5、
「やあ! せい!」


3日後、早朝。
既に体調は万全なのか、妖夢が庭で刀を振っている。

「は! とう!」
「……」

いや、万全ではないだろう。
力はイマイチ篭ってないし、息が上がるのも早い。
小休止が多い。 それも集中出来ないからといった類のものではなく、明らかに疲弊しきった上での休みだ。

「は、はぁ、はぁ、……」
「……」



あの後。
毒キノコ中毒であったことを理解した幽々子は、とりあえず妖夢を3日間休ませる事にした。

毒キノコといえば、ツキヨタケで人を殺そうという記述を昔の本で見た気がする。
そのツキヨタケは酷い下痢や嘔吐を起こす類の毒キノコであると言う事は、幽々子は長年生きてきた? 知識として知っていた。

既に毒キノコの大半は調理され、妖夢の胃に入り、流しなり厠なりで流れてしまっている。
唯一まともな状態で残っていたキノコも、あの時妖夢に踏み潰されてしまった。
ゆえに妖夢が何の毒キノコに引っかかったのか、幽々子には分からないのだ。

「……ふぅ。 後200回」

しかし、万全ではないとは言え、あの通り元気に動いているのだ。
多少ふらついたり食事の量が少なかったりするが、完治への過程だからだろうと、幽々子は判断していた。

「は! せい!」


あの後。
妖夢は『情けない、情けない』と言いながら、ずっと泣いていた。

『なぜ私は、咲夜のようになれないのだろう』
『もっとしっかりしたい。 でもどうすればいいのか分からない』
『私は本当にダメだ』

布団で寝ている妖夢がそういう言葉をこぼしている間、幽々子は黙って妖夢の額や頬をそっと撫で続けていた。

フォローも窘めもしなかった。
無駄に色々言っても、かえって妖夢を傷付けるだけだろうと、幽々子は思ったのだ。



「やあ!」

手持ちの図鑑を碌に見もせず、僅かな経験を過信してしまったらしい。
妖夢らしいといえばらしいが……

「とう!」
「……」

図鑑を片手に、キノコ採集か。

「妖夢」
「は、はい! 何でしょうか?!」

練習をやめたら? と言うのは、何度も言った。 しかし聞かないのだ。
妖夢も若干しつこいとばかりに、荒々しげに返事をした。

「出かけてくるわ」
「え? あ、は、はい」

どの程度、間違えやすいのか?
或いは自分でも同定できるのか?

「そうねぇ…… ちょっと色々用事があるから、長時間あけるけど問題ない?」
「は、はい。 構いませんが……」

虚を突かれた感じの妖夢に淡々と言うと、幽々子は出かける事にした。
勿論、妖夢の持っていた図鑑を拝借してから、だ。



















コンコン

「ん?」

魔法の実験中の魔理沙が、ノック音に気がついた。

「なんだ。 誰だ?」

客とは珍しい。
妖怪すら数の少ないこの魔法の森で、誰が来たと言うのだ?
魔理沙は椅子からゆっくり立ち上がると、玄関に向かった。

「……ん?? おいおい、こいつはいよいよもって……」

扉の穴から誰が来たか見た魔理沙は、少々驚いて扉を開けた。

「どうしたんだ、幽々子? エライ珍しい客が来たな」
「そうね。 初めてかしらね、一人で貴方の家に来るのは」







「で、何の用だ?」

普段自分が飲んでいるものより高級な茶葉を使い、紅茶を入れた。
あまりに想定外な客だった為、魔理沙も少し動揺していた。

「うん。 今日は、魔法使いとしての霧雨魔理沙じゃなくて」

幽々子は手持ちの袋を、魔理沙に見せる。
そして袋の口を開け、何やら取り出し、魔理沙に見せ付ける。

「キノコ名人の霧雨魔理沙、に用事があって来たの」



















「はぁ、はぁ……」

汗が流れる。
ただの汗ではない。 脂汗だ。

「は、う、うう……」

ダメだ。
体が、思うように動かない。

「はぁ、はぁ、はぁ、……」

妖夢は草むしり用の籠を放り投げ、縁側に座り、いや倒れこむ。

「ぐっ、は、クソ!!」

情けない。 たかが草むしり程度で。
毒キノコの後遺症か?
それとも単純に疲れが溜まっているのか?

「は、はぁ……」

丈夫さだけが、数少ない長所だったのに。
それさえ、覆されてしまうのか?
たかが毒キノコの為に!!

「ぐ! く、くぅ……」

しかし、現に体が異常にだるい。
そして、何だろう。 体の中が、もっと言えば内臓が、酷く痛む。

「はぁ、はぁ……」

胸の辺りを押さえつつ。
妖夢はヨロヨロと、屋内に戻っていった。



















「判別してほしい?」
「ええ、食べられるものと、そうでないものとね」
「何だってそんな事をしなきゃいけないんだ」
「なんて言っても、今は秋だしね。 キノコの季節でしょ?」

怪訝な表情を浮かべる魔理沙に、口元に扇子を当てて飄々と言う幽々子。
色々と疑問点が多く浮かんだ魔理沙だったが、まずは

「ええっと、だな。 まず、これはどうやって手に入れたキノコなんだ?」

これから聞くことにした。
問われた幽々子は、既に使用し終えた軍手を魔理沙に見せた。

「自分で、よ」
「はぁ、好きモンだなお前も」

魔理沙は呆れた様に肩を竦め、次の質問をぶつけた。

「まさか、無造作に取り巻くって来たのか?
 当ては全く無しで、毒か可食かも知らずに適当に?」
「いえ。 これを見ながら、よ」

少々凄んできた魔理沙に違和感を覚えつつも、幽々子は今度は別の袋からキノコ図鑑を取り出した。

「外の世界のキノコの資料よ。 これを偶々紫から手に入れたから、物のついでにキノコ狩りでもしてみようと思ってね」
「……」
「でもねぇ。 良く分からないの。
 キノコの同定が、素人の私じゃ出来ないの。 だから貴方を頼ったのよ」

幽々子は黙っている魔理沙に、図鑑のとあるページを開いて見せ付けた。

「ほら。これとこれ。 ……センボンイチメガサとコレラタケ。
 似てるでしょ? 全く区別がつかないのよ」

そう。
幽々子の真の目的は、キノコを可食と毒とで同定してもらうことではないのだ。


目的は2つ。

1つ目は、妖夢が採り間違えたキノコがこの2つである事を、確定させること。
図鑑を勝手に拝借して持ち出した幽々子だが、図鑑のページの折り目と、あの時一瞬だけ見ることの出来た記憶から、この2つではないかと推定。
姿形を見てほぼ確信はあったが、念の為専門家を訪ねたのだ。


「……確かに、素人にはまず区別はつかないだろうな。 この2つは滅茶苦茶似てる」

幽々子を半睨みしつつ魔理沙は、机に視線を落とし、キノコを掴んでマジマジ見る。
そして汚いものを見るような目つきになり、それを投げ捨てるように机に戻した。

「こいつは、多分コレラタケだ。 絶対食うなよ、つか今すぐにでも捨ててくるべきだ」
「難しいわねぇ、やっぱり。
 ねぇ、全部コレラタケ? センボンイチメガサは1本もない?」
「……全部が全部、とは言い切れない。 ちゃんと見ていけば全部同定できる自信はあるが、そもそもこいつは……センボンイチメガサは、そんなに美味しいきのことは私は思えない」

そう言いながら、魔理沙は幽々子を睨みつける。
どうも先頃から魔理沙の態度が刺々しい。 過去にこれに引っかかったのだろうか?

「そうなの? じゃあやめておきましょうかね。 リスクも大きいみたいだし」
「ああ。 絶対やめろ。 お前は兎も角、妖夢が危ない」

怖いわねぇ、と言いながら、幽々子は内心ほくそ笑む。
どうやら1つ目の目的は、果たせたようだ。

「ねぇ、魔理沙」
「何だ?」

さて、2つ目もさっさと片付けるとしよう。
世話が焼ける、それでいて愛らしい愛弟子の為に。
幽々子は再び、引き続き不機嫌そうな魔理沙に話しかけた。

「このコレラタケっていうのが毒があるって言うのは分かったのだけど。
 どういう毒なの? どういう症状が現れるの? 教えてくれない?」

妖夢は酷い下痢に嘔吐を繰り返していた。
人間と半人半霊で多少病状は違うだろうが、大きな違いは出ないはず。

「……何故、そんな事を聞くんだ?」
「フフ。 知りたい?」
「……別にいいよ」

妖夢がそれに引っかかったから、等と不必要な事は言わない。
可愛い従者の恥を、態々広める理由はない。
要はこのキノコの毒性を確定できればいいのだ。

「……コレラタケってな。 本来の名前は、ここにも載っているが、ドクアジロガサっていうんだ」
「そうみたいね」
「コレラタケのコレラっていうのは、外の世界で流行った病気だ。
 激しい水状の下痢を、1日に20も30もするらしい。 あと、嘔吐も繰り返す。
 死者も出るほど危険な病気。 水分と食塩を与えないと、人間だとかなりヤバイだろうな」
「成程ね」
「で、だ。 このコレラタケを食べると、似たような症状が出るんだよ。
 それで注意を促すって言う意味で、名前を変えたんだろうな」
「ふぅん」

幽々子は不謹慎だが、やはり内心ほくそ笑んだ。
妖夢の症状に似ている。 つまりその名のとおり、コレラの症状を引き起こすキノコなのだろう。
何処から聞いたか忘れたが、外の世界でコレラという病気が何度も流行ったと言うことは、幽々子も知っていたのだ。
妖夢は3日ほど寝込んでいたが、その間水分と塩分だけはしっかり与え続けていた。
その時はコレラタケを食べたと言う事は知らなかったのだが、結果的に実に良策だったと言える。
復活が早いのは、彼女が半霊だからだろう。


ここまで考えている幽々子を他所に、魔理沙の表情は優れない。

「……1988。 古いな。
 どうりで不親切なはずだ」

顔をしかめつつ、魔理沙は言った。

「不親切?」
「ああ。 とんでもないな。
 これ、肝心な事が書かれていないぞ」

魔理沙は苦虫を噛み潰したような表情をしつつ、続けた。

「実はな。
 このコレラタケ、確かにコレラに似た症状を引き起こすんだが……
 本当に怖いのは、其処じゃないんだよ」
「……え?」

余裕を交えながら扇子を取り出そうとした幽々子の挙動が、止まった。



















「♪」

十六夜咲夜は、実にご機嫌だった。



昨日退院した咲夜は、紅魔館に戻った後、熱烈な歓迎を受けた。

「おかえりなさい、咲夜」
「咲夜ー! おかえりー!」
「待っていたわ」
「よかったです! もう全快なんですよね!」
「おかえりなさい咲夜さん! お陰で私も飢え死にせずに済みます~」

口々に咲夜を歓迎する紅魔館の面々を前に、あの時と同じような微笑を見せる咲夜。
手には袋が握られている。 先程レミリアから受け取った、新調のメイド服だ。
かなり高級な素材を使ったと、レミリアが得意げに話していた。
嬉しい限りだ。

「……皆様、ありがとうございます。
 ではこのような時間なので、早速ご夕食の準備をいたしましょうか」

深々と頭を下げて礼をした後、咲夜は何時もの瀟洒なメイドの表情に戻り、心の襷を締めなおした。



そして今日。

レミリアが態々秋の神を訪ねて手に入れたと言う、サツマイモ数本を持ち。
白玉楼へ向け、飛んでいる。
レミリアが(小悪魔をパシッて)持ち帰ってきたサツマイモは、十数本に及んでいた。
その一部を「白玉楼に持って行け。 ついでに様子を窺って来い」と咲夜に渡したレミリアは、白玉楼への借りを返すのと同時に、幽々子や妖夢と談笑して来いと咲夜に命令したわけだ。

自分がいかに大事にされているかを思い知らされた咲夜は、これからも一生あの方に従っていこうと決意を固めつつ。
では尚の事精進しなければと、再度思い直したのだった。


途中の騒霊も、訳を話すと快く通してくれた。
もう白玉楼は目の前だ。
咲夜は幽々子と。 特に妖夢と話すことを楽しみにしつつ、長い階段に従って、上昇し続けた。













「ごめんください」

玄関前で、咲夜は言う。

「……」

返事なし。 誰かが居る気配はするのだが……

「誰か、居ませんか?」

今度は少し、大きな声を出した。

「……」

やはり、反応がない。

「…………玄関は……」

開いているようなのだが。 寝ているのか?
出直すか? いや、まさかここまで来て?

「入るわよ?」

今までで一番大きな声を出しつつ、咲夜は玄関の扉を開けた。




「誰かいないかしら?」

居るのはなんとなく分かっていた。
妖夢の靴が、玄関に置いてあるからだ。

「居るんでしょ? 妖夢」

耳を済ませると、僅かに息遣いが聞こえる。
いや、息遣いではない。

「……咳?」

ゴホゴホという咳の音が、断続的に聞こえてくる。
弱弱しそうで、それていて苦しげだった。
さては……

「……風邪、ね」

きっとそうだろう。
妖夢は風邪をこじらせており、咳を連発。
ゆえに先頃からの咲夜の声に、気づいていないのだ。

「入るわよ?」

靴を脱ぎ、玄関から廊下に上がる咲夜。
それにしても、幽々子も薄情だ。
病状の重そうな妖夢を、ほっぽり出して何処に出かけたのだ?
咲夜は若干頭に来たが、とりあえず妖夢をそのままにしておくのは拙いだろうと感じ、歩みを進めることにした。



「何処かしらね…… あ、ここね?」

咳を頼りに、廊下を歩きつつ。
咲夜は咳の音が激しく聞こえる、部屋の前にたどり着いた。

「妖夢。 咲夜よ、お邪魔してるわ」
「ゴハ、ゲ……! ざ、ぐやざ、ん? ゴホゴホ!!!」

相当酷いらしい。
喋る事さえ、ままならないようだ。

「この前のお礼をしに来たんだけど……」
「が、ウウウ、は、はいい、ひ、ガハ!」

特に深い関係でもないのに、態々キレイな花を持ってきてくれた妖夢。
その彼女が、今酷く苦しんでいる。

「……入るわよ? いいわね?」

借りを返す時だ。
いや、恩に報いると言うべきだろう。

咲夜は襖を、ガラッと開けた。





































6、
芋のにおいで、慣れた筈の臭いに気づかなかったらしい。


「ウグウウウウ!!!! ガアアアアアアア!! ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛!!!!」


血。


「ガハ!! ゴホ!!!! ゲホ、ゴホ!!!!!」


血の海。


「ぐるじい、ぐるじいいいいいいいい!!!」



真っ赤な海の真ん中で、一人の白い肌の少女が暴れまわっている。


「は、はぁ、はぁ、はぁ、う!!!! うううううううううう!!!!!」


妖夢の足が、落とした芋を蹴飛ばした。
芋が、血の海の中を暴れまわる。
赤茶色のサツマイモは、赤黒く変色された。




「……妖夢?」

咲夜は呆然としながら、目の前で蹲る少女に声を掛けた。

「何。 なに、が、あったの?」

サッと妖夢の元に駆け寄り、肩を抱き寄せ、上半身を起こす。
折角レミリアが新調してくれたメイド服は血で汚れてしまったが、目の前の妖夢を見ると、それも躊躇していられなかった。

「ざぐや、さん。 くるしい、くるしいいいいいい!」
「見れば分かる。 何があったの? ゆっくりでいいから説明して」

誰かに襲われたと言う形跡はない。
となると、毒でも飲まされたに違いはないのだが、一体誰が?
幽々子? 紫? 藍? 馬鹿を言え!

「わからない、わがらない! わがらないんでず!! ぐ、ガハ!!!!!」

妖夢が再び、血を吐いた。
咲夜の腹と太ももの辺りが、真っ赤に染まる。
生暖かい感触は、確かな生者の温もりを感じさせた。

「痛い!!! 苦しい!!!!」

良く見ると、妖夢の爪は何枚か剥がれてしまっている。
畳を引っかいた様な跡が数え切れないほどあり、服も胸から腹にかけてびりびりに破けてしまっている。
しかし、痛いのはやはり爪ではないらしい。

「ハ、ぐううう!! お腹、胸、いだい!!!」

そういいながら、しきりに自分の胸を引っかき続ける妖夢。
キレイな白い肌は、蚯蚓腫れと血液のせいで酷い事になっていた。



















「最初の症状…… コレラのような下痢と嘔吐を繰り返した後。 それはな、1日2日で引いてしまう」

「これがよくないんだ。 これで治ったと、食った奴は勘違いしてしまう」

「半端に知識があって、病気のコレラについて詳しければ尚更だ」

「で、だ。 それが引いた後、実は体の中では大変なことが起きているんだ」

「こいつに含まれている毒素がな。 内臓に、特に肝臓と腎臓に、酷い悪影響を与えるんだ」

「医療の詳しい事は専門外だから分からんが、どうやら内臓の組織そのものを破壊してしまうみたいなんだよ」

「対処の仕方? 無い。 摂取量によっちゃ、死を待つだけの場合もあるんだぜ」

「永琳のところにいきゃ、一命は取り留められるかもしれんが……」

「例え生き残っても。 生涯、不自由な思いをするだろうな」

「私は、素人のキノコ狩りには断固反対だ」

「いいか幽々子。 キノコ狩りに行きたきゃ、絶対に経験者を連れて行け。 私なら構わない、いつでも声を掛けろ」

「絶対に素人だけで……  ん? どうした、幽々子?」



















「ぐ、……しい」

咲夜は妖夢を抱え続けていた。
時を止めつつ、永遠亭に行くという選択肢は勿論あった。

「ぐ、や、しい……」

しかし、もう妖夢は助からない。
人間の沢山の死に直面してきた咲夜は、それを見抜いていた。

「わだじは、わだじは、ぐやじいいい!!」

ボロボロと涙を流しつつ。
もう吐く血もなくなったのだろう。
もう呼吸をするのも苦しいのだろう。
妖夢がグチャグチャにした顔を拭こうともせず、泣いている。





「なぜ、なん、で。 わたじは、あな、た、に、なれない!」


妖夢はそのグチャグチャな顔のまま、咲夜を見つめる。


「わたし、は。 あなたのよ、うに、なりた、かった!」
「……」
「なにご、とも、かんべぎで、きれいで、うづぐじぐ。
 みんなから、ぞんけいざれで、だよりにざれる、あなだの、よ、うに!」
「……」


搾り出すように話し続ける妖夢を、咲夜は止めない。
止める行為は、悪戯に妖夢に残された少ない時間を、無駄にすることに過ぎない。


「なんで、なんで! なざげない! わだじは、こんなに、がんばっでいだのに!!」
「……」
「あなたが、あなたみたいなにんげんがいなげれば!」


恨みがましい目で、咲夜を見る妖夢。
死に際の存在に、謂れのない事で罵声を浴びせられる。
気分のいいものではなかったが、咲夜の取った行動は、


「……」
「……!!」


妖夢を優しく、抱き寄せることだった。
背中に左手を回し、頭を撫でつつ。
右手では腰の辺りを持ち、優しく。 そして力強く、抱きしめる。


「……」
「……」


顔は見ないようにする。
こんな惨めな死に際の顔を見られることは、妖夢にとっては屈辱に違いないからだ。



















「なん、で……」
「……」


妖夢が、再び口を開いた。
もう息もか細くなり始めており、彼女の生命活動の限界が近い事がわかった。


「なん、で……!!」
「……」


しかし、妖夢は最後の力を振り絞り。


「あ、……な、た、は……」
「……」


咲夜を、抱き返した。


「そんなに、も。 や、さ……」
「……」


言葉が、出ない。
言葉を発するほどの力が、もう残っていない。


「……」
「……」


妖夢の体が段々冷えていくことが、咲夜には分かった。


「……」
「……」


心臓の鼓動が、弱弱しくなりつつある。


「……」
「……」
「……」
「……」


せめて最後まで。
最期まで、一緒にそばに居てあげよう。


「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」



















白玉楼の一角で。


将来を皆に期待されていた半人前の一人の少女は、才能を開花させる事なく。


静かに、その生涯を終えた。







fin



  • 途中でマタンゴかと -- 名無しさん (2010-09-30 16:20:05)
  • バッドエンドだけど、これはある意味、作者さんからの警告かな?
    毎年、素人が図鑑頼りにキノコ狩りして、中毒起こしてますからね
    兎に角、素人が安易にキノコ狩りに行くべきでは無いですね
    -- 名無しさん (2010-09-30 20:01:47)
  • て言うか妖夢の調子が悪いならすぐ永遠亭に連れてくだろ、バカジャネーノ? -- 名無しさん (2010-09-30 22:14:08)
  • 『可愛い従者の恥を、態々広める理由はない。 』からだろ?
    妖夢も行きたがらねーだろ -- 名無しさん (2010-09-30 23:23:51)
  • コレラダケで調べてみな。激しい嘔吐と下痢を起こした時点でほぼ、手遅れみたい。 魔理沙が言ってるように、食べた量によっては、死を待つだけになるみたい。
    とにかく素人は、きのこ狩りは、安易にしちゃいけないよ -- 名無しさん (2010-10-01 00:33:02)
  • まあ何事も素人が一人で手を出すなってことだな
    その中でもキノコ狩りが突出してるというだけで -- 名無しさん (2010-10-01 00:46:32)
  • ↑×4
    •『可愛い従者の恥を、態々広める理由はない。 』というのと、あとはゆゆ様自身も「ただの下痢」程度にしか考えていないからだろう -- 名無しさん (2010-10-01 01:18:47)
  • クリボー「計画通り」 -- 名無しさん (2010-10-01 10:03:41)
  • きのこ狩りダメ、絶対 -- 名無しさん (2010-10-01 19:31:08)
  • スーパーでキノコ狩りしようぜ! -- 名無しさん (2010-10-02 00:52:15)
  • 毒キノコで死ぬなんて嫌だ! -- 名無しさん (2010-10-02 22:53:50)
  • 最後らへんで悲しくなった
    自分と重ねてしまった -- 名無しさん (2010-10-03 22:13:51)
  • ↑俺も。最大の違いは誰も期待しないことかな。 -- 名無しさん (2010-10-04 06:32:30)
  • みょんってほんとこういう「頑張りすぎて自滅する」
    姿が似合うよね。
    しかも努力の姿勢や態度にひねた所がないから、余計に
    物悲しさと可愛さが増すというもの。 -- 名無しさん (2010-10-04 15:19:05)
  • あ、死んでも完全に霊になるだけだしそうじゃなくともゆゆ様にはまた逢えるんじゃね? -- ぱせり (2010-10-04 22:45:25)
  • 一か月後、そこには全霊となって元気に庭仕事に勤しむ妖夢の姿が! -- 名無しさん (2010-10-05 20:34:18)
  • ドクアジロガサって食べると確かに致命毒だけど
    血の海ができるほど吐血するキノコだったっけ? -- 名無しさん (2010-10-18 19:03:16)
  • まあその辺は幻想郷のはさらに毒性が強くなっていたとか
    妖夢が完全に人間ではないから効果が若干違うとか
    いくらでも理由付けできそうだから気にしなくていいんでないか -- 名無しさん (2010-10-22 13:31:06)
  • 咲夜さんマジ瀟洒 -- 名無しさん (2010-10-28 02:17:45)
  • ↑×3
    ウィキペディアによると
    「中毒症状は、その名のように食後概ね10時間(摂食量により、6–24時間)後にまずコレラの様な激しい下痢が起こり、
    1日ほどで一度回復する。その後4–7日後に肝臓、腎臓などの臓器が破壊され、劇症肝炎や腎不全症状を呈し、最悪の場合死に至る。
    治療方法は対症療法のみで、胃内完全洗浄ののち血液透析する。」
    なので、血の海ができる…というのは少し言い過ぎかもしれないけどそれぐらい危険でもおかしくないらしい
    -- 名無しさん (2011-09-06 00:05:05)
  • 今年もキノコ中毒の季節ですな -- 名無しさん (2011-09-07 01:53:32)
  • 最後のゆっこの表情を凄く見てみたい -- 名無しさん (2011-09-08 16:45:04)
  • やっぱり キノコは食うな♪
    -- 名無しさん (2011-10-13 01:40:59)
  • ↓だよね -- 名無しさん (2011-10-29 00:28:41)
  • ゆっこさん、お顔真っ青だろうな。 -- 名無しさん (2012-01-17 22:23:35)
  • ゆうこ様の移動速度だと魔法の森から全速力でも無理だな~ -- 名無しさん (2012-01-31 14:50:21)
  • ドクアジロガサと同じ毒を持つドクツルタケが内臓がやられてバケツ一杯の血を吐きながら死ぬとか言われてるし吐いてもおかしくないかもね -- 名無しさん (2012-07-13 06:34:38)
  • 描写が、最高  てか、半霊ごと死んだのか?仮にも半分霊なのに
    -- 年中無休の変人 (2012-07-30 14:37:31)
  • 半人半霊は人間でも幽霊でもなくそういう種族らしいから普通に死ぬのかも知らんね -- 名無しさん (2012-08-20 09:44:43)
  • 妖夢の嘔吐と下痢で少し興奮した自分を殴りたい -- 名無しさん (2012-10-19 22:26:35)
  • 死に際の妖夢の無念さが伝わったきて、最高でした -- 名無しさん (2012-11-23 00:08:36)
  • 魔理沙かっけえ -- 名無しさん (2012-12-26 15:17:56)
  • 頼りになる魔理沙だな
    -- 名無しさん (2013-12-05 22:50:46)
  • ぎゃあぁぁっっぁああ!!!!妖夢うううぅぅうううぅ!!! -- 名無しさん (2014-04-06 16:53:47)
  • いたたまれないです... -- 名無しさん@ゆっくり (2014-06-28 21:55:56)
  • 無駄な見栄は身を滅ぼす
    生きていればいい教訓になってた -- 名無しさん (2014-07-02 22:05:17)
  • 自分、キノコ大好きなんだが、食欲無くすなぁ…
    知り合いのキノコマスター(?)が平気ヘイキって言ってても無理だ… -- キング クズ (2016-06-22 03:29:34)
  • 怖いなあ・・・と今更実感した、まじ怖いわ。と言うか魔理沙役立ってるな -- 無名さん (2017-04-14 19:41:29)
  • これレミリアも運命分かってたから咲夜に向かわせたんかな -- 名無しさん (2017-05-03 22:25:05)
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