さまだもん、大好きに決まってる。

 ……私の罪は消えないけど、私は前を向くよ。
 私には、パチェ、こぁ、美鈴、咲夜……大切な人がいっぱいいるんだもん」



パチュリーと小悪魔の表情から、翳りが消える。
安心したように笑いながら、パチュリーが言った。


「こぁ、フラン、紅茶を淹れるわね」
「ありがとうございます、パチュリー様」


「……ねえ、パチェ、こぁ、紅茶、私が淹れてもいい?」


「それじゃあ、お願いしようかしら」
「はい、ぜひお願いします!」
「そういえばフランの紅茶は、まだ飲んだことが無いわね」


「うん、はじめてだけど、美味しい紅茶を淹れるからね!」



フランドールと話すようになってから、小悪魔はよく笑うようになった。
それを喜ぶパチュリーもまた、よく外出をするようになり、健康に一歩近づきつつある。
美鈴も咲夜も、果ては妖精メイドたちまでもが心優しき主のために頑張るようになり、
紅魔館の雰囲気は、以前と比べて格段に良くなっていた。


かつて、フランドールが幽閉されていた地下室。
持ち主の居なくなった薄紅色のナイトキャップが、誰にも気づかれることなく、悲しげにそこに在った。




  • 図書館で朝食だと・・・ -- 名無しさん (2011-07-12 11:12:03)
  • あいつは動かないからなあ -- 名無しさん (2011-07-12 14:44:31)
  • つまり、レミリアは妹に嫉妬してたんだな -- 名無しさん (2011-07-12 22:20:06)
  • フランが大人すぐるw -- 名無しさん (2011-07-12 22:45:04)
  • 俺はレミリア様が大好きなので、こいつらけちょんけちょんにしてやりたい
    -- 名無しさん (2011-08-06 07:23:16)
  • なんかフランがいい娘すぎてすごくうそ臭く見える…… -- 名無しさん (2011-08-06 15:09:34)
  • おぜうはいつも通りですね -- 名無しさん (2011-08-07 03:27:55)
  • 不動の図書館がいるんだから、図書館に行くしかないんじゃね?
    フランちゃんかわいいよぉ --   (2011-08-14 23:21:22)
  • 突っ込みとして…レーヴァテインは剣です -- 名無しさん (2011-11-27 14:27:10)
  • レーヴァテインの形状については良くわかっておりません
    フランちゃんのレーヴァテインも剣とも槍とも杖ともただのレーザーとも言えるものだから
    そんな断定して言えるものではないと思うが -- 名無しさん (2011-11-27 15:44:18)
  • 真正面から妹とガチでやりあって勝てるわけないだろレミリア -- 名無しさん (2011-11-27 19:16:22)- まぁ確かに6ボスとExボスじゃ勝敗は見えてるわな…
    というか何気に美鈴が一番カリスマな件 -- 名無しさん (2011-12-02 22:27:54)
  • レミリア人望なさすぎだろwwww -- 珍珍 (2012-01-02 06:24:51)
  • フランンンンンン! -- 名無しかもしれないかもしれない (2012-04-13 16:36:55)
  • フランがまともですね。戦国時代の一族の内乱の果ての「雨降って地固まる」ならぬ「血降って地固まる」感じですねw
    それも新鮮でいいですねw -- 名無しさん (2013-03-01 19:10:46)
  • レミリアが夜神月みたいな結末を迎えるのは面白い レミリア「死なない……1分が経った…しなない!」 -- 名無しさん (2013-03-04 22:30:08)
  • レミリア、息子をとられて嫁に火病の姑みたい -- 名無しさん (2013-03-16 12:03:50)
  • フランはいい子w -- 名無しさん (2013-03-22 18:37:56)
  • グンニグルじゃなくてグングニルなのでは? -- 名無しさん (2013-04-25 22:39:09)
  • このいじめ作品集レミリアの扱いが酷すぎる -- 名無しさん (2013-06-17 22:33:16)
  • これはレミリア成仏してないだろう化けて出るだろうな -- 名無しさん (2013-07-03 18:52:26)
  • 今ここからレミリアの逆襲劇が始まる… -- レミリア大好きっ子 (2013-12-15 20:43:41)
  • レミリア三途の川で大暴れしてるんじゃないか小町がこってるかもな


    -- 名無し (2013-12-28 21:33:45)
  • フランが良いなら何でも良いな -- 明星ピアノ協奏曲 (2015-03-18 22:30:39)
  • フランがレミリアより強い?
    寝言は寝て言えwww -- 名無しさん (2015-07-01 21:44:17)
  • ↑いや実際そうじゃね? -- 名無しさん (2015-07-09 02:33:45)
  • レミリアの人望の無さwww -- 名無しさん (2015-07-13 17:14:13)
  • ガチ泣きした -- 名無しさん (2015-07-15 10:58:01)
  • フランちゃんが良い結果になるならなんでも良い
    優しいフランちゃんに鼻血出た -- 悪魔の名無し (2016-01-06 08:53:27)
  • 優しいフランちゃんに精液でた -- 名無しさん (2016-01-06 09:49:32)
  • フランファンクズwww
    フランもクズwwwwwww
    レミリアの方が強いわw
    アホかw
    -- 名無しさん (2016-01-13 23:32:30)
  • ↑でもさ、本当にレミィが強いならEXの方に行くんじゃね?
    フランちゃんの方が強いから、EXボスなん…だよな?(確信出来ないが)
    後5歳の妹も純粋なフランファンだからクズって言わないでくれ -- 名無しさん (2016-02-14 09:40:00)
  • ↑ちなみに追記
    俺はパルスィ&茨華仙ファンだ。 -- 名無しさん (2016-02-14 09:56:34)
  • 原作やってない人は知らんだろうけど
    難易度LunaticになるとEXボスのフランよりも6面ボスのレミリアの方がずっと強い
    つまり本気を出したらレミリアの方が強いってこと -- 名無しさん (2016-02-15 23:12:16)
  • ↑なるほどな、ありがと
    それ聞いた妹が暴れだした、どうすれば… -- ↑↑の奴 (2016-02-17 19:16:31)
  • そもそも、
    弾幕「ごっこ」の強さ≠キャラの強さ
    だからなあ


    例えば3ボスと5ボスの場合、弾幕ごっこ
    では5ボスの方が上ってのが一般的だけど、
    ガチの殺しあい勝負となったらどっちが
    勝つか全く分からない -- 名無しさん (2016-06-19 21:09:48)
  • 俺個人の見解では、レミリアとフランは互角。
    2人の何方かのファンには悪いんだが、
    レミリアは技術的に、フランは能力的に強い。
    可愛さも同等。何方でも俺は鼻血ブーブーなのだ。←おいおい


    それとラストシーンの続きで、フランの紅茶を飲んだ2人が気絶(or死)するっての考えてしまった。 -- キング クズ (2016-06-20 02:19:53)
  • ↑そう来たか


    フラン「もう一回作り直さなきゃ、私の紅魔館を。」
    って感じでさっきゅんポジ、めーりんポジ、こあポジ、パッチェポジを作るのを想像した。 -- 名無しさん (2016-06-20 21:03:55)
  • かくしてレミリアは生贄となり、
    スカーレット家における一族の礎になった。 -- 名無しさん (2016-12-25 01:48:01)
  • ゴミフランドールよりレミリアちゃんの方が圧倒的に強いんだろ?
    作者原作やってからこういうの書けよな
    普通のゲームでもEXボスより6面のラスボスの方が弾幕も本当の戦闘力も高いんだよ
    神奈子様と諏訪子様でEXの諏訪子様の方が強いってまだ言える?
    それとおんなじだよ
    とりあえずゴミフランドールは死ね
    あのクソキチガイ引きこもりニートが
    レミィちゃんは可愛い
    フランドールなんかの何億倍も -- 名無しさん (2016-12-25 07:39:27)
  • てかフランドールって紅魔館のレミィ以外から嫌われてるんじゃなかったの?
    フランドールの幸せよりレミリアの幸せの方が嬉しいだろ
    というか咲夜が忠誠してるのはレミリアで決してフランが好きでも大事でもない
    勿論美鈴もパチュリーも小悪魔も
    作者はバカなのか?ラスボスのレミリアの方が圧倒的に強いぞ
    原作見ようねー -- 名無しさん (2016-12-25 07:42:38)
  • フ死ねフフランドール死ねフランドール死ねフランドール死ねフランドール死ね


    もう二度と汚い体でレミィに近づくな


    レミリア「咲夜ーフランが来たわ…お掃除大変ね…」


    咲夜「妹様,お嬢様に菌がついてしまいます
    臭いです。不潔なので早く地下室に戻っては?
    妹様が歩いたところを全部除菌する大変さが分からないのですか?」


    フラン「めぇぇぇりぃぃん!ブヒィィあそぉんんでぇぇよぉぁ(ヨダレだらだら)」


    美鈴「遊ぶ?話さないでください。不快です死んでください」


    フラン「パチェェェこぁぁぁぁ!あそぉんんでぇぇよぉぁ(鼻息ボウゥ)」


    パチェ&こぁ「キモッ…とっとと死ねキチガイ野郎」


    フラン「みんなひどいわぁぁん(泣き顔キモい)
    ってあれ?(ナイフ大量飛んでくる)
    うわぁぁぁ!?お姉様~助けてぇェ(グサグサ)
    ………………(悪臭の漂っている死体)」


    咲美パチェこぁ「ざまぁみろ」 -- 名無しさん (2016-12-25 07:55:46)
  • フ死ねフフランドール死ねフランドール死ねフランドール死ねフランドール死ね


    もう二度と汚い体でレミィに近づくな


    レミリア「咲夜ーフランが来たわ…お掃除大変ね…」


    咲夜「妹様,お嬢様に菌がついてしまいます
    臭いです。不潔なので早く地下室に戻っては?
    妹様が歩いたところを全部除菌する大変さが分からないのですか?」


    フラン「めぇぇぇりぃぃん!ブヒィィあそぉんんでぇぇよぉぁ(ヨダレだらだら)」


    美鈴「遊ぶ?話さないでください。不快です死んでください」


    フラン「パチェェェこぁぁぁぁ!あそぉんんでぇぇよぉぁ(鼻息ボウゥ)」


    パチェ&こぁ「キモッ…とっとと死ねキチガイ野郎」


    フラン「みんなひどいわぁぁん(泣き顔キモい)
    ってあれ?(ナイフ大量飛んでくる)
    うわぁぁぁ!?お姉様~助けてぇェ(グサグサ)
    ………………(悪臭の漂っている死体)」


    咲美パチェこぁ「ざまぁみろ」 -- 名無しさん (2016-12-25 07:56:52)
  • ssのレベルも低いがそれ以前にコメントの質が悪すぎた、東方厨と呼ぶのに相応しいコメントばっかり -- 名無しさん (2016-12-26 23:06:52)
  • フランは臭い
    フランはブス
    フランは変態
    フランはキチガイ
    フランは引きこもり
    フランは雑魚
    フランはキモい
    フランはこの世に要らない
    フランは紅魔館の面汚し
    フラン死ね


    紅魔郷はフラン以外カワイイ
    フランは生ゴミに混じって死ねばいい
    同じくらい臭いから大丈夫だろ
    あ,生ゴミが汚くなっちゃうか。 -- 名無しさん (2016-12-31 15:09:30)
  • レミリア贔屓のフラン嫌いは帰って、どうぞ
    此処はレミリアが虐められて居るのを見て喜ぶ人、若しくはフランがレミリアを倒すのを見て気分が良くなる人が来る場所なのにわざわざ何で自分の嫌いなところに来るのだろうか。最初の方読めば感ずかない? -- 名無しさん (2017-01-04 21:16:32)
  • お前ら片方しか愛せないのかよwww
    不器用すぎだろw -- 名無しさん (2017-01-04 21:34:17)
  • フランキモい。死んで
    身体中から腐乱臭がして臭いんだよ
    フランだから腐乱臭がするんだね
    -- 名無しさん (2017-01-05 21:24:48)
  • フランはとてもいい子
    フランの悪口言う奴
    お前らが腐乱臭がするんだよ
    ( ◠‿◠ )
    お前らが死ねよクソ野郎共がよ( ͡° ͜ʖ ͡°) -- 名無しさん (2017-02-01 17:20:05)
  • フランはとても頭が可笑しい子
    フランの味方をするフラン厨共
    お前らも腐乱臭がするんだよ
    ( )
    お前らも死ねよクソ野郎共がよ( ͡° ͜ʖ ͡°)


    こんな低レベルな事しか言えないんだぞお前
    国語の勉強ちゃんとしようね。 -- 名無しさん (2017-02-05 10:49:30)
  • レミリア好きなんだったらわざわざコメントしないで、本気だしてないとか負け惜しみやめなよ。 -- フラン好き (2017-02-18 07:42:19)
  • レミ 「フランにマァゲダァァァァ」
    咲夜「うっせーよ。だいたいお前いつも負けてるんだから文句言うな
    」パチェ「あんたのファンも可哀想。こんなヤツの虜になって
    」美鈴「妹様のほうが可哀想です❗クソみたいなブスゴミ姉がいて、そしてそのファンに悪口言われて、
    」フラン「みんなありがとう、でも、もう大丈夫❗
    」フラン以外全員「フラン天使じゃけぇ」 -- レミリアアンチ (2017-02-18 07:52:17)
  • レミリアファン。負け惜しみやめなさい。人気投票見ろ。これが力の差だよ?悪口言いたいんならスレ違いだよ?では今から下スレで汚ぜうの悪口をいいまぁーす! -- パン (2017-02-18 07:59:26)
  • 咲夜「人気投票は出来レースだから力の差なんて言えませんよ?
    今時人気投票で強さ決めてるとか…」
    パチュリー「フラン厨こそフランが自機にならないからって負け惜しみは止めなさい
    あいつexなのに出番無さすぎだし」
    美鈴「しかも存在をZUNさんに忘れられてますよ
    悪口言うのがスレ違いとか言ってるのに悪口言いまーすとか言ってる馬鹿がいる」
    小悪魔「ガキは来ないで国語の勉強でもしてくれば?原作も買ってもらえないんですね」
    フラン「うぎぎぃぃ…((脱糞ブリブリブリ」
    咲夜「うわぁぁ!!また漏らしやがった!死ね!((頭を銀のナイフで突き刺し」
    レミリア「どうしたのかしら?((フランとは格が違うカリスマと可愛さ美しさで光が満ち溢れ」
    咲夜「Very Cute!!((鼻血」
    美鈴「My Angel!!((可愛すぎで気絶」
    パチュリー「ハァハァ…」
    小悪魔「ああっ!可愛すぎる((拝み」
    全員「レミィ!レミィ!((皆が団結し平和になった」
    -- 名無しさん (2017-02-25 08:47:49)
  • あれだよな
    こういう掃き溜めでガン切れ発狂してる人みると下にはまだ下がいるって分かる
    安心できていいな -- 名無しさん (2017-03-02 21:20:58)
  • コメント欄ガイジ多すぎかよ。
    架空の人物で発狂しちゃって。そんなんだから、オタクはキモイと思われる。


    まぁ、本当にキモイんだけどさ(笑)
    とりま死んで冷静に考えてね□□□ -- 名無しさん (2017-03-13 20:58:01)
  • ゴミフランドールだって?
    私を含むフランちゃんファンに失礼だぞ
    。 -- 名無しさん (2017-03-21 21:38:12)
  • 何はともあれさて置いて……


    かくしてレミリアは、この世に生まれ落ちることすら許されぬ定となった。


    運命は、逆らう者には容赦せず、弄ぶ者にはそれ相応の対価を求めるのである…… -- 名無しさん (2017-08-07 03:02:17)
名前:
コメント: