※このSSには独自の設定やキャラの崩壊、グロテスクな表現が含まれています。そういった展開が苦手な方はご注意ください。



































私は鍵山 雛。幻想郷中の厄を集めて神々に渡す厄神よ。
大量の厄を扱う私は、人の味方でありながら人に避けられる存在。
それはあまりにも残酷で悲し過ぎる運命。
私の力で何人救われようとも、私が救われる事はない。
こんな役目を私が背負っているのには、実はある深い理由があるの。
その理由、それは私の前世が暗黒女神だからなのよ!
私は前世では邪悪の限りを尽くした暗黒神の娘。
その闇の血を洗う為に、現世で厄神として生まれ変わったの。
でも私は自分の運命に絶望したりしないわ。
私は信じている。
前世で私を暗黒神から解き放ってくれた救世主様が、再び私の前に現れる事を!
救世主様は前世で私と愛の契りを交わすも、私を救う為に暗黒神と戦い相討ちになって命を落としてしまった。
だからこそ救世主様は約束を果たす為に、現世でも私の前に現れてくれる筈なのよ!
でもなかなか救世主様には出会えない。
きっと光の者と闇の者が一緒になる事を嫌う堅物の神が、私達の仲を引き裂こうとしているのよ。
それでも私達は屈しないわ。
何故なら二人の愛を断ち切る事なんて、誰にも出来はしないのだから!
私達は変えられない運命の絆で結ばれている!
二人が一緒になる事は、前世から決められた運命なのよ!
そして今日も私は厄を集めながら、救世主様の行方を捜している。
でも私達を邪魔する神の力はとても強大で、今も救世主様の行方は何も分かっていないわ。
幻想郷の住人に話してみても、殆どは私の話を理解出来ない子ばかり。手掛かりは未だに掴めていない。
けれど救世主様は必ず、この世界の何処かにいる筈なの。
私達のお互いを想い合う気持ちがあれば、いつか絶対に巡り逢えるんだから。
巡り逢え………あれ?
ちょ、ちょっと待って。
あそこにいるのって……。

「…………………………!!」

ま、間違いないわ!
美しい蒼い髪!
風になびくマント!
騎士道精神溢れる防具!
私の記憶の中の救世主様そのものだわ!
こ、これは遂に来るべき時が来たって事!?
長年捜し続けた救世主様がい、今すぐ傍にッ…!
ど、どうしたらいいの!?
まだ心の準備が……。
……何を戸惑っているのよ。
私と救世主様は愛を誓いあった仲じゃない。
動揺する事はないわ!
これは必然なのよ!
ただその時がたまたま今日だったってだけの話なの!
さぁ、早く救世主様に私の元気な姿を……。

「………あら?」

いない?
……しまったわ。
再会に浮かれ過ぎて見失ってしまった。
どうしよう。
さっきまでいたんだから、すぐ近くにいると思うけど。

「……あ!」

いたわ! 洞穴に入って行くところよ!
……でも今まで、あんな所に洞穴なんてあったかしら。
って今はそんな事、考えてる場合じゃないわ!
急がないと、また見失っちゃう!
早くいかなきゃ!





「……はぁ……はぁ……」

入ったはいいけど……救世主様速いわ……。
一本道なのに……全然、追い付けないなんて……。
どうしよう……どんどん暗くなっていくわ……。
これ以上奥に行ったら……帰って来れる自信が……。

「………ん?」

あら? 壁がある。行き止まり?
おかしいわ。途中に分かれ道なんてなかったのに。
……!! な、何!? 急に明るく……!!

「あ……ぁぁ………ぎゃああああああああああああ!!」

か、かかかかかか蟹!!
でででっかい蟹のかいかい怪物ががががが…………。
はうん。













「……な………雛……」

あ、あれ? 私、どうしたんだっけ?
………そうよ。私は救世主様を追って洞穴に入って、それで気を失って……。
え? じゃあ私を呼んでいるのは……。

「よかった。無事だったんだね」

め、救世主様ぁ!?
わわわ私、救世主様に抱きかかえられてぇ!?

「あ、あぁぁ………」
「? ……ああ、ごめん。挨拶がまだだったね」

な、何!?
私は!? 私はどうすればいいの!?
ああああ………だ、ダメよ。
冷静に、冷静になるのよ。
淑女はこういう時、変に慌てたりしにゃいものよ。
……あら? 救世主様、何故跪いて?

「長らくお待たせしました。お迎えにあがりましたよ、暗黒女神様」

救世主様……。
やっぱりこの方は私の救世主様よ。
私をずっと捜して下さったのね。
…………ずっと、ずっと待ってた。
こんな日がいつか来る事を…。

「はい。貴方が来られる日を待ちわびておりました、救世主様」

ああ、私の幸せはここから始まるのね。
救世主様との温かい日常。
安らぎに満ちた幸せな日々。
もう誰も私達を引き裂く事は出来ない。
これは定められた運命なのだから!

「ところで雛、紹介したい者がいるんだ」

え? 救世主様が紹介したい方?
どんな方かしら。
救世主様が言うんだから、きっとカッコいい御供よね。

「さぁ、おいで」

誰かが洞穴の暗がりから近付いて来るわ。
一体どんな…………え、えー!?
さ、さっきの大蟹!? どどどういう事!?

「彼は僕の守護魔獣。今まで旅の途中、何度も助けてくれた相棒なんだ」

が、守護魔獣……そういう事だったの。
何でも見た目だけで判断するのはよくないわね。
そう言われると怖そうな鋏も、どことなく頼もしそうに見えるわ。
きっと私達の邪魔をする悪い神の送り込んだ刺客も、その鋏でやっつけてきたのね。

「今は大切な物を守る為に、此処にずっといるんだ。出来れば仲良くしてやってくれないか」
「ええ、さっきは怖がったりしてごめんなさい。私とも友達になってくれるかしら?」

あら、鋏を上げて喜んでる。
強いだけじゃなくて意外と愛嬌もあるのね。
さすがは救世主様の守護魔獣だわ。
……救世主様? どうしたの? 突然真剣な顔して。

「雛、君と逢えて本当によかった」
「救世主様………私もよ」

あ、そんな。
いきなりキスなんて。
でも救世主様となら私は……。













ふふふ~♪
ああ、救世主様~♪
私の救世主様~♪
かっこよくて優しい救世主様~♪
遂に叶った私の幸せ、一番に彼女に教えてあげなくちゃ!

「ん~、豪く上機嫌だね~。何かあったの?」

彼女は私の親友、河城 にとり。
救世主様の話を理解してくれる、私の数少ない友達の一人よ。
今日はにとりに会う為に、山の川辺までやって来たの。
私の唯一の理解者と言っても過言ではない彼女こそ、今回の報告を一番にする相手に相応しいわ。

「ふふふ、実はね? 救世主様が見つかったの!」
「へぇ、そいつはよかったねぇ。……………………えええええぇぇええぇー!?」

ふふふ、驚いてる驚いてる。
そうよねぇ。
にとりには救世主様の話、いっぱいしてるものねぇ。

「救世主って、あの救世主!? な、なんで!? だってあれは雛の……」
「必然よ! 救世主様と私の出会いは必然だったのよ!」
「いや、必然って………」

信じられないのも無理もないわ。
私も最初は目を疑ったもの。
でも話しをして確信した。
この方は間違いなく救世主様なんだって!

「……うん、いや……何だろう…」

驚きが強いのは分かるけど、こういう時は素直に喜ぶべきじゃない?
前世で愛を誓いあった二人の運命の再会。
感動的な話じゃない。

「……ところでその救世主は、どんな姿をしていたの?」
「どんなって前に話したじゃない」
「その話し通りの姿?」
「当然よ」
「…………向こうは雛の事、知ってたの?」
「当たり前よ。私達は強い絆で結ばれてるんだから」
「………………………………」

ちょっと、何を考え込んでるの。
なんだか今日のにとり、おかしいわ。
まるで私の幸せが気に入らないみたい。

「………ねぇ、本当にそいつは救世主なの?」
「…………えっ」
「もしかしたら本当は…」
「いい加減にしてよ!」
「…………雛…」
「なんで!? なんで喜んでくれないの!? 救世主様は私の希望よ! 私を救ってくれる唯一の存在なのよ!
 そんな救世主様にやっと逢えたのに、どうして喜んでくれないの!?」
「……………」
「もういい! 救世主様に会いに行く! …………ねぇ、何かあったの? 今日の貴方いつもと違う。変よ」
「…………雛、行くならこれだけは忘れないで。私はいつも雛の味方だって」

やっぱりなんかおかしい。
いつものにとりじゃないわ。
どうしちゃったの?
普段なら笑って聞いてくれるのに。
なんか……変よ。





「………はぁ…」

にとりと喧嘩しちゃったなぁ。
やっぱり私が悪かったのかしら。
でもにとりだって、あんな事言わなくてもいいのに。
……どうしよう。
後でなんて話しかけたらいいのかしら。

「どうしたんだい」

あ、救世主様。
………まさか本人に貴方の事で喧嘩しました、なんて言えないわよねぇ。
なんて言おう。

「………実は友達の様子がおかしかったの。なんかいつもと違ってて、それで喧嘩しちゃって…」
「そっか………たまたま機嫌が悪かったんじゃないかなぁ。大丈夫、きっと雛なら仲直り出来るさ。……ただ…」
「……ただ?」
「いや、ただの杞憂かもしれないけど………雛は気付いてたかい? 僕達の再会を邪魔しようとしていた者がいる事に」
「………ええ」

そう、暗黒女神である私と救世主様は互いに闇と光の者。
頭の固い神にとっては、光と闇が愛するなんて由々しき事態なのよ。
でも連中の目論見は失敗に終わった。
こうして私達は無事、巡り逢えたのだから。

「実は奴等の中に暗黒神の配下だった者がいるんだ」
「ええ!?」

それじゃあ……これは陰謀だったって事!?
暗黒神……死してなお私達の恋路を邪魔するつもりなのね。
元父とはいえ、なんて執念深い奴なの。

「奴の目的は暗黒神の復活、その為の材料集めだ」
「材料……?」
「そう、一つは暗黒神を倒した僕の血。そしてもう一つは………君だ、雛」
「……そんな……」
「まだ君の中に残っている暗黒神の血、それが暗黒神復活の為に必要不可欠なんだ」

まさか私の知らない所で、そんな事になっていたなんて……。
あれだけ強い救世主様が守護魔獣を連れているのも納得ね。
………でもそれと、にとりに何の関係があるの?

「僕の所には大勢の刺客が現れた。でも君の方には来なかったんだろう? 何故だと思う?」
「……それは…救世主様が刺客を引き付けてくれてたからじゃ…」
「違う、奴は僕と君を同時に始末したかったんだ。復活には両方の血が必要だからね」
「…………まさか」
「そう、奴は僕を始末したらすぐに君を殺せるように刺客を送り込んでいたんだ………何年も前から君の周りにね」

そんな………にとりが刺客だなんて……。
ありえない。でも救世主様が言うんだからもしかしたら……。
ひょっとして私の話から救世主様と逢った事を知ってそれで……。

「あああああ!!」
「雛!? どうしたんだい!?」
「どうしよう……私、救世主様の事話しちゃった……」
「!! ………いや、大丈夫だ。最初に言ったけど杞憂かもしれないんだ。まだ君の友達が刺客と決まった訳じゃない。
 もしかしたら僕が君に相応しい男か疑ってるだけかもしれない。まだ決めつけるのは早いさ。
 ただ彼女と付き合う時は出来るだけ自然に、そして隙を作らないようにするんだ。
 親友の振りをして不意打ちを狙っている可能性もないとは言いきれないからね」
「わ、分かったわ!」

にとりが刺客かもしれない。
出来れば違っててほしいけど……救世主様が理由もなく、そんな事言う筈ないわ。
………いえ、にとりだけじゃない。
ずっと昔から見張ってたなら、誰が私達の敵かは分からないという事よ。
まさか常に狙われてたなんて………今考えると恐ろしいわ。
これからは、いつも用心するようにしないと。
いつまでも救世主様に守られてるだけじゃいけないものね。
…………でも、やっぱりにとりが悪い奴だなんて思えないわ。













今日も今日とて救世主様と過ごす楽しい一時。
厄集めも終わってるし、今日はずっと一緒にいられるわ。
ああ、これが幸せというものなのね。
このまま時が止まればいいのに。

「………雛…」
「あら、にとり……」

珍しいわね。
こんな麓で会う事なんて、今までなかったのに。
…………いえ、にとりに限ってそんな事……。

「君がにとりだね。はじめまして」
「……どうも。あんたが噂の救世主さんかい?」
「そうなるね」

ど、どうしたらいいの?
にとりが敵だなんて、とても思えない。
でも確かに最近様子がおかしいわ。
それに救世主様の事、よく思ってないみたい。
これって、これって一体……。

「救世主さん、あんた雛とはどうゆう関係なの?」
「前世で愛を誓い合った仲さ。だからこうして現れた」
「………一体何処からやって来た。幻想郷には博麗大結界があって入れない筈だよ」
「幻想郷の事はよく分からないなぁ。雛を捜していたら此処に辿り着いただけさ」
「…………………」

な、何を話してるの?
私達の関係? 博麗大結界?
にとりは何がしたいの?
訳が分からないわ…。

「……じゃあ最後に、あんたの目的は何?」
「雛を幸せにする事さ。必ずね」

救世主様……私の幸せを第一に思ってくださるのね。
やっぱり救世主様は、かっこよくて優しいわ。

「そうかい、分かったよ。私は里に行く途中なんだ。もう行かせてもらうよ」
「ああ」
「…………そうだ。雛」
「え、え? 何?」

と、突然話を振らないでよ。
びっくりするじゃない。

「私の言った事、覚えてる?」

え?
確かいつも味方だって話しよね?

「ええ、覚えてるわ」
「なら大丈夫だよ」

………行っちゃった。
何だったのかしら。

「救世主様、どういう事だったの?」
「少なくても今のところは敵ではないようだね」
「そ、そう……」

よかった。
にとりは悪の手先だー、なんて言われたらどうしようかと思ったわ。
………出来ればこのまま味方であってほしいな。
私もにとりと争いたくない。
それに……にとりの言葉を信じたいわ。








  • ・・・・・ -- 名無しさん (2010-11-08 14:07:55)
  • なんだこれ… -- 名無しさん (2011-05-08 18:01:35)
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