あ~あ、そろそろ魔導書に辿り着かないかなぁ。
こんなグダグダ展開、誰も望んでないでしょ。
…………ふぅ、やっと神社に着いたわ。
それじゃあチャッチャと魔導書を…。

「もうおしまいですよ、諏訪子様。信仰も何もかも失って野垂れ死ぬ運命なんです」
「弱気になっちゃダメだよ。早苗は強い子じゃないか。こんな事で終わったりしないよ」

…………何この空気。

「あ、あの~…」
「悪いね。今日の営業は、もう終わってるよ」

何の店だよ。

「そうではなく魔導書を返してほしいのですが」
「魔導書……ねぇ。………何だったかなぁ。ちょっとそれどころじゃなくて、よく思い出せないや」

ここに来て、まさかの手詰まり!?
マズいわ。
文を始末してしまったから、他に手掛かりはないし…。
だからと言って協力してくれそうな雰囲気じゃないものねぇ。
どうしよう。

「…………あれ? あんたの持ってるそれ…」
「あ、これですか?」

戦利品、文のカメラよ。
さすがに殺して奪ったとは言えないから、拾ったって事でいいや。

「此処に来る途中で拾ったんです」
「そ、それ! ネガ入ってない!?」
「え?」

入ってるでしょうね。カメラなんだから。
それがどうかしたのかしら。

「頂戴!」
「どうぞ」
「………………よっしゃあ! ビンゴ!」

はい?

「早苗! あったよ! これでもう大丈夫さ!」

あ、消し飛ばした。

「え? それじゃあ…」
「そうだよ! 今のが例のフィルムだよ!」
「………あああ…よかった。これで諏訪子様も神奈子様も消えずに済みます」

……一体何が写ってたんだぁー!
中途半端に話されると、かえって気になるじゃない!
変に興味が湧くいい方すんなぁー!

「これもそれも、あんたのおかげだよ! 本当にありがとう!」
「いえ、お礼はいいですから写真に何が…じゃなくて魔導書を返してください」
「え~と、ちょっと待ってね。確か境内に落ちてた奴だよね? あれは……」

うわぁ、この展開は…。

「ああ、地霊殿の物だと思って渡しちゃったんだ」

もうやだぁー!
しかも地霊殿なんて最悪じゃない!
あそこには覚りがいるでしょ!?
私は心を読まれちゃ、いろいろとマズいのよ!
キャラ的に!

「どうにか、なりませんか?」
「う~ん、そうだねぇ。じゃあ早苗、行って来てくれるかい?」
「えっ」

何その顔、怖いんだけど。
なんか雨に濡れて帰って来た同居中の幼馴染に、突然家を出て行くって言われたかのような顔してる。

「………分かりました、行って来ます」
「麓のエレベーターで行けば、すぐだからねー」

無事に持って来れればいいけど……まったくそうなる気がしないわね。





私、今の状況を後悔してる。
よくよく考えたら神社なんてアウェイもいいとこじゃない!
それも祟り神と二人っきり!
滅茶苦茶居づらいわ!

「早苗はさぁ、本当にいい子なんだよ。よく空回りするけどさ」

しかも祟り神は祟り神で、反応に困る話するし!
私、今日が初対面なんだけど!?
あんたの巫女の事、全然知らないんだけど!?

「だから………あ、早苗おかえええええぇぇー!?」

何そのリアクション!
でも先に反応してくれたおかげで、私は余裕を持って振り返れるわ!
さぁ、どんな光景でもかかって来んかぁい!

「ははは、驚きすぎええええぇぇぇー!?」

あ、ありのまま今起こった事を話すわ!
『私は山の巫女の方に振り返ったと思ったら、そこには全身ずぶ濡れで半裸で手錠と首輪をされてる巫女が立っていた』
な…何を言っているのか分からねぇーと思うが、私も何があったのか分からなかった…。
頭がどうにかなりそうだった。地底サバイバルだとか集団リンチだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったわ…。

「もう……もう二度と地底なんか行くもんかぁー!」
『何があったんだぁー!』

マズい!
このままじゃ、また相手のペースに持ってかれる!
ここは強引にでも、こちらのペースに巻き込まなくては!

「そんな事より本はどうした!」
「そんな事!?」
「私は魔導書さえ返してもらえりゃ、それでいいのよ!」
「………それでしたら誰かが無意識に持ち出したと…」
「ありがとうございましたぁー!」
『もう出てったぁー!』

ヴァカめ!
魔導書がないと分かれば長居は無用よ!
あんた達はそこで再現映像でも流してな!
ウキャキャキャキャキャぼえええぇ!?

「あ、キスメさんです。ついて来てたんですね」
「それにしても綺麗にぶつかったねぇ。何処から落ちて来たんだろ」













さて、今更だとは思うけどパチュリー様は偉大な魔女よ。
パチュリー様の知識は幻想郷最高レベルで、幻想郷の殆どの妖怪の事を知っているわ。
そんなパチュリー様によれば地底には覚りや鬼の他に、無意識を操る妖怪もいるらしい。
つまり本を持ち出したのは、そいつの可能性が高いのよ!
ていうか無意識って言ってたからね、あの巫女。
そんな訳で無意識妖怪を探してるところなんだけど、無意識相手に必死こいて探しても見つかりっこないわ。
そこで私も無意識になる事で、無意識妖怪の無意識の力に自然と引き寄せられるようにすればいいのよ!
私だって知恵には自信があるわ。これでもパチュリー様の司書デスから!
……………あら? 此処って魔法の森? どうやら戻って来たみたいね。

「ぽぴいぃぃぃー!!」

な、何!?
突然キノコが喋……あ、違った。
キノコかと思ったら全身キノコ塗れの妖怪だったわ。

「ぴっぽぽぴーぽぴっぴぴぽー!」

これは会話になりそうもないわね。
脳味噌、寄生されてるんじゃないかしら。
……………焼くか。

「ポピイイィィィィィー!!」

はいはい、アイスランドポピー。

「………ごふっ……た、助かったぽぴ」
「どういたしまして」
「でもお姉さん、さっき会った時無視したような気が…」
「気のせいじゃない?」

無事か……半殺しぐらいにするつもりだったんだけどなぁ。
というより『ぽぴ』?
あ、頭の上に一本残ってた。

「実は私、地霊殿の妖怪で無意識のうちにこんな事に…」

何かよく分かんないけど、探してた妖怪みたいね。
丁度よかったわ。

「魔導書返せ」
「それなら私が無意識のうちに行った中有の道で、無意識に買い物してる間に無意識に落としちゃったみたいぽぴ」

それ明らかに、ぶらりと立ち寄った出店に夢中でなくしただけでしょ。
あと会話中に胸を揉むな。
無意識か? 無意識って言えば何でも済むと思ってるのか?

「だから中有の道まで取りに行ってほしいぽぴ。そうすればぽぴがぽぴぴのぽっぴっぽー!」

ああ、こいつはもうダメだ。
なんか、くるくる回ってるし。
あ、滑り落ちた。
仕方ない。私が行こう。
なんかもう盥回しにされてる気しかしないけど、こいつに任せるより遥かにマシよ。
…………………ああ! 無意識のうちにカメラがブブゼラに!





ふう、やっと中有の道ね。
途中でプリズムリバー三姉妹が決めポーズとって壁にめり込んでたけど、もう知るか!

「………………………」

って誰もいないじゃない!
道には落ちてないし、誰かに手掛かりを訊くしかないってのに!
それなのに誰もいなかったら、私はどうすればいいの!
マズいわ。兎に角、誰か探さないと。
…………………三途リバー到着!
此処まで順調に誰もいなかったわ! 畜生ッ!
でも三途の川なら船頭の死神がいる筈よ。
早速、話を訊き…。

「……………う~ん………えへへ、ダメですよ~…」

はい、シエスタ入ってましたぁー!
……なるほど、今なんでこんな幻想入りしたアイテムを無意識に手に入れたか分かったわ。
これはここで使う為の物だったのよ!
喰らえ! 零距離ブブゼラを味わうがいい!

「なぎっ!? ななな何事ぉ!?」

よし、ミッションコンプリート!
いい夢、見れたかよぉ! このサボり死神がぁ!
いい加減、魔導書出て来いやぁ!

「魔導書」
「ああ、それなら里の方で落とし主を捜すって鼠が持ってったよ」

やっぱりねー!
本日2回目の八つ当たりいっくよ~!

「ふぅざぁけぇるぅなああぁぁぁー!」
「きゃん!」

見たか、私のソウルシュートを。
ただ人魂を掴んで投げたようにしか見えないけど、重さのない人魂を真っ直ぐ飛ばすのは意外と難しいのよ。
これも魔界時代、先輩に扱かれた結果の産物。
弾幕勝負では何の役にも立たないのが偶に傷ね。
そんな先輩も今じゃ中級悪魔に出世し……って話が逸れたわね。

「……………………」

あれ? 起き上がって来ない?
もしかして打ち所が悪くて死んじゃったとか?
…………………………。
さ~て、次は人里ね。

「……待ちやがれぃ!」

あ、起き上がった。
意外と元気そうじゃない。
よかったわね。
………でもなんかおかしいような…。

「俺の本能が叫ぶのさぁ。貴様を殺せとぉ!」

あ、あんた誰だああああぁぁぁー!
なんかヤバイ!
状況的にもキャラ的にも!
もしかしたら変な魂、憑依させちゃったかも!
と、とりあえずここは穏便に逃げる事だけを考えて…。

「あ、あはは~……すぐに帰りますぅ。ですから…」
「余裕かましてんじゃねえ!」
「ぎゃああああああああああ!!」

あ、あれ? 私、何か対応を間違えた?
そんな筈は………兎に角このままじゃ死ぬわ。
一旦、回復アイテムで怪我の治療を…。

「アイテムなぞ使ってんじゃねえ!」
「ぎゃひいいいいいいいいい!!」

し、死ぬ!
殺されるぅ!
何か……何か打開策は…。

「いつまで寝てんだぁ!?」
「ぎゃおおおおおおおおおん!!」

ああ、三途の川が見えて来た……。
…って違う!
元から此処は三途の川よ!
とりあえず早く逃げましょ!
このままじゃ命が幾つあったって足りないわ!
………………あら? 追って来ない?

「今日の俺は紳士的だ。運がよかったな。……分かったら軟弱者は失せろぉ!」

な、なんか……もの凄い者を蘇らせてしまった気がするわ。













……ねぇ、そろそろ終わりでいいんじゃない?
体力的にも、もう限界だし。
何が悲しくて、私は幻想郷中を飛び回ってるのよ。
………はぁ、帰りたい。

「……………………」

ああ、遂に幻覚まで見えて来たわ。
そうよ、これは幻覚なの。
そうじゃなきゃ地面に頭から突っ込んでる輩と、それを挟むように立ってるアニマルズなんて見える筈ないわ。

「う~ん、困った」
「困りましたね」
「本当に困った」
「困りますね」

…………えぇい! 私をチラチラ見るな!
言いたい事があるなら直接言え!
……………分かったわよ!
聞くわよ! 聞きゃあいいんでしょ!

「どうしたんですか?」
「いやぁ、それが困った事になってねぇ」
「これこれ、ナズーリン。見ず知らずの方にこんな話…」
「しかしだね星、私のダウジングによれば彼女は私達の探している物を持っている筈なんだ」
「なんと奇遇な! ですが彼女が私達にそれを譲ってくれるでしょうか」
「大丈夫、わざわざ命蓮寺を訪れるような者だ。きっと協力してくれるさ」
「そうですね。彼女もきっと他者の事を思える心優しき者でしょう」

うぜえ。
くだらない小芝居はやめろ。
さっさと用件を話せ。

「何か困ってるんですか?」
「おお、聞いてくれるかい?」
「………………はい」
「実は私達の仲間が地面にスッポリはまってしまってねぇ」

それは見りゃ分かるけど……どうしてこうなった。

「引っ張り出そうにもスッポリはまってしまっているので抜けないのです」
「そこで出来れば君に協力してほしいんだけど…」
「…………………」

どうせ最初から選択肢なんかないんでしょ?

「………………分かりました。何をすればいいんですか」
「まず彼女を救出する方法だが、腰まで埋まってるんで引っこ抜くのは無理そうだ」
「そこで私の妖気を彼女に流し込み、彼女自身の力で周囲の地面を液状化して救出します」

唐突にとんでもない事言い出したわよ、こいつら。

「その為には細長く先が広がっていて中が空洞の………丁度ブブゼラっぽい物があるといいんだ」

豪くピンポイントで来たわね、おい。

「私のダウジングによれば君はブブゼラっぽい物を持っている。それを貸してほしい」
「借りると言わず持ってってください」

もう回収作業は嫌なんで。

「いいのかい? 君は親切だね。きっと極楽浄土に逝けるよ」

悪魔に言う事かねぇ…。

「じゃあ早速渡してくれるかい?」
「はい」
「…………ブブゼラかぁ…」
「ブブゼラ『っぽい物』じゃありませんねぇ……」
「………いや、ここは素直に彼女の協力に感謝しよう」
「…そうですね。ありがとうございます」

何が不満なんだ……。

「じゃあ星、頼んだよ」
「ではいきます………うわらば!」

掛け声かっこ悪っ!
あ、でも上手くいった。

「………イヤッッホォォォオオォオウ!! 復ッ活ッ! 私復活ッッ! 私復活ッッ!!」
「来た! 船長来た! これで勝つる!」
『(テッテレテテ~レ~レ~テレレテ~テレレ♪ テッテレテテ~レ~レ~テレレテ~テレレ♪
 テッテレテテ~レ~レ~テレレテ~テレレ♪ テッテレテテ~レ~テレッテレッテレッテレッテレレレレテ♪)
 激流では勝てぬそれは道連れアンカー~♪ 主~役も震える~見たかシンカーゴースト~♪
 大地が溶~ける効いたかディープヴォーテックス~♪ 畏~怖が授けしこれぞ舟幽霊の力~♪
 ああ~聖が与えたミラクルシ~ップ♪ 行くぞ~せめて~スペルで~葬ろう~♪(幽霊船長期停泊!)
 操縦席勝手に離れストロング船長立ち上がる~♪ 柄杓を振って錨に乗って魔界まで突き進め~♪
 慧音が知る妹紅が知る里にも恐怖知れ渡る~♪ さあ呼べその名を呼べああ~ぼくらのキャプテン・ムラサ~♪』

あんたら、いい加減にしろよ。
しかも歌詞、酷いし。

「ありがとう! これもすべて君のおかげだ!」
「お礼と言っては何ですが、このテトリスの縦棒を持って行ってください!」
「これで縦一列の隙間も怖くない!」

…………は?
何これ。
どうすりゃいいの?
そもそも魔導書はどうなった。

「魔ぁ!!」
「それなら三人組の妖精が持ってったよ」
「落とし主が見つかるまで読みたいそうです」

ち、畜生おおおおぉぉぉぉぉ!!













………私は一体何をやっているのかしら?
魔導書を探しているのに、手に入るのは訳の分からない物ばかり。
これは誰かの陰謀?
それとも魔導書が帰るのを嫌がっているとでもいうの?
そんな馬鹿な…。
…………ああ、やっと着いた。
此処が噂の妖精トリオの住み家ね。

「すみません」
「あら、こんな黄昏時にどちら様?」
「妖精の住居にお客とは珍しいわね。人間でも妖怪でもないみたいだけど」

ん? 話じゃトリオなのに暖色系と寒色系しかいない?
まぁ、いっか。

「ま」
「魔導書? それならルナが持ってるんじゃない?」
「ルナ?」
「私達の仲間よ。今は………あっちの方にいるみたい」
「はぁ……」
「ところでそれ、テトリミノよね? よかったらこのグレネード弾と交換してくれない?」
「もう勝手にしろよ…」
「丁度支えになる物が欲しかったの。これで家の補修も無事終われそうよ。ありがとう!」
「……………」

もうなんで妖精がグレネード弾とか、どうでもいいわ。
それにしても、また移動かぁ。
しかし妖精トリオねぇ。
単独行動の多い妖精にしては珍しい。
落ち物パズルとか得意そうね。

「さてと、これで補修は完りょ………消えた……だと…?」
「わ、私達の家が……木の上半分だけに………」

なんか後ろで聞こえたけど気にしなーい。
さっさと目的のルナとやらを目指しましょう。
………あ、噂の3人目はあいつかしら。

「お願いよ! 貴方の力があれば人間を恐怖で支配する事も出来るのよ!」

えー。
なんか物騒な事、言ってるー。

「それは昔の話よ。今の私にそんな力ないわ」
「それでも貴方の力は妖精トップクラスよ。ねぇ、一緒に人間に一泡吹かせましょうよ!」

な、何この話は。
あの説得してる白いのがルナとして、もう一人は湖にいた奴よね?
何を企んでるの?

「私は……あの日々に疲れたの。もう血を被るのはごめんよ」
「………かつては鎖鎌を巧みに操り多くの妖怪を葬って来た貴方が……随分腑抜けてしまったようね」
「腑抜けた? 違う。今の時代の妖精のあるべき姿になっただけよ」

え?
このノリは一体…。

「時代のせいにして……昔の貴方はもっと勇敢だったわ! あの頃は暗殺妖精の…」
「やめて。その名前は捨てたわ。今の私は名も無い大妖精よ」
「………そんなにあの氷精が大事なの?」
「………………」
「あいつの『最強』に付き合う為に、敢えて弱者を演じてるんでしょ!? 貴方程の妖精が! どうして!?」
「………チルノちゃんの笑顔が見たいから、かなぁ」
「!!」

ねぇ。
私はどうしたらいいのよ。

「昔は私が血を被る事で誰かが幸せになれると信じてた。でも違ったわ。争いが生むのは憎しみだけ。
 それに気付いて刀を置いた私の前に現れたのが、チルノちゃんだったの。……チルノちゃんは凄いわ。
 私がどんなに戦っても見る事の出来なかった笑顔を、誰も傷つけずに作り出してしまった。
 間違いないわ。チルノちゃんは最強の妖精よ。これからは恐怖ではなく笑顔が世界を統べる時代なのよ」
「…………それでも私は諦めないわ。必ず貴方を引き込んでみせる!」

!!
何か渡そうとしてる!
まさかテロ計画の予定表とか!?
人間がどうなろうと知ったこっちゃないけど、もしパチュリー様が巻き込まれるような事があるなら…。

「貴方が来るのを待ってるわ……………………お化け屋敷で」

えっ?

「私にお化け役なんて出来ないわ」
「貴方の瞬間移動能力があれば、予想外の所から驚かす事が出来るのよ!」
「…………血糊はやだなぁ。落とすの大変だもの」

そんなオチかい!
無駄に引っ張ってこれか!
………………あれ? でもかつて暗殺妖精だったって話は本当…?

「ってそんな話はどうでもいい!」
「だ、誰!?」
「M!」
「湖の館の司書なのね。でも生憎、魔導書はないわ」

わ、私は何回回されるんだ!? 次はど…どこへ…い…いつ行かされるんだ!?
私は! 私はッ! パチュリー様の魔導書を返せえーッ!!

「魔導書はちょっと前に、魔理沙に持ってかれちゃったのよ」

チッ! またあのゴキブ…………………………ん?





「魔~理~沙~さ~ん」
「ああ、小悪魔か。ちょっと待っ…」
「お断りだああぁぁぁー!」
「うおおおい! ドアを吹き飛ばすなぁ!」
「さすがグレネード弾だ、防御魔法がかけてあっても何ともないぜ!」
「なんて事すんだよぉ…。でも丁度よかった! 見つかったんだよ、魔導書! ベッドの下にあったぜ!」
「ふっふ~ん♪ それはよかったね!」
「ああ! あはははは!」
「死ぬがよい」
「へ?………う、うわあああぁぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」



































ふう、最初からこうしてればよかったわ。
まったく手間掛けさせやがって、ゴキブリめ。
まぁ、いろいろあったけど無事魔導書は取り返せたわ。
これでパチュリー様も満足してくださる筈!

「パチュリーさ…」
「遅い!」
「ぶぎゃあああ!!」

ぱ、パチュリー様が肉弾技…?
いきなりこんな技を使って来るなんて、一体何が…。

「いつまで歩き回ってるのよ! あんまり遅いから魔法陣、消えちゃったじゃない!」

マズいわ。
どうやらパチュリー様は大分ご立腹みたいよ。
ここは如何に私が必死に探し回り、あのゴキブリが屑かをキチンと説明しないと。

「実はこれには深い訳が…」
「言い訳なんか聞きたくない! そこの魔導書片付けたら出てって! 暫く一人にさせて!」

あああ……なんでこんな……。





畜生。
畜生。
私が……私が何をしたって言うんだ。
私はパチュリー様に言われて魔導書を回収しに行っただけじゃない。
それがなんで………畜生。
今日は吐くまで飲んでやる。
………? このカクテルは?

「私こんなの頼んでない」
「そいつはわっちの奢りさ。何があったか知りゃあせんが、今夜は好きなだけ飲んでってくりゃれ」

畜生。
妖精メイドにまで同情された。
畜生。
畜生。
涙が……涙が止まんない……。



  • カオスすぎて目眩が… -- 名無しさん (2010-11-23 12:46:09)
  • ゴキブリェ…… -- 名無しさん (2010-11-24 11:28:04)
  • この作者好きだったんで新作出してくれる事が
    うれしいわwww -- 名無しさん (2010-11-25 21:11:28)
  • 悪魔の目にも涙・・か -- 名無しさん (2011-01-26 18:17:11)
  • こぁさんが可哀想です。 -- 名無しさんでいいやー (2013-11-24 18:10:07)
  • ノリが銀魂 -- 名無しさん (2014-08-14 22:48:07)
  • >「さすがグレネード弾だ、防御魔法がかけてあっても何ともないぜ!」


    グレネード弾すげぇ! -- 名無しさん (2015-06-23 17:44:39)
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最終更新:2015年06月23日 17:44