48

「行けええええぇぇぇぇ!!」

空の口から飛び出す無数の弾幕。
それらをかわしながら、くるみは迫る空に向かって行った。

「これで! 終わりよ!」

すれ違い様に空の口に型を投げ入れようとするくるみ。
ところが投げ入れる瞬間に放たれた弾幕により、型はくるみの腕ごと吹き飛ばされてしまった。

「………え? ……あ、ああ! ああああああああああああああ!!」

遅れてやって来た痛みに、くるみは堪らず叫び声をあげる。
だが空は情け容赦なく、止めを刺そうと襲って来た。

「くるみ大丈夫かしら」

一方でエリーは動力炉の周りに浮かせた車両に乗り、なかなか戻らないくるみを心配していた。
動力炉の起動装置の操作にはパスワードが必要で、動かせたのは手動で止められたプロペラのみ。
助けに行こうにも重い車両に妖力を割いている今の状態では、逆に足手纏いになるのがオチだ。
そう考え動力室で待つエリー、そこへ待ち望んだ者の影が映り込む。

「くる……み………?」

しかし現れたくるみは、ボロボロの状態で無抵抗に落ちていくところだった。
腕は途中でなくなり、体や羽には穴が開き血を撒き散らしている。
その姿はエリーがもっとも望んでいない結末を物語っていた。

「嫌あああぁぁぁ!! くるみぃぃぃ!!」

車両を飛ばし、くるみの許へ急ぐエリー。
だがエリーの背後には空が迫っている。そして、

「くるみ! くる………ぁ……」

エリーの左胸を高速の弾幕が無慈悲に貫いた。
血が溢れ出し、衣服を赤く染める。
意識が揺らぎ遠くなる。

「くる…み………」

伸ばした手は触れる事無く、くるみはガラスの海へ消えていった。
その後を追うかのように、エリーの乗った車両も徐々に浮力を失い落ちていく。
車両はガラス液に触れるとジュッという音を立て溶けていき、数分もすると跡形もなく消えてしまう。
それは同時にエリーとくるみもドロドロに溶けて消え、もう二度と浮かんで来る事はない事を意味していた。






49

雷雲が光り、先程より遥かに強力な電撃が雷雲から放たれる。
だがエリーは臆する事無く蓮子に向かって行った。

「貴方が雷を操るなら、私はこの部屋のあらゆる物を操るわ!」

そう言ってエリーが合図すると、机や椅子がエリーを守るように壁を作る。
それらは電撃を受け一度は崩れ落ちてもエリーが妖気を送り込むと、再び積み上がって壁となった。

「さっきの椅子もそうやって操ってた訳ね」

蓮子は何度も雷雲に電気を送り、二撃目三撃目を繰り出す。
だがそのどれもが、積み上がって壁によって防がれる。

「きりがないわ……」

そうしている間にエリーは壁の裏に作った階段を上り、蓮子の真上まで跳び上がった。
大きく鎌を振り、蓮子に鎌を投げつけるエリー。
だが鎌は右腕に弾かれ、逆にエリーを狙って跳ね返されてしまった。
なんとか身を捻り鎌をかわしたエリーだったが、そのまま仰向けの体勢で落ちていく。

「雷相手に上から来るなんて、いい度胸してるわね!」

更に蓮子は追撃を掛けるべく、雷雲に電気を送り落雷の準備をした。
ところがそれを見てエリーはにやりと笑う。

「な……」

次の瞬間、雷雲から凄まじい電撃が放出された。
しかしその電撃はエリーではなく、更に高い位置で回る鎌に落ちる。
その間にエリーは書類を集めて作ったクッションの上に落ち、すぐに紙の山の中に潜った。
鎌に集まった電撃は蓮子の支配下から外れ、本来の雷の姿になる。
それはもっとも背が高く、もっとも電気を通すものへ落ちる雷本来の動き。

「し、しま…ああああああああああああああ!!」

その結果、雷の着陸点に選ばれたのは蓮子自身だった。
雷撃に貫かれた蓮子は暫くふらふらした後、ぐったりとその場に崩れ落ちる。

「………勝った」

紙の山から出て来たエリーは、ほっと一息吐くとくるみの許へと向かって行った。

「……エリー…」
「お待たせ。体はもう平気なの?」
「…ええ、エリーが戦っている間にすっかり回復したわ。あ、エリーこれ」

くるみはそう言って手に持っていたノートを渡す。
エリーが開いてみると、そこには明らかにページを破り捨てた跡があった。

「……去年の夏頃から先がなくなってるわ」
「そう、丁度幽香ちゃんがいなくなった頃よ」
「………幽香ちゃん………」

やはり此処で何かがあり、それが原因で幽香は姿を眩ませたようだ。
だがこれだけでは、まだ幽香の行方は分からない。

「一体此処で何が……幽香ちゃんは何処に……」
「それを知る為にも私達は進まなくちゃ。もう此処には目新しい物はなさそうよ、一旦戻りましょう」
「…そうね」

くるみの言葉にエリーは小さく頷く。
やがて二人は他に誰もいないか確認すると、換気口の中へと入っていった。

※『雷符』を取得






50

エリーとくるみは緑色のパトランプの光る換気口を進んで行く。
やがて換気口が何かの部屋へと繋がっている部分まで辿り着いた。
辺りを警戒しながら蓋を開け、部屋の中に入る二人。
するとそこには、巨大な地下庭園が広がっていた。
庭園内には様々な野菜や果物が栽培されており、庭園より畑としての機能を目的にしているように見える。
天井には植物の成長を促すライトが取り付けられているが、光は弱く月明かりのようだ。

「……此処の植物、こんな弱い光しかないのに元気に育ってる……」
「間違いないわ、妖怪の力が働いてる。それにこの妖気……」

二人が見る先は庭園の奥、暗くて見えないが間違いなくこの先に探している者がいる。
その者こそ二人の主、風見 幽香。植物を操り四季のフラワーマスターと呼ばれる妖怪だ。
幽香は元々主従関係を作る妖怪ではなかったのだが、その実力と優雅さに惚れ込んだ二人が従者に名乗りをあげ
形として主人と従者という関係になっているに過ぎない。
故に他の主従と違い堅苦しさはなく、殆ど親友や家族のような関係だった。
だからこそ心の奥底から心配し、助けたいという想いから此処までやって来れたのだ。

「もう少し、もう少しで幽香ちゃんの所に…」
「行きましょエリー、早く幽香ちゃんを助けてあげないと」

ようやく出会える最愛の主人、二人の足取りも自然と早くなる。
やがて気配のする小高い丘へと辿り着いた二人。
しかしそこにいたのは、変わり果てた主人の姿だった。

「幽香……ちゃん…?」

ぐったりとその場に座り込む幽香の首には首輪が付けられ、近くの木に繋がれている。
腕は角質化し巨大な鰐のような腕になっており、以前の美しい白い腕の面影は何処にも見当たらなかった。

「……酷い…」
「一体、誰がこんな事を…」

すると声に気が付いたのか、幽香はゆっくりと顔を上げる。
そして二人の顔を見ると、驚いた表情を浮かべて口を開いた。

「エリー? くるみ? ドウシテ此処ニ?」
「幽香ちゃんを助けに来たのよ」
「……私ヲ………助ケニ…?」
「待っててね、今鎖を取ってあげるから」

そう言ってくるみは木に巻き付いた鎖を外す。

「!! ダメ! 鎖ヲ取ラナイデ!」

ところが突然、幽香は声を張り上げてくるみを止めようとした。
しかし叫び声が届いた時には、すでに鎖は外された後。
すると幽香は額に汗を浮かべ苦しみ出した。

「……ウゥ……グ…ガ……」
「幽香ちゃん! どうしたの!?」
「そんな……罠なんてなかったのに……どうしよう!」

突然の主人の異変に慌てふためく二人。
幽香はそんな二人に、苦しそうにしながらも呼び掛ける。

「……エ…リー……くる…み…」
「何!? 何処か痛いの!? 何でも言って!」
「…ハ…ヤ…ク…ニ…ゲ………」

次の瞬間、幽香の振り上げた腕によってくるみは吹き飛ばされた。

「……えっ」

あまりにも唐突に起こった出来事に、一瞬思考の止まるエリー。
だが幽香が殺気を込めて睨んで来たのを見ると、本能的に跳んで後ろに下がった。
直後にエリーがいた所を幽香の爪が貫き大地を抉る。
更にエリーが距離を取ったのを見るや否や、口に妖力を集め始めた。

「……ッ!!」

さすがにこれは危ないと感じたエリーは、走って回り込むように逃げる。
すると一気に放出された熱線は、その光で部屋を昼間のように照らし軌道上にあった木々を消し飛ばした。

「…ああ……ぁ…」

明らかに弾幕ごっこではない、殺す気で放たれた弾幕。
エリーの心は、死の恐怖と主人の攻撃に対する疑問で動揺しきっていた。
体中から汗が噴き出し、心臓の鼓動は速くなる。
そこへボロボロの状態のくるみが戻って来た。

「……何があったの?」
「分からない! 分からないけど……幽香ちゃん、私の事殺すつもりだった…」
「………エリー、原因は分からないけど今の幽香ちゃんは正気じゃないわ。私達が止めないと」
「……止める? どうやって?」
「………戦うのよ」
「幽香ちゃんと!?」
「私達は何の為に此処まで来たの!? 幽香ちゃんを助ける為でしょ!? 今逃げたら何しに来たか分からないじゃない!」
「…………そうよね、行くわよくるみ! 幽香ちゃんを正気に戻して連れ帰るわよ!」

決意を固めて幽香に立ち向かうエリーとくるみ。

「ウガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

そんな二人に幽香は咆哮を上げ、襲いかかって来た。

※サイコロを一回振り、出た数の四倍エリーとくるみのMGを減らす。






51

「先手必勝!」

そう言ってエリーが鎌に妖力を送ると、鎌は鞭のように変化する。
そして大きく振り上げると、早苗に向かって振り下ろした。

「きゃああ!!」

鞭はピシャンと音を立て、早苗の体に打ち付けられる。
更に追撃と言わんばかりに、エリーは再び鞭を振るった。

「あうっ! うぎっ! ぎゃあ!」

何度も繰り返し打たれ、早苗の体を覆っていた鱗は砕け痣が広がっていく。
だがエリーは攻撃の手を緩めない。

「お、お願いでずっ! もう許じでっ! た、助けでっ!」
「本当、貴方って腹立たしいわね。偉そうに正義を掲げて犠牲者面する人間みたい」
「……だっで…私、人間だったがら…」
「そう、ますます倒す理由が出来たわ」
「ヒィッ!!」

そう言うと再び鞭を振り上げるエリー。
そこへ、くるみが二人の間に割って入って来た。

「……どういうつもり?」
「別に庇ってる訳じゃないわ。ただ目的を見失ってるんじゃないのって思っただけよ」
「……………」
「ほら、貴方もさっさと行く」
「は、はい!」

くるみに促されて、早苗は霊安室を後にする。
一方で残ったエリーとくるみは、お互いに見つめ合ったまま立ち尽くしていた。

「………貴方のそれ、とっくに治ってたんだと思ってた」
「それ?」
「人間嫌いよ。私は貴方の過去を詮索するつもりはないから、どうしてそうなったのかは知らないけど」
「……………」
「あの日巫女と魔法使いがやって来た時、私はもう大丈夫なんだなって思った。……それなのにどうして今になって…」
「………私にも分からない…」

そのまま暫くの間、黙りこくってしまう二人。
やがて何か考えが纏まったのか、くるみは話を切り出した。

「…………もしかしたら、あいつらの妖気に呑まれて来てるのかも…」
「!! それじゃあ私達も狂っちゃうって事!?」
「分からない、でも急いだ方がよさそうね。私達が狂ってしまったら、幽香ちゃんを助けるどころじゃなくなっちゃうわ」

妖怪以上に危険な存在の恐怖に戦慄する二人。
兎に角今は幽香救出を急ぐ為、二人は足早に換気口の中へと入っていった。

※『風符』を取得






52

「ああああああああああああああああああ!!」

錯乱し滅茶苦茶に暴れるくるみ。
一方のパルスィは冷静に結晶を使い、攻撃を防いでいた。
更に隙あらば結晶を飛ばし、攻撃に転じて来る。
だがくるみは飛んで来る結晶をかわすと、再び斬撃を繰り出していた。

「……………」

その様子をエリーはじっと見ている。
パルスィには、あの結晶をどうにかしない限り攻撃は通らない。
突破口を見つけるにはパルスィの注意がくるみに向いている今の内に、結晶の弱点を見つけなくてはいけないのだ。
すると結晶が出現する際、毎回ある法則がある事に気付く。

「……腕…?」

パルスィが結晶を出すのは、いつも腕の周りなのだ。
くるみの攻撃が脚を狙ったものでも、姿勢を低くし手を下して結晶を出す。
もしかしたら腕からしか結晶は出せないのかもしれない。
そう考えたエリーは近くの棚に妖力を送ると、一気にくるみに駆け寄った。

「くるみ!」

そのままくるみに跳び付くと、ぎゅっと抱き締めて床を転がる。
そしてくるみに妖力を流し込み、その精神を正気に引き戻していった。

「……エリー…? 私…」
「よかった……くる…み……」

エリーはそう言うと、くるみから離れぐったりと倒れる。
大量の妖力をくるみに送ってしまった為、自身は酷く消耗してしまったのだ。
だが最後の力を振り絞り、妖力を送った棚を動かす。
すると棚はパルスィ目掛けて倒れて来た。

「なっ……ぐっ!」

咄嗟に両手を使い棚を受け止めるパルスィ。
これこそエリーが狙っていた反撃のチャンスだ。

「くるみ……今よ!」
「!!」

事情は分からないがエリーの言葉に促されて、くるみはパルスィに向かって行く。
そして勢いよく背中を蹴ると、反動で棚の傍から離れていった。

「あぐっ! …うぅ……うぎゃあ!!」

支えていたパルスィが怯んだ事で、棚は倒れパルスィを押し潰す。
やがて棚から落ちた物が転がる音が消えると、辺りは静寂に包まれた。

「…………やった…のね」
「……多分」

パルスィが動かなくなったのを知ると、ほっと一息吐く二人。ところが、

「うう…ああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

棚の下から凄まじい悲鳴と共にパキポキと骨が鳴る音が響き渡る。
その音が止むと突然巨大な鎌が現れ、棚を切り刻んだ。

「…ぁ……あああ…!」

棚を壊し二人の前に姿を現した者、それは姿を変えたパルスィだった。
目隠しは取れ、空洞となった目が不気味に二人の方へ向けられる。
両腕はカマキリの鎌のようになり、刃には先程の結晶と同じ物が使われているようだ。
更に脚だけだった下半身の蜘蛛は完全に蜘蛛の形になっていて、真っ赤なたくさんの瞳が怪しく輝く。
その姿は化け蜘蛛の背中に人型のパルスィがくっついているような状態だった。

「……な……」
「…貴方達ね」
「………えっ?」
「貴方達がヤマメを閉じ込めてたのね! 許さない、絶対に許さない! バラバラにしてやる……病気で苦しめてやる。
 じわじわと嬲り殺しにしてヤマメに手を出した事、地獄で後悔させてやるぅ!!」

突然身に覚えのない事で怒り狂うパルスィ。
その鎌が問答無用と言わんばかりに、二人に向かって振り下ろされた。

※サイコロを二回振り、出た数エリーのMGを減らす。






53

動力室を飛び回る、くるみと空。
その下ではエリーが車両を伝って動力炉を目指していた。

「エリィィィィー!!」

そこへ飛んで来るくるみ、エリーの前を通り過ぎながら話しかける。

「一瞬でいいから、あいつの視界を塞いで!」

その言葉を聞くとエリーは溜め息を吐き、

「まったく……注文が多いわねぇ!」

そう言って妖力を込めたビンを空に投げつけた。
ビンは空の弾幕により粉々に砕け散る。
だが飛び散った破片は真っ直ぐ空に向かい、瞳に突き刺さり視界を潰した。

「……めいんかめらニ異常発生。さーもぐらふぃニ切リ替エマス」

しかし空の瞳が赤く光ると、何事もなかったようにくるみを襲う。

「ダメよ! 効いてない!」
「直接見られなければ十分よ!」

くるみは突然壁にしがみ付くと、羽を自身を守るように覆いかぶせた。
すると羽の表面に真っ赤な結晶が生まれ、まるで鏡のように周りの景色を映し出す。
そこへ空が迷わず弾幕を叩きこみ、くるみの羽にぶつかる。その瞬間、弾幕は真っ直ぐ空に跳ね返っていった。
跳ね返った弾幕は空を貫き、体に穴を開ける。すると、

「……しすてむえらー発生…ぷろぐらむヲ……再起…動……シ………マ…」

空は凄まじい轟音を立てて大爆発した。
バラバラになった部品が飛び散り、線路の上に転がり落ちる。
だがくるみの攻撃はまだ終わらない。

「くたばれえええぇぇぇぇぇ!!」

羽の結晶が無数の針のように変化し、空の落ちた線路目掛けて打ち出される。
結晶は線路を貫き土台ごと壊し、ガラスの海へと落としていった。
液体に様々な金属片が触れる度に、ジュッという音を立て溶けていく。

「……さ…り……ま…」

その中に小さな声が混ざっていたが、それに気付く者は誰もいなかった。
くるみは空がガラスの海に消えたのを確認すると、エリーの許へ飛んで行く。

「終わった?」
「パスワード設定がされてるから動力炉を止めるのは無理ね。でも換気扇とか一部の機能は止めておいたわ」
「……ぶっ壊しちゃえば?」
「やめて、爆発したらどうするの」

二人は車両を線路に戻すと、エリーの妖力で走らせ動力室を後にする。
やがて出て来た換気口の場所まで戻って来ると、換気口の中へと入っていった。

※『炎符』と『換気扇停止フラグ』を取得






54

「行っけええぇぇ!」

吊るされた鎖に巻き付くさとり目掛けて、くるみの弾幕が炸裂する。
だがさとりは宣言通り、弾幕が飛んで来る前に別の鎖に渡ってかわす。
まさにくるみの心を読み、被弾位置を先に知っているからこそ出来るかわし方だ。

「ようやく分かってくれたみたいね。私を撃ち落とす事は出来ないって」
「!! そんな筈ないでしょ!」
「心にも思ってない事を喋るのね。本当は心の中は不安と動揺で満たされているというのに。
 諦めなさい、貴方に勝ち目はないわ。私には隠し事は一切出来ないのだから」
「ぐっ…!」

悔しいがさとりの言う通り、くるみにも自分の心が読まれている事が薄々分かる。
だからこそ虚勢を張り、絶望しないよう自身を奮い立たせているのだ。

「そんな強がり、いつまでも続くものじゃない。本当は分かっているでしょう?」
「五月蠅い!」

必死に弾幕を張って、さとりの言葉を聞かないようにするくるみ。
そこへ鎌がくるくる回って通り過ぎ、さとりを狙って飛んで行った。

「無意識のつもり? 軌道が完全に頭に浮かんでるわよ?」

しかしこれもあっさりかわされる。
やがて戻って来る鎌を追ってくるみが振り返ると、そこには回復したエリーが立っていた。

「もう大丈夫なの?」
「ええ。それよりくるみ、一つ作戦があるわ」
「作戦って言ったって心を読まれたら意味が………へ?」
「それじゃあ頼んだわよ!」
「え? ちょっとどういう事!?」

そのままエリーは水面ギリギリまで近付くと、大きく鎌を振り上げさとりを威嚇する。
するとさとりは訝しげな表情で、エリーを睨みつけた。

「『くるみがなんとかしてくれる』ねぇ。無意識で戦い、後始末は仲間に任せるつもり?」
「言い方は悪いけど、そうなるわね」
「………ほお、何かが起こる事を期待している。でもそれが何かまでは分かっていない、と」
「いつまでも考え込んでると、危ないわよ!」

そう言ってエリーは鎌を投げつける。
だがやはり簡単にかわされ、鎌は何を斬る訳でもなく宙を舞う。
そのまま手元に戻って来ると、再びエリーは鎌を投げつけた。

「……そういえば吸血鬼の子がいないわね。彼女が何かしてくれるのを待ってる、そういう事?」
「どうかしらねぇ!」
「………なるほど。私の能力の及ばない位置で何か企んでる、そういう事」

更に次々と飛んだ来る鎌を、華麗にかわし続けるさとり。
しかしエリーも諦める事無く、鎌を投げ続ける。

「………ねぇ、そろそろ止めたら? もういい加減、理解したでしょ? 私には貴方の攻撃は当たらないって」
「いいえ、くるみがなんとかしてくれるわ!」
「……………」

やがてさとりの動きが少しづつ鈍り始める。
だがエリーは一向に攻撃の手を緩めない。

「………正直に言うわ、私も遅いって感じてる」
「…………ちょっと……休憩しない?」
「……嫌よ!」

それからもまだまだ続くエリーの攻撃。
今まで全てかわし続けて来たさとりだったが、ここに来てついに体力の限界を迎える。

「……はぁ……はぁ……もう………無理……」

さとりは次の鎖に絡み付こうと必死に触手を伸ばす。
しかし飛んで来た鎌に触手は斬られ、そのまま落下し水の底に沈んで行った。

「………はぁ……はぁ……勝った…………というかくるみいぃぃ!」

怒りに任せて階段を駆け昇るエリー。
すると一階層上で、くるみはのんびりと寛いでいた。

「ちょっと! 何してるの!」
「何って……いきなりなんとかしろって言われて出来たら苦労しないわよ」
「だからってなんでそこで休んでんのよ……」
「……こ~れ~は~何も考えずに休んでた訳じゃないの。あいつは心を読んでかわすって言ってたわ。
 だからあいつがバテるまで一人が戦ってれば、もう一人が攻撃して勝てると考えたの。これも立派な作戦よ」
「………じゃあそう言ってよ」
「言ったらバレるじゃない」

なんか煮え切らないながらも、手にした勝利を噛み締めるエリー。
ところが突然階下から伸びた触手によって、くるみは絡め取られてしまった。
そのまま言葉を発する間もなく引き摺り込まれていってしまう。
慌ててエリーは階段を降り、くるみを攫った触手を追い掛けていく。

「ふふふ、まさかあれで終わりなんて思ってないわよねぇ?」

するとそこにいたのは、姿が変化したさとりだった。
八本の触手はより太く長くなり、さとり自身よりもよっぽど大きくなっている。
宙に浮いていた第三の目は、さとりの体に寄生虫のように取り付き侵蝕し巨大化していた。
更に背中にはボロボロの蝙蝠の羽が生え、不気味さがより増している。
その姿は最早さとりより、第三の目を中心とした蛸のような触手が本体のようだった。

「……エ…リー………」
「くるみ!」

触手の一本に絡み取られたくるみは、粘液に塗れ虚ろに助けを求めている。
どうやらあの触手には、何やら危険な能力があるようだ。
このままではくるみの身が危ないと、触手を斬り落として助け出すエリー。
ところが触手はすぐに再生を始め、元通りの八本に戻ってしまう。
しかも当のさとりは嬉しそうに、エリーの姿を見降ろしていた。

「私、貴方にやられた時からおかしいのよ。体が火照ってどうしようもないの。これは貴方の仕業?
 ………そう、違うの。でも構わないわ。今の私は貴方を痛めつけて、惨めな悲鳴を聞きたくて仕方がないの!
 私をあそこまで喘がせたのよ? 当然、責任とってもらうわ!」

そう言って、さとりはエリー目掛けて触手を伸ばし襲いかかって来た。

「…………なんかもの凄く気持ち悪い事、言われた気がする…」

※サイコロを四回振り、出た数くるみのMGを減らす。






55

エリーとくるみは紫色のパトランプの光る換気口を進んで行く。
やがて換気口が何かの部屋へと繋がっている部分まで辿り着いた。
辺りを警戒しながら蓋を開け、部屋の中に入る二人。
するとそこには、だだっ広い受付のような場所が広がっていた。
この場所からいろんな所に繋がっているらしく、あちらこちらに廊下や扉がある。
しかし此処自体はベンチのような椅子が並んでいるだけの、何もない殺風景な場所だった。

「分かれ道を抜けたと思ったらまた分かれ道、まるで迷路ね」
「手掛かりが何もない以上、手当たり次第に探すしかない…か」
「ちょっとまったー!」

そこへ突然何者かの声が響く。
そして通路の一つからヒポグリフに乗って、一人の妖怪がやって来た。

「ここは、ごぞんじえいえんてー! かってにはいる、わるいようかいは、れいせんちゃんがおしおきしちゃうぞー!」
「あれ、ヒポグリフよね? なんで上半身が鷲じゃなくて雀なの?」
「本当だ。大きいと結構気付かないものね、さすがくるみ」
「うわーん! むしするなー! やっちゃえミスチー!」

そう鈴仙・優曇華院・イナバが言うと、ヒポグリフのミスチーは羽搏き飛び上がる。
そのまま空中に留まると、大きく口を開き鳴き声を上げた。

「チュインチュイーン!!」
「!!」

途端に真っ暗になる視界。
まるで電気が全て消えてしまったかのようだ。

「どうなってるの!? 何が起こったの!?」
「ダメ、何も見えない。ただの暗闇じゃないわ!」

吸血鬼のくるみでも見えない闇となると、恐らくミスチーの能力による目潰しの一種に違いない。
エリーがそう考えていると、鈴仙の声が聞こえて来る。

「ふっふっふ~、なにもみえないでしょ~。でもわたしには、あなたたちがはっきりみえてるもんねー!
 まさにげんそーきょーのニンジャ! すごいぞー! かっこいいぞー!」
「チュインチュイーン!!」
「………ちっ」

だが幸い気配で相手の位置は分かるので、戦えない状況ではない。
そう考えていると突然気配がエリーに近付き、爪が見えたと思った瞬間斬り付けて来た。

「は、はや……ぐっ!」

なんとか防いだとはいえ、少し守るのが遅かったら斬り裂かれていただろう。
エリーは頬に冷や汗を浮かべ、気配のする方を睨みつける。

「……厄介なのに出会っちゃったみたいね…」

※サイコロを一回振り、出た数エリーのMGを減らす。






56

「幽香ちゃんをあんな目に遭わせておいて、ただで済むとでも思ってるの?」

エリーは向かって来る蓮子に躊躇なく鎌を投げつける。

「なっ!」

両腕を使い鎌を防ぐ蓮子。
だが鎌は床に落ちずに再び向かって来る。
弾かれた鎌をエリーが左手で掴み、斬りかかって来たのだ。
しかしこれも蓮子は防ぎきる。

「何回やっても同じこ………ああっ!」

エリーの二撃目も防ぎきった蓮子。
だが防いで初めて己の失敗に気付く。
エリーは落下中の鎌を掴み、そのまま蓮子を狙った。
結果として二撃目は下から打ち上げるように飛んで来る。
それを防いだ蓮子の腕は勢いに押され、頭の上まで弾かれてしまった。
そうなると残ったのは無防備な蓮子の胴体と、エリーの右腕。
その右腕は蔦が絡みつき、巨大な拳となっている。

「幽香ちゃんの苦しみ、思い知れええぇぇぇぇ!!」
「おぐぅっ!?」

綺麗に蓮子の腹に決まったエリー渾身の一撃。
そのまま蓮子の体は、放物線を描いて宙を舞う。

「いぎぃ!?」

ところが蓮子は一気にエリーの方に引き寄せられ、再びエリーの拳を喰らってしまった。

「な、何が……」

慌てて今起こった事を確認しようとする蓮子。
だが確認するまでもなく異常な感覚が蓮子にこの危機的状況を教えてくれた。

「………あああああああああ!?」

体内に蔦が入り込んでいる。
それも内臓や骨に絡みつき簡単には抜けないようにだ。
ショックで冷静さを失う蓮子、そこにエリーの冷たい声が追い打ちをかける。

「さぁ、貴方達が幽香ちゃんに何をしたかキッチリ話しなさい」
「な、何を言ってるの……? ギャアアアアアア!!!」

事務室に響く蓮子の悲鳴とミシミシという音。
吹き飛んでしまいそうな意識の中、蓮子は必死にエリーの怒りの原因を探っていた。
なんせ蓮子は食事を作っていただけで、幽香と直接会った事は殆どない。
一体何がエリーをそうさせるのか。やがて今の幽香の状態を思い出した蓮子は顔面蒼白となる。

「待って! 違う! 違うの! あれは私達の仕業じゃない!」
「しらばっくれたと思ったら今度は命乞い? 本当に救いようのない女ね」

エリーは心底うんざりした表情を浮かべ蓮子の肩に左手を乗せる。そして、

「ま、待って! お願い! 信じ……ヒギィ!!」

蔦を蓮子の内臓ごと引き摺り出した。
蓮子の腹は腸と背骨がなくなり空洞になっている。
エリーが押さえていた左手を放すと下半身を無視して床に倒れ、蓮子の体は真っ二つになった。
どくどくと流れ出す血を眺め、エリーは右手から次第に枯れていく蔦と血塗れの臓物を投げ捨てる。
そして未だに倒れているくるみの許へと急いだ。

「………エリー? 私…」
「もう大丈夫よ、くるみを苦しめていた奴は私が倒したから」
「…そう………あ、エリーこれ」

くるみはそう言って手に持っていたノートを渡す。
エリーが開いてみると、そこには明らかにページを破り捨てた跡があった。

「……去年の夏頃から先がなくなってるわ」
「そう、丁度幽香ちゃんがいなくなった頃よ」
「………あいつら、こんな小細工までして……よくも幽香ちゃんを……!」

ノートを投げ捨て怒りに震えるエリー。
そんなエリーに少し怖気づきつつ、くるみは話を切り出す。

「…もう此処には目新しい物はなさそうよ。一旦戻りましょう」
「………そうね」

くるみの言葉にエリーは若干落ち着きを取り戻したようだ。
やがて二人は他に誰もいないか確認すると、換気口の中へと入っていった。

※『雷符』を取得






57

アリス目掛けて勢いよく鎌を投げるエリー。
だが何処かから飛び出した人形達により、鎌は打ち返される。
更に背後から襲いかかる気配に、エリーは振り返り鎌を振った。

「………えっ」

ところがそこにいたのはくるみ。
くるみは鎌をかわすと、爪でエリーを斬りつけて来る。

「そんな……くるみ、どうして…」
「ふふふ、今の彼女は私の操り人形。さぁ、どうする? 自分の身惜しさに仲間を傷つける?」
「そうだったのね。私はてっきり、くるみがおかしくなっちゃったのかと…」
「……エリー、後で覚えときなさい………」

エリーはくるみに苦笑いをすると、少し距離を取り暫く考え込む。
やがて決心がついたのか、鎌を手に向かって行った。

「そう! 戦うのね! いいわ、相手してあげる!」

徐々に狭まって行く二人の距離、次第にそれはくるみの爪が届く程の距離になる。
そしてくるみの爪がエリー目掛けて振り下ろされると、エリーはそれを飛んでかわした。

「仲間さえ、どうにかかわせれば勝てるとでも思ったの?」

しかしアリスはエリーの正面に人形を出す。
人形の口には魔力が集中しており、強力な一撃が飛んで来るのは誰が見ても明らかだ。
ところがエリーはくるみの頭を踏むと一気に跳び、人形を斬り落とした。

「なっ!」
「私を踏み台にした!?」
「……まだよ! こっちには人形が、いっぱいいるんだから!」

すぐに弾幕の準備を始める人形達、その口には無数の氷弾が出来始めている。
だがエリーは人形ではなく、くるみの背後に鎌を投げ飛ばした。

「操り人形って言うのはこういう事?」

途端にガクンと膝をつくくるみ。
すると真っ赤な目を光らせて、アリスを睨みつけた。

「よくも恥ずかしい真似、させてくれたわねぇ!」

直後、人形達の足下から火柱のように巻き起こる弾幕。
人形達は一体も残らず巻き込まれ、粉々になって消えた。

「………くるみ恐い」
「何よ!」
「ごめんなさい、何でもありません」

アリスはその光景に茫然としている。
だがその眼前に鎌が向けられると、我に返りキッと二人を睨んだ。

「やってくれるわね」
「当然よ。幽香ちゃんがいなけりゃ、楽に勝てると思ってたの?」
「舐められたものね。本気で来なさい、あの時はもっと強かった筈よ」

その言葉を聞くとアリスはにやりと笑う。
そして手に持ったグリモワールを広げると、五色の魔法陣を展開し宙に浮かび始めた。

「なら見せてあげる。私の知り得る究極の魔法、異世界の怪物の力を従える召喚術を!」






58

換気口を進み、井戸の底の空洞に戻って来た二人。
後ろには先程出て来た換気口を含めて、九つの換気口がある。

「次は何処へ行くべきかしら」

※此処ではサイコロを振らずに選択肢から自由にお選びください。






59

「換気扇が止まってるわ。動力室の換気扇と連動してたみたいね」

それはエリーとくるみが最初に入って来た時には回転していたプロペラ。
今はぴったりと止まっており、通路の中へ入れるようになっている。

「如何にもって感じするわね、入ってみましょ」
「ええ」

換気扇の隙間から中に入って行く二人。
するとすぐに二人は空中に飛び出してしまった。

「………あら?」
「…………そうよね、換気扇が必要って事はそれだけ深いぃぃぃ!!」

そのまま一気に落ちて行き、坂のようになっている着地点に沿って二人は転がって行く。
やがてゴロゴロと転がり続けた末に、とある部屋の換気口の蓋を突き破り部屋に投げ出された。
部屋の中はまるで外のように寒く、所々凍り付いている。

「…いった~………此処は何処?」
「今までよりも地下深くって事しか………エリー!」

すると突然、声を上げ身構えるくるみ。
何事かとその視線の先を見てみると、そこには大勢の赤子で出来た山があった。

「………何あれ」
「……妖怪ね、中に本体がいる」
「いや、本物の赤ちゃんだったら逆に怖いんだけど」

そんな事を話していると、山の中から妖怪が顔を出す。
薄紫の髪に白い帽子を被ったその妖怪は、二人の方を見ると溜め息を吐いた。

「まさかこんな所まで入り込んで来るなんて……最近の侵入者は頑張り屋さんね」
「そりゃどうも、ついでにいろいろ教えてもらえないかしら。この屋敷の全貌とか」
「生憎私はこの有様、屋敷の事は何もしらないわ」

その言葉を聞くと、くるみは妖怪の姿と部屋に扉の大きさを見比べる。

「ああ……それはお気の毒に」
「だから私を襲って聞き出そうとしても無駄よ」
「そう、それではさようなら」

そう言って扉を開け部屋を出ようとするエリー。
だが扉は凍り付いており、押しても引いても開かない。

「何よこれ、ちっとも開かないじゃない」
「私はレティ・ホワイトロック、冬の妖怪よ。私の冷気が流れ出る限り、この部屋の氷は溶け出さない」
「なるほど、つまり貴方を倒せばいい訳ね」

エリーとくるみは武器を構え、レティに向かって戦闘態勢を取った。
しかしレティは赤子の山の中に潜り込み、頭を隠してしまう。

「………戦うんじゃないの?」
「嫌よ、私は戦うの苦手だし」
「…は?」
「戦いたくないの。そもそも私には戦う理由がないわ」
「……………何それ」
「何とでも思えばいいわ。私がこうして守り続けるだけで、貴方達は少しづつ寒さで弱っていくのよ」

レティはそのまま守りの体勢を続けている。
確かにこの寒さではあまり持たない、時間が掛かればそれだけ死が近づく。
そう判断したエリーとくるみは、動かないレティに襲いかかっていった。






60

「やるって言うなら受けて立つわよ!」

そう言って飛び出したのはエリー。
真っ直ぐルーミアの方へ向って行く。

「!!」

ところが突然辺りは暗闇に包まれてしまった。

「これってミスチーの…」
「あれとは違う。何故なら私の能力は目潰しではなく、正真正銘の闇だからな!」

突然エリー目掛けて伸びて来る大剣。
視界の利かないエリーに対し、何度も斬りかかって来る。

「こ、これじゃ攻撃出来ない!」
「ほう、よくかわすな。伊達に勝ち抜いて来た訳ではなさそうだ!」

一方でくるみからは球体の闇に包まれるエリーと、そこへ何度も大剣を突き刺すルーミアの姿が見えていた。

「エリーが危ない!」

咄嗟に手に妖力を集め、オレンジのハンドパペットを作り出すくるみ。
そして人形の口の中に大量の氷弾を作り出すと、ルーミアを狙って撃ち出した。

「しかし何時までかわしきれ……ひゃあっ!」

氷弾はルーミアに当たると、その体を凍りつかせていく。
すると空中に五つの目が現れ、氷弾を打ち消しつつくるみをレーザーで攻撃して来た。

「うぐっ……」

レーザーの光に怯んだものの、すぐにくるみは空中に逃げレーザーをかわす。
そのまま空中から氷弾を放ちルーミアを攻撃し続けた。

「……このままでは分が悪いな…」

ルーミアは作戦を変えるべく、闇を払い二人から距離を取る。

「いいだろう、私も全力で相手をしてやる」

そしてそう言い一気に妖力を放出し、自身の周りに闇を集め出した。

「う…ぎ……やはり…まだ完全には……がああああああああああああああああ!!」

やがて闇が晴れると、中からルーミアが姿を現す。
しかしその姿は先程までとは全く異なる異様な姿だった。
全身は闇のような黒に染まり、以前の白い肌の面影は微塵もない。
更に顔は無くなり口だけしか残っておらず、ヘソの辺りにも巨大な口が開いていた。
するとルーミアは二つの口で、二重音声のように喋り出す。

『私を追い詰めたつもりで、調子に乗っているんじゃないだろうな。この私があの程度でやられると思ったか。
 図に乗るなよ、弱小妖怪風情が! 貴様等如きにこの姿を見せたのも、二人同時に相手をするのが面倒だったに過ぎん!
 一分もいらない、数秒で方を付けてやる! 私の力の前にひれ伏すがいい!』
「なんか……キャラ変わってない?」
「………冷静に考えたら、今までもこんな事あったような気が……」






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