「いい湯だね」
「ええ、いい汗掻けました」

浴衣を着てのんびり極楽気分を味わっているのは非想非非想天の悪餓鬼、天子ちゃんです。
その隣でいい感じに茹で上がっているのはもちろん我等が天界の深海魚、永江衣玖さんです。

「たまには温泉もいいものね」
「ええ、まさに極楽です。このまま盛り付けられても全然かまわないって感じですね」
「ポン酢であっさりと頂きたいわね」

ほかほかと体から湯気を吐き、後ろ手をついて茣蓙の上でくつろぐ姿はまさに天女。
頭の中まで茹で上がっているように見えますが、ここはそういう空気なのです。

「まさか幻想郷に温泉が湧くとは思わなかったわ」
「天高く吹き上がっていたのでわかりやすかったですね。
 地震の前触れかしらとワクワクしたのですが
 別にラドンの濃度がおかしいとかそういうことはありませんでした」
「ずいぶん怨霊が混ざっているけどね。誤差の範囲よ」
「ええ、適当に雷撃打つだけで魔晶石がぽろぽろ落ちてきますね」
「そこは点アイテムと言っておきましょうよ、東方的に」
「それはそれは」

タオル一枚で平和な会話を交わす衣玖さんと天子ちゃん。
日本が火山帯にあることを心底感謝できる素敵な光景です。

「さて、温泉にも入りましたしお昼ごはんでも頂きましょうか」
「わーい」

火照った体に衣を纏い、衣玖さんが天子ちゃんに話しかけます。
衣玖さんがもってきたのはお弁当用のバスケットです。
中には美味しそうなおむすびやおかずがぎっしり。

「うんうん、やっぱり衣玖の作る物は美味しいわ」
「ありがとうございます。腋を振るった甲斐がありました」
「ほむほむ、あ、衣玖それとって」
「これですか? どうぞ」

リスのようにほっぺにおむすびを詰め込む天子ちゃんはとても可愛らしいです。
天子ちゃんを見つめる衣玖さんもとても幸せそうな顔をしています。

「次次、っと。あや?」
「あっ…」

ところが、異変というものはいつも些細なところから始まります。
今回は天子ちゃんが取り落としたたった一つのおむすびがその引き金を引いてしまう事になるのです。

「ああ~」
「総領娘様。気にせずそのままおくつろぎくださいな」

ころころと転がっていくおむすびを見つめて天子ちゃんが悲しそうな声を上げます。
衣玖さんは、そんな天子ちゃんをそっと手で押しとどめスッと立ち上がるのです。

「ちょっと行って拾ってまいります」
「ごめんね」
「いえいえ」

ふよふよと湯気の中に消えていく衣玖さん。
この後剣戟の音が鳴り響き、悲鳴が聞こえてくれば立派な火サスの始まりです。

けれど、そんな音がするはずもなく、ただただ温泉は静かに湯気を吐き続けるのです。










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   ON!!   CAUTION!!   
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       東方地霊殿ネタバレ
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   ON!!   CAUTION!!   
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そういうわけで衣玖さんは地霊殿にやってきたのです。

「……誰?」
「あ、申し後れました。私、天界で竜宮の使いをやっております永江衣玖と申します。どうぞよろしく」
「天界からとは珍しいわね。最近来客は多いけど」

衣玖さんの前にいる妖怪さんはさとりさんといいます。嫌われ者です。
さとりさんは物珍しそうに横目でじろじろと衣玖さんを観察しています。

「ふむ……、
 床に落ちたおむすびを食べようとした蜘蛛にお仕置きをし、
 腋で握られたおむすびに嫉妬した妖怪に腋を嗅がせ、
 物価上昇で弾幕を薄めざるを得なかったと嘆く鬼の愚痴を聞いてここまで来たのね」
「おおう!?」

さとりさんは心を読む妖怪です。

「……ずいぶんと苦労をしているようね。最近の地上は物騒なのね」
「それほどでも」
「……「照れるじゃないですか」ですか、貴女の考えている事はよくわかりませんね」
「よく言われます。貴女は心を読めるのですね、そのためナチュラル引きこもり」
「いろいろと気を使う能力なのです。嫌でもわかってしまいますから」
「それはご愁傷様です」

互いにはぁ~と深い溜息をつきます。
幻想郷の常識人は大変だという事です。

「ところで、おむすび知りませんか?」

出されたお茶を啜りながら衣玖さんがさとりさんに尋ねます。
何も言わないのにお茶を用意してくれるさとりさんはとても気の利く妖怪さんなのです。

「……本心で言っていないわね。「別にもう食べられないから放っておいてもいい」ですか」
「この不埒者っ!」
「きすめっ!」

いきなりさとりさんを張る衣玖さん。
厄神も嫉妬するような見事な横回転を決め、素敵なダウンを決めるさとりさん。

「なにが「食べられないから放っておいてもいい」ですか!
 その台詞、一生懸命ご飯を作ってくれた農家の人たちの前で吐いて御覧なさい!」

拳を振り上げてぷんすか怒る衣玖さんはMOTTAINAI精神の塊です。
たかがおむすび一つと侮っているといつの間にか全部子供に盗られてひもじい想いをする事になるのです。

「立ちなさい古明地さとり。おむすびの素晴らしさ、その身に叩き込んであげましょう」

ゆらりと立ち上がり、床で痙攣を起こしているさとりさんを見下ろす衣玖さん。
よく見るとさとりさんは頬が真っ赤に腫れ上がり、首や腰がやけに捩れています。血も出てます。
さすがに衣玖さんもこの只ならぬ事態に気付きます。

「ああっ! いつものつもりで張ってしまいました。これは一大事!」

普段から天子ちゃんに苦労をかけられている衣玖さんは世間一般の感覚から少し外れてしまっていたようです。
ぴくぴくとしか動かないさとりさんは目の焦点が合っていません。

「さとりさまぁ~!!」
「おおう!? 猫が喋った!」

そこに乱入してきたのは猫さんです。
いきなり目の前で人型に変化されて衣玖さんは驚き桃の木山椒の木。

「なんてことを、さとり様になんてことを!」
「そんな涙流して喜ばなくても。そんなにポカポカ叩いたら死んじゃいますよ」
「うわ~ん、さとり様~」

動かないさとりさんに縋りつきながら両手をポカポカと叩きつける猫さんに衣玖さんはドン引きです。
泣いて喜ばれるなんて妖怪さとりさんはどれだけ嫌われているというのでしょう。

「う、うう……」
「さとり様? 大丈夫ですか? 生きてますか?」
「……だれ?」
「この薄情者っ!」
「やまめっ!」

必死な思いで猫さんを見つめ、やっとの思いで言葉を捻り出したさとりさんに追撃が入ります。
心の中すっからな猫の状態しか覚えていないのです。あんまり責めないであげてください。

「せっかく涙ぐましい努力を重ねて変化できるようになったっていうのに! 死ね、目ぇ噛んで死ね!」
「ああ、そんなに振ったら千切れる。ストップ、ストーップ」

ハイテンションな猫さんに衣玖さんが強制介入を試みます。
さとりさんをブンブン振り回すものですから辺り一面スプラッタな光景が広がってしまっています。
返り血を浴びてしまっている衣玖さんや猫さんも相まってかなり地獄の一丁目な雰囲気。

「はっ、私としたことが」
「大丈夫ですかさとりさん? 生きていますか?」
「さとり様!? さとり様?」

……へんじがない、ただのしかばねのようだ。

「にゃんと水鳥拳! やってしまった!」
「……、大丈夫です。生きてます」
「え?」

やってしまったといいながら嬉しそうに猫車を引っ張ってきた猫さんは心底残念そうです。
羽衣を巻き付けて心臓マッサージを施したら動いたのです。生命の奇跡。

「ちっ」
「猫車を放ってはいけませんよ」

死体運びフェチ猫。
敬愛する主を死体にして運び去りたいなんてヤンデレもいいところです。
まあ、その線で行くとその先には主の屍肉を啄む地獄鴉さんがいるわけです。おおこわいこわい。

「ということなので持って行っては駄目です」
「うー、せめて腕一本だけでも」
「駄目ですって」

髪の毛一房咥えさせて包丁持たせて目を暗くしたらさぞかし似合うことでしょう。

まあ、何はともあれ何故か瀕死の重傷者となったさとりさんは布団に寝かしつけられてしまうのです。
衣玖さんは悩みました。
このままさとりさんを放っておくのはかなりまずい状態です。
誰かが残って面倒を見てあげるべきなのは誰が見たってわかります。
さとりさんがこんなことになったのは自分の責任もある。
そんなことは判っているのです。
しかし、衣玖さんには使命があるのです。
天子ちゃんのおむすびを何が何でも回収しないといけないのです。

「という事なので猫さん、お留守番をお願いできますでしょうか?」
「やっちゃっていいの!?」
「すいません、やっぱ無しで」

お留守番の言葉に飛びついてきた猫さんに衣玖さんは頭を抱えます。
こいつをここに一人にしてはいけない。周りの空気が衣玖さんに警告するのです。
ならば取るべき道は一つです。

「すいません猫さん。おむすびを探して拾ってきてはもらえませんか?」
「おむすび?」
「はい、おむすびです。ちょっと地底に転がっていってしまいまして」
「……ああ、あれね。運んじゃったわ」
「運んだとは」
「いや、あれ食べ物として死んでたから。物の割りに運び甲斐があったわ」
「なんてことを」

のほーんと答える猫さんに衣玖さんの悩みは深まるばかりです。
追えば追うほど届かなくなってゆく。おむすびファンタジア。

「仕方ありません。猫さん、おむすびの成れの果てまで案内していただけますか?」
「うんうん、食べ物の恨みは怖いねぇ」

羽衣ドリルを突きつけて交渉する衣玖さんに猫さんお手上げです。
こうして衣玖さんと猫さん、火焔猫燐はさとりさんを放っておいて地霊殿中庭から降りていく事となったのです。



「やほー、おくう。元気してるかい」
「うにゅ?」

燐ちゃんに連れられて衣玖さんがやってきたのは地底の灼熱地獄です。
そこでふよふよくつろいでいたのはさとりさんのペットその二、霊烏路空ちゃん。

「ウニュラー」
「トッピロキー」

燐ちゃんは空ちゃんとお友達です。
いろいろと省略しても通じる仲なのです。便利。

「私は霊烏路空よ、始めましてこんにちわ。
 おねいさんおむすびを探しているんだって?」
「私は永江衣玖といいます。そうなのです。ご存知ありませんか」
「あれならお燐が運んできたときに既に焼きおむすびになっていたからフュージョンしちゃったよ?」
「なんてことを」

くらくらとしてきた頭を抑え、衣玖さんは哀れなおむすびの末路に祈りを捧げます。
さようなら、おむすび。食べ物としての本分以上にエネルギー出せたんだから本望だよね。

「おねいさんがあのおむすびの持ち主だったのね」
「ええ、そうです。残念な事をしました」
「いけない子だねぇ、おくう。こうなっちゃったら弁償しないといけないんじゃないかい?」
「私のせいなの? お燐が持ってきたのよ?」
「ペットの分際で口答えするとは」
「お前が言うな」

にゃーにゃーかーかーと談笑を始める燐ちゃんと空ちゃん。
それを横目に衣玖さんは今後の方針をうんうんと考え続けます。
天子ちゃんにおむすびを拾ってくると約束してしまったのです。
このまま自分の言ったことを果たせないまま戻っては、天子ちゃんの教育上よろしくないのは明らかです。
有言実行。大事なことです。時と場合によっては。
そして、今この時こそ、その時と場合なのです。
衣玖さんは天子ちゃんにお手本を見せてあげなくてはならないのです。

「お燐、ところであのおねいさん放っておいていいのかい?」
「話題そらしね? 放っておいてもいいんじゃない」

それでも親友の言葉にくるりと振り返る燐ちゃんは割と律儀。
背後を見せても平然としていられるってのは信頼関係があっての事。

「わぉ」
「ね?」

燐ちゃんと空ちゃんの視線の先には衣玖さんがいます。湯気を立てた。
少し考えればわかることです。地獄鴉や猫車と違って衣玖さんは竜宮の使いなのです。
こんな灼熱地獄にいたら焼け魚になるのは至極当然の流れです。

「わーっ、わーっ、なんかブスブスいってる。焦げてる焦げてる!」
「何かいい匂いが…」
「この馬鹿猫! ここから出すよ、手伝って」
「でもまだ死体じゃないし」
「死体にするな!」

わたわたする空ちゃんにわくわくする燐ちゃん。
彼女らのお仕事を考えれば正しい反応は燐ちゃんってのが火焔地獄跡の恐ろしいところ。



「はあ、一息つきました。ありがとうございます」
「いやいや、無事でよかったわ」
「ちっ」

再び地霊殿。
衣玖さんは焼け魚の危機を脱し、燐ちゃんと空ちゃんにお礼を言います。
あの後、衣玖さんは空ちゃんに地霊殿まで運んでもらい水を張った桶に放り込まれたのです。

「まさかおむすびを拾いに行って焼死しそうになるとは思いませんでした」
「まさかおむすびを拾いに火焔地獄跡まで来るとは思わなかったわ」
「つうかおむすびすげぇ」

こんなはずではなかったのに、的な表情を浮かべ、衣玖さんは溜息をつきます。

「これからどうしましょう」

目的であったおむすびはもはや原子レベルで変質しており、如何ともしがたい状況です。
いろいろな妖怪さんに迷惑をかけてしまったし今更手ぶらでなんて帰る事は出来ません。

「まあまあお姉さん。この際だからゆっくりしていきなよ。誰も文句なんて言う奴はいないからさ」
「そうなのですか? では、せっかくですから一晩お邪魔させていただきましょうか」
「ああそうだ。おくう、あんたも地霊殿まで来たんだからさとり様に挨拶でもしたらどうだい?」
「さとり様? ……そういえば随分会っていないわ。お変わりないかしら」
「お変わりないよ。瀕死だけどね」
「……瀕死?」

怪訝な顔で立ち上がり、素直に燐ちゃんについていく空ちゃん。
連れて行かれた先は集中治療室。

「ああっ、なんか管がいっぱいついてる」
「アレは元からだねえ」

見る影もないさとりさんの姿を見て空ちゃんが悲しそうな声を上げます。
布団に横たわるさとりさんはやつれきっています。布団は真っ赤。

「やっぱり誰か見ていた方が良かったですね」
「あちゃー、傷口塞がってなかったかー」

少々蒼い顔の衣玖さんと何処か嬉しげな燐ちゃん。

「さとり様、さとり様。私です。空です。わかりますか?」

空ちゃんはぐったりしているさとりさんをゆさゆさと揺すります。
別に死んでいるわけではないのでしばらくすると反応があるのは当たり前田のクラッカー。

「う、うう……私を呼ぶのは誰……?」
「私です。空です。さとり様のペットの霊烏路空ですよ」

……。

「「まだ生きてるなんて、早く死体になっちゃえばいいのに」……?」
「……え?」

さとりさんの呟きに空ちゃんの動きが止まります。
久しぶりに会った主の辛辣な一言は空ちゃんのコアなハートにぐっさりぶっさり突き刺さっちゃうのです。

「う……」
「う?」
「うわああぁぁぁぁぁぁん」

さとりさんを放り出して駆け出す空ちゃん。
そして即座に反応する衣玖さん。

「空さん、そっちは行き止まりですよー」
「ぅゎぁぁあああああぁん」

いったん小さくなった泣き声が大きくなり、
スタート地点まで戻ってきた空ちゃんは今度は反対方向に走り去ってしまいます。

「私ちょっと行ってきますね」

苦笑しながら空ちゃんを追いかけていく衣玖さん。
部屋の中には燐ちゃんとさとりさんの二人だけ。

「「うふふ、これで邪魔者はいなくなったねー」……?」

静かな部屋にぼそりと響く、さとりさんの呟き。
それに答えるかのようにゆっくりとさとりさんを振り返る燐ちゃん。
にっこりとさとりさんに微笑みかけるその笑顔はとてもとても美しいもので……





にゃーん





こうして衣玖さんは地霊殿の主代行をする羽目になったのです。

「何でこんな事に」

食事の用意をしながら衣玖さんが愚痴るのも当然です。
空ちゃんを慰めている間にさとりさんと燐ちゃんが行方不明になってしまったのです。
主を欠いた地霊殿。これをそのまま放置して地上に戻れるほど衣玖さんは冷徹になれませんでした。



「さとり様……? お燐……?」

敬愛する主、古くからの親友の二人を同時に失った空ちゃんは傍目から見なくても十分に悲しそうでした。
羽はだらりと垂れ下がり、左足の電子(?)も弱々しい空ちゃんを衣玖さんが放っておけるわけはなかったのです。

「空ちゃん」

やさしく空ちゃんを抱いてあげる衣玖さん。
そんな衣玖さんに黙って抱きつき返す空ちゃんに衣玖さんのハートはブロークンでメルトダウンだったのです。



「御飯まだー?」
「はいはい、もうすぐ出来ますよ」

ぴょこりとお台所に顔を出す空ちゃんに衣玖さんは苦笑いを返します。
地霊殿に住み込んで早一週間。ずいぶんと懐かれてしまいました。
そう、懐かれてしまったのです。
動物の跋扈する地霊殿において何に懐かれたかなんていうまでもありません。
心のない動物から捧げられる謎の視線。
妖怪さとりがいなくなったことで集まってきた怨霊たち。
ああ、地底はかくも賑やかな所だったのか。

「いやいや、地霊殿の主は一体どこへ行ってしまったんだろうねぇ」
「さとりの居ぬ間に酒盛りとは、地底の鬼は何をやっているのでしょう」
「ふっふっふ、同じ酒盛りでも美味しいおつまみを出してくれるところでやったほうが楽しいじゃないか」

角で皿回しをしながら受け答える鬼に何を言っても無駄というものです。
それでもお酒がこぼれないミラクル。フルーツ(笑)

「御飯、御飯」
「今日は怨霊のてんぷらを作ってみました。カリカリしていて美味しいはずですよ」
「おお、これは美味しい。お酒によく合う」

てんぷらをつゆに浸けてぽいぽい口に放り込む勇儀さんを見て衣玖さんも心なしか嬉しそうです。
人の住処に勝手に上がりこんで酒浸りな生活を送っても怒られないのが幻想郷です。

「おかーさん、おかーさん。あーん」
「またですか? 仕方ありませんね」

不思議な二人称を使ってあんぐりと口を開ける空ちゃん。ぱたぱた。
その空いた口にてんぷらをやさしく咥えさせる衣玖さん。もむもむ。

「おいしい、おかあさんの味って感じがする」
「ありがとうございます」
「何かすごくいい光景を見せてもらったような気がするがあえて突っ込ませてくれ」

なんだかとっても幸せそうな衣玖さんと空ちゃん。
どこか突っ込む要素がありましたでしょうか?

「なんだそのおかーさんてのはおかーさんて年齢でも年齢でもないだろう外見的にせめてお姉さんだろ
 お前は雛か餌をねだるな与えるな自分で食え前置きも無しにほのぼのを展開するなもっとしっかり書け」

酔っ払いって性質が悪い。

「いやね、ヤタガラスを取り込んでから右手が制御棒になっちゃってお箸持てないのよ」
「外れるだろそれ」

制御棒が実はうまい棒もしくはちくわってネタはどっかで誰かがやりそうです。
でも、そんな美味しいネタはそそわの偉い人たちに任せておけばいいのです。期待してます。

「あーん」
「はーい」

もむもむ。
地霊殿って素晴らしい。



こうして地霊殿はとても和やかなところになってしまいました。
ここがかつて地獄だったなんてもはや信じられないような状況です。
これをわずか一代で成した衣玖さんは当然ながら地下のアイドルに祭り上げられてしまうわけです。
しかし、やはりここは地霊殿。そんな衣玖さんを恨む者だって出てきます。
怨霊が恨みを忘れたら成仏してしまいますから必死になって衣玖さんを恨もうとするのです。

何あの魚、さとり様よりごはんが美味しいわ
さとり様ごはん作ってくれたっけ……? 恨めしいわ
妬ましい、何もしないのにごはんをもらえる地獄鴉が妬ましい
地下のアイドルの称号は魚類なんかにゃ渡すわけにはいかないねぇ
つるー

ネガティブフェイスならお任せな地下の住人たちの恨みは恐ろしいのです。
そして始まる予定調和。すなわち陰湿ないぢめのはぢまりはぢまり。

あの魚の作ったごはんにごま塩たっぷり混ぜてきてやったわ!
私はそのごはんを全部食べてきてやったわ! 
でもね、なにかおかしいの。清々しい気分って言うのか浄化された感じって言うのか……
ああっ! 薄まってる薄まってる! 気を確かに! 恨みの心を思い出して!
地獄鴉を褒めちぎって照れてる間にごはん掻っ攫ってきたわ。……美味しいじゃないの! 妬ましいわ!
ねぇ……、魚とか鴉って蜘蛛食べるんだね……   グフッ
つるーっ!

地霊殿を襲う数々のいぢめ。なんて恐ろしい。

「おかーさんおかーさん、あーん」
「はい、あーん」

もむもむ。

「あんたたちは平和だね。その二人称もう固定なのかい?」

勇儀さんの目から涙がしとどに流れ落ちます。
泣き上戸です。飲まなきゃやってらんないって奴なんです。















  • ウニュラー トッピロキーwwwwwwwwwwwwwwww
    グルグル懐かしすぐるwww -- 名無しさん (2010-07-13 23:12:35)
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