東方いぢめスレ

R-15指定











紅魔館の裏側、正門とは正反対の方向に一つの墓があった
大理石を研磨して作られたそれの周りは花で溢れ、まるで庭園のようだった

日のよく当たるその場所に、紅魔館の主、レミリア・スカーレットは一人で日傘をさし訪れる
「・・・・・」
墓の前でしゃがみこむと、十数秒間目を閉じて黙祷を捧げた

墓標には『Frandre Scarlet』と刻まれていた






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3年ほど前のことだった
外の世界の吸血鬼を狩る機関が、博麗大結界を抜けてやってきた。目標は当然紅魔館であった
一人一人が特殊な訓練を積んだ精鋭。手にする武器は科学の粋を結集した最強の殺傷兵器
何の前触れもない突然の襲撃に紅魔館はなす術も無く、逃げる以外の選択肢は残ってはいなかった

全員、散々になって館を脱出した
レミリアは事前に示し合わせておいた合流地点に辿り着き、既に到着していた面々の顔を確認するとそこにはフランドールの姿だけが無かった
咲夜、パチュリー、美鈴、小悪魔は皆、彼女の安否を気遣っていた
「先に行っててください。妹様が来るまで、私はもう少しここにいます」
「時間の無駄よ。その必要は無いわ」
美鈴の提案をレミリアは却下した
「早くここから離れましょう」
その言葉の意味を全員が理解する
最悪の結末を知り、言葉を失ったメンバーの中でパチュリーだけが他とは違う表情をしていた
「レミィ、あなたまさか妹様を見捨て・・・」
「仕方が無かった」
友人から糾弾される前に、その言葉を遮った
「やはり教えてなかったのね」
襲撃時、フランドールは地下室にいた。分厚く頑丈な地下室の壁は外の音も揺れも完全に遮断している
そのため、今紅魔館で起きていることに気付かないでいた
「最初は一緒に館を出ようとしていた。でも、アイツ等の侵攻は思ったよりも早くて、二人で無事に脱出できる自信がなかった」
襲撃があってすぐ館を飛び出せば確実に脱出できた。しかし地下に行き妹と会うなると、その間に事態がどう変わるかわからない

確実に一人が助かり、確実に一人が犠牲になる方法
運がよければ二人が助かり、運が悪ければ二人とも助からない方法

レミリアはそのどちらかを選ばなければなかった
「言い訳はしない。私はフランドールを見捨ててきた」
結果として、地下に居るフランドールが大勢の敵を引き付けてくれたお陰で、他が手薄になり全員の脱出が容易になった

彼女が下した決断を誰も責めることは出来なかった


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その後も、機関から逃げ回る生活が続いた
しかし、機関が幻想郷の各地で大規模に暴れ被害が続出し『幻想郷の平和を乱した』と八雲紫と逆鱗に触れ、機関の全員が抹殺され、連中が二度と入って来れぬよう大結界はより強固なものに強化された


それにより、レミリアたちは平穏に戻ってこられた
紅魔館も復興を遂げ、フランドールが居ないという現実以外は、すべてが元通りだった

「仕方がなかった」

この墓が建てられてから、レミリアは週に一度は墓参りするようにしていた
墓はあるが、その下に妹が眠っているわけではない。死体は見つかっていない
機関に捕らえられるということは、吸血鬼の間で生存が絶望的であることを意味していた
レミリア自身、墓を作るのは本意ではないが、妹に対して何もしないままでいたくもなかった

「仕方がなかった」

この墓の前で、何千回も繰り返した言葉を、もう一度口にした






レミリアが妹の墓の前で懺悔をしている最中。美鈴は門番の任に就きつつ、鍛錬を行なっていた
二度と門番をまっとう出来ず無様な敗走を喫することが無いよう、今度こそ誰も犠牲にならぬようにと決意を込めて

「ん?」

前方数百メートル先、何か小さな物が動いたような気がした
目を凝らし、目標物を視認すると、それは布切れの塊のようだった。それがずるずるとこちらに向かい緩やかな速度で進んでいる

門番中常に周囲を警戒していた美鈴だが、それは気配があまりにも小さすぎて、肉眼でその姿を捉えるまで気付けなかった

「止まれ! これより先は紅魔館の敷地だ!」

目の前の布切れからは、大した驚異を感じなかった。低級の妖怪が迷い込んだ程度のことだと思ってはいたが、一切気を抜くつもりは無かった

「それ以上近づくなら・・・」
「ひどいなあ。久しぶりに帰って来たのに。結界を超えるのに、結構苦労したんだよ」
「え?」

聞いたことのある声だった。美鈴は駆け寄り、布切れの塊に触れる
「失礼します」
“中身”が日光を浴びないように細心の注意を払いながら、布をずらした。見覚えのある紅い瞳が美鈴を映した
美鈴は思わず口元を押さえた。奇跡という言葉を、今ほど体感したことはなかった

「ただいま。みんな元気にしてた?」

悪魔の妹、フランドール・スカーレットの帰還だった


















レミリアはフランドールが帰って来たという報告を受け、真っ先に彼女をパチュリーがいる図書館に連れていくよう指示した
現在、図書館にはレミリアとフランドール、咲夜とパチュリーがおり、美鈴と小悪魔は、紅魔館の裏に作られた墓の撤去に向かっており、同席していない
あの墓を妹に発見されるわけにはいかないため、館で働くメイドを総動員しても今日中に完全撤去するように命令しておいた


図書館の四角いテーブルに三人が掛ける
レミリアとパチュリーが横に並び、その向かいにフランドールという位置取りだった
咲夜は一歩さがった場所で控えている

フランドールは図書館の中に入っても体に纏っていたボロ布を取ろうとはしなかった
はたから見ると、布の団子だった

「積もる話もあるでしょうけど、まずは体を休めなさい。パチェ、すぐに治療の準備を」
「それほど疲れてないから平気。それよりも咲夜」
「私になにか?」
布切れの隙間から、紙切れが一枚出てきた
「ここに書かれてある場所に行ってきて、私が無事だってことを伝えて欲しいの」
「どういうことでしょうか?」
「うん。順を追って話すね」




彼女は捕らえられた後、幻想郷の外にある機関の拠点に連れて行かれ、そこで長期間尋問を受けていた
「ある時ね、その機関と敵対している組織があって。私が捕えられていた拠点がその人たちの攻撃を受けたの」
その組織にフランドールは保護された
「しばらくそこでお世話になっていたのだけれど。今度は逆に連中に襲われちゃって。そこではぐれてしまったわ」
そして彼女は今日。一人で幻想郷に帰って来た





「幻想郷にも支部があって、そこにその人たちが居るかもしれないの」
「わかったわ。咲夜。行ってきて頂戴」
「かしこまりました」

頭を下げてから、咲夜は姿を消した
彼女が出て行くと、図書館の雰囲気が一気に静かになったような気がした
「・・・・・でも、良く帰ってきてくれたわね」
「まあ、無事ってわけじゃないけど。二年以上、ほぼ毎日拷問を受けてたから」

この時、はじめてフランドールは頭を覆っていた布切れを外した

彼女の頬は痩せこけ、太陽のような金色の髪はボサボサでツヤを失い、右目は眼帯をしていた
「あとね」
自身の口の中に手を入れて、何かを掴んで取り出した
「・・・・ん」
それは入れ歯だった。しかも上あごと下あごの二つ
「あ~~~~~」
フランドールが口を開けると、そこに歯は一本も無かった。二人にそれを見せつけてから、入れ歯を戻した

「再生しないの?」
「うん。右目はおかしな刻印が書かれた器具で刺されたら、見えなくなちゃった。口もドロドロの銀を流されたあと、おかしな護符を貼り付けられたら、生えなくなちゃった。舌の味覚も死んでる」
入れ歯も眼帯も、助けてくれた組織が用意してくれたものだと補足した
「きっと、吸血鬼の再生を阻害する力があるのでしょうね。あるいは高度な呪いの類か」
「治りそう、パチェ?」
「最善を尽くすわ。妹様、こちらへ」

テーブルから少し離れた位置にあるソファを指差して、そこに座るよう促す

「その布切れを全部取ってくれないかしら?」
「いいけど、その・・・・」

フランドールは何度もレミリアをチラチラと見た
その行動の意味をパチュリーは瞬時に汲み取る

「レミィ、悪いけど席を外して頂戴」

顔でこれだけ酷いのだ、彼女の体はもっと悲惨な状態になっているのは容易に想像できた
そんな姿を姉に見られたくないに決まっている

「ええ、わかったわ。部屋で待ってる」

それを分からぬほどレミリアも愚かではない。その言葉に素直に従った

「ありがとうパチュリー、この体はお姉様には見せたくなかったから」
二人きりになってから、ようやくフランドールは布切れに手をかけた

「裸になる前に言っとくけど、驚かないでね」
「覚悟しておくわ」
そう前置きしてから布を取り払った
「・・・ッ!」
驚愕でパチュリーは目を剥いた。彼女の傷跡は、想像を超えていた
欠損した右腕、指の無い両足。骨が浮き上がった皮膚の上には休むことなく執行された無数の拷問の痕が残っていた
傷の中には、女の体で生まれてきたことを後悔する責め苦でしか付かない痕もあった

「何とかなるかな?」

その声色には、微塵の期待も込められてはいなかった














レミリアは自室についた瞬間。ベットに倒れこみ、顔を枕に埋めた

「・・・・・・よかった・・・・・・・・本当に、よかった」
もう何もかも手遅れだと思っていた。一生、自分の無力を呪い続けて生きていくしかないと思っていた
妹が捕えられてすぐ助けに行きたかった。しかし、自分の身を守ることで精一杯で、そんな余裕はまったくなかった
偶然とはいえ、フランドールを救ってくれた者達には、いくら感謝しても足りなかった

(謝らないと、見捨てたことを、捨石にしてしまったことを・・・)

そう決意を固めたとき、誰かが部屋をノックした

「お姉様、入ってもいいかしら?」
「え、あ・・・・ど、どうぞ」

別れてからまだ30分も経っていなかった
思ったよりも早く、しかも向こうから訪ねて来た事に驚き、声が上ずってしまった

入ってきたフランドールは、ボロ布ではなくパチュリーと同じ服を着ていた
その姿を目にして、レミリアは口が空いたままの状態で静止した
「あ、この服? パチュリーから借りたの」
「そうじゃなくて、右腕」
ペラペラの袖を指摘する
「うん。拷問されて取られた」
「パチェは治せるって言ってたの?」
「今からそれを調べるんだって」

フランドールは空いている椅子に腰掛けると、部屋中をキョロキョロと見渡した

(ちゃんと言わなきゃ。『ごめんなさい』って。それで・・・)
「ねえ、お姉様」
「うん?」
「もしかして、私が捕まったこと気にしてる?」

どうやら表情に出ていたらしい

「別にお姉様が申し訳なく思う必要ないんだよ?」
「どうして? 言うなれば私は、保身のためにあなたを敵に差し出したのよ?」
「でもそれってさ。私があいつ等をその場で皆殺しにしてれば全部解決したんでしょ。それなら私の“自己責任”だよ」
「そんな滅茶苦茶な理屈、通るわけな・・・」
言葉の途中。残っている左腕でフランドールが突然抱きついてきた
「ううん。いいんだよそれで。みんな許してあげる」
姉の耳元で囁く
「本当に、あなたはそれでいいの?」
「うん。“自己責任”だからね」
「 ? 」

その言葉の直後、ドアが開け放たれて。武装した者たちが部屋に流れ込んできた
全員、金属製のボディーアーマーにフルフェイスのヘルメット
腕には吸血鬼を殺すのに特化した武器を携えている
かつて戦慄した機関の精鋭たちだった

「貴様等ッ!! どうやってまた幻想郷にっ!?」
妹を抱えて部屋の隅に飛ぶ
「私が手引きしたに決まってるじゃない? 結界を壊せるのは私だけなんだから」
フランドールはレミリア耳を掴んだ
「まさか、私たちを騙したの!?」
「話したことの半分は本当だよ。二年間拷問を受けたことも、この体の傷も本物。ただ敵対してた組織が助けに来てくれたのが嘘。本当は誰も助けに来てくれなかったの」
「それで私たちの討伐を手伝うことを条件に、自由にしてもらえる取引でもしたってわけ」
「毎日毎日拷問、何を言っても止めてくれなかったんだよ? 痛いこと以外にもこの人たちエッチなことしてくるし。もう限界」

これは半年以上も前から綿密に計画された紅魔館壊滅のシナリオ
今日まで、密かに紅魔館は監視されていた

「パチェはどうしたの?」
「図書館で二人っきりになったところで、隙を見て頭をガンッて。油断してたから簡単だったよ」
「咲夜に渡した紙は?」
「罠よ。今頃はきっと待ち伏せを受けて捕まってるわ」
「美鈴、小悪魔、メイドたちは?」
「一箇所に固まってたから、良い的だったそうよ。妖精メイドはみんな一回休みだけど二人は無事みたい。悪運が強いわね」
「つまり、あとは私が捕まれば紅魔館は全滅なわけね」
「そういうこと」

武器の先が密着する姉妹に向けられる

「みんなの助けるには、あなたを切り捨てる他なかった」
「その『みんな』に私は入っていないわけね」
「じゃあ今度は、あなたも加えてあげるわ」

装填された銀の矢と銀の弾丸が姉妹を貫くべく、今か今かと出番を待ちわびていた

「このままだと、あなたもアレに殺されるわよ?」
「大丈夫。あれは毎日受けてたから免疫があるの」
「でも痛いのは確かなんでしょう。どう、今度は私と取引しない?」
「あら素敵、どんな内容?」
「あなたと私で同時に床を蹴れば、きっとあの武器よりも早く動ける。壁を壊して外に逃げられるわ。そしてみんなを助けて逃避行」
「断ったら?」
「悪いけど。盾になってもらうわ」

フランドールの背中を敵の方角に向けた
片手しかない妹を制するのは簡単だった

「あなたで敵の攻撃を防ぎつつ、部屋の壁を破壊して外に出る」
「簡単に捨てるのね。足しげくお墓に通っていたのはなんだったの?」
「そりゃあ、可愛い可愛い妹を見殺しにしてしまった後悔の念があったからよ。でもその妹が裏切り者になったとあれば話は別。そんなのに配る慈悲は皆無よ」
「裏切る原因を作ったのはあなたでしょう?」
「さっき自分で“自己責任”だと言ったじゃない」
「あーあ。相変わらず自分勝手ね。墓参りだって本当は、私ではなく周りに対して『自分はこんなにも悔やんでますよー』ってアピールだったんじゃなくて?」
「どうとでも言いなさい」

姉妹のやり取りの途中、凶弾は一斉に打ち出された












「な、ん・・・・・・で?」

レミリアとフランドールは仲良く壁に貼り付けられていた
矢が昆虫標本のピンのように二人の手足を縫いつけ、弾丸が体に風穴を空けていた
レミリアは宣言したとおり、フランドールを盾にして逃げる気でいた
しかしフランドールの失われていたと思っていた、右手がそれを邪魔した
「ごめ、んなさい、ね。おね、えさま。この腕だけは、実はすぐに再生・・・・・できる、の」
住人を油断させるために、あえて欠損した状態で紅魔館まで帰って来た



機関の者達の手で、姉妹に刺さった凶器が外されていく
動けなくなったレミリアは拘束され、呪印の捺された棺に詰められて運ばれていった
それをフランドールはぼんやりと眺めていた。レミリアの方を優先していたため、彼女の体にはまだ矢と弾丸が残ったままだった
「ねえ。言う通りにしたよ?」
口元の血を拭ってから顔を上げ、自分をずっと見下している者に話しかける、体格からしてどうやら男のようだった
「・・・・・・」
「約束したよね? 協力してくれたら、もう痛いことしないって。毎日ごはん食べさせてくれるって」
フルフェイス越しであるため、相手がどんな表情をしているのか、フランドールにはわからない
「・・・・・・」
男の固いブーツがフランドールの腹に乗せられる。それにより、ただでさえ青いフランドールの顔はさらに青くなった
「じょ、冗談だよね? 殺さないよね?」
銃身がフランドールの心臓の位置に押し付けられた
「なんで!? 知ってることは全部話したし! お薬のモルモットにだってなったよ!!」
引き金に指がかけられる
「手伝います! これからも吸血鬼狩りのお仕事手伝いますから!! 性欲処理の仕事だって我慢します! 殺さないでよ! まだ死にたくない!! 」
「・・・・・・」
そう叫ぶと、彼女を押さえつけていた足がどけられた
男は武器を担ぐと、フランドールを抱きかかえて、仲間のいる方向へ歩いて行った




その後、フランドールの姿を見たという者は誰一人としていない




  • やはり紅魔館には悲劇が似合うね! -- 名無しさん (2010-12-28 08:24:12)
  • ヘルシング機関がこんなに恐ろしい連中だったとは。やはり英国人だ。ちょっとインテグラ様と婦警に抗議してくる。 -- 名無しさん (2010-12-28 12:54:23)
  • 紅魔館の話は残酷さが、一番伝わってくる。 -- 名無しさん (2010-12-28 23:15:30)
  • フランちゃん(´;ω;`) -- 名無しさん (2011-01-03 14:06:44)
  • こういう展開も悪くないな。誰か生き残りそうだと思ったけど、結局誰も残らない展開嫌いじゃない。
    っていうか↑のヘルシング機関ってなんぞww クソワラッチマッタジャネエカw -- 七な名無し (2011-02-20 05:57:00)
  • 秘弾「そして誰もいなくなるか?」ってことですね


    てか紫が張りなおした結界もフランには朝飯前だったか


    -- 名無しさん (2011-02-20 19:58:32)
  • フランの拷問シーンを見てみたい。 -- 名無しさん (2014-03-01 07:03:28)
  • フランちゃん(´;ω;`)カワイソス -- 名無しさん (2014-03-16 21:33:32)
  • ↑↑↑
    フランの能力は世界一ィィィイ!
    って事かい? ゆかりんの結界なんて破壊さ♪ -- キング クズ (2016-06-27 03:19:46)
  • レミリアお嬢様もこのあと凄惨な拷問を受けるのかな・・・
    ドキドキ -- 名無しさん (2016-06-29 07:55:08)
  • あああああああああああああ。・゜・(ノД`)・゜・。 -- 名無しさん (2016-06-30 15:06:10)
  • フランーーー!(;゜0゜)
    -- 名無しさん (2016-08-07 15:04:03)
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