* 殺傷、流血描写あり
  * キャラの性格に改変あり



「どっち・・・」
竹林の中、彼女は分かれ道を前にして立ち尽くしていた
「ここに来て二択だなんて・・・・」
もう残機は無い。これで死んだらコンティニューさせられる

「よし・・・左」

意を決して彼女は片方の道を選択した

「その前に」
紙にメモしようと考えたが、ペンは鈴仙のいる薬保管庫の机の上に置いてきたことを思い出した
だから親指を噛んだ。指先から赤い滴がしたたる

少し読みにくいが、なんとか書けた

進むと決めた道に足を踏み入れる

「え?」

踏み入れた瞬間、足が地面に沈んだ
沈んだ足首に何かが巻きついた。このトラップには見覚えがあった
足には竹の葉で編まれた頑丈な縄がくくりつけられた。縄の先は極限までしなった竹の先端部分と繋がっている
罠が発動する
「ぁ・・・」
悲鳴を上げる間も無かった
彼女は一瞬で10m以上の高さに放り投げられた。自分では制御することの出来ない重圧がかかる
投げられた先にあるのは、竹やりが設置された襖



残機0→CONTINUE







※ ※ ※ ※


障子越しでもわかる眩い月明かりが永遠亭を照らす
「姫様。起きてください」
布団を被る輝夜を兎が揺する
「ん~~~~なによイナバ。まだ夜中じゃない」
安眠を妨害され、やや不機嫌な声
「姫様に是非ともご助力いただきたいことが」
「嫌よ、面倒くさい」
寝返りを打って鈴仙に背中を向けた
「そうですか」
「いい加減、五月蝿いとた・・・・がぁっ」
自分の後頭部に強い衝撃を受ける。首が前方に大きく振られる
「な、なに?」
足で布団を蹴飛ばして飛び起きる

「残機が1つ減りました」

鈴仙の手には、煙を吐き出す黒い鉄の塊
「残機? ていうか今私を撃っ…」
「姫様に是非ともご助力いただきたいことが」
鈴仙は輝夜の眉間に鉄の塊を突きつけた。普段の鈴仙と見まがうほどに冷たい表情を浮かべて
輝夜は目を一瞬だけ細め、鉄の塊に焦点を合わせてすぐに視線を兎に戻した
「まず今の無礼の理由を説明しなさい。いくら不死でもやっていいことよ悪いこと…」
「そうですか」
話を最後まで聞かず、鈴仙は引き金を引いた
輝夜の眉間に小さな穴が開き、口頭部が爆ぜ、中身が弾丸と一緒に飛び出す

「残機が1つ減りました」

「・・・・・・」
撃たれた本人はだだ黙って大の字になり天井を見つめていた。撃たれた箇所は既に元に戻っていた。床の汚れも同時に消えていた
3回深呼吸をして言葉を発する
「今の行動は永琳の指示? それともアナタの独断?」
「姫様に是非ともご助力いただきたいことが」
愛玩動物の兎は飼い主の話に未だ耳を傾けない
手に持つ月の兵器を今度は飼い主の心臓に押し付けた。服を通して銃口の熱が胸にじんわりと伝わる
「一度や二度なら冗談で済むかもしれないけど、三度目は無いわよ」
「そうですか」
全く躊躇せず、鈴仙は発砲した
「っぁ!」
体全体が押しつぶされるような衝撃の後、瞳孔が開き口から血の泡を吐く
遅れてやってくる、酸欠の苦痛を限界まで高めた痛み

「残機が1つ減りました」

「この・・・」
素早く復活して、起きあがる
後に跳んで鈴仙と距離を取り、手をかざす
「あれ?」
五色の宝具が発現しなかった
「なんで・・・」
弾幕を撃つ事も、飛ぶ事も出来なくなっていた

「姫様に是非ともご助力いただきたいことが」

銃口は輝夜を捉えていた。その無機質な表情の裏にどんな感情があるのかは読み取れない
「・・・わかったわ。従いましょう」
ため息を吐き、輝夜は両手を上げた
「ありがとう御座います」
鈴仙は凶器をブレザーの内側に仕舞い、代わりに一枚の紙切れを取り出した
「この紙をどうぞ」
「?」
受け取って書かれている文面を指でなぞる

_____________________________________________

『 チクリン ヲ ヌケレバ アナタ ノ カチ 』

【やってはいけないリスト】

・鈴仙の要求を拒否するな
・鈴仙の注文を間違えるな
・竹林で迷うな				
・致命傷を負うな
・記録者に攻撃するな


※
_____________________________________________

「これは?」
「ではこちらに」
鈴仙は部屋を出て行く
「答えてくれてもいいでしょう」
文句を言いつつ渋々その後について行く

「ここです」

案内されたのは薬を保管する部屋。目の前にある棚を鈴仙は見上げた
「今から師匠の指示である薬を作ります。姫にはその薬に必要な素材3つをこの棚から探して欲しいのです」
「そんなことで私を? それくらい自分で・・・・・こんなの楽勝よ」
鈴仙が拳銃を取り出したので慌てて訂正した
「後で覚えておきなさい」
聞こえないようにボソッと言った。どういうわけか知らないが戦闘能力が封じられている今、逆らうのは得策ではない
「で、どれを集めればいいの?」
「一つ『カゼナオール8556』二つ『エーリングアロママッシュルーム ~夏の香り~』三つ『超強力胸部増強剤オメガ』です」
「はぁ?」
「すべて師匠が調合し作製たオリジナルの素材です」
「それがこの棚に?」
輝夜は棚を見渡す

『カゼナオール8559』『カゼナール8556』『カゼニナーレ8556』『カゼナオール1341』『ゼカニナール1192』『ナゼナオール8556』『カゼオナール8556』
『カゼノナカノスバル8888』『カゼナオーレ8556』『フウジンショウジョ8080』『カゼナオーセ8566』『カゼナオール8556』『ゼカルナーオ8779』
『カゼナオール8SS6』『カゼ大オール8566』『ガゼルオール8556』『カゼナール8556』『カぜナオ一ル8556』『かゼナオール8556』『カゼナオーノレ8556』

『エーリンダアロママッシュルーム~夏の香り~』『エーリングアロママッシュルーム ~春の香り~』『エーリングアルマジロマッシュルーム ~夏の香り~』『エーリングアロママッシュルーム ~冬の香り~』
『エーリングマロアマッシュルーム ~夏の香り~』『エーリングマロマワンルーム ~夏の香り~』『エーリングアロママッシュルーム ~夏の香り~』『エンゲージアロママッシュルーム ~夏の香り~』
『エーリングアロマッシュルーム ~夏の薫り~』『エーリングアロママッシュルーム ~死の香り~』『エーリングア口ママッシュノレーム ~夏の香り~』『エイリングアロママッシュルーム ~夏の香り~』
『ユカーリングアロマ ~乙女の香り~』『エーリングアクママッシュルーム ~夏の香り~』『エーリングアロママッシュルーム ~夏の番り~』『エーリソグアロママッシュルーム ~夏の香り~』

『超強力胸部増強剤ガンマ』『超強力腹部増強剤オメガ』『帳強力胸部増強済オメガ』『超強刀胸部増強剤オメガ』『超強力胸部減強剤オメガ』『超強力胸部増強剤オメカ』『超弱力胸部増強剤オメガ』
『超強力胸部増強剤オメガ』『超強力胸部強壮剤オメガ』『越強力胸部増強剤オメガ』『超強力胸倍増強剤オヌガ』『超強力腰部増強剤オメガ』『超強力胸部増強剤才メガ』『超強力胸部増強剤アルファ』
『超強力胸部増弘剤オメガ』『超強力肺部増強剤オメガ』『越強力胸部増強剤オメガ』『超強力胸部増強剤ガメラ』『超強力胸部曽強剤オーム』『超強加胸部増強剤オメガ』『超強力肺部増強材オメガ』

ややこしいものが多数混ざっていた
「少してゐが悪戯で作ったものも混じってますが。聡明な姫様なら簡単に見つけられますよね」
「もう一回、素材の名前を教えなさい。一度じゃ覚えられないわ」
忘れない内にメモを取ろうと机の上に偶々あった一本のボールペンを拾う。そして先刻渡された紙に書こうと思いそれを裏返した
「え?」

_____________________________________________

『カゼナオール8556』:上の段、左から6番目

『エーリングアロママッシュルーム ~夏の香り~』:棚の中央付近

『超強力胸部増強剤オメガ』:上から4段目、右17番目


コレカラ、ナエニススム




_____________________________________________

そこにはすでにボールペンで書かれており、字の止めや跳ねが自分のものと似ていた

―――コレカラ、ナエニススム

その文字だけはなぜか赤く太い字で書かれていた
「なにこの赤い字? 血?」
「なお、取った素材を間違えるごとに、または2分経過する度に姫を一発ずつ撃ちます」
銃口が再び向いた
「では、始めて下さい」
「え、ちょ、ちょっと!?」

赤い字について考えるのは後回しにして、とにかく素材探しに専念した

―――上の段、左から6番目
「上の段、左から6番目?」
紙に書かれている場所に目を向ける
その位置にあった瓶のラベルを注意深く読む
「あってる」
手を伸ばして取り、机の上に置く

―――棚の中央付近
先程とは違って曖昧な表現だがなんとか見つけた

―――上から4段目、右17番目
右から瓶の数を慎重にカウントしていく
「あった・・・」
17番目の瓶のラベルを確認する
「間違いない」
その瓶を鈴仙の前に置いた

「ありがとうございます」
初めて鈴仙は笑った。そして月の兵器を懐に仕舞う
しかし、輝夜は警戒を解くことはなかった
人形が顔のパーツを取り替えたようなべったりと貼り付く鈴仙の笑顔
目の前の兎がまだ異常な状態であることを嫌でも認識させられた

(おかしい)
不死であり滅多なことでも動じない彼女だが、ここで悠長に事態を受け止めるのをやめた
鈴仙から受け取った紙を見る。最初に書かれている文章を読み上げる

「チ・ク・リ・ン・ヲ・ヌ・ケ・・・・・・・竹林を抜ければあなたの勝ち?」
「そうです。それでゲームクリアです」
「ゲーム? クリア? これは何かの異変だとでも言うの?」
「私の用件はこれで終わりです。どうぞ、先にお進み下さい」
そう言って鈴仙は彼女が集めた素材をすり鉢に入れて乳棒でかき回し始めた
「どういうことか説明しなさい」
「・・・・」
「聞きなさい。その耳は飾り?」
「・・・・」
輝夜には目もくれず鈴仙は作業に没頭する
「もういいわ」
鈴仙との会話を諦めて輝夜は玄関に向かった
靴を履き、外に出る

門から出てすぐの場所、石に腰掛け休む妹紅を見つけた
「今晩は」
「ん、今晩は」
挨拶をすると妹紅は座ったままの状態で言葉を返した
輝夜は妹紅の膝の上に一匹の兎がちょこんと乗っていることに気付いた
「懐かれたのかしら?」
「どうやらそうらしい」
普段ならここで一悶着あるのだが、輝夜は妹紅を無視して竹林の中に入ろうとする

「ゲームのルール説明を聞く気は無いのか?」
「?」
足を止めて、眉を寄せた
「今の状況を知ってるのね? 答えなさい」
「いいとも、それが私の役割だからね」
石に座り、兎の頭を撫でながら妹紅は説明を始めた







「これが夢? 信じられないわ」
この世界と紙についての説明を一通り聞いたが、いまいち得心がいかない
「本来、プレイヤーは禁止行動を取って死亡した時点で最初の場所に戻されるんだ、でも輝夜の場合は不死だから死んでも戻されることは無くその場で復活して再スタート」
そのため他のプレイヤーのように時間がループしていることに気付けない
「そしてルールに気付く頃には残機は残り僅か。コンティニューして記憶リセット・・・最低の悪循環だね」
何から何まで理不尽だらけだった
「死亡内訳を知りたい? 軽く百を超えてるよ」
「いい、聞きたくない」
「かなり重要な情報だと思うけどね」
「・・・・・いいわ。教えて」
少しだけ考えて言った。言った時、無意識の内に握りこぶしを作って胸の前まで持って来ていた
「鈴仙・優曇華院・イナバが106回。因幡てゐが37回。八意永琳が24回。藤原妹紅が4回」
「そんなに・・・」
胸にあげた拳はいつの間にか解け、だらりと下がっていた

「さて。行くとするか」

膝に乗る兎を逃がし、妹紅は立ち上がる
「迷いの竹林を抜けたいんだろう。私が道案内するよ」
「いらないわ。竹林なんて私にとって永遠亭の廊下を歩くようなものよ。迷うなんて有り得ない」
「そう、なら無理強いはしない」
持っていた提灯に火をつけると妹紅は一人で竹林の中に進んで行った
「待って、やっぱり付いて行く!」
彼女とは別ルートで進もうとした輝夜だが、竹林に足を踏み入れる直前、背中に後寒いものを感じ考えを改めた



妹紅の背中をじっと見つめて輝夜はその後に続く
「この竹林は普通じゃない、私が知っているモノとは違うわ」
輝夜は先程感じた寒気の正体を尋ねた
「そうだな」
「なぜ?」

「さあさあいらっしゃい! 幸運ウサギとの楽しい楽しい餅つき遊びだよ!!」

道のど真ん中で杵を担いだてゐが大声で周囲に呼びかける。そのすぐ横にはもち米の入った臼
その場にいるのはその二人だけなので必然と声が掛かる
「そこの綺麗な黒髪のお嬢ちゃん! 私が突いてお客さんがお餅を返すというシンプルな遊び。見事、餅をつけたら豪華商品をプレゼント!!」
「参加しても良いし、無視してもいい。プレイヤーの自由だ」
てゐとの餅つき・・・その魂胆はあまりにも見え見えだった
断るに決まっている
「参加したら何がもらえるの?」
だが、賞品も気になった。待ってましたと言わんばかりにてゐは巻物を掲げる
「賞品はこの竹林の地図でございます! これさえあれば罠だらけの竹林もへちゃら」
「罠?」
輝夜が感じた悪寒の正体はどうやらその“罠”という存在にあるらしい
「私はその罠でも死んでるの?」
「そうだ、死亡内訳では因幡てゐの数値に含まれてる」
「なら私が既に体験し記録されているのなら、その詳細くらい訊いてもバチは当たらないわね?」
「・・・・・ああ、構わない」
妹紅は目を閉じた。目蓋の向こうで眼球がごろごろと動いているのがわかる
「この竹林はな。プレイヤー・・・まぁ輝夜のことだが。お前が規定の道から一歩でも外れたら強制的に罠に掛かるようになっている」

―――竹林で迷うな

「規定の道から離れる=迷った。と見なされるんだ。全て竹を加工したものだ。これも詳しく聞きたいか?」
「遠慮しとくわ」
ここで妹紅はようやく目を開けた
「で、ミニゲームに参加するのか?」
「やめておくわ。残機は残り一つだもの」
「なら次に行くか」
妹紅は踵を返し、進行方向に体を向ける
輝夜はてゐをジッと見ていた

「・・・・・」
先程まであれだけ活発だったてゐは急に黙り込んで、その場に直立していた
「どうしたのイナバ?」
耳を摘んでパタパタと振る。頬を軽く叩く。スネを蹴る
何をしてもてゐは反応しない

「そいつは役目を終えた。だから次のゲームまで動かない」
「もう片方のイナバは動いていたわよ?」
「待機の仕方はキャラクターによって異なる。共通しているのは『プレイヤーを認識しなくなる』ということ。別に死んだとかそういうわけじゃない」
「そうなの?」
輝夜はおもむろにてゐを持ち上げて、好奇心から道の外に放り投げていた
地面に落ちた瞬間、てゐは竹の槍衾に貫かれ。落ちてきた大きな竹光に首を跳ねられた
「うへぇ・・・」
予想外のえげつなさに輝夜は首をすぼめた
「気をつけろよ。罠はお前専用じゃないんだ。私達にだって有効なんだから」
言葉が終わると妹紅は歩き出したので、慌てて輝夜はついていった




「起きてみる夢。寝てみる夢。どちらの夢も同じくらい人を狂わせる」
提灯を左右に振りながら妹紅は夢について語っていた
「夢を追うのは結構な事だが、夢にとり憑かれるのはいただけない。夢は活力剤になるが、服用量を誤れば立派な毒だ」
「私との婚姻を夢みたあなたの父上のように?」
思わず口を挟んだ
「・・・さて。お喋りもここまでかな」
輝夜が口を挟んだせいなのか、元からこの場所からだったからなのかは知らないが妹紅は立ち止まった
道の先、竹林の開けた箇所に慧音が腰を下ろしていた。頭からは凛々しい角が二本
彼女の手元には『燕の子安貝』『蓬莱の玉の枝』『仏の御石の鉢』『火鼠の皮衣』『龍の顎の玉』が並んでいる
「好きなものを選ぶといい」
「?」
意味が分らず、とりあえず輝夜は『蓬莱の玉の枝』を手に取った
「では、私は帰る」
輝夜が宝具を手に取ると慧音は他の四つを抱えて竹林の中に消えていった

妹紅は提灯の灯りを消した。数秒たつと暗闇に目が慣れ始めていた
月明かりのお陰で、周りが良く見える

「あの場所・・・・見えるか?」
妹紅が指差した方向に、うっすらと永遠亭の屋根が見えた
「意外に近いのね。結構歩いたと思ったけど・・・・ん?」
屋根の上に何かが乗っていた
「永琳?」
今までずっと姿を現さなかった従者の八意永琳が永遠亭の屋根に立っているのが見えた。手には愛用の弓
「これからあいつが4回、弓を放つ。私目掛けてな。ちなみに私がここで死ぬと、違う場所でリザレクションされる。ここは危険だと体が判断するからな」
「それって・・・」

―――竹林で迷うな

竹林の抜け道を知っているのは妹紅だけ。つまり妹紅が居なくなることはゲームオーバーを意味していた
「始まるぞ」
1射目
放たれた矢は緩やかな放物線を描き、二人に迫る
妹紅の前に立ち、蓬莱の玉の枝を振り上げる
「ッ!」
甲高い音。弾かれた矢は宙を舞い二人の前方に落ちた
「上出来」
「あなたに避ける意思は無いの?」
「私だって辛いが、それがルールだ。ほら来るぞ」
2射目
今度は放物線ではなく直線で矢が向かってきた
(さっきより速い・・・でも)
枝で矢を叩き落した
「さっきよりも難易度が上がってる?」
3射目
「え?」
月明かりに浮かぶ矢の影が二つ
「嘘っ。二本同時!?」
永琳は二本を弓にツガえて同時に放っていた。それも、それぞれがまったく違う軌道で向かってきている
一本ずつだと思っていた彼女は完全に意表を突かれた
「このっ」
最初の矢はなんとか枝で払えた。しかし一本が急接近する。払った後に出来た隙を狙った絶妙にタイミングで
今から枝を出しても間に合わない
「ぐっっ」
輝夜は顔をしかめた。枝を持っていない方の手を出して妹紅を矢から庇ったためである
「なんとか4本しのげた」
手の平を貫通し手の甲を抜けた矢
「ぃつつつ」
枝を投げ捨て、奥歯を食いしばって刺さった矢を抜こうとするが、ヤジリが邪魔して簡単に抜けそうに無い
「リザレクションしたら? 一機減るが傷は治る」
「残機無いの知ってて言ってるでしょ? そもそも守ってあげてお礼の一つも…」

振り返ると妹紅が倒れていた

「へ? なんで?」
妹紅の額には永琳の矢が深々と突き刺さっていた
「しまった・・・・」
輝夜の顔が妹紅以上に青ざめた
輝夜は勘違いしていたことに気付く

『これからあいつが4回、弓を放つ。私目掛けてな』

矢は4“本”ではなく4“回”飛んでくることに


妹紅の顔を覗き込む
妹紅の体は徐々に色を失っていき、最後には消えてなくなった
輝夜はそれを黙って見ているしかなかった
手を貫かれた痛みなど忘れていた


案内人を失い、完全に詰んでしまった
この広い竹林。どれが安全な道あのかなどわかるわけなどない
(これなら多少の危険を冒してでもイナバとの戯れに挑むべきだった)
過去を思い起こして悔やむ
「あ」
思い出した出来事の中である言葉を思い出した

『では、私は帰るとするか』

もっと早く気付くべきだったとさらに後悔する
慧音が消えて行った方向を凝視する
輝夜は期待と不安を織り交ぜながら、慧音が進んだ道に足を踏み入れる
何も起きないことから自分の考えが正しいことを確信する
(『帰る』? 何処へ? 決まっている、ハクタクの住まいは人里)
ならば必然的にこの道は外に続いている
そして安全だということ、慧音が普通に通っているのがその証拠である

うっすらとだが、地面に彼女の歩いた痕跡が確認でき、それを頼りに進む
手に刺さった矢は抜くことも折ることも出来ず、輝夜を苦しめたが、希望が彼女の気力を補充させた

大分歩き。竹林の終わりが見え始め、もう少しで出られる所まで来た。手の痛みは感覚が麻痺したのか、矢が大きく動かない限り感じなかった
そんな時、分かれ道が現れた
「・・・・無い」
彼女は慧音の足跡が完全に消えていることに気付いた
「どうせここで消えるようになっていたのでしょうね」
そう思うことで自分を納得させた

ここで彼女は選択を迫られた
てゐの時のように拒否は出来ない

「右? 左?」
手がかりは無いかと辺りを見回す。軽率に動いて死亡したら、またここに来るまでいくつ死体を積み上げなければならないのか想像もつかない
勘で決めるのは最後にすることにした
「とにかくヒントを・・・」
紙を取り出して開く

_____________________________________________

『 チクリン ヲ ヌケレバ アナタ ノ カチ 』

【やってはいけないリスト】

・鈴仙の要求を拒否するな
・鈴仙の注文を間違えるな
・竹林で迷うな				
・致命傷を負うな
・記録者に攻撃するな


※
_____________________________________________

ヒントらしいものは無かったので裏返した

_____________________________________________

『カゼナオール8556』:上の段、左から6番目

『エーリングアロママッシュルーム ~夏の香り~』:棚の中央付近

『超強力胸部増強剤オメガ』:上から4段目、右17番目


コレカラ、ナエニススム




_____________________________________________

「?」
まだ解読していない文章を見つけた
最初に目についたが、二転三転する状況の中ですっかり忘れていた

―――コレカラ、ナエニススム

「これから、なえにすすむ?」
口に出して読んでみた
字に舌をつけると鉄の味がした
「やっぱり血ね」
恐らく手元に筆記具な無かったため、自分の指を切って書いたのだと察した
ひらがなではなくカタカナなのは、画数が少なく書くのが楽なためだろう
緊急を要するほど重要な内容なのだとわかった
「なえ・・・苗? でも竹林に苗だなんて・・・」
どちらの道にもそれらしいものは無かった
「もしかして違う場面で書いたものかしら? 妹紅を永琳から守れた場合のルートの時とか」
そう考えてしまったら、お手上げだった

「もういい。左に進む」

考えたが、結局正解の決め手になるものが何一つなかったため、勘で左を選んだ
「その前に・・・」
彼女は紙の裏面を見た
「えーと。『ハクタク ニ ツイテイケ。アンゼン ナ ミチ』」
傷口の血を指先につけてカタカナで書く。指で書く字は太いため長文は無理だった
「ッ!」
実際に書いてみてわかったことがあった
「違う。この字は漢字だ」
『コレカラ、ナエニススム』の『ナエ』の部分を睨みつけた
「この字は『ナエ』じゃなくて『左』。『これから、左に進む』って意味じゃ・・・つまり正解の道は」
右側の道を見る
(左に進んでゲームオーバーしてるってことは、右の道が正しい。って意味のはず)
自分の思考回路は自分が良く理解している

岐路に立つ。目をキツく閉じた
(お願い)
いくら不死でもこれ以上は御免被りたかった。心から正解を願い、右の道に足を踏み入れる

何も起きない。目を開けて自分が両足で立っていることを確認する

「やった・・・・・・・やった!」

一歩、また一歩と足を進めるが何も起きない

「合ってた・・・・正しかった」

死のプレッシャーから解放されて心から安堵する
「うう・・・ぐすっ」
涙が止まらない
生きていることを体全身で味わっているのがわかる

竹林の境界までやってくる
竹林を抜けた瞬間、東の空が明るくなっていることに気付いた
空が美しいと素直に思えた

















※ ※ ※ ※



「うん?」
右と左を交互に見る。手の怪我は治っている
自分のすぐ後には竹林。目の前には妹紅

「さあ、次に行こうか」

「なんで!?」
静かに妹紅の胸倉を掴む
「この茶番をまだ続ける気?」
「そうとも、これからセカンドステージさ」
「くっ」
乱暴な手つきで妹紅から手を離した
懐に紙が挟まっていることに気付く

___________________________________________

『 ハクレイジンジャ マデ タドリツケバ アナタ ノ カチ 』

【やってはいけないリスト】

・阿求の頼みを断るな
・川に入るな
・嘘をつくな
・妹紅に喧嘩を売るな

	

※ ※ ※ ※	
_____________________________________________


「これって・・・」
「コンティニューした回数を知りたい? 中には結構、惨(むご)いのもあるけど」
その一言で彼女の中で渦巻いている様々な感情が一つのモノに収束した
「このっ!」
いつもしている殺し合い。その要領で腕を振り上げる
しかし
「・・・・・・」
感情を押し殺して、腕を降ろした
「良く耐えたな」
記録者を無視して輝夜は歩き出した
「いいのか、どうやって死亡したのか私に訊かなくて?」
「・・・・いい」
返した言葉に力は無い
途中、足を止めて振り返る。妹紅と目が合う
「この拳は、この難題を出した奴に振り下ろすことにするわ」
「その調子なら次はもっと先まで進めるな」
ニシシと妹紅は笑った




夢の終わりはまだずっと先だった







  • 3人目・・・
    4人目は誰だろ・・・
    ゆかりん・おぜうさま・NEETと来て・・・
    地霊殿の誰かか? -- 名無しさん (2009-06-20 19:39:15)
  • 個人的には天子に期待したいが -- 名無しさん (2009-06-20 20:03:47)
  • てるよキターーーーー
    これで勝つる! -- 名無しさん (2009-06-20 20:43:11)
  • >3人目…
    神奈子様カワイソス -- 名無しさん (2009-06-20 21:04:07)
  • もう四人出てるだろw 神奈子涙目w

    シリーズのボスがはめられてるところを見ると
    小五ロリ ゆうかりん・・・旧作がでないならそこら辺かな~ -- 名無しさん (2009-06-20 21:05:16)
  • 製作に関わっていたという事で
    クリアしてもてるよにボコボコにされる神奈子様 -- 名無しさん (2009-06-20 21:15:58)
  • 神奈子様の所で触れたゲームの要素は4つだった
    ゆかりんは制作担当として【深層心理】といったらあの人しかいないだろう

    お嬢様が【魔法・魔術】っていうのは違うかもしれないけどな -- 名無しさん (2009-06-20 23:39:28)
  • そしてそれよりも目的地が『ハクレイジンジャ』なのが気になる
    エンディングなのか、最後のイベントなのか -- 名無しさん (2009-06-20 23:42:33)
  • 【医学・科学】【魔法・魔術】【信仰・神徳】【深層心理】
    えーりん・パチェ・かなちゃん・さとりん&こいし
    そして、ゆかりんが総括するといったところか・・・?

    次は地霊殿の誰かだろうな -- 名無しさん (2009-06-20 23:47:49)
  • >シリーズのボスがはめられてる
    >次は地霊殿の誰かだろうな
    お空の出番……か…… -- 名無しさん (2009-06-21 00:55:16)
  • 普段動じない大物キャラが出てくるとこを見ると次はさとりかな
    続きがものすごく楽しみ -- 名無しさん (2009-06-21 01:35:04)
  • 天子ちゃんは友達がいないからゲーム参加できないよ -- 名無しさん (2009-06-21 06:05:51)
  • EXボスが記録者なんだね。次はさとりか空か…
    空だとクリアが大変そうだ -- 名無しさん (2009-06-21 09:48:52)
  • 個人的にはチルノが見たかった
    ゆうかりんにターミネーターとして出演してもらって -- 名無しさん (2009-06-21 13:53:00)
  • ゆゆ様は出るのかね?
    トラップ担当だからダブって参加できないとかだと無理そうだけど
    ていうかカグヤすげーな開始三秒で残機1
    ルナティックぱねぇ -- 名無しさん (2009-06-21 18:56:47)
  • 次回に凄い期待。さとりがプレイヤーでこいしが記録者かな? -- 名無しさん (2009-06-22 23:14:56)
  • 新作待ってました!薬の名前とか凝った仕掛けだこと。
    5つの宝から1つ選ぶのにはどんな意味があったのかな……なんか天秤座の聖衣思い出したんだが。 -- 名無しさん (2009-06-23 06:52:14)
  • このシリーズは面白いし大好きだけど、ずっとこの調子でやられると黒幕とかのことをなにも考えてないんじゃないかと思う
    そろそろこのゲームの黒幕について少しずつ明るみに出していってもいいと思う -- 名無しさん (2009-06-23 17:30:14)
  • 黒幕なら神奈子編ですでに出始めたじゃないか
    少なくとも神奈子も黒幕の一員と考えていいんじゃないか? -- 名無しさん (2009-06-23 18:09:43)
  • 参加者全員黒幕で、クリアして目を覚ました全員が気まずい空気になると予想 -- 名無しさん (2009-06-23 19:45:36)
  • チルノは一体どの部分の製作を…(ゴクリ -- 名無しさん (2009-06-24 21:29:40)
  • 輝夜はずいぶん死んでるなーw
    でも、命をかみしめて涙流してるところにぐっときた。 -- 名無しさん (2009-07-29 22:18:09)
  • このシリーズ大好きです。楽しみ -- 名無しさん (2009-08-01 20:45:35)
  • 命に泣く蓬莱人とは新鮮だ -- 名無しさん (2009-08-03 22:51:43)
  • これは面白い! -- 名無しさん (2009-08-08 23:24:55)
  • このてるよなら愛せる -- 名無しさん (2010-06-02 18:12:11)
  • こいし見てみたいな -- 名無しさん (2010-08-14 09:18:43)
  • 次誘導「さとり いぢめ」http://www35.atwiki.jp/th_izime/pages/1121.html -- 名無しさん (2011-01-06 10:35:12)
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最終更新:2011年11月21日 17:30