永遠亭地下手術室、そこで一人の女性が頭を抱えていた。

「…お師匠様?」
「…………」

その女性、永琳は手術室に入って来た因幡 てゐが話しかけても返事を返さない。
机に肘を突き、頭を抱えて俯いているだけだ。

「…あの、今回は仕方ないと言うか……運び込まれた時にはもう手遅…」
「黙りなさい!!」

永琳がバンッと机を叩き大声を張り上げると、てゐは驚き竦みあがってしまった。
衝撃で机の上の試験管が落ちて、辺りに破片を撒き散らす。
それに視線も向けずに永琳は背凭れに寄り掛かり顔を片手で覆うと、ぶつぶつと呟き始める。

「運び込まれた段階では息があった、生きているならそれを救うのが私の仕事よ」
「…でも……お師匠様は元々薬師で…」
「そんな事は患者には関係ないのよ! 私が救ってやれなかった、それが事実よ」

若干危ないところもあるが、この人は元々こういう人だ。
自分に絶対の自信があり、人を救う事を真剣に考えている有能な薬師にして医者。
だがあの日を境におかしくなってしまった。
鈴仙が塞ぎ込んでしまったあの日から、治療も調合も上手くいっていない。
永琳も徐々におかしくなり始め、周りにあたるようにもなった。
全ての原因である自分が如何にかしなくてはいけないと、必死に考えるてゐだったが
今現在、何もいい方向に進んでいない。
永琳自身が上手く取り繕っているのか、蓬莱山 輝夜には永琳の異変はバレていないのが不幸中の幸いだ。
こんな事が分かれば何千年もの間、一緒に過ごしてきた輝夜がどれほど心を痛めるか分からない。
兎に角、永琳にはなんとかして立ち直ってもらわなければならないのだ。

「月の頭脳と謳われたこの私がこんな失態を立て続けに……ありえないわ…」

てゐ自身もこんな永琳は見ていたくない。
永琳にはいつもの少し異常なんじゃないかっていうぐらい、自信に充ち溢れた姿でいてほしいのだ。
実際、妖怪兎達の間でも不安が広がり統率が乱れ始めている。
永琳の異変がそのまま永遠亭の異変に繋がっているのだ。

「…お師匠様……」
「何か…何か原因がある筈よ……そうでなければこんな事………原因さえ分かればヤマメも死なず……
 早苗も鈴仙も今頃とっくに元気になってもおかしく………ちょっと待って」

突然何か考え事を始める永琳。
もしかして解決策を見つけたのだろうか。
てゐの視線が期待を帯びる。

「……分かったわ、原因が……この状況の打開策が! …ふふふ、なんでこんな簡単な事に今まで気づかなかったのかしら」
「そ、それじゃあ!!」
「ええ、そうよ。永遠亭は蘇るわ」

そう言っててゐに振り返る永琳。
ずっとこの時を待っていた筈だ
永遠亭が復活するこの時を。
それなのに何故だろう
こんな事を思ってしまうのは。
分からない、分からないが





目の前の師が恐ろしい化け物のように思えてしかたないのだ。





「そうと分かったら行動よ」

永琳が席を立ち、こちらに近づいてくる。
ただそれだけの事だ、なのにそれが恐ろしくて堪らない。
少しづつ距離が狭まる毎に心臓の鼓動が速くなる。
逃げ出そうにも足が震えて動かない。
目からは涙が溢れ出す。
そうしている内に永琳はすでに目の前まで来ていた。
そして永琳の手がてゐに迫る。

「ヒィィ!!」
「なんて声出してるの」

永琳の手はてゐの右腕を掴んだ。
その瞬間悲鳴を上げたてゐに、永琳は呆れ顔で笑っている。
だがてゐにはその顔も直視出来ない。
右腕だって引き千切られそうな気がして震えている。
体中から冷や汗が止まらない。
すると突然、永琳が顔を近づけて来た。

「寒いの? 震えてるわよ」

そう言って永琳は懐から注射器を取り出し、てゐの腕に向ける。

「一応採血しておいた方が…」
「だ、大丈夫ですっ!!」
「そう…」

何故こんなに怯えているのか自分でも分からない。
ただ体中が逃げろと警告している。
だが腕を掴まれてる為、簡単には逃げられない。
無理矢理振り払えば却って怪しまれる。
今は大人しくしているしかない。
てゐがそう考案していると、急に腕を引っ張られた。

「ぼーっとしてないで行くわよ」
「い、行くってどこへ!?」
「打開策が見つかったって言ったでしょ?」

そのままてゐは地上まで連れて来られた。
やがてある廊下に辿り着くと永琳は歩みを止める。
何事かと見てみると、そこには三羽の妖怪兎と幽香がいた。
だが何やら様子がおかしい。

「な、何!?」
「あら、随分つれないわね~。忘れちゃった? 私達の事」
「小者には興味無いって事かしら? ん?」
「……何をすればいいの…」
「ぷっ、あはははは! 私達まだ何も言ってないのに!」
「徹底的に調教されちゃったみたいねぇ、あの時とは大違いだわ」
「あの時? ………まさか!」
「そうよ、貴方が向日葵畑で襲った三羽の卑弱な妖怪兎よ」
「この度、無事妖力が溜まり人型へとランクアップ出来ました~」
「私なんてあの時、思いっきり蹴っ飛ばされたのよ~? 痛かったな~」
「…………」
「ねぇ、もう言いたい事分かるでしょ? 分かったら大人しくやられなさいっ!」

その言葉を皮切りに、妖怪兎達は一斉に幽香を襲い始めた。
無抵抗の相手を容赦なく殴り蹴り上げる。
さすがに目に余る行為だと思い、止めに入ろうとするてゐ。
だがそれを永琳が黙って止めた。
何故止めるのか、てゐは恐る恐る永琳の顔を見上げてみる。
その顔が視界に入った瞬間、てゐはぞっとした。

「…………」

てゐが見た永琳は、妖怪兎達の暴行を笑って見ていたのだ。
まるで愉快なショーでも見ているかのように。
やがて妖怪兎達が少し離れ、ボロボロの幽香が姿を現す。

「本当に何もしないわね~、永琳様の調教様様って事かしら」
「仕方ないわよ、こいつは永遠亭の『物』なんだから」
「そうそう、確か背中にアレがあった筈よ」
「……!!」

妖怪兎の言葉に反応して幽香の体がビクッとなる。
それを妖怪兎達は下品な笑みを浮かべ眺めていた。
やがて妖怪兎の一匹が幽香の背中に手をかける。

「!! 嫌ぁ! やめて!」
「玩具が主人に楯突いてんじゃないわよ!」

そう言って妖怪兎の一匹が思いっきり引っ叩く。
すると幽香はぐったりしたまま一切の抵抗をしなくなった。

「……ぅ…お願い……許して……」
「許して、か。鈴仙ちゃんはあの時、何て言ってたのかなぁ…」
「!! ………」
「鈴仙ちゃん可愛かったのにね~、私達がそっぽ向くとすぐ涙目になっちゃって…」
「本当。頼りなかったけど、いい子だったよね~。でも今じゃ永琳様と姫様以外は面会禁止だもんね~…」
「…………」
「あ、あったあった。ほら、皆おいで」

妖怪兎達が、服を捲りあげられた幽香の背中に集まって来る。
そこには大きな痛々しい焼印がくっきりと入っていた。
妖怪兎達が楽しそうに罵る度に、幽香の瞳からは大粒の涙が零れ落ちていく。
暫くすると飽きたのか、妖怪兎達は次々離れていった。
やっと解放されたと一息吐く幽香。
その目の前に水と雑巾の入ったバケツが乱暴に置かれる。

「じゃあ、この廊下全部掃除しといて」
「私達は竹林に月見に行くから、帰って来るまでに全部済ませときなさいよ~」
「手ぇ抜いたら私達が怒られるんだから。ちゃんとやらないと怖いわよ~?」

そのまま妖怪兎達は竹林の向こうへ去って行く。
後には傷だらけの幽香とバケツが残されていた。
そこへ永琳がやって来て幽香の前で立ち止まる。
永琳は少し屈むと無表情で、ぐったりとする幽香の頭の上に手を乗せた。
それに反応するように、恐る恐る幽香は顔を上げる。

「……え、永琳さ、ごぼっ!?」

次の瞬間、永琳は幽香の頭を掴むと無言でバケツの中に突っ込んだ。
必死に暴れて抜け出そうとする幽香だが、力が入らないのかまったく効果がない。
次第に動きが鈍っていき、抵抗も大人しくなっていく。
やがて完全に幽香が動かなくなると、永琳は手を離しバケツを蹴り飛ばした。

「……ごほっ! …けほっ……はぁ…はぁ……」
「調教の効果は覿面っと、てゐ来なさい」
「は、はいっ!」

これまでの出来事をただ茫然と見ていたてゐを、永琳の言葉が現実に引き戻す。
てゐが傍まで寄ると、永琳は背中を向けたまま口を開いた。

「てゐ、ここから先の問には、はいかいいえで答えなさい」
「…はい!」
「今この廊下は水浸しだけど、今日の掃除係はさっきの兎でいいのよね?」
「はい!」
「じゃあ廊下の掃除が終わってないのに掃除係がいなくなるのはおかしいわよね?」
「はい!」
「これは立派な仕事放棄と考えてもおかしくないわよね?」
「はい!」
「……それじゃあ悪い兎にはお仕置きが必要だと…思わない?」
「…はい」
「そんな悪い兎は永遠亭には必要ない、そうは思わない?」
「……はい?」
「そんな悪い兎は私の実験材料にされても仕方ない、そうは思わないかしら?」
「!!」

その瞬間、振り返った永琳と一瞬だが目が合う。
目が合ったと思ってすぐに目を逸らしたので一瞬だけだったが、確かにてゐは見た。
自分を襲った恐怖の原因、あのおぞましい目を。
あれはもう自分の知っている永琳ではない。
今の永琳は周りの者全てを解剖してしまいそうな目をしている。
いや、実際にする気なのだろう。
あの質問は云わば選択だ、仲間を犠牲にするか自分が犠牲になるかの。
モルモットに救いを与える研究者などいないように、今の彼女は平気で残虐な行いをするだろう。
恐らく犠牲になった者を待っているのは想像を絶する地獄、生きて帰れる保証はない。
この狂気の沙汰を表す目こそ、永琳が追い詰められた末導き出した打開策なのだ。

「…返事が遅いわね…もう一度訊くわよ? あの三羽は私の…」
「はいっ! そうです! その通りです! あいつらはお師匠様にどんな目に遭わされても仕方のない駄目兎です!!」

冗談じゃない、実験台など真っ平御免だ。
あの三羽には悪いが運がなかったと思って諦めてほしい。

「……返事ははいかいいえって……でも、貴方が私と同意見でよかったわ」
「ははは、そうですね…」

永琳の一言一言が恐ろしい。
もう体の感覚など無くなってしまっている。
ただ助かりたい、その一心で言葉を紡ぐ。

「それじゃあ私は実験室にいるから、あの三羽を呼んで来て頂戴」
「は、はいっ!」

そのまま永琳は地下に下りていった。
永琳が見えなくなると緊張の糸が途切れ、その場にへなへなと座り込んでしまう。
周りを見れば、いつの間にか幽香はいなくなっている。
永琳と話している間に逃げ去ったのだろう。
出来ればこのまま心が落ち着くまでじっとしていたい。
だがあんまりゆっくりもしてられない、永琳が待っているのだ。

「………どうして……お師匠様…」

てゐは必死に立ち上がり、三羽の消えた竹林へ向っていった。













翌朝、萃香が妖怪の山に旅立つ日がやって来た。
いつもは明るい萃香の表情も、どこか暗く影を落としている。

「………」
「何度も言うけど萃香が気にする事ないからね? あれは事故だったんだ」
「……でも私だったら事故にならなかった…」
「萃香!」

昨晩からずっとこの調子だ。
今までは楽しんで飲んでいた酒も、ヤマメの事を忘れる為に飲んでいるように見える。
萃香にとって助けられた相手を助けられなかった事は、強い心の傷になってしまったようだ。

「……パルスィは?」
「…………大丈夫さ、心配いらないよ」
「…そう…」

本当は大丈夫なんかじゃない。
先程も首を吊ろうとしてたところを、ギリギリで止めて来たばかりだ。
だが本当の話をすれば、萃香はますます塞ぎこんでしまうだろう。
嘘をつかないのが鬼のポリシーだが、友より優先すべき誇りなどありはしない。
これも萃香にしてやれる事の数少ない一つだと、勇儀は思っている。

「……あんたの事、待ってる奴が山にはいっぱいいるんだ。大将のあんたがそんなでどうするの」
「…うん」
「………」

正直、今の萃香に山の統率が取れるとは思えない。
だが今更なかった事になど出来ない、藍は萃香を信頼して選んでくれたのだ。
それに萃香の代わりなど、そうそういない。
勇儀も代われるなら代わってやりたいと思っているが、地底の妖怪が地上を仕切るなど賢者達が許さないだろう。

「…しっかりやるんだよ」
「………うん」

不安は募るが約束は約束、勇儀は送り出すしかない。
荷物を背負い旅立つ萃香の背中は、小柄ながら深い哀愁に包まれていた。





丁度その頃、リリカとメルランも目を覚ましていた。
昨日は何時の間にかいなくなってしまったルナサを探して、旧都中を飛び回る破目になったのだ。
クタクタになって帰って来たリリカとメルランだったが、夕食の置いてあるテーブルを見て唖然。
先に帰ってたのなら一声掛けてくれればいいのに、と詰め寄ろうとしたがドアを叩いても返事がない。
きっとルナサも疲れきってしまったのだろう、そう思い寝かせておいてあげる事にしたのだ。
ところが朝になっても起きて来ない、そもそも昨晩から姿を見ていない。
不安になったリリカとメルランは、ルナサの部屋に入ってみる事にした。

「という訳で姉さん、行っちゃいな!」
「私なの?」
「……こういう時は、姉から行くものでしょ?」
「そう?」
「そう」

リリカに後押しされ、メルランはルナサの部屋に入っていった。

「…悪いね、姉さん」

だがメルランを先に行かせたのは、リリカの策である。
もしルナサが部屋で寝ていただけの場合、勝手に入ったと怒られてしまう。
しかし先にメルランを行かせておけば怒られるのはメルランだけ。
自分は出て来た姉に、何食わぬ顔で挨拶すればいいのだ。
これこそリリカの目指す真のリーダーのやり方、自分は動かずに状況を把握する。
やはり自分には人を動かす才能があるのだ。

「……それにしても遅いな~」

自画自賛していたリリカだったが、さすがに戻って来るのが遅い。
説教にしては静かすぎるし、寝ていたらすぐ出てくる筈だ。

「…………」

まさかいなかったのだろうか。
昨日は夕飯が用意してあった為、部屋にいるものだと思っていたが
もし帰ってすぐに何処かへ行ってしまったのなら、部屋にいない可能性もある。
生真面目な姉に限ってそんな事はないと思いたいが、変に思い詰めふらっと蒸発なんてしないとは言いきれない。
しかしそれにしたって慌てて飛び出してくる筈だ。
何の反応もないのはおかしい。

「…メルラン姉さん?」

恐る恐る部屋に入るリリカ、すると中ではメルランが立ち尽くしていた。
メルランは一点を見続けたまま、微動だにしない。
表情も固まっており、まるで人形のようだ。

「……何見てんの、姉さ………」

メルランが見ていたもの、その光景にリリカは言葉を失う。
同時にその場にがっくりと膝をつき、茫然とする。

「……なん…で…」

その時メルランの手から一枚の紙が滑り落ちる。
紙にはルナサの字でこう書かれていた。

『メルラン、リリカ、私は一足先にレイラの元へ旅立とうと思います。
 いつも一人で先走るなと言っておきながら、勝手な行動に出た事をお許しください。
 でも貴方達二人ならもっと高みに昇れると信じています。
 今までは私が五月蝿くて自由に出来ない事もあったでしょうが、これからは自分の好きなように奏でてください。
 最後に、今まで足を引っ張って来てごめんなさい。
 姉は貴方達を心から愛しています。

 ルナサ・プリズムリバー』





一方、見渡す限りの荒れ地の中心では空がぐったりと倒れていた。
息も絶え絶えで最早虫の息である事は、事情を知らない者が見てもすぐに分かる。

「……さ…とり……様……」

空はさとりに捨てられてしまったと思っていた。
理由は暴走してしまったからに違いない。
この荒れ地も元は花の咲き誇る綺麗な花畑だったが、暴走したせいで焼き払ってしまったのだ。

「…さとり…様ぁ…!」

届かないと分かっていても、必死に涙ぐみながらも主人の名を呼ぶ空。
捨てられたのは自分が原因なのは分かっていても、空はどうしようもない憤りを感じていたのだ。
体が中から突き破られそうで苦しかった、こんな時だからこそ助けてほしかった。
あの日、一生面倒を看ると言ったのは嘘だったのだろうか。
さとりの言う家族とは、こんなあっさり捨てられるものなのだろうか。
さとりにだってどうしようもなかったが、それを知らない空の心は信じていた者に見捨てられた絶望に染まっていた。

「……さと…うあああああああああぁぁぁぁああああぁぁあああああ!!」

もう何度目だろうか、八咫烏のエネルギーが空から無理矢理放出される。
その度に全身を貫く苦痛に意識が吹き飛びそうになりながらも此処まで辿り着いたが、どうやらもう限界らしい。
あと数回、同じ事が起これば空の体はバラバラに吹き飛んでしまうだろう。

「…………」

死ぬのは仕方ない、ただせめて最期の時は思い描いていた家族と一緒にいたかった。
空の儚い想いは下りてくる瞼で消えていく風景と共に、暗闇の中に消えていく。
全てが闇に消える瞬間、目の前に真っ赤な人影が映り込んだが空にはもうどうでもいい事だった。

「………この子の有り余るエネルギー……もしかしたら私の研究品を使いこなせるかもしれないわね…」













空がいなくなってから数日間、さとりは空を探し続けていた。
ある時は妖怪の山へ、またある時は人里へ。
いろいろ探してはいるものの、不慣れな地上での捜索はなかなか進まずにいた。

「さとり様…あんまり…無茶しちゃ…ダメだよ……」
「そうだよ……お姉ちゃんは体力ないんだから」

椅子に腰掛けるさとりの傍に、お燐と古明地 こいしが寄り添う。
三人とも捜索から帰って来たばかりで、息も絶え絶えで消耗しきっている。

「……お………く…う………」

だがじっとなんかしていられない。こうしている間も空は主人を待っている筈なのだから。
きっと今も八咫烏の力で苦しんでいるに違いない。
それなのに主人が疲れ程度で倒れている訳にはいかないのだ。

「…行……か…な………きゃ…」

腕に力を入れ立ち上がり、再び出掛けようとするさとり。
しかしすぐにふらつき、その場に倒れてしまう。

「お姉ちゃん!」
「慌てなくても皆で探してるんだからすぐ見つかるよ! だから…」
「……………お空…?」

さとりの言葉に振り返るお燐とこいし。
するとそこには空が立っているではないか。
右腕には見慣れない制御棒が銀色に輝き、その存在を主張している。
以前のような暴走も見られず、制御棒がちゃんと機能しているのは明らかだ。

「お空!!」
「制御棒、作れる人がいたんだね! よかった……よかったよぉ……」

感動の再会を心から喜ぶお燐とこいしだが、空の表情はどこか暗い。
不思議には思うが、今は空が無事だっただけで十分だ。
お燐は誰よりも空の無事を心配していた主人の方へ、喜びを分かち合おうと振り向く。

「さとりさ……ま…?」

しかしさとりの表情は歓喜とはまったく別のものだった。
涙を流し、頭をいやいやと左右に振っている。
何故さとりだけがこんな行動をとっているのか、答えは一つしか考えられない。

「お空、あんた何を考えて…」
「…………」
「お空!」

突然響いたさとりの声に、驚いてさとりを見るお燐。
そこには両腕を大きく広げて立つ、さとりの姿があった。
まるで何かを守る為に盾になろうとしているかのように。

「な、何を…」
「蓋を開けるよう指示したのは私よ! 恨むなら私だけを恨みなさい!」
「さとり様!?」

それに応えるように、空はさとりに制御棒を向けた。
制御棒の先には穴が開いており、そこから強いエネルギーが感じられる。
何だか分からないが危険な物である事には違いないようだ。
止めさせなければ、さとりが危ない。

「やめろお空! さとり様は…」

必死に叫んだお燐だったが、制御棒から出た弾幕は無情にもさとりの右目を貫いた。





「御主人様~、なんだってあんな見ず知らずの鴉に必殺の武器をやっちゃったんだよ~」
「何言ってるの、あれは燃費が悪すぎて使い物にならないって話したでしょ?」
「けどよ~、最速の弾幕だぜ? 一発でも十分強いじゃんか~、それをタダでやっちゃうなんて…」
「あら、誰もタダであげたなんて言ってないわよ?」
「へ?」
「あの子は私達の元へ戻って来るわ。死にかけの自分を救ってくれた、命の恩人の元にね」
「まさか全部計算で!?」
「ふふふ、無尽蔵のエネルギーを持つ魔法生物……学会を見返すどころか資源問題の救世主になれるわよ!」
「……御主人様は鬼か悪魔だな」
「さあ、歓迎の準備を始めましょう! 私達と地球を救う、未知のエネルギー資源の来訪を!」








  • 一応いっとくけど
    うつほだからな
    -- 名無しさん (2009-11-21 11:11:55)
  • キャラ壊れすぎじゃね? -- 名無しさん (2009-11-21 19:15:31)
  • どんどん幻想郷が壊れていってるな・・・ -- 名無しさん (2009-11-21 20:10:31)
  • 今回のは尻切れトンボな感じが強いな
    メインもいつのまにか変わってるし -- 名無しさん (2009-11-22 03:00:51)
  • お燐があんな歌を口ずさむからみーんな地獄行きになったんだ!
    それはさておき残された地底組は……。 -- 名無しさん (2009-11-22 09:56:25)
  • だんだん崩れていく様が良いな
    出来たら続きと切欠も見たい物 -- 名無しさん (2009-11-24 08:04:03)
  • 赤い服の人はもしや教授か!! -- 川旧 (2009-11-25 20:01:53)
  • ものすごいペースで幻想郷から妖怪が減っていってるけど
    次回作は大丈夫なのか…? -- 名無しさん (2009-11-27 08:14:53)
  • いつから地霊殿にメタナイツが… -- 名無しさん (2012-08-22 19:15:05)
  • ↑同じこと考えてたわwww -- 名無しさん (2013-04-13 20:23:41)
  • パルちゃんは?パルちゃんは? -- 名無しさん (2015-12-30 07:19:29)
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