【東方学園~権力~】
『~幻想郷立東方学園~
小中高一貫教育を行っており、一般の生徒から社会的に影響力のある名家からの生徒までおり、幅広い生徒層を有している。
さらに学校の方針「東方学園は全てを受け入れる」の精神から転校生や留学生の受け入れも非常に前向きである。
学力の優秀な生徒には特待コースでの教育があり、これを履修したものは卒業後に特別な社会的待遇が用意されており、政界参入などに必要なステータスでも在る。
(名家出身の生徒の殆どは特待コースを履修している。)
―著:稗田阿求「よく分かる学校選択」より抜粋』
「皆に転校生の紹介だ。この春からこの7組の仲間となる霧雨魔理沙だ。じゃあ魔理沙、自己紹介を。」
「よっ、霧雨魔理沙だ。みんなよろしくな!」
クラス担任である上白沢慧音より促され、魔理沙が挨拶をし、クラスの生徒たちはパラパラと拍手を送る。
魔理沙はこの春より実家を離れ一人で東方学園に転校することになった。
彼女は持ち前の努力により転校時に行われたテストで好成績を収め、高等部の特待コースへする事になったのだ。
「じゃあ魔理沙は…アリスの隣が空いているな。あの後ろにある窓側の席に座ってくれ。」
「おお、分かったぜ。」
魔理沙は慧音に指差された先に移動する。
そのときの周りの視線がまるで彼女がどんな人物か観察するような視線だったが、魔理沙は特に気に留めはしなかった。
指定された席に行くと、その隣には金髪ショートの少女が窓の外を眺めている。
魔理沙はなんの躊躇もなく彼女に話しかけた。
「なあ、名前はなんていうんだ?席が隣になったんだから仲良くしようぜ♪」
「………………」
「黙ってないで教えてくれよ~。それとも外に何か面白いものでもあるのか?」
魔理沙は外を見てみるが、特に何かがあるようでもない。
そうしているとその少女は外を見たまま小さな声で一言口にした。
「…アリス・マーガトロイド……。」
「そっか、よろしくな、アリス!」
これが魔理沙とアリスが最初に交わした言葉だった。
それから一ヶ月ほどたった。
最初は学ぶことのレベルに驚いていた魔理沙だが、今ではすっかり慣れ、クラスの仲間たちとも打ち解けていった。
「レミリア、このから揚げは渡さないぜ!」
「あらあら、だったら力ずくで奪うまでよ。」
「お嬢様、もっと気品のある行動を…。」
「そうよレミィ、スカーレット家の跡取りともあろうものがはしたないわよ。」
「まあまあ二人とも、いいじゃないですか、お嬢様だってたまにはそういったものだって食べてみたいですよ。」
魔理沙は幻想郷でも指折りの資産家であるスカーレット家の長女レミリアと弁当の具を取り合っている。
それをスカーレット家に仕えるメイドの家系に生まれた十六夜咲夜と親友のパチュリー・ノーレッジが制止させようとし、三人と親密な関係にいる紅美鈴がレミリアの味方をしている。
ちなみに中等部にはレミリアの妹のフランドール・スカーレットがいる。
ごく日常の昼休みの光景を終えて魔理沙は席に戻ろうとすると、政財界に強い影響力を持っている家の生まれである蓬莱山輝夜と目が合う。
学校に多額の寄付をしている幻想郷有数の大病院、永遠亭の院長八意永琳と親密な関係にあるらしく、学校でも自由な振る舞いが目立つ生徒であった。
「…ふん。」
輝夜は魔理沙を鼻で笑うと取り巻きで在る鈴仙・優曇華院・イナバと因幡てゐとともにクラスから出て行った。
正直魔理沙は高慢な態度で周りを見下している彼女が好きになれなかった。
ちょっと不機嫌になった魔理沙だが、昼休みには必ずどこかへ消えるアリスをみつけると、機嫌を直して話しかける。
「アーリスゥー。また一人で食べてたのかよ、いつもどこで食べてるんだ?」
「…別に。どうでもいいでしょそんなこと。」
「どうでもよくないぜ、私はアリスと一緒に食べたいんだよ!」
「そう、私は一人で食べたいのよ。」
「ううう、つれないなー。」
魔理沙はふてくされて頬を膨らませる。
そんな魔理沙を見かねてか、アリスが魔理沙にあるものを手渡す。
「…これは?」
「…上海人形、これ上げるから少し黙ってて。」
「いいのか?」
「…別に沢山あるし、周りには黙っててくれれば…。」
「そっか、ありがとな!アリス!」
「………別に。」
放課後、魔理沙は帰宅の準備を整えていた。
「アリスは…またいつの間にか帰ってるし。」
アリスは放課後になるといつの間にか消えていることが多かった。
魔理沙はアリスが何故周りと距離をとろうとしているのかが分からなかった。
「いい奴なんだけど、もうちょっとフレンドリーな性格だったらなー。…ってあれはアリスとレミリア達?」
そのとき、魔理沙はアリスがレミリア達に屋上に連れて行かれるのを見つける。
いったいどうしたのだろうか、魔理沙は好奇心からそのあとを付いていった。
魔理沙はこっそりと扉の影から4人の様子を伺った。
その様子は今まで魔理沙が感じたことのないような雰囲気であった。
「おらっ!いつもいつも暗くて気持ち悪いんだよ!この引きこもりがあ!!」
「!!」
魔理沙は驚愕する。
あの優しい美鈴が、アリスを何回も蹴り飛ばしているのだ。
それをみてレミリアはにたにたと笑いながら咲夜の紅茶を飲んでいる。
パチュリーは無関心そうに本を読んでいた。
「美鈴、顔は止めておきなさいよ。」
「わかって!ますって!お嬢様っ!っと。」
美鈴は蹴りながら返す。
咲夜がふと言葉を漏らした。
「お嬢様、最近こいつ何も反応しませんね。」
「さあ?でもあまり面白くないわよねえ…そろそろ新しいのが欲しいかも。」
「…じゃあ、まずこいつを思いっきり痛めつけましょうレミィ。」
「そおねえ、美鈴、壊してよし。」
「ふふ、仰せのとおりに。」
美鈴が腕を振りかぶる。
このままではまずい。
「止めろっ!!」
魔理沙はいつの間にかアリスの前に飛び出していた。
このままではアリスがめちゃくちゃになってしまうと思ったから。
「ま…りさ…。」
「大丈夫か!アリス!お前らこんなことやって何が楽しいんだ!」
「楽しいからやってるのよ。ねえ咲夜。」
「ええ。魔理沙、あなたはどっちに付くか良く考えたほうがいいわ。私達にいじめられるか、私たちと一緒に気に食わない奴をいじめるか。」
「何をふざけたことを言ってやがる!」
「いいの…わたしはいいから…おねがいまりさ…かしこい…せんたくを…して…。」
「なに言ってんだアリス!私たち友達だろ!そんなことできるわけない!」
「へえ…そういう選択をするんだ、咲夜。」
「はいお嬢様。」
美鈴が魔理沙の鳩尾に強烈な膝蹴りを入れる。
「ガッ…!!」
「おねがい…魔理沙には…何もしないで……!」
アリスが魔理沙の盾になろうとするが美鈴がそれを許さない。
そのとき、魔理沙のポケットからアリスからもらった人形が落ちる。
「へえ?アリスからの贈り物?仲がいいのねえあなた達、そうれ。」
「!!返せよレミリア!」
「ふふ、そんなに大切?だったら…。」
レミリアが人形の頭と足を握って、そして
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
人形は、真っ二つに引き裂かれてしまった。
「うわあああああああああああああああ!!」
「うるさいわねえ、咲夜、黙らせなさい。」
「はいお嬢様。」
その後も延々と美鈴と咲夜による暴行は続いた。
三十分ほどたっただろうか。
レミリア達は二人に一通りの暴力を加えると満足そうに帰っていった。
屋上に残ったのは床に這いつくばった魔理沙とアリスだけである。
「…はあ、はあ、大丈夫か、アリス…。」
「…うん、慣れてるから。馬鹿魔理沙、なんで関わってきたの?かかわらなければあなたは今までと変わらない生活が遅れたのに…!」
アリスが大粒の涙を流して言う。
「…もしかして、態度がつれなかったのは、私を関わらせないため…?」
「……最初はあなたも私を馬鹿にしてると思ってた。でも、そうじゃないって分かってきて、それで…。」
「くそお…どうして、どうして…。」
「…どうしても何もないわ。この学校はそういう所。名家出身の奴らが、普通の家の出の奴らを見下して、権力を笠に堂々といじめをする所なの。」
「そんなことがまかり通っていいのかよ…!」
「まかりとおるのよ、そういう場所だもの…。」
そういうとアリスはむっくりと起き上がる。
「ごめんなさい、今日は一人で帰らせて欲しいの…。」
「…ああ、分かった。」
そういってアリスはとぼとぼと階段を下りていく。
魔理沙は、これから自分はアリスの弱みになってしまうのではないかと思い、ただただ泣くだけであった。
同時刻、藤原妹紅は輝夜、優曇華、てゐによって囲まれて壁にもたれかかっていた。
「どうしたのかしら妹紅?そんな顔をして。」
「うるさい!散々人をいたぶって!絶対まともじゃないわよ!」
「愚民が!!姫様に向かってなんて口の聞き方だ!」
優曇華が近くに置いてある水槽に妹紅の顔を押し込む。
必死にもがくもてゐが水槽を固定し優曇華が頭を強く抑えているため逃れることができない。
「あっはっは、必死になって醜い顔!マジうけるんですけど!」
「大丈夫よ、大して怒ってないし、それぐらいにしなさい。」
「しかしこいつは姫様に狼藉を」
「いいから。私を殺人犯にしたいのかしら?」
「……わかりました。」
優曇華が妹紅の頭を水槽から引き上げる。
妹紅はびしょぬれになりながらも必死に酸素を取り込もうとしている。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「分かってると思うけど学校に言っても無駄よ。永琳が黙っちゃいないわ。外にもあなたを助けてくれる人はいないでしょうしねえ、ふふふ…。」
「この外道が…。」
「愚民程度が口答えとはいい度胸ね、まあいいわ、今回は気分がいいから椅子になったら許してあげる。」
「誰がそんなことを!」
「あらあら、嫌なの?あなただけならまだしも、あなたのお父さんや慧音先生にも迷惑がかかるかもねえ。うちがどんな家か知っているでしょう?」
「く、クソ…!」
「ね、わかったら頼み方あるでしょう?」
「………ぜ、ぜひ、か、輝夜様、の椅子に、さ、させて下さい…!」
「よく言えました♪」
妹紅は輝夜の前で四つんばいになる。
輝夜はその妹紅の上にゆっくりと座り、高笑いを上げる。
「あっははっはははは!!いい座り心地だわぁ、そのすわり心地に免じて許してあげる。」
「くうう…!!」
そういうと三人はその場を去っていく。
残されたのは屈辱感で苛まれている妹紅だけであった。
少しだけ過ぎた時刻、中等部の校舎からフランドールが一人寂しく帰っていた。
「今日も…誰も一緒に帰ってくれなかった。」
フランドールは目に涙を潤ませながらとぼとぼと歩いている。
原因ははっきりとしている、姉のせいだ。
レミリアはその自分勝手な行動よりかなりの恨みを買っている。
ゆえにレミリアは恐れられ、フランの周りの友人たちはフランにかかわりを持ってしまうとレミリアにも関わりを持ってしまうため、彼女に近づこうとしないのだ。
しかもレミリアはフランに友人ができないのを自分のせいだと分かっていないため、フランの周りの人間を脅し無理やり友人にしようとするなどいらぬおせっかいを働くのでよりいっそう人が近寄らなくなった。
そんな理不尽に不満を覚えながらも歩いていると、考え事をしていたためか誰かとぶつかってしまった。
「あ…すいません。」
「……あなた……レミリアの妹…?」
「え?そうですけど…。」
「………せいで…。」
「え?」
「あなたの…あなたの姉のせいで!!」
「痛っ!な、何をするん、痛い!」
フランはぶつかった女性―アリスより突然殴られてしまった。
フランは何がなんだか分からなかったがとりあえず姉が悪くて自分はとばっちりを受けていることだけは理解できた。
アリスは激情に身を任せ泣きながらフランを殴り続ける。
「あなたの姉のせいで!私の!私の守りたかった人の人生はめちゃくちゃなのよ!どうしてくれるのよ!」
「ご、ごめんなさい!ごめんなさい!」
フランは殴ってくる彼女に謝っていた。
自分が悪いわけではないのにこうやって暴力を振るわれる。
もはや姉に対しては不満を通り越して殺意が沸いていた。
アリスは自分のやっていたことに気が付くと、告げ口されると思ったか、顔を真っ青にして逃げ出すように去っていった。
しかしフランが姉に言うことはない。
もし姉に言えば姉がまたいらぬおせっかいを働かせて自分が不幸になることを知っていたから。
「あんなやつ…死んじゃえばいいんだ…。」
気分がぐちゃぐちゃになって破壊衝動が襲ってくる。
フランは持っていた八意式精神安定剤を服用する。
もともとフランは精神が少し不安定だったので精神安定剤を常備していたのだが、学校でレミリアが好き勝手するようになってからは薬に頼る機会が多くなっていた。
レミリアは例の如く自分のせいだと分かっておらず、医者に文句を言う始末。
フランは薬によって一時的な安定を得て、とぼとぼと自宅へと帰っていった…。
それからというもの、三者三様の日々が続いた。
魔理沙とアリスはレミリアにターゲットに選ばれたということで誰も寄り付かなくなった。
特に放課後や休み時間、二人は執拗ないじめを受けるようになる。
その手口は教科書を隠すといったものからトイレに入ってるときに上から水を入れるなど様々である。
しかし、レミリア達が魔理沙に暴力を働こうとするとアリスが庇い暴力を受けるのはアリスだけであった。
それは例え咲夜がナイフを持ち込んだときも、パチュリーが劇薬を持ち出したときも変わらなかった。
アリスは巻き込んでしまったことに責任を感じているのか魔理沙がいくらいいといっても「…別に、慣れてるから。」とだけ言い決して庇うのをやめようとしない。
魔理沙にとってはそれが心的に非常に応えているのか、心的にだんだん病んでいった。
アリスは以前より暴力を受けるようになったせいか、それとも魔理沙が日に日に病んでいくのが耐えられないのか、フランを見つけると影ながら暴力を振るうようになる。
フランは姉レミリアに言うこともできず、さらにレミリアのいらないおせっかいは止むこともなく、レミリアに対する憎悪がどんどんとたまっていき、より強力な薬に依存する日々。
輝夜は妹紅を過度な暴力を振るわなかったが、靴を舐めさせたりと奴隷のように扱うことが多かった。
暴力的行為はてゐと優曇華が中心になって行う。
輝夜が止める為一線を越えることはなかったが、てゐと優曇華は不満であったようだ。
そのような日々が2ヶ月は続いただろうか、そのとき、事件は起きた。
八意永琳は悩んでいた。
フランに処方している精神安定剤が明らかに異常な量になっているのだ。
そもそも永琳がフランに処方している薬は幻想郷では規制がかかっているほどの依存性のある劇薬であり、永琳はそれを半ば違法スレスレのラインで処方していた。
しかし今後フランの精神に何かあればこの薬に行き着き、責任追及されることは必至であり、そうなると今まで行ってきた不正行為が明るみに出ることになり、それは輝夜の家に迷惑をかけることになる。
「仕方ないわね、収入は減るけど、処方する量と薬を制限しないと…。」
しかし、自体は永琳が思っているより早く動いていた。
「あああ、いらいらする、いらいらするいらいらするいらいらするいらいらする」
薬はとっくに切れている。
姉の行動で私の人生はめちゃくちゃだ。
どうして私がこんな目にあわなければいけないのか。
それもこれもあいつのせいだ。
あいつさえいなければ、あいつさえいなければ皆幸せに暮らせるんだ。
あんなやつ
私が
殺してやる
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「どうしたのフラン!」
「お姉様あ…お姉様はみんなの幸せの邪魔をしてるから…殺さないといけないんだよ…だから…死んで?」
「な、何言って…。」
フランは壁にかけてあったレーヴァテインを手に持つ。
そして一歩づつレミリアに近づいていく。
そして、
「お姉様ああああああああああああああああああああ!!!」
『~狂気!魔の薬が起こした悲劇!~
●月×日深夜、幻想郷でも屈指の資産家であるスカーレット家にて殺人未遂が発生。
容疑者はフランドール・スカーレット氏。
被害者は姉のレミリア・スカーレット氏。
フランドール氏は以前から精神が不安定であり永遠亭から処方されていた精神安定剤を使用していたが、発狂、実の姉を殺害しようと謀った。
殺害は偶然通りかかった十六夜咲夜氏によって防がれるが、今回の事件によって永遠亭の処方していた薬が依存性が強く規制がかかっているものと判明。
さらなる調査によって院長の八意永琳氏の政財界に影響力を持つ蓬莱山家との癒着が発覚。警察は八意氏を緊急逮捕し、蓬莱山家にも家宅捜査が行われる予定。
―文々。新聞より抜粋』
「ほらぁ!昔の威勢はどこへいったのかしら?どうしたのよ、いつもみたいに偉そうに笑ってみなさいよこのゴミクズ!」
「う…ああ…。」
「アリス…もうそれぐらいにしてやろうぜ…。レミリアだって十分に反省してるし、それにあんなことあったあとなんだぜ…。」
「いいのよ魔理沙、これは教育なの。いままで人を散々いじめてきた報いなのよ。だからいままでこいつにいじめられてきた人たちを晴らさないといけないの、ねえ皆?」
「「そうよねー。」」
レミリアは地面に這いつくばり、その頭上にはアリスの足が置かれている。
咲夜は美鈴といったレミリアの取り巻きたちは既に『教育』済みであり地面に気を失って倒れている。
事件によってレミリアはすっかり精神的に弱弱しくなっていた。
その隙をアリスを筆頭とする、いままでいじまられてきた生徒達が見逃すはずはなかったのだ。
いじめる側といじめられる側の力のベクトルの方向は完全に反対になっていた。
「そ、そんなこといったって、もう血だらけじゃないか!こんなことやったって何の解決にもならないんだぞ!」
「そんなことどうでもいいの、私はただ、仕返しがしたいだけ。ああ、今ならレミリア、あなたの気持ちが分かるわ、人を踏みつけるのって、こんなに気持ちのいいものだったの、ねっ!」
アリスは思いっきりレミリアの頭を蹴り飛ばす。
首は取れてしまうと思うくらいの勢いだった。
思わず魔理沙は目をそむける。
「があああ!!」
「あっはっはっはっは、何今の声、不細工よね~。」
「ほんとよね~。」
「マジうけるんですけどww」
周りにいた野次馬たちもそれに加わる。
こいつら皆どうかしてる、魔理沙はそう思った。
「なあどうしちまったんだよアリス!お前だって苦しい思いをしたはずだろ!お前はここまでひどい奴じゃなかったろ!」
「黙りなさい!あなたに何が分かるの!私は本当に長い間こいつに虐げられてきた!まさに地獄だった!何度も死のうと考えた!その恨み、これっぽっちじゃ全然癒されるわけがないのよ!」
アリスは近くにおいてあった鉄パイプを持ちレミリアの腕を思いっきり殴りつける。
「あ゛あ゛あ゛!!」
レミリアがひどい声を出しながら腕を抱えている。
恐らく腕の骨が折れているだろう。
「いいわね!楽しいわねレミリア!さあまだまだよ、今日で終わると思わないで。あなたに狂わされた人生ですもの。今度は私たちがあなたの人生を狂わせる番なのよ。じっくりかわいがってあげるからねぇぇ…。」
「い…あ…ううう…。」
「アリス…止めてくれ…止めてくれよお…。」
結局、魔理沙の言葉が届くことはなかった。
一方全ての後ろ盾を失った輝夜もただではすまなかった。
輝夜は周りの人間から徹底的に無視をされた。
優曇華とてゐは輝夜の元から去っていった。
輝夜は自分と優曇華たちの関係が所詮権力で成り立っていたことを痛感する。
皆彼女を見るときは汚いものを見るような目だった。
輝夜はその周りの態度に食って掛かるも無視をされる。
しかしそんなことよりも、輝夜にとっては永琳が捕まったことのほうがショックが大きかった。
おそらく親よりも親密な仲だった永琳。
その永琳の逮捕は他のあらゆるいじめよりも応えたものだった。
そして輝夜はもう一つ重要な問題を抱えていた。
それは彼女が家に帰れないということだ。
本家はマスコミたちが殺到しとてもいられた場所ではない。
もし家にでもいればこれ以上の悲劇が起こることは目に見えていたので、輝夜は家を飛び出したのだ。
しかし行く当てもないし食べるものもない。
仕方ないので今日のところは食事は我慢し寝泊りは学校で行おうと考えていた。
「なぜ私がこんな目に…はあ、愚痴を言っても仕方ないわね。」
そのときだった。
誰かが廊下を歩いてこっちへ向かってくるのを感じたのだ。
「誰かいるのか?」
「こ、この声はもしかして…。」
「か、輝夜…!」
そこに現れたのは、幸か不幸か、藤原妹紅であった。
「やっぱりあなたね。どうしたのかしら?私を笑いに来た?それとも復讐?」
「そんなことしてお前と同じになりたくないね。ところで、どうしてこんなところにいるのかしら?」
「見て分からない?家にいられないから、学校で生活しようと思って。」
「…無茶な奴め。いつもの取り巻きに頼めばいいじゃないか。」
「だまりなさい愚民。あなたに心配される筋合いはないわ。それに、あんな薄情な奴らに頼むことなんてないわよ。」
妹紅は輝夜とこうして話しているのが不思議だった。
何故私はあんなに憎かった相手と普通に話してるんだろうか。
確かに暴力を振るってきたのは優曇華たちで、こいつは特に何かやれと命令したことはない。
しかし屈辱的な扱いを受けてきたのは事実。
それに対しては今でも許す気はない。
…よくよく思えば、もしかしてこいつ、いじめてる自覚なかったとか?
「お前、他人と対等な関係になったことがあるか?」
「何よいきなり…対等な関係なんて、あるわけないじゃないの。あなたたち愚民とは格が違うのよ私は。」
なるほど、こいつは他人と対等な関係になったことがないのか。
どうりでこんな性格になるはずだよまったく。
今後のためにも、こいつには対等な関係というものを教える必要があるな。
「…場所がないんだったら、うちに来いよ。飯と布団ぐらい話は用意させて上げられるから。」
「はあ!?何で私が愚民なんかの家に!」
「ふぅーん、だったら飯も布団もないこの学校で一夜を過ごしたらいいさ。いやーきついだろうなー。」
「くっ!…わかったわ、あなたの家に行ってあげる。」
「人に頼むときは頼み方ってものがあるでしょ。あと、他人のことを愚民って呼ばないこと。」
「う、ううううう…仕方ないわね…。ど、どうかあなたの家に泊まらせてください妹紅さん。」
「よく出来ました、早速行こうか、付いてきな。」
「あ~もう、屈辱だわ…。」
そういいながらも、あまり嫌な気分にはならなかった。
なんだか今まで感じたことのない気分が、彼女の中で生まれつつあったのだ。
その頃、アリスはレミリア達に対する『教育』を終えたところであった。
「なかなか楽しめたわね。それじゃあまた明日、レミリアお嬢様♪」
「ち、畜生…!」
起き上がれないレミリアが遠ざかって点のようになって行く。
そしてレミリアが見えなくなったあたりで魔理沙は口を開いた。
「…アリス、もうこんなことはこれっきりにしようぜ。」
「いやよ、あいつにはもっと苦しんでもらわないとね。あなただって本当は彼女を痛めつけたいんじゃないの?」
「確かにいじめられてるときはそんなことも思ったよ!でも、あそこまですることないだろ!」
「…優しいのね魔理沙は。もしかして私に対する優しさも偽者だったのかしら?それだったらとんだ道化よね私は。騙されてるのにも気づかずあなたを庇ってきたなんて。」
「突然何を言い出すんだよ…。私たち親友じゃないか、そんなことあるわけないだろ…。」
「さあどうかしらね?今の私はもう誰も信じられないのよ。」
そういうとアリスは魔理沙に吐息がかかるくらいの位置まで近づく。
「でも魔理沙、あなたはいじめたくないから是非間違った選択はしないようにねえ…。うふふふふ…。」
そういってアリスは笑いながら帰っていった。
「うう…アリス…アリスぅぅ…。」
魔理沙は涙を流す。
狂ってしまった親友の変わりに、魔理沙はただただ泣いた。
彼女の流せない涙の分まで、おもいっきり。
- 真のフィクサーは霊夢なんやな -- 名無しさん (2009-06-14 17:58:39)
- フランはどうなった、フランは
アリスも虐められるといいよ -- 名無しさん (2009-06-14 20:18:39)
- アリスの行動は全然普通だろ…
だからこそつらいな -- 名無しさん (2009-06-14 20:57:32)
- 輝夜とレミリアの違いはなんだったんだろう -- 名無しさん (2009-06-14 23:45:25)
- フランちゃんと魔理沙ばっかがかわいそうだな -- 名無しさん (2009-06-15 10:05:26)
- もこたんは当然学ランだよね? -- 名無しさん (2009-06-15 12:13:34)
- ありすはとかいはなのよ
-- 名無しさん (2009-06-15 17:57:59)
- いいハッピーエンドだった(てるもこ限定で) -- 名無しさん (2009-06-15 20:33:59)
- 輝夜はいじめられなかったのか・・・?
事件発覚後心を入れ替えたりなんだりしたのなら大丈夫なんだろうが・・・
ああ、ハッピーエンドだ。
レミリアいじめとてるもこがな。 -- 名無しさん (2009-06-15 21:30:07)
- レミリアはいいけどめーりんと咲夜さんまで被害受けてるのが残念だ -- 名無しさん (2009-06-16 02:23:38)
- フランちゃんは地下に閉じ込められたんだろうな -- 名無しさん (2009-06-17 08:06:41)
- 病院or地下から脱走して夜の町をあてもなく歩いていると、脂ぎった中年オヤジに声をかけらる
心の隙間をそのオヤジに巧妙につけ入られてどんどん依存していき……
誰もかまってくれない寂しさから、援助交際を始めてしまうフランちゃん
とか、妄想した -- 名無しさん (2009-06-17 12:57:36)
- ↑最悪のBADEND
せめて魔理沙に拾われて欲しい -- 名無しさん (2009-06-18 07:53:43)
- てるもこエンドは良いな -- 名無しさん (2009-06-19 23:02:15)
- フランは結局周りから距離を取られて
地下へ -- 名無しさん (2009-06-20 13:31:22)
- 魔理沙やフランやてるもこで革命起こして欲しい
イメージ的には女王の教室みたく -- 名無しさん (2009-06-21 13:56:13)
- ええい、てるもこの続きは無いのか! -- 名無しさん (2009-07-31 16:53:29)
- 続きを強く求む! -- 名無しさん (2009-09-30 14:19:03)
- アリス可哀想。フランも…
アリスのとった行動は確かに普通だと思う… -- 名無しさん (2010-03-18 00:18:45)
- フラン我が儘だなw -- 砂時計 (2010-07-23 08:23:02)
- 魔理沙甘すぎ。
アリスはずっとこういうことされて来たのに…許すとか…
流石無能ゴミクズ -- 名無しさん (2010-08-01 22:50:47)
- レミリアのありえないくらいの小物臭に、
全俺が涙した。 -- 名無しさん (2010-11-05 16:01:29)
- おいおい、妹紅はあんなに弱い訳ないじゃんwwどっちかっていうと不良? 紅 -- 名無しかもしれない (2011-05-23 09:00:57)
- こんな学校行きたくねぇwww
恐すぎるww -- 名無しさん (2011-06-14 14:17:39)
- やばいwwアリスの裏表やばいww
もこたん、チョウ優しい。惚れてまう///w -- 夜叉 (2014-01-10 01:19:47)
- やっぱ女の子しかいないとこうなるんや…
先生枠でこーりんと雲山と妖忌がいれば飽和されるはず!! -- 名無しさん (2014-01-17 00:56:38)
- てるもこエンドサイコー -- 名無しさん (2014-12-06 15:44:08)
- てるもこの終わり方好き -- 名無しの名無しさん (2015-03-14 09:10:36)
- その後も書いて欲しいな… -- 名無しさん (2016-10-12 21:11:13)
- てるもこと魔理沙、フランでいじめをなくす活動でもして欲しい -- 名無しさん (2016-10-12 21:13:07)
- 続き見たい!! -- 名無しさん (2020-04-28 03:41:33)
- 紅魔館組乙でぇーすwwwwwwwwwwwwwwwwww -- 名無しさん (2020-07-19 10:45:45)
- 魔理沙~。頑張ってアリス止めなさいよ…。
よし、ここは霊夢が!多分彼女ならきっと止めてくれるはずよ…。 -- 麗雨霊魔 (2023-10-14 18:38:15)
最終更新:2023年10月14日 18:38