真夜中の守矢神社、真っ暗な部屋の中から長い棒のような物を持ち早苗が出てきた。
日が落ち暗くなった頃に帰ってきた神奈子は、食事を摂り風呂に入るとすぐ部屋に戻ってしまった。
いつもとは違う行動を不思議に思ったが自分にはやらなくてはならない事がある。
早苗は出発の準備をすると、神奈子を起こさないように慎重に出入り口を目指していた。

「どういうつもりだい」
「ッ!」

もう少しで神社を出るというところで、突然暗闇に声が響く。
驚いて振り返ると柱の陰から神奈子が姿を現した。

「こんな時間に出歩くなんて、私は許してないよ」

神奈子は昨日と一昨日の事から、早苗が出かける時間を予想し待ち伏せしていた。
夕暮れ時や朝、問い詰めても家事や時間を理由に逃げられる可能性がある。
それより夜中出かけるタイミングを狙った方が効果的だ。

「一体夜中に何をしているんだい」
「………」

もし用事を理由に逃げるつもりなら、何をしているか説明する必要がある。
長い付き合いだ。嘘を吐けば簡単にバレる。
かといって部屋に戻るには自分の傍を通らなければならない。
今の早苗は完全に八方塞がりな筈だ。

「あんた、人里に下りて何かしてるんじゃないのか?」
「………」
「正直に答えな」
「………」

表面上は威圧した態度をとっているが、神奈子の心は動揺しきっている。
もし関係ないなら早苗にあらぬ疑いをかけている事になってしまう。
それは家族に対して、絶対にやってはいけない事だ。
そもそも早苗がこんな事するなんてとても思えない。
しかしこんな事出来るのは早苗ぐらいしかいないのだ。
事実と家族の間で揺れる神奈子に対し、早苗は何も喋らずただじっとしていた。

「なんとか言ったらどうだ。それとも私に言えない事でもしてるのかい?」
「…にとりさん、ですか」
「…何だって!?」
「あの河童が何か言ったんですね」

突然早苗の口から出てきたにとりの名前。
だがあの時、にとりは光学迷彩をしていた。
光学迷彩を切ったのは自分と話していた時だけ、その間境内には誰の気配もしていない。
ましてやその時間、早苗は信仰集めに出かけている。
早苗がにとりと会っていた事を知っている筈がないのだ。

「なんでその事を……」
「………」
「答えろ!早苗!」

黙り込む早苗に堪えかね、つい声を荒げてしまう。すると、

「神奈子様のおっしゃる通りですよ」
「なっ…」

早苗は眼を見開き真っ直ぐこちらに視線を向けてきた。
その眼はまるで泥沼のように淀みきってしまっている。
それがとても恐ろしく感じられ、神奈子は一歩退いてしまった。

「確かに私は人里に行ってます。夜ではなく昼間ですが」
「ちょっと待」
「里の人達は最初はまともに話も聞いてくれませんでした。でも私、頑張って信仰の大切さを伝えたんです。
 毎日毎日里を訪ね、必死に話をしました。辛い日もありました。泣きたくなる時もありました。
 でもこれも全て神奈子様と諏訪子様の為だと思うと頑張れたんです。そしたら、想いって通じるんですね。
 里の人達も段々心を開いてくれるようになったんです。今では皆さん、真剣に信仰してくれます。
 最初に認められた時はとても嬉しかったです。いつも帰るように追い払っていた慧音さんが自分から頭を下げて
 これからは真面目に信仰する、里の人達にも信仰するように言い聞かせるって言ってくれたんです。
 その時は本当に努力した甲斐があったなって思えました。だから…」

そこまで言うと早苗は一気に距離を詰め、鼻がぶつかりそうな位置まで顔を近づけてきた。

「神奈子様もお話しましょう? きっと分かってもらえる筈です」

早苗の眼に不気味な光が灯る。
それは目を見て話せば分かり合えるという想いに奇跡を起こす能力が混ざった無自覚の洗脳だった。
当然、純粋な神に現人神の洗脳など効く筈がない。
だがその眼がまるで、自分を責めているように思えて目を逸らす。

「やめてくれ…そんな目で私を見ないでくれ…」
「なんでですか? お話しましょうよ。ほら、こっちを向いてください」

その声はいつもの穏やかな早苗に他ならない。
実際、早苗には何の悪気もないのだろう。
だが眼だけがずっとこちらを責め続けていた。
里を滅茶苦茶にしたのも全ては大切な神様の為。
だからこんな事になったのも神様のせい。
そう言っているように思えて仕方ない。
そんな視線を執拗に向ける早苗に我慢出来なくなりつい、

「やめてくれって言ってるだろ!!」

思いっきり突き飛ばしてしまった。

「…ッ!! 早苗! 大丈夫か!?」

我に返り床に倒れる早苗に駆け寄る。
早苗は驚愕した表情まま固まっていた。
やがて早苗の口がゆっくり動き出す。

「…なんで」
「悪かった! つい」
「どう…して?」
「…さな」
「なんで!? なんで分かってくださらないんですか!? 私は! 私は神奈子様の為を想って一生懸命信仰を集めていたのに!
 どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
 どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
 どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
 どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
 どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして
 なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
 なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
 なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
 なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
 なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」

突然取り乱し頭を掻き毟りはじめた早苗。
その姿には普段の穏やかな早苗は殆ど残っていなかった。
すぐにでも抱きしめて落ち着かせてやりたい。
それなのに、あの眼で見られると足が震えて動けなくなってしまう。
そうしているうちに早苗の手は真っ赤に染まっていった。

「お、落ち着きな、早苗!」
「分からない! どうして!? なんで神奈子様は私を、あ、あああ、あああああああああああああああああああああああ!!」
「早苗えええ!」

そのまま早苗は叫び声をあげ神社を飛び出していってしまう。
足の震えが治まり、まともに動けるようになった時には、もうどこに行ったのか分からなくなってしまった。

「どうしちまったんだよ…早苗…」

どうしていいか分からず、その場に立ち尽くす神奈子の頭によぎったのは諏訪子の事。
諏訪子が帰ってきてこの状況を知ったらどう思うだろうか。

『はっきり言って神奈子には失望したよ』

どんなに頭を働かせて考えてみても、

『こんな奴に早苗を任せるなんてどうかしてた』

浮かんでくるのは罵倒ばかり。

『私は早苗を連れてここを出る事にする』

大切な我が子のように育ててきた

『神奈子は一人で信仰でも集めてれば?』

早苗を壊された怒りの言葉だった。

『もう顔も見たくないよ。二度と会う事もないだろうけどね』

頭の中に響いた声に滅多打ちにされ、汗が噴き出し目には涙が浮かぶ。
やがて自分の空想に追い詰められた神奈子は、頭を抱え蹲っていた。

「違うんだ、諏訪子…。…こんな、こんな筈じゃ…」

耳を塞ぎ首を横に振りながら、必死に弁解をはじめる神奈子。
一人しかいない筈の神社の中で、悲痛な涙声が小一時間続いていた。













暫くして諏訪子の声も聞こえなくなり、ようやく神奈子は落ち着きを取り戻していた。
気づけば諏訪子の部屋の前まで来ている。
この部屋にはあの日以来一度も入っていなかった。

「…諏訪子?」

何か直感的なものを感じて部屋の中に入る。すると、

「これは……」

部屋の中には無数の箱が並べられていた。
それらは全て同じ大きさの正方形で出来ており畳の上、箪笥の上、卓袱台の上などいたる所に置かれている。
埃がついていない事からも諏訪子がいなくなった後、誰かが部屋に入り置いていったのが分かった。

「一体どうなって…」

箱がびっしり並んだ光景に度肝を抜かれる。
だが問題なのはそこではない。これが何の箱かだ。
箱の正体を確かめるべく、近くにあった箱を手に取り蓋を開けてみる。

「…供え物か?」

見ると中に入っていたのは黒くて丸い物体だった。
箱の中まで光が入らない為、具体的に何かまでは分からない。
見ようによっては、特大の饅頭のようにも見えなくはなかった。
一体これが何なのか、中身を確認しようと試しに腕を突っ込んでみる。

「ッ!!」

だが指先が箱の中身に触れた途端、神奈子は箱ごとそれを放り投げてしまった。
箱は床に落ち、中身は卓袱台の陰に入っていってしまう。
神奈子の指が触れた箱の中身は、手触りが繊維状の物のようでカビの一種だと感じたからだ。
恐る恐る転がった中身を確認する為、卓袱台を持ち上げる。

「なっ…」

すると部屋の明かりに照らされて浮かび上がったのは
饅頭でも、ましてや食べ物でもなくそれは





失踪していた文の首だった。





「なななななんだい、これはっ!」

ふいに現れた知り合いのなれの果てに、思わず腰を抜かしてしまう。
文の顔は目も口も大きく開かれていて、その死が壮絶なものだった事を物語っていた。
その場から逃げ出そうと後退りした神奈子は背中を箪笥にぶつけてしまう。途端、

「ヒィィッ!!」

上から降ってきた三つの頭。
ブロンド、オレンジ、黒の髪をしたその首は子供なのか妖精なのか、文のそれよりかなり小さ目だった。
部屋にある残りの箱の中身もこれと同じ物だとしたら…。
そう考えただけで寒気がする。

「なんで、こんなものがここに…」
「見つかっちゃいましたか」

突然隣でした声に驚き振り向くと、そこには早苗が立っていた。
淀んだ瞳と大きな隈とは裏腹に、その声色はドッキリがバレた子供のようだ。

「まさか、これ、あんたが」
「そうですよ? 毎晩探して集めたんです。凄いでしょう!」

何の悪びれた様子もなく、寧ろ誇らしげに拾い集めた三つの首を見せびらかす。
やがてその首を箱にしまうと早苗は笑顔で振り向いた。

「これは全部諏訪子様の為の生贄なんです」
「生贄だって?」
「はい。私、諏訪子様がなんで姿を現してくださらないのか、ずっと考えてたんです。
 そして分かったんです。諏訪子様は不甲斐ない私に怒っておられるのだって」
「違う! 諏訪子は」
「だから! 諏訪子様に喜んでもらえるよう、いっぱい生贄を集めたんです。
 生贄になった皆さんも幸せでしょう。だって神様に奉げられるなんてとても名誉な事なんですから!
 命を差し出し神様の為を想う事で、その魂は生前の全ての罪を許され昇華する事が出来るんです!
 神様は慈悲深いんです! 皆幸せになれるんです! よかったですね!」
「………」

将来の夢を語る子供のように楽しそうに話す。
だがその話はあまりにも狂気染みている。
唖然とし硬直する神奈子を余所に早苗は文の頭を拾い上げた。

「文さんはなかなか理解してくれませんでした。必死に救ってあげようとしても私から逃げてしまうんです。
 悲しかったです。でも私、諦めませんでした。そしたら文さん、速く飛びすぎて木にぶつかって倒れちゃったんです。
 文さん血を流していました。怪我しちゃったんです。私、心配になって駆けつけました。
 そしたら奇跡が起こったんです。文さん感動して涙を流しながら助けてって言ってくれたんです。
 きっと怪我をして神様の大切さに気づいたんですね。怪我の功名です。だから私、救ってあげました。
 生贄として神様に捧げる事で、文さんもきっと幸せになれた筈です。」

そう言って文の頭を箱にしまった。
振り返り申し訳なさそうな顔をすると、更に言葉を並べだす。

「本当は神奈子様には内緒にしたかったんです。私が諏訪子様ばかりにプレゼントしたら妬いちゃうでしょう?
 神奈子様が怒ったのもそのせいなんですよね? 配慮が足りませんでした、ごめんなさい」
「そ、そんな理由じゃ」
「信仰を集めさえすれば満足していただけると考えていた私が浅はかでした。そうですよね!
 神奈子様もプレゼント欲しいですよね! だから私、用意しました」

そのまま早苗は部屋を出ていく。
この状況でプレゼントが何を意味するか
そんな事も分からないほど神奈子は鈍感ではない。
だが止めようとしても腰が抜けて立ち上がる事が出来ない。
なんとか動こうとしている間に早苗が戻ってきた。

「神奈子様ー、準備が出来ましたよー」

声が聞こえ部屋に何かが投げ込まれる。
縄で縛られ床を転がるその正体は、

「にとりっ!!」
「うぅ……助けて、神奈子様…」

昼間会って話したばかりの河城 にとりだった。
にとりを追うように部屋に入ってきた早苗の手には、何やら長い棒のような物が握られている。

「本当は昨日連れてくる予定だった椛さんを神奈子様にプレゼントするつもりだったんです、けど
 夕方帰って来る時、見ちゃったんです。にとりさんが神社から下りていくの。光学迷彩してんたんですね。
 直接姿は見えませんでした。でも転んだら分かりますよ? 音がして地面に跡が残るんですから。
 あの時転んでくれなかったら神奈子様が人里の事を訊いてきた理由も分かりませんでした。ありがとうございます。
 ですが神様を悪戯に惑わしてはいけませんよ? ちゃんと神奈子様に謝らなくては。
 なので神奈子様にプレゼントするのはにとりさんにしました。それでは」
「待て! 早苗! 生贄はいい! だからにとりを見逃してやってくれ!」
「いやですねぇ、遠慮なんてしなくていいんですよ? にとりさんだって、すっきりさせた方が楽になるんですから」

そう言うと棒の先端を掴み、思いっきり引く。
すると、中から光沢を帯びた細長い刃が飛び出した。
棒の正体は仕込み刀だったのだ。剥き出しになった刃がにとりの首に当てられる。

「頼む! 思いとどまってくれ!」
「ッ!! 嫌だあああ! 生贄なんかになりたくないよおおおお!! お願い! 助けてえええ!!」
「焦らなくてもすぐに助けてあげますよ」

すると早苗は刀をにとりの首から離した。
ほっと胸を撫で下ろすにとりに構わず、刀を目の前で一直線にする。

「その前にまず、洗ってさしあげなくては」

そのまま上を向いた刃にそっと自分の手首を乗せた。

「まさか…ちょっと! やめ」
「現人神の血なら生贄に差し支えない程、穢れを落とす事が出来るでしょうね」

言い終わると早苗は刀を勢いよく引く。
すると手首の血管が切れ、辺りに鮮血が飛び散った。
しかし当然それだけでは治まらず、傷口から一気に血が流れ出す。

「ヒャア!」

その血は下にいたにとりにかかり、青い髪を真っ赤に染めた。
にとりの体は恐怖で震え、歯をカタカタ鳴らしている。
一方、神奈子は我が子のように可愛がってきた早苗の行動にショックを隠しきれずにいた。

「なんでなんだよ、早苗…。………ッ!!」

床を這って早苗に近寄ろうとしていた神奈子は、視界に入った光景に愕然とする。
早苗の腕には無数の切り傷があった。
その殆どの傷がまだ治りきっておらず、赤い痕が生々しく残っている。
恐らく他の生贄の時も、自分の手首を切って血をかけていたのだろう。
失踪事件の犯人が早苗なら諏訪子が消えた次の日から、すでにこの傷はあった事になる。
今まで早苗の異変に気づく機会は幾らでもあったのだ。

「そんな、私は、私は!」

もっと早く気付いてやれれば
もっと真剣に話し合っていれば
もっとちゃんと早苗を見ていてやれば
全ては未然に防げた事だった。

「違う、嘘だ、こんな事ありえない。そうだ、夢だ、全部夢だったんだ。
 目が覚めればいつも通り諏訪子がいて早苗がいて、それで三人で囲んで朝ご飯を」
「ちょっと、神奈子様……どうしちゃったの?」

突然ぶつぶつと呟き始めた神奈子。
自分をこの地獄から救い出せる唯一の命綱の異変に、にとりは段々絶望を感じ始めていた。
だが自分の運命を受け入れられる程の時間は、もうにとりには残されていない。

「にとりさん」
「!!」
「心の準備はよろしいですか?」
「嘘…待って」

必死に振り返ろうとしたにとりが最期に見たのは、真っ赤に染まって笑う早苗と自分自身の体だった。



































「神奈子様ー、朝ご飯が出来ましたよー」

数日後、そこにはいつもと変わらない守矢神社の朝の風景があった。

「おはようございます、神奈子様」
「おはよー、今日は随分遅かったねぇ」
「ああ、ちょっと変な夢を見てね」

人里の信仰のおかげか生贄がよかったのか、諏訪子は無事に帰って来た。
帰ってきた諏訪子は、まず早苗を褒めてあげた。『今までよく頑張ったね』と。
その言葉は早苗が何より待ち望んでいた瞬間、自分の努力が報われた証だった。
神奈子はここ数日の事を『悪い夢』として片づけてしまったらしい。
諏訪子が消えた事も何もかも、神奈子にとっては夢でしかないのだ。
当然夢なので褒められる事もなかったが、あの時のように突き飛ばされる事もない。
何も変わらない、いつも通りの日常が帰って来たのだ。

「神奈子様、ご飯を置くので少し卓袱台の上を空けてください」
「ああ、分かった。諏訪子、そっちよせるよ」
「おっけー」

早苗は心の底から嬉しかった。
二柱があんなにも楽しそうな笑顔をしている。
この為に今日まで頑張って来たのだ。
あの笑顔を見るだけで幸せになれる。
自分がした事が無駄じゃなかったと思える。
全ては二柱の為、そしてその二柱が喜んでいる。
それが早苗を何より元気づけてくれた。

「お、今日の佃煮はよく出来てるねぇ」
「そうですか!?」
「うん、とっても美味しいよー」
「そうですか……ふふふ」
「ん?どうかしたのかい?」
「いえ、何でもありません」

早苗は朝食を楽しむ二柱を、ずっと幸せそうに眺めていた。













「ふふふ……駄目ですよ、神奈子様。一人でそんなに食べちゃ…」
「それで、私にこのいかれた患者をどうしてほしいの?」
「……この子の火傷の治療、あと出来れば此処に置いてあげてほしいの…」
「……………」
「お師匠様ー! 調べて来たよ!」
「…随分遅かったじゃない、てゐ」
「天狗の記者が調査中でなかなか聞き出せなかったんだよ…」
「それで、山の様子は?」
「え~と、まず山の神社が火事で全焼。原因は放火、犯人は犬走 椛」
「動機は分かってるの?」
「うん、椛の職場の机から告発文が見つかったらしいよ。それによると妖怪の連続失踪事件が起きてて
 その犯人が守矢の神社だと思ったみたい。動機は………仇討ちだって」
「それで椛は?」
「御柱の下敷きになって死亡、神奈子の仕業だね。その神奈子も消滅してたみたいだから相打ちかも」
「守矢は犯人だったの?」
「焼け跡から失踪した妖怪の頭蓋が見つかったって。黒幕が誰にしろ守矢が犯人一味なのは間違いないね」
「もういいわ。話は聞いてたわね、雛」
「……ええ」
「貴方が神社で見つけたその巫女は、山の妖怪が探してる事件の犯人なのよ」
「…分かってる」
「……………」
「……でも永遠亭の地下には秘密の病棟や実験室があるって聞いたわ、そこなら山の妖怪にも見つからない筈」
「貴方自分が何を言ってるか分かってるの?」
「……………」
「山の妖怪全てを敵に回すつもり?」
「………私は……人間の味方だから……」
「その人間にもこいつは手を出したのよ?」
「………でも、あのままにしておいたら報復で殺されるわ……」
「……………」
「…………」
「……神の考える事はよく分からないわね」
「………無理に匿ってとは言わないわ、でもせめて火傷だけでも」
「…いいわよ」
「……え?」
「てゐ、早苗は貴方が看なさい」
「え? 嘘、ちょっと聞いてな」
「貴方でもこれぐらい看れるでしょ?」
「待ってよ、なんで私が」
「……鈴仙だったら自分からやってくれると思うけど……」
「………分かりました、お師匠様」
「……何かあったの?」
「気にしないで、それより貴方はどうするの?」
「……麓に戻って人里の為に出来る事をするわ」
「そう」
「…この子の事、頼んだわ」
「ええ」
「諏訪子様、口の周りが汚れてますよ。ほら………ふふふふ」








  • 三月精が… -- 名無しさん (2009-09-27 02:27:42)
  • この様子だと、鈴仙も早苗に殺されたのかな・・?
    真面目な子ほど目が離せない、というのがよくわかる。
    良いSSだ -- 名無しさん (2009-09-27 03:23:49)
  • ↑鈴仙は幽香がトラウマになって引きこもっちゃったんだよー -- 名無しさん (2010-01-24 22:30:44)
  • ヤンデレ入ってね? -- 名無しさん (2010-03-16 15:44:48)
  • 普通に病んでるだけじゃね? -- 名無しさん (2010-03-16 20:03:33)
  • 神奈子のこれは夢なんだのくだりで例のAA思い出して笑ってしまった -- 名無しさん (2014-03-10 15:13:22)
  • 椛、いくらなんでも仕返しに放火はどうだい?
    それだと瞬殺じゃないか。
    やるなら堂々とやって、死んでくるのが良いさ。
    そうすれば文のところにも行けるしさ。
    憎しみの連鎖は続けるよりも、自分から断ち切るのがカッケーぜ。
    まぁ、いぢめスレに馬鹿なことを言ってんなってもんだが。
    そして例のAAとは何か?
    あと、一応この早苗はヤンデレですね、はい。
    諏訪子への愛から来る衝動な訳で、病んでるだけともとれますが、俺的にはヤンデレだと思うッス -- キング クズ (2016-07-03 04:21:27)
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最終更新:2016年07月03日 04:21