※このSSには独自の設定やキャラの崩壊、グロテスクな表現が含まれています。そういった展開が苦手な方はご注意ください。
※34スレ723『いざ倒れ逝くその時まで』の続きです。


































幻想郷に突如、襲いかかった三幻想の脅威。
サリエル、矜羯羅、そして幻月。
強大な力を持つ三幻想に、戦いを挑むのは無謀だと魔界からやって来たエリス達は伝える。
その言葉に半信半疑だった里の人間達だったが、三幻想の一柱である幻月の配下の襲撃を受け避難を決意した。
命蓮寺やチルノ達の協力を受け、幻想郷からの脱出に成功する里の人間達。
その一方で、エリス達は不穏な動きを見えるのだった。
エリス達の思惑通りに、魔界へと飛び立っていく聖輦船。
その姿は山道を走る霊夢達からも、はっきりと見えていた。

「どうやら里のエリス達が何かしたようね」

そう呟くパチュリーに、霊夢は訝しげな表情で問い掛ける。

「大丈夫なの? 魔界は連中の縄張りよ。人質に取られたら厄介だわ」

そんな霊夢にパチュリーは、真剣な眼差しで問い掛けに応えた。

「………分からない。でもこれで幻月は、簡単には里の人を襲えなくなった。人質でも皆殺しにされないだけマシよ」

霊夢はパチュリーの言葉に納得する。
もしエリス達が里の人間を殺すつもりなら、態々魔界に連れて行く必要がない。
恐らく何か別の目的で、里の人間達を魔界に誘導した。
ならば今は後回しでいいだろう。
そう考え霊夢は、里に向かって飛び続ける。
そして前を向いたまま、パチュリーに静かに呟いた。

「幻月は………幻想郷を壊して、何がしたいのかしら」
「………幻想郷を壊すという事は、外の世界に幻想の力を解き放つという事。
 本来なら濃度が薄まった幻想の力により、殆どの幻想存在は力を失うわ。
 でも三幻想ほど強大な力を持った存在なら、薄まった幻想の力でも十分戦える。
 つまり外の世界で自由に暴れられる事になるんだけど……それでどうするつもりなのかは……」
「………………」
「例えどんな目的だったとしても、その為に多くの幻想存在が犠牲になるわ。なんとしても止めなくちゃ。
 まずは幻想郷中の妖怪を集め、それからもう一度地獄に行きましょ。
 誰か一人でも矜羯羅に辿り着けば、助けを求める事が出来る」
「………矜羯羅は何故、動かないの? 菊理が動いているのに、上司は高みの見物って訳?」
「………………それが『善』だからよ」
「…………………」

霊夢はその何やら意味深な言葉に、黙りこくってしまう。
しかし先を急ぐ霊夢に、のんびり考え込んでいる時間はない。
今は兎に角里へ急ごうと気持ちを切り替えたその時、突如向けられる強い殺気。
その気配に霊夢達は立ち止まり、殺気の主へと身構えた。

「誰?」

山道の茂みから感じる気配に、霊夢は慎重に問い掛ける。
すると木々の間から、姿を現す二人組の妖怪。
だがその妖怪達の姿はどす黒い粘液に全身を包まれていて、とても正体を確認出来るような状態じゃなかった。

「何なの、こいつら」
「………まずいわねぇ……幻月の手の者よ」
「え!?」

そんな妖怪達を見て、パチュリーは確信を持った様子で呟く。
その言葉に疑問を浮かべる霊夢に、パチュリーは妖怪達の正体を説明するべく口を開いた。

「あの黒い液体は、幻月の操る邪気よ。恐らく邪気で作った妖怪………じゃない!
 邪気の中に妖怪がいる! あれは邪気に取り憑かれた妖怪よ!」

しかし邪気の中の妖怪の気配に気付き、パチュリーは大声を張り上げる。
霊夢はそんなパチュリーに、驚愕の表情を浮かべて振り返った。

「どういう事!?」
「………幻月は邪気で他者を操る事も出来るわ。あの妖怪達はその邪気に取り込まれ、支配されてしまったのよ」
「じゃあ……」
「……でも倒すしかないわ。ああなってしまっては、私達にはどうする事も出来ない。
 ただ一つだけ気を付けてほしい事があるの。絶対にあの妖怪達に触らないで。触れれば私達も、邪気に呑まれてしまうわ」
「………くっ!」

パチュリーの言葉に、霊夢は歯を食い縛る。
触ってはいけないのなら、祓い棒を使った接近戦は出来ない。
攻撃は飛び道具中心になるが、はたしてあの液状の邪気に通用するのだろうか。
そんな考えを巡らす霊夢にお構いなしに、妖怪達は三人へと勢いよく向かっていく。

「…来る!」
「いい!? 絶対に触っちゃダメよ!」

その攻撃を霊夢達は、それぞれ別方向に別れてかわした。
だが二人組の妖怪も別々に行動し、距離を取ろうとする霊夢達を追い掛ける。
妖怪達はそれぞれ長身の鎌を持った妖怪が霊夢に、小柄の翼の生えた妖怪がパチュリー達に襲いかかって行った。













「ちっ! 逃げられたか……」

魔界へと飛んで行った聖輦船を見て、夢美は墜落した可能性空間移動船の上で舌打ちをする。
破られる筈のなかった必殺技が、突如現れた妖怪により見事に回避された。
所詮は科学の欠片もない里の人間と、力の弱い妖怪だけの船。
そう高を括っていた夢美のプライドは、まんまと脱出を許してしまった事でズタズタに引き裂かれていた。

「何さ、口程にもない」

そこへ追い打ちをかけるように、不敵な笑みを浮かべて魅魔が現れる。
その小馬鹿にした態度に、夢美は魅魔をキッと睨み付けた。

「あんた、ずっと見てるだけだったくせに…」
「おっと私に当たるのはお門違いだよ。全部あんたの力不足のせいだろ?」
「……ちっ!」
「あ! 御主人様ー!」

更に魅魔に次いで、可能性空間移動船の乗組員達もやって来る。
彼女達は夢美の前に立つと、言い辛そうに言葉を紡ぎ出した。

「あ、あの……それで報酬の方は…」
「はぁ!? 失敗したんだから、そんな物ある訳ないでしょ!?」
「そ、そんな! あたいなんてイビルアイΣを、おじゃんにしてまで戦ったのにぃ!」
「文句は勝ってから言いなさい!」
「ええー! 最新鋭の戦車強化パーツはー!?」
「外の世界の力もないのか!?」
「高度文明の知識は!?」
「逮捕ー!」
「私の新築…」
「だぁー! 五月蝿い五月蝿ーい! あんた達が弱いのが、いけないのよ!」

夢美の言葉に、不満そうな表情を浮かべる乗組員達。
するとそこへ二人組の少女が日食に変わっていく空と共に、奇妙な歌を口ずさみながら歩いてやって来た。

「テロロンテロロンテロロンテロロンキロキキロロロロロロロロロズチャチャズチャズチャズチャチャズチャズチャ
 ズチャチャズチャズチャズチャチャズチャズチャ♪ テロロテロロロテロテロロットテロロッテテロテロテテ~♪
 テロロテロロロテロテロロットテロロッテテロテテロテ~♪ フイイフフイフイフイイイフイイフイフイイイフイイフイ♪
 フイイイフイイイフイイイフイイイフ~イ♪ チャンチャチャチャチャチャンチャンチャンチャン
 チャチャチャチャチャチャチャチャチャラララララララ♪ チャラララチャララチャラララチャラ
 チャラララチャラララチャラララチャラララチャララララララチャラララララララチャララチャララチャララララララ
 チャララチャララチャラララチャラララチャラララチャッチャラン♪」
「トイコンテンポラリー?」
「…………正解。でも何故、邪魔した。折角、のってきたところだったのに。ド~ロ~ロ~のノウ~ズ~イ~……」
「きりのいいところで止めたじゃない……。それより人間よ」
「あら、本当! ちょっと、そこの人間! さっき船が飛んでったけど、もしかして人間達は逃げちゃったのかしら?」
「そうよ、悪い!? …………って貴方誰?」
「ほら、夢月が遅いからよ。分かってんのか? あぁ?」
「ごめんなさい、姉さん」
「よしよし、素直なのはいい事よ。偉い子偉い子」

そう言ってその少女、幻月は夢月の頭を撫でる。
そのまま夢美達の方を向くと、ふとある人物を見てぴしりと固まった。

「…………?」

その人物とは戦車技師の里香。
幻月は里香をじっと見たままぴくりとも動かない。
何かあったのかと、夢美達は様子を窺う。
ところが突然幻月は、一瞬で里香の目の前まで移動する。そして、

「キェェェェェェアァァァァァァ!!」
「!!」

里香の口の中に右手を突っ込み、腕を振り上げ上顎を引き千切った。

「…………里…香……?」

噴水のように鮮血を噴き出し、里香の体は頭部を失った事でその場に崩れ落ちる。
一方で里香の上顎は、振り上げられた幻月の手に掴まれ空高く掲げ上げられていた。
その引き千切られた上顎からは、夥しい量の血液と脳髄が流れ出す。
それはやがて、びちゃびちゃと音を立てて地面を真っ赤に染めあげた。
しかし幻月はそんな物には興味を示さず、掴んだ上顎を左手に持ち替える。
その時、頭を振った事で目玉が飛び出したがそれも気にしない。
幻月が興味を示しているのは、右手に僅かに残った脳髄。
ねっとりとしたそれを自らの口に放り込むと、幻月はくちゃくちゃと咀嚼し始めた。

「…………ううっ!」

その凄惨な光景に思わず口を押さえる夢美達。
外の世界では勿論、幻想郷でも滅多に見ない惨い光景だ。無理もない。
だが幻月は不満そうな顔をすると、口の中の脳髄をペッと吹き出す。

「……………違う。『アイツ』がこんな簡単に死ぬ筈がない。……そもそも『アイツ』が此処にいる訳ないか。
 人違いね。紛らわしい頭しやがって………」

幻月はそう呟くと、手に持った里香の頭部を思いっきり地面に叩きつけた。
そのまま足で踏み砕き、頭蓋をグリグリと踏み躙る。
そして殆ど原形を留めない程にぐちゃぐちゃにすると、夢美達の方を向きにっこりと微笑みかけた。

「こんにちは、人間。私は幻月、こっちは夢月よ。仲良くしましょ」

血で真っ赤に染まった手を差し出し、幻月は穏やかに笑いかける。
それは純粋で無垢な少女の笑顔のように見えた。
しかしあんな光景を見た後で、笑い返せる者などいない。
夢美達が恐怖で動けずにいると、突然斬撃が走り幻月の手を斬り落とした。

「…………あら?」
「貴様………よくも里香を!」

その斬撃の主は妖刀を扱える人間、明羅だ。
彼女は怒りに燃える瞳で、幻月を睨み付ける。
当たり前だ。仲間が殺されたのだ。黙っていられる筈がない。
恐怖が勝っていた夢美達も、明羅の姿に勇気付けられ身構える。
それに幻月は気味の悪い笑みを浮かべて、もう一本の手を使いスペルカードを取り出した。

「幻想郷の人間は、血の気が多くて困るわ! ゆっくりお話も出来やしない!」
「でも姉さん、楽しそうね」
「キッヒヒヒッ! 私は遊ぶのも大好きよ! 雷魚『ザ・ハイエロファント』!」

そして幻月はスペルカードを発動させる。
途端に溢れ出した邪気から現れたのは、つばの広い帽子を被った夢幻妖怪。
その夢幻妖怪は鱗の生えた腕を振り、周囲に電撃を飛ばし始めた。

「くっ……」

電撃は電流を帯びた球体となって、辺り一帯に襲いかかる。
さすがに刀では電撃は防げない。
明羅は安全を優先し、電撃の射程距離から一旦離れた。
だが夢幻妖怪は指を空に向けて、電撃を一気に放出する。
すると電撃は雷となり、明羅目掛けて落ちて来た。

「うぐああぁぁ!」

雷撃に全身を貫かれ、崩れ落ちそうになる明羅。
しかし彼女は刀を杖にして、倒れそうになった体を必死に支える。
だが明羅の体力は、すでに立っているのもやっとの状態だ。
次の攻撃を喰らえば、もう起き上がる事は出来ない。
しかし幻月は無情にも、新たなスペルカードを手に取って更に追撃を叩き込む。

「虚狼『ザ・チャリオッツ』!」

次に現れたのは長い髪を後ろで縛り、手に大剣と盾を持った夢幻妖怪。
彼女は勢いよく明羅に駆け寄ると、大剣を振り斬りかかって来た。

「ぐっ!」

必死に刀を構え、明羅は斬撃を受け止めようとする。
だが雷撃を受け満身創痍の明羅に、体力は殆ど残されていない。
あっさり刀を叩き落とされてしまうと、無防備になったところを盾で殴り付けられてしまった。

「があっ!」

明羅は攻撃の衝撃に踏み止まれず、その場で仰向けに倒れてしまう。
そこへ夢幻妖怪は大剣を逆さまに持ち、力いっぱい明羅の腹へと突き刺して来た。

「ぐっ…がああぁぁぁ!!」

凄まじい激痛に、明羅は血を吐き悶え苦しむ。
次々と噴き出す冷や汗を気にする事無く、手足をバタバタ動かし痛みから逃れようとしていた。
しかしそんな明羅を無視して、夢幻妖怪は幻月の方へ振り返る。
それに幻月はサインで応えると、夢幻妖怪は大剣を少しづつ動かし始めた。

「があ、ああアあアアぁァァぁあアああアァぁぁァ!!」

途端にぐちゃぐちゃと音を立てて、大剣は明羅の傷口を抉る。
内臓を引っ掻き回されるその苦痛に、明羅は目をぐるぐる回し叫び声を上げた。
もう放っておいても死ぬ状態にも拘わらず、尚も続く拷問に近い攻撃。
その様子を幻月は、にこにこ笑って見つめている。

「いいわ、いいわよ~。もっと、もっと苦しめ…」

そこへ一発の銃弾が飛んで来ると、幻月の頭を綺麗に撃ち抜いた。
辺りに幻月の脳髄が飛び散り、本人もぐったりと倒れ動かなくなる。
同時に明羅を襲っていた夢幻妖怪も、スペルカードに戻り幻月の許へと帰っていった。
銃弾をスナイパーライフルで撃ち出した主、理香子はそんな幻月を見て一言呟く。

「私を甘くみるなよ」
「理香子ー!」

すると理香子に駆け寄って来るちゆり達、他の乗組員。
彼女達は頭を撃ち抜かれ完全に動かなくなった幻月を見ると、ぼそぼそと思い思いに呟き始めた。

「一体何者だったのかしら」
「知りません」
「何者であろうと、私達に襲いかかって来たのは事実よ。倒さない理由はないわ」
「……………にしてもあいつは何なんだ?」

そう言うちゆりの視線の先には、無表情で夢月が立ち続けている。
相方がやられたというにも拘わらず、仇を討とうとも慌てようともしない。
まるで人形のように微動だにせず、ただそこにじっと立ち続けていた。

「へぇ~、やるじゃない」

そんな夢月を見ていたちゆり達に、突如かけられるその言葉。
ちゆり達はその声の主に心当たりがあった。
だがありえない。ある筈がない。
確かに今の一撃で死んだ筈。
しかしならば今の声は誰だと言うのだろうか。
そう思いつつ、ちゆり達は慌てて声の方へ振り返った。

「今のは効いたわよ」

そこにいたのは、ちゆり達の想像通りの相手。
何食わぬ顔で笑う幻月だった。
銃弾は確実に頭を撃ち抜いた筈。頭にもしっかり穴が開いている。
だがとてもダメージを負っているようには見えない様子で、幻月は里香の死体に足を突っ込んで遊んでいた。

「そんな馬鹿なっ!」
「確かに撃ち抜いた筈なのに!」
「ああ、あれの事?」

幻月は笑顔のまま、地面に飛び散った自分の肉片を指差す。
途端に肉片は邪気へと変わり、幻月の頭の穴に吸い込まれ元通りとなった。
それはダメージを回復したというより、最初から効いていなかったという様子。
その光景は、まさに化物といった感じだった。

「不死身!?」
「死なない…という表現は適切じゃないわね。夢月もそう思うでしょ?」
「姉さんがそう言うなら、そうに違いないわ」
「どうなってるのよ……」

自分達の世界の常識ではありえない状況に、訳が分からず茫然とする夢美。
それは幻想郷でも同じ事。頭を撃たれて無傷な妖怪など、今まで見た事がない。
しかし幻月は、そんな彼女達の許へゆっくりと近付いて行く。
すると突然カナと小兎姫が飛び出し、幻月に弾幕攻撃を仕掛け出す。
躊躇していたら殺される。
幻月と敵対している全員が、すでに余裕など残していなかった。





「行け!」
「逮捕ー!」

無数の流星弾幕と花火弾幕が幻月へと襲いかかる。
だが幻月は炎に焼かれようと爆発で吹き飛ばされようと、すぐに残骸が邪気へと変わり再生してしまう。
そして幻月は反撃に移ろうと、右腕をポケットに突っ込む。
しかし手を斬り落とされていた事を思い出すと、左手でスペルカードを掴み発動させた。

「嫉蛇『ザ・ハングドマン』! 怨蜘『ザ・デビル』!」
「なっ!」
「2枚同時発動!?」

幻月が発動させたスペルカードは、なんと二枚。
そのスペルカードから解き放たれた邪気は、それぞれ別々に形を成し始める。
片方は髪が長く下半身が蛇の夢幻妖怪となり、勢いよくカナへ。
もう片方は耳が尖っている下半身が蜘蛛の夢幻妖怪となり、小兎姫へ襲いかかっていった。

「!!」

カナ目掛けて蛇行しながら、向かって来る蛇の夢幻妖怪。
それにカナは咄嗟に撥を手に取り、突進から身を守ろうとした。
だが蛇の夢幻妖怪はカナの目の前で曲がり、尾を振って攻撃して来る。
その一撃はカナの脇腹に決まり、そのまま吹き飛ばし可能性空間移動船に叩き付けてしまった。

「うぎっ!」
「か、カナ~」

更に注意の逸れた小兎姫に、蜘蛛の夢幻妖怪は結晶を飛ばす。
小兎姫を背後から狙い、真っ直ぐ飛んでいく5つの結晶が作る花。

「がっ!?」

それは小兎姫の背中を捉えると、深々と突き刺さり仰け反らせた。
一方で幻月は近くの岩に腰かけて、その様子を見届けている。

「さ~て、貴方は芸がないみたいだけど~」

そう言うと突然、幻月は左腕を思いっきり振って何かを掴んだ。
その手を開くと握られていたのは、小さなスナイパーライフルの銃弾。
それは再び死角から狙撃した、理香子の放った弾丸だった。

「もう同じ手は通用しませ~ん。ざ~んね~んで~した~」

幻月は理香子の方を向くと、銃弾を落とし舌を出して笑う。
その様子に理香子は舌打ちをすると、スナイパーライフルを持ち移動し始めた。

「ふ~ん、次はどうするつもりなのかしら」

その頃、カナは蛇の夢幻妖怪相手に苦戦を強いられている。
何せ相手は高速で動き回り、こちらの流星弾幕を簡単にかわしてしまう。
どんなにドラムを叩き弾幕を放っても、その間をすり抜け続ける蛇の夢幻妖怪。
なかなか当たらないこちらの攻撃に、カナは徐々に苛立ち始めていた。

「このっ!」

撥を軽快に操り、カナは更に大量の弾幕を降らす。
しかし蛇の夢幻妖怪は、俊敏に動き攻撃をかわし続ける。
ならばとカナはどんどん演奏を激しくして、弾幕密度を高めていく。
だが攻撃に集中しすぎた為に、大きな隙が生まれてしまった。

「!! しまっ…」

その隙に一気に距離を詰め、蛇の夢幻妖怪は尾でカナを薙ぎ払う。
無防備な状態に叩き込まれた一撃に、カナは堪らず地面に倒れ込んでしまった。
すると蛇の夢幻妖怪はスペルカードに戻り、幻月に回収されていく。
代わりに放たれた新たなスペルカードが、力無く倒れるカナに襲いかかって来た。

「讐氷『デス』!」

今度の夢幻妖怪は、小柄で背中に氷のような羽をつけている。
しかし溢れんばかりの妖力を放っており、何処か法力のような神々しさも醸し出していた。
その氷の夢幻妖怪は、ダメージから回復しきれていないカナに冷凍光線を放つ。
途端にカナの体は、凍り付き始めてしまった。

「……ああ………そん…な………」

徐々に動かなくなっていく体に、カナは絶望の表情を浮かべる。
やがてカナの全身は完全に凍り付き、ぴくりとも動かなくなってしまった。
すでに決着はついている。だが氷の夢幻妖怪は追撃の手を緩めない。
彼女は自分の頭上に氷を作り出し、どんどん妖力を込めて大きくしていった。
そのまま出来上がった巨大な氷塊を、カナに投げ付ける氷の夢幻妖怪。
その一撃は凍り付いていたカナの体を、粉々に砕いてしまった。
たくさんの氷の粒となり、地面に散らばるカナの残骸。
霊体である彼女の体は彼女の死により消滅し、跡には巨大な氷塊だけが残っていた。

「うぅ……ごほっ! げほげほっ!」

同時刻戦闘中の小兎姫も、蜘蛛の夢幻妖怪により窮地に追い込まれている。
どうやら先程の結晶攻撃には、毒に近いものが含まれていたらしい。
意識が朦朧とし、最早まともに立っている事さえ出来ない。
しかし蜘蛛の夢幻妖怪は、情け容赦なく結晶を放ち攻撃して来ていた。
もうこれ以上戦っても勝利は望めない。
全身傷だらけになり心が折れた小兎姫は、必死に地面を這い蹲り逃げ出そうとした。

「……はぁ……はぁ……ごほごほっ!」
「うん、いい感じに絶望に満ちた顔よ。じゃあ、終わらせましょうか。憑蝶『テンパランス』!」

その姿に満足した幻月は、別のスペルカードを取り出し発動させる。
現れたのは、つばの広い帽子と長髪が特徴の夢幻妖怪だった。
彼女は扇子を手に持つと、一斉に死蝶を解き放つ。
死蝶は小兎姫の行く先に群がると、徐々に取り囲み逃げ場を奪っていった。

「こ、来ないで……」

自分の周りを飛ぶ死蝶の姿に、小兎姫は錯乱状態に陥る。
そこへ上空から小兎姫に迫る夢幻妖怪。
彼女は下側が尖った岩に乗り、小兎姫に向かって一気に落ちて来ていた。
あんな物に突っ込まれたら、例え鉄骨だろうと圧し折れてしまう。
慌てて逃げ出そうにも、周囲を取り囲むのは死蝶の群れ。
死蝶に触れば死ぬ。逃げ場所はおろか、隠れる場所すらありはしない。
小兎姫は涙を目に浮かべて、必死に打ち揚げ筒を盾にする。
だがそんな物で防げる筈がない。
夢幻妖怪は勢いよく落ちて来ると、岩で胴体をぐちゃぐちゃに潰し小兎姫を真っ二つにしてしまった。

「うぐぅっ! …………あぁぁ……痛いよぉ……」

上半身と下半身がバラバラになりつつも、まだ僅かに小兎姫は生きている。
そうは言ってもただ即死しなかっただけで、もう永くは持たないのは誰が見ても明らかだった。
そんな小兎姫の様子を見ると、死蝶は一斉に飛び去っていく。
それはまるで死が確定した者には、自分達の出る幕はないと言わんばかりだった。
しかし小兎姫にとっては、それはあまりにも惨い仕打ち。
何故なら死蝶は逃れられない死を告げたと同時に、彼女から安楽死という最期の選択肢を奪っていったのだ。
今の小兎姫は結晶に含まれていた病原体の作用により、意識を失う事もなく激痛に苦しみ続けている。
せめて死蝶がいれば、自分から死ぬ事も出来た。
だが死蝶がいなくなってしまえば、残っているのは苦しいだけの数秒の命のみ。
本来なら気を失いそうな痛みの中でも、彼女の意識は覚醒し激痛の信号を送り続けている。

「痛い…痛いよ……痛い痛い苦しい痛い苦しい苦しイ痛い苦シい苦しい痛イ痛い痛イ苦シイ痛イ苦シイ苦シイ…」

その苦痛は千切れた腹部から、血を出し切り失血死する瞬間まで続いた。
夢美達の目の前で、次々殺されていく乗組員達。
それらの元凶である幻月は、にっこりと笑って夢美達の方を見た。

「さて、これで残るは貴方達さ~んに~ん」

そして楽しそうにそう言って、理香子とちゆりと夢美を指差す。

「…と一人だったもの」

最後ににやりと笑って、先程から傍観している魅魔の方を見た。

「次は誰が私を楽しませてくれるのかしら? 私は誰からでも構わないわよ? どうせ全員殺すんだしねぇ!
 魔儡『ザ・マジシャン』!」

次いで解き放たれた夢幻妖怪は、まだ幼い少女の姿をしている。
しかし凄まじい魔力を放っており、魔導書と思われる物を開くと何やら魔法を発動させてきた。

「!!」

途端に揺れ出す地面。
揺れに耐えかねその場に膝を突く夢美達を余所に、どんどん強く大きくなっていく。
やがて大地がブロック状に切り取られ、空中に浮かび上がり始める。
そのブロック状の地面は、夢美達目掛けて次々に降り注いで来た。

「うわっ! あ、危なっ! うぎゃー!」

巨大なブロック状の地面は、自身の重みを活かして夢美達に襲いかかる。
ブロック状の地面が大地に落ちる度に、巻き起こる振動と砂埃。
その中を押し潰されないように、夢美達は散り散りに逃げる。
だが攻撃はそれだけでは治まらない。
夢美達の後ろを、武器を持った人形のようなものが追い掛けて来たのだ。

「うわぁー! ヤバいって!」

ただでさえ上からの攻撃に気を付けなければいけないのに、更に追手までいたのではもう逃げ切れない。
万事休すかと思ったその時、空中に浮かんでいたブロック状の地面がすべて落ち切った。
反撃するチャンスは今しかない。
そう判断した理香子は、スナイパーライフルを地面に固定した。
そのまま向かって来る人形のようなものに照準を合わせる。

「………喰らえ!」

同時に引き金を引き弾丸を撃ち込み、人形のようなものを粉砕した。
どうやら人形のようなものの耐久性は、さほど高くないらしい。
これなら全部スナイパーライフルで壊せる。

「この調子で残りも…」
「理香子! 後ろ!」

ところがそこへ声を張り上げるちゆり。

「………えっ」

その声に理香子が何事かと振り返ると、そこには巨大な蟹のような夢幻妖怪が立っていた。

「……………なっ」
「厄蟹『ザ・スター』」

その蟹の夢幻妖怪には、腹の所に人型の何かがめり込んでいる。
それはまるで帆船の船首像のようにぶら下がっており、下半身と腕が夢幻妖怪の体内に取り込まれていた。
しかし理香子には、そんな事を気にしている余裕はない。
何せ今まさに夢幻妖怪は鋏を振り上げ、理香子を叩き潰そうとしているのだから。

「くっ! こんな……こんな力に、この私がぁっ!」
「理香子ぉー!」

慌てて逃げ出そうとする理香子だったが、もう間に合わない。
振り下ろされた鋏は理香子をグシャリと押し潰し、その命の炎を消し飛ばした。
やがて鋏がゆっくりと持ち上げられると、そこにはミンチ状になった肉塊が広がっている。
それは持ち上げられた鋏にもねっとりとへばり付いており、粘着力が尽きるとミンチの山の中にびちゃりと落ちて行った。

「………こんな………事って……」

圧倒的な力の前に、成す術なく死んでいった乗組員達。
そのあまりにも凄惨な光景に、最早ちゆりは逃げる事だけを考えていた。
どうすればこの化物から逃げ切れる。
どうすれば生きて自分達の世界に帰れる。
もうちゆりには、戦う意志は残っていなかった。

「……ふざけるなあああぁぁぁぁ!!」

だが夢美は違う。
怒りの形相で、キッと幻月を睨み付けている。
いつもなら憧れる幻想の力も、敵として明確に殺しに来ているなら話は別。
その瞳に宿るのは明確な戦闘意思。
夢美は自分の計画の邪魔をされ、腸が煮えくり返っていた。

「いきなり現れて早口でぺちゃくちゃと……挙句の果てに私の協力者を殺した!? はっきり言って不愉快だわ!
 私の邪魔をする者! 私を馬鹿にする者! 全員纏めて私の力の前に、ひれ伏すがいいわ!」

そう言って夢美は装置を動かし、聖輦船を襲ったあのビットを飛ばす。
それも一個ではない。合計5つものビットが、一斉に十字架を作り始める。
途端に夢美の周囲に浮かび出す、強大なエネルギーを放つ5つの十字架。
それらは夢美が手を幻月に向けると、一斉に幻月の方へ矛先を向け始めた。

「反物質十字弾……グォレンダァ!」

そしてその言葉と共に、幻月目掛けて真っ直ぐ飛んで行く。
凄まじいエネルギーを放ちながら、向かっていく5つの十字架弾幕。
しかし幻月はにやりと笑い、余裕の表情を浮かべ出した。

「そんな雀蜂みたいな、おっかない顔して~。……でもさすがにこれは夢幻妖怪じゃ無理かな~?」

すると幻月は、自分の口に手を突っ込む。
そこへ飛んで来る十字架弾幕。
さすがにあの体勢では、どうする事も出来まい。
そう考える夢美だったが幻月が手を引き抜いた瞬間、5つの十字架は一瞬で消し飛んでしまった。

「……………えっ」

一体何が起こったのだろう。
まさかあの攻撃が破られたとでも言うのだろうか。
そんな筈がない。
あれに触れればどんな物質でも消滅する。
何をしようが打ち消せる筈がない。
ならば何が起こった。
自分の想像外の出来事に、思考が追い付かない夢美。
だが消し飛んだ十字架の裏から現れた幻月の姿が、夢美に現実を突き付けた。

「…………あ、ありえない……」

幻月の左手に握られていたのは、闇のように真っ黒な鞭。
それは空中を龍のように舞い、十字架の中から出て来たビットの周りを飛ぶ。
あんな鞭で、あの弾幕を打ち消したとでも言うのか。
夢美は敵の攻撃の正体を確める為、再び十字架を作り出し幻月に向かって飛ばした。

「手加減は一度目だけ。二度目は当てるわよ」

その攻撃に幻月は、鞭を振って対抗する。
今度は見逃すまいと夢美は、攻撃をじっと見つめていた。
そして放たれる鞭の一撃。
それは十字架をすり抜けて、核であるビットすら貫通し破壊する。
夢美は、その自分が知り得る知識外の光景に茫然とした。
辛うじて分かるのは、あれが普通の物質じゃないという事。
少なくても自分達のいた世界の宇宙には存在しない物質。
しかし弾幕や魔法でもない。
もっと不可解で異質な何かである。
だがその答えを出すには、あまりにも時間が足りない。
そのまま鞭は考え続ける夢美の左腕に当たり、その異質な力で腕をもぎ取っていった。

「……………ぎ、ぎやあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

途端に夢美は凄まじい悲鳴を上げる。
それは腕に走る激痛の為。
しかしこれは鞭に打ち付けられた痛みではない。
原因は分からない。ただ無い筈の左手が、万力で押し潰されるように痛むのだ。
腕の痛みだけでも気を失いそうなのに、更に手も指も激痛を放つ。
確かこれは幻肢痛という症状の筈。
だが頭で理解したところで、どうにかなるものでもない。
夢美は必死に痛みに耐えながら、幻月に立ち向かおうとした。

「!!」

しかしそこに叩き付けられる鞭の一撃。
その攻撃は夢美から、更に右脚を奪っていく。
同時に再び起こる幻肢痛。
その時、夢美は気が付いた。
こいつは狙って幻肢痛を引き起こしているという事に。

「あああ………」

原理は分からない。恐らくは何らかの魔法の力によるものだろう。
魔法となれば説明は付くが、この状況が絶望的な事に変わりはなかった。
もう左腕と右脚の激痛で、夢美にこれ以上戦う意志は残されていない。
だが幻月は更に鞭を叩き付け、夢美の右腕と左脚まで奪っていった。

「ああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「御主人様!」

四肢をすべて奪われてしまい、夢美は断末魔のような悲鳴を上げる。
それにちゆりは、慌てて駆け寄っていく。
すると夢美は涙でぐちゃぐちゃの顔で振り返り、血走った目を見開いてちゆりに向かって叫んだ。

「ち、ちゆり! 殺して! 私を殺シテ! 早ク!」
「………御主人様……」

すでに夢美の精神は、絶望と激痛で限界を迎えている。
その死を哀願する姿に、ちゆりの心も絶望に染まりつつあった。
必死に動き回り、少しでも失血死が近付くように夢美は足掻き続ける。
しかし傷口は邪気で塞がっており、血は殆ど流れていない。
それに気付かぬ程弱り切った夢美に向かって、幻月は理香子の残骸を鞭で掻き混ぜながら呟いた。

「人間はいつもそうよ。こいつを使うと決まって同じ反応をする。……………つまらないわ」

そう言って鞭を邪気に戻し、口の中に流し込む幻月。
鞭がなくなった事で空いた手を使い、理香子の残骸を拾い上げる。
だが夢美とちゆりは、そんな幻月の行動にも反応しない。
最早、二人は完全に戦意を失ってしまっていた。
出来る事なら、もう降参して楽になりたい。
だが幻月は理香子の残骸を握り潰すと、そんな二人に無慈悲に迫っていった。

「貴方の御主人様は死にたがってるみたいよ。ねぇ、どうする? 殺してあげる? それとも助けようとする?
 貴方自身はどうする? 必死に命乞いする? 泣き喚きながら逃げ出す? 恐怖のあまり、おもらしする?
 ヒッヒャヒャヒャヒャッ! もっと、もっといろんな表情を私に見せて! 薬兎『ワンド』!」

更に幻月は新しい夢幻妖怪を呼び出し、二人の前に立ち塞がらせる。
それは筋骨隆々の逞しい肉体とは裏腹に、頭には可愛らしいウサ耳のついた奇妙な夢幻妖怪だ。
そのウサ耳夢幻妖怪は、二人に向かって槌を振り下ろそうとして来る。
しかしすでに正気を失いつつあった夢美は、その槌へ芋虫のように這って自分から向かっていった。

「フフ……フフフ……」
「ご、御主人様ぁ!」

必死に夢美に呼び掛けるちゆりだったが、彼女にはもうどうする事も出来ない。
そこへ無情にも振り下ろされる槌。
その一撃は夢美の頭を叩き潰し、ぐちゃぐちゃになった脳髄や肉片を辺りに飛び散らせた。

「……………………………」

飛び散った脳髄は、近くにいたちゆりの許にも飛んで来る。
下を見れば、夢美だったものの残骸が転がっている。
赤く何処までも赤い赤が、目の前に広がる。
夢美が好きだった赤が一面に。

「…………ふ、ふふふ。あははははは! そうだ! 全部夢だったんだ! 最初から幻想郷なんてなかったんだよ!
 御主人様の研究は間違ってたんだ! 学会の言う通り、この世には科学で証明出来ないものなんてないんだ!
 なんだ、簡単な話じゃないか。全部夢さ! 夢だから御主人様の思った通りの存在がいたんだ!
 やっぱり妖怪なんて魔法使いなんて神様なんていなかったんだよ! アっはハハはは!」

目の前で起こった出来事を受け入れられず、ちゆりは現実逃避してしまう。
だが現実から目を逸らしたところで、幻月からは逃げられない。
ちゆりの前にそっと立つと、幻月はスペルカードを手ににやりと笑った。

「早く目が覚めないかなぁ。御主人様の朝食を用意しなくちゃいけないのに」
「そんなに会いたいなら、お望み通り会わせてあげるわ。学人『ザ・ハイプリスティス』!」

無情にも唱えられたスペルカード宣言と同時に、姿を現す夢幻妖怪。
それはマントをつけロケットエンジンを背負った、とても見覚えのある夢幻妖怪だった。
しかし夢幻妖怪は光る剣を手に、ちゆりに向かって飛んで行く。

「今日の朝食はクロックムッシュがいい…………」

そして光る剣を振るい、ちゆりを頭から真っ二つに斬り裂いてしまった。
ちゆりは内容物を飛び散らせ、左右に分かれて倒れてしまう。
断面を空の日食に向け、呆気なく絶命するちゆり。
それを幻月は見届けると、魅魔の方へにやりと笑って振り返った。

「もう残ったのは、あんただけよ」
「………それで追い詰めたつもりか? あんな連中と一緒にされちゃ困るよ!」

だが魅魔は臆する事無く、幻月を強い殺気を込めて睨み付ける。
明らかな敵意に幻月は気味の悪い笑みを浮かべると、おどけた口調で魅魔に話しかけた。

「どうしてそんな怖い顔するのかしら~? 私、何か悪い事しったのっかな~?」
「ふざけやがって……私の所有物に手を出した奴は、皆私の敵だ!」
「それってあの魔法使いの事? たっぷり苦しめてからいただいたから、とっても美味しかったわよ~」
「魔理沙も幻想郷も私の所有物さ! 私のものに手を出した事、あの世で後悔しな!」

そう言うと魅魔は、一気に幻月へ襲いかかる。

「そんなに大切なものだったんなら、首輪はめて名前彫って暗い地下牢にでも放り込んでおきなさい!
 欲蝿『ホイール・オブ・フォーチュン』!」

それに対抗するべく、幻月は新たなスペルカードを発動させた。
今回出て来たのは、6本腕と羽を持つ巨大な夢幻妖怪。
その夢幻妖怪は、大口を開け魅魔目掛けて熱線を放とうとする。

「遅いんだよ!」

しかし魅魔は夢幻妖怪の眼前まで飛び上がると、月牙金産を振り頭から真っ二つに斬り裂いてやった。

「!!」

だが崩れ落ちる夢幻妖怪の魔力に、魅魔は奇妙な懐かしさを感じる。
それは本来なら、もういない筈の人間。
確かに殺された筈だが、今の魔力は確かにあの人間のものだった。

「まさか……」

しかしその事に気を取られ過ぎて、魅魔はすぐ傍まで迫っていた幻月の気配を読み損ねる。

「傲梟『ジャッジメント』!」
「!!」

そしてそれが、魅魔の生涯最大の失態となった。

「ぐがあぁ!!」
「口先だけの奴って嫌よねぇ~」

長い髪を風になびかせ、夢幻妖怪は十字架のような大剣を魅魔の胸に深々と突き刺さす。
そのまま勢いよく大剣を振ると、魅魔の体を斬り裂いた。
倒された事で祟り神としての力を失い、魅魔の体は消滅し代わりに魂だけが残る。
それを幻月は乱暴に掴むと、口の中に放り込み咀嚼し始めた。

「…………うん、いまいちね」

くちゃくちゃと音を立てた後、ごくりと魂を呑み込む幻月。

「私の腹の中で、弟子と一緒に永遠に苦しみ続けなさい」

そう言うと斬り落とされた自分の右手を拾い、夢月へと手渡した。

「ちゃんとくっつけてよ。いろいろと不便なんだから」
「斬ったり貼ったり斬ったり貼ったり……姉さんの後始末は大変ね」

そんな幻月に夢月は溜め息を吐きながらも、鋏を取り出し幻月の右手を貼り合わせて行く。
やがて完全に右手が繋がると、大地に転がる死屍累々を尻目に里へ向けて歩き出した。









  • もう夢月と幻月に勝つにゃ天皇陛下かローマ法王か
    プーチンでも連れてこねえと駄目じゃねぇか! -- 名無しさん (2011-04-30 20:28:09)
  • あの....ともだちにしてください -- 樹里 (2011-05-13 18:31:02)
  • いますか -- 樹里 (2011-05-13 18:32:02)
  • ↑なぜその二人にプーチンをまぜる? -- 名無しさん (2014-04-14 01:07:37)
  • プーチンとローマ法王に天皇なんかが混ざってる方がおかしい -- 名無しさん (2017-01-23 00:38:44)
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