四季映姫・ヤマザナドゥが出撃した。
以前小町がサボったせいで花が咲き乱れ、大勢の者達が押しかけてきたので
とりあえずその者達にありがたいお説教をしたら、いきなり弾幕でフルボッコにされた映姫。
休憩に入ったので、その者達にした言いつけを守っているか 見回りに行こうというワケだ。

「 で。なんであたいまで一緒に行かないといかんのですか 」
「 わ、私、まだこの 弾幕ごっこという物に馴染めなくて、一人じゃ心細・・・じゃなくて! 小町の仕事を見張る為よ! 」
「 今はあたいも休憩中でしょうが。 へぇ~、心細いですか。へぇ~ 」
「 何を笑っているの小町!!」
「 あででででで! 脇腹を刺さんでくださいよ シャレにならんです! 」

そう
四季映姫はスペルカードルールにおいて、閻魔の貫禄が潰れる程の「へっぽこ」であった。
幻想郷にこのルールが採用されてからもう随分経ったのだが、いまだに映姫はこのゲームに馴染めていなかった。
今までは是非曲直庁に引きこもっていた為、誰とも戦う必要が無かったが・・・
そのせいか、やはり腕前はどんどん落ちていったようだ。


「 このままでは誰も私の話をマジメに聞こうとしてくれません・・・ 」
「 勝とうが負けようが、あの連中が話聞くとは思えませんけどねぇ。あたいだって真面目に聞いてな うごぉッ 」

小町の腹に、映姫のヒザが食い込んだ。

四季映姫の高い身長、そして気迫。
何より弾幕での勝負でなければ、その力は閻魔と呼ぶに申し分無かった。

「 あ! 見えてきたわ小町!」
「 げっほ・・・ どこに向かって・・・ って ちょいちょい、ちょいと待ってくださいよ 」

見えてきたのは魔法使い 魔理沙の家。

「 え、まさかいきなりあのやかましいのとやるんですか? ド素人に紅魔郷EXステージやらせるようなもんですよ 」
「 私がド素人と言いたいの小町!? 」
「 え、あー・・・何と言うか、四季様って弾幕勝負苦手でしょう?ほら、 あいつ一応 このルールではかなりのやり手ですし 」
「 う・・・  不安を煽るような事言わないで・・・ 」

萎縮してしまった。
どうしたものかと考えた末に 小町は別の場所に行く事を提案した方が良いなと思った。が

「 あ~?いつぞやのサボタージュ死神に口うるさい閻魔様 だったか? ・・・何してんだ人ん家の上空で 」

二人の背後から声をかける白黒の魔法使い。
小町が思わず げっ と声を漏らす。魔理沙は家にいたのではなく、どうやら今、どこぞから帰ってきたようだ。
映姫は小町曰く「やり手」な相手の突然の登場に、あわあわとうろたえたが すぐに威厳を取り戻し、咳払いをすると

「 いつも動き回る人間を捕まえるのは厄介よねぇ 」
「 誰の事だ? 私もいつもそれで苦労するんだが 」

セリフを言ってしまった。 小町は オイオイ、結局やるのかい と呆れたが 
映姫からすれば閻魔としての立場もあり、ここで退く訳にはいかなかった。

「 どうですか?私の言いつけ、ちゃんと守っていますか? 」
「 いやだからさぁ、私は嘘なんてついてないってば。 まぁアレだ。行くぜ? 」
「 嘘をつかない人間なんていないのです。ですから、嘘をつかないなんて堂々と・・・って きゃあっ!! 」

映姫が話をしている途中、せっせと弾幕を展開する魔理沙。

「 ちょっ ちょっと待ちなさい! まだ話の途中・・・ あぐっ! 」
「 あ 」

顔面に☆が直撃。試合終了である。
地面にボテっという音を立て、倒れこむ映姫。

「 あ~・・・ 何というか・・・すまん。これでも気を使ったつもりなんだが 」
「 ・・・・・・っ! 」

魔理沙のいらんフォローに酷く傷ついた様子の映姫。小町は急いで映姫を回収すると、さっさと退散することにした。

「 すまんね、ウチの上司が邪魔したよ 」
「 お前ら何しにきたんだよ結局・・・ 」

小町の言葉にも何気に傷ついた映姫は、一人目の時点で既に大ダメージの様子だった。

「 ・・・・・・小町。 やっぱり私には才能が無いんでしょうか 」
「 いや・・・相性の問題とか色々ありますよ。 あいつ結構強いですし、相手が悪かっただけですって 」
「 そうですか・・・そうですよね 」

小町は映姫に 今日は帰りましょうと言ったが、映姫は首をブンブンと振ると、次の目的地へと小町を引きずった。

「 ・・・・・嫌な予感がするねぇ 」

映姫の落ち込みようと、弾幕勝負時にいきなりヘタれる動きを思い出すと、小町は先が思いやられた。






「 この辺ね・・・幻想の音が聞こえてくる 」

映姫が耳を傾けた先 リリカ・プリズムリバーが妙な音を出しながら騒いでいた。

「 あぁ、貴女様は・・・いつぞやの説教好きな 」
「 今日は貴女が言いつけを守っているか見に来ましたよ 」

小町は不安を感じつつも映姫を見守っていた。騒音姉妹は、儚い存在ながらに結構な力を持っている。
それなりに弾幕慣れもしているようで、一筋縄では行かないだろう。

「 なんだっけ・・・言いつけって?  まぁとりあえず 」
「 あ 貴女という人は・・・ いいですか、貴方達は少し自己が曖昧過ぎる。拠り所の無い霊は・・・ って きゃあぁ! 」

「 ちょっと四季様、さっきと同じパターンじゃないですか! 説教なんて後にして弾見て、弾! 」
「 わか、わかってます! ええっと、『彷徨える大罪』のスペルカードは・・・ がはっ! 」

背中から直撃を受け、墜落する映姫。
尊敬する上司の無様な動きに、思わず目を背けたくなる。

「 あちゃ~・・・ 」

墜落を見届けたリリカが、訝しげに言う。

「 あらら、随分と呆気ない。 で 言いつけって何だっけ。油物を控えろって事だっけ? 」
「 ち・・・ 違・・・ 」

地面に叩きつけられた際に首を変な方向にひねったのか、弱弱しく訴える。
しかしその声は届かず、 健康には気を使ってるわ と言うとリリカはさっさとどこかへ行ってしまった。



「 ・・・四季様。 とりあえず相手の弾を落ち着いて見る事から覚えましょう。テンパったら負けです 」
「 ・・・はい 」

映姫に説教をし、やっぱり今日は帰るのはどうかと提案する。しかし映姫は中々首を縦に振らない。
そこに、活気のある声が聞こえてきた。

「 あ! どっかで見た事のある顔 」

映姫がビクリと顔を上げると、因幡 てゐが竹林から飛び出してきた。
以前に無縁塚を訪れた一人であり、見回りの対象の一人である。
一応小町は、戦うか否かを尋ねた。無論、映姫の返事は 「やります」 の一言だった。
妙なとこで意思が強いんだよなぁこの人は とため息をつきながらも、
小町は この兎ならまぁ と、映姫の勝機を期待した。
かくいう映姫はこれから殺し合いでも行われるのかと思える真剣そのものの表情で、

「 貴女が私の言いつけを守っているか、見にきました 」

威圧感たっぷり。
何をそこまでマジになってるのかと てゐは後ずさり、防衛本能から嘘をついた。

「 ああ勿論ですとも。あれからはまっとうに生きる事にしました 」
「 またそうやって嘘ばっかり言うのね! 」
「 閻魔様こわーい! 」

相手が嘘を吐いたのを確認した映姫は、先ほどまでの失敗を繰り返すまいと今度はこちらから弾幕を展開した。
小町は呆れた様子でそれを見守っていた。さすがにあの兎相手にはやってくれるであろうという上司への期待を込めて。
しかし、その期待は無残にも打ち砕かれた。





「 うう・・・ 」
「 ・・・・・閻魔様、よわーい・・・ そんじゃあ、私はこの辺でー 」

嘘つき兎に軽くあしらわれ、床に倒れこむ上司の姿に、小町は何とも言えない微妙な気分になった。

「 あ あの、四季様・・・ 」
「 ・・・笑いたければ笑いなさい。小町 」
「 は、あはは  ・・・すいません、笑えないですほんと 」

声の震えている映姫に、小町は引きつった笑いすら出てこなかった。
地面に顔面をへばりつけたまま動こうとしない映姫を小町はおんぶすると、今日はやっぱり帰ろうと提案した。
映姫は全く反応を示さなかったので、それをイエスと取って帰る事にした。





「 ああ! また口うるさいのが来たね! 」


帰る途中、子供特有の大声が二人の耳に飛び込んできた。
周りを見てみれば氷の妖精 チルノの済む湖の上を通過中だった。
どうやら口うるさいとは映姫の事らしい。

「 ・・・・・・っ 」

口うるさいという言葉に、反応をしたのを小町は背中から感じた。
戦える様子ではない映姫の為にも、何とか戦闘は回避したい。

「 あー・・・別にあれだ。今日は通りかかっただけでね。アンタの相手してる暇はないんだよ 」

小町は何とかこの妖精が空気を読んでくれる事を祈って、アイコンタクトを図った。

「 ふん、あたいのテリトリーに入っておいてそのまま帰れるワケないでしょ。この辺で墜落してく? 」

無駄だった。そもそもあまり期待はしていなかったが。小町は映姫をおぶったまま交戦の準備をした。

「 そんな暇は無いんだけどねぇ・・・火事と喧嘩はこの世の華ってね。一人称を『あたい』って呼ぶのは、この幻想郷に一人でいい 」
「 お、やるかい? 」

取ってつけた勝負の理由。やれやれ と金を取り出そうとした時、映姫が背中から離れた。
そして小町の前に出ると、下がっているように手で合図をした。

「 ・・・・ちょっと。 四季様? 」

マズい。戦う気だ。 何がマズいってこの流れがマズい。
小町には映姫の死相が見えまくっていた。ものすごく負ける気がする。


「 様子を見に来ましたよ 」
「 何?やっぱりアンタがあたいの相手をするの? 」

目元をゴシゴシと袖で拭うと、映姫はチルノに啖呵を切った。

「 お言葉ですけど四季様、ちょいと下がっていてくれますかね 」
「 気遣いありがとう、小町・・・けどこれは私の用事ですから・・・」

明らかに強がっているのが見え見えの声なのだが、小町は説得を諦めて手を引いた。
この方は 言い出したら絶対に意見を曲げないからだ。

小町は、見えている死相が何とか消えてくれないものかと祈りながら勝負を見守った。







「 ハァー・・・ハァー・・・あたいったら さいきょーね!! 」
「 ・・・・・ 」

激しい接戦・・・傍から見れば、何とも低レベルな戦いに、ようやく決着がついた。
被弾し、そのまま湖に落ちてどこまでも沈んで行きそうなほど微動だにしなかった映姫を小町が急いで回収する。

「 あ~、今日はあたいらの完敗だ。見逃してくれこのとーり 」
「 ふん、しょーがないわね! さいきょーのあたいは心も広いのよ。 去れいッ! 」
「 ははぁ~っ 」

小町は社交辞令を済ますと、そそくさと湖を後にした。





「 四季様~? 」

声をかけたが、反応が無い。おんぶしている背中からは小刻みに震え、肩の裾をきつく握られているのを感じる。

「 う・・・ぅ・・・っく 」
「 ありゃりゃ・・・ 」

小さな嗚咽が聞こえてくる。小町は気まずくなり、 ついてくるんじゃなかったかなぁ と思った。
妖精相手にも勝てないとは、小町の思っている以上に映姫の腕前は深刻だった。

「 うぅっ・・・ごめん・・・なさい・・・ 無理につき合わせた挙句に・・・グス こんな・・・みっともない所を見せて・・・ 」
「 んな落ち込まないでくださいよ・・・練習すりゃ上達しますってば 」
「 本当に・・・そう でしょうか・・・もしかしたら私はずっと・・・ う うぁぁぁ...ん 」

ぼろぼろと涙がこぼれ、背中がどんどん湿ってくるのを感じる。
小町に対して映姫が、これほどまでに弱弱しい姿を見せたのは初めての事だった。


「 あやや~、なるほど。やっぱり閻魔様は弾幕勝負が苦手だったんですね・・・ 」


その声に、二人の背筋に悪寒が走った。

「 幻想郷の最高裁判長、四季映姫ヤマザナドゥの意外な弱点! 結構いい部数取れるかもしれません 」

誰もが嫌いなパパラッチ天狗。
その声に真っ先に反応したのは映姫だった。

「 貴女・・・貴女も私の話を理解せずに・・・! 私に対してそのような記事を書こうとは 良い度胸ですね・・・! 」
「 あ、あややややや、閻魔様閻魔様、ここは弾幕で勝負しましょうよ!フェアじゃありません! 」
「 ・・・ッ! 」

涙目でスペルカードを構え始める映姫。

「 ちょちょちょ、何乗せられてんですか四季様! そいつに負けたら絶対ヤバいことになりますよ!」
「 解っています! ですが この私が幻想郷のルールを守らないワケにはいかないでしょう! 」

ほっと安堵の息をついた射命丸 文に、映姫が弾幕をけしかける。無論、勝負の結果なんて最初から解っていた。



「 ううう・・・・ 」
「 あ、あやや・・・これは想像以上に・・・ 」

開幕1分かからずに墜落した映姫に、文が苦笑する。

「 まいったねこりゃ・・・なぁ、天狗。ほんとに記事にする気かい? 」
「 うーん・・・私としては真実を記事として伝えたいんだけど 」

「 うううぅぅぅ・・・おしまいだわ・・・新聞に載ったら、もう誰も私の話を聞いてくれない・・・ 」

映姫は地面にヒザを付き、顔を抑えて めそめそと泣き崩れてしまった。
これにはさすがに二人の空気も重くなる。

「 ・・・・わかってると思うけどね。この人の恨み買ったら、アンタ絶対地獄に落とされるよ 」
「 むー・・・仕方ありませんねぇ・・・ 閻魔様、閻魔様、聞いてます?
 閻魔様の事は記事にはしませんよ。一応プライバシーは守らないといけませんから 」

天狗と死神に慰められ、ようやく泣き止む閻魔。

「 私、新聞について自分の考えを纏めてみたんですよ 」
「 ・・・では改めて問いましょう 」

文の気遣いで映姫の気分も落ち着いてきたらしい。
小町は 文の目上の者に対して「のみ」見せる完璧な対応に、思わず関心してしまう。

「 惜しい、30点! 」
「 惜しいんですかそれ 」

映姫の説教を聞き終えた文は、顔出すんじゃなかった と言いたげの げんなりした顔をして去っていった。




「 休憩、そろそろ終わっちゃいますねぇ 」

遠まわしに いい加減に帰りましょうや と言ってみる。

「 ・・・・・ 」

映姫は小町から顔をそらしたまま、小刻みに震えていた。
上司として全くいい所を見せる事も出来ず、自分の私用で小町の休憩時間を潰した事に、責任を感じていた。

「 申し訳ありません、小町・・・私はヤマザナドゥ失格です・・・ 」

すっかり小さくなってしまった映姫。見ている小町も痛々しくなってくる。
再び肩を震わせ、泣き出しそうになっている映姫を無言で小町は抱き上げた。

「 小町・・・ 」
「 いいですか、四季様。あたいらは基本同じような攻撃しかしないんですよ。
 ですからパターンさえ覚えてしまえば、案外なんとかなったりするんです。要するに 慣れるしかないですねぇ。
 今日はもう帰りましょう・・・練習ならあたいが付き合いますから 」
「 はい・・・ 」

二人はコンテニューを諦めると、そのまま仕事へと戻っていった。





後日

そこには元気に弾幕ごっこを練習する映姫と小町の姿が

「 ・・・・・ 」

いくら挑戦しても上達しない映姫に、さっそく小町の顔には諦めの色が写っていた。

「 まぁ、あれですよ四季様・・・弾幕での勝負だけが幻想郷じゃありませんから・・・ 」
「 うあぁーーーん! 」

河原には 閻魔の鳴き声と死神の悲鳴が轟いていた。
映姫の物語が終わりを迎えるのは 一体いつになるのやら。



そして霊夢は ずっと紫色の桜の前で待ち続けていた。

「 この異変は一体いつになったら終わんのよ! ていうか、あの閻魔を私はいつまで待ってりゃいいのよ!! 」

異変の終わりは まだまだ訪れそうにない。












  • 高い身長・・・? -- 名無しさん (2009-06-02 00:59:58)
  • 小町よりは低いけど霊夢よりは高いんじゃなかったっけ -- 名無しさん (2009-06-02 01:31:49)
  • やっぱり弱い映姫様は物凄い違和感が湧く
    まぁ スペルカードルールだし このSSの場合は仕方ないのかwww -- 名無しさん (2009-06-02 06:12:50)
  • なるほど、この理論で行くと幽香が文花帖に出てこないのは「スペルカードルールに慣れないから」か -- 名無しさん (2009-06-02 08:33:05)
  • 操作出来るキャラの強さはプレイヤーによって決まるからなぁ
    EXクリア出来てないよごめんね映姫様 -- 名無しさん (2009-06-02 10:47:38)
  • まあ俺に操らせれば天才設定の霊夢ですら妖精以下の戦闘力だからな! -- 名無しさん (2009-06-02 11:42:57)
  • 映姫だと敵がやたら強くなるのはこういう理由だったのか -- 名無しさん (2009-06-02 12:11:22)
  • なんか、待ち続ける霊夢も結構可哀相な気が・・・。 -- 名無しさん (2009-07-28 01:05:02)
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