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「俺×四季映姫」(2008/06/12 (木) 20:36:15) の最新版変更点
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<< W A R N I N G !! >>
俺×キャラ厨二u1物です。苦手な人は気をつけてください。
あなたのキャラクターのイメージを少なからず壊す可能性があります。気をつけてください。
殴るわ蹴るわのスーパーバイオレンスタイムです。苦手な人は気をつけてください。
なにかと設定とか都合のいいところが多いのでその辺気を使う人は気をつけてください。
ヒュッ!!
手に持ったムチを振ると、鞭の先端が空気を切り裂いて、ひゅっという音を立てる。
僕はそのまま続けて二度三度素振りを繰り返す。
ヒュッ、ヒュッ!
こんなものだろうか。
次は何かに当ててみよう。
そう思って僕は目に付いた柱に向かって、鞭を思い切り振り上げた。
パァン!!
大きな音がすると同時に、ずしんとした重みが手に感じられる。
木でできた柱の表面からはパラパラと木屑が崩れ落ち、この鞭の威力の高さを物語っていた。
二十センチほどの長さで出来ており、はたから見れば細長い棒のような形。
ゴムで出来ているため大きく力を加えるとしなるので強度もある。
さらに先端には小さな石ころがいくつか埋め込んであり、
これが重みとなってフルスイングした時にはかなりの威力になっているんだと思う。
今日のために棒で叩くのと鞭で叩くのと両方の威力を兼ね備えた僕の自信作だ。
そう、今日のために……。
「あ、あの……」
自分の作った鞭を眺めていると、後ろから声が聞こえた。
「こ、こんな無益なこと、どうかしています。今ならまだ間に合います、さもないと、今度は本当に地獄に……」
そう震える声で言ったのは閻魔の四季映姫だった。
ぱっと見た感じでは十代そこそこ、緑色の髪の頭の上には偉そうな冠が乗っかっている。
けれど今はその冠は威厳も何も示すことはなく、むしろそこにあることが滑稽にも見える。
「あれ、怖くなったんですか映姫さま。」
「そ、そうじゃありません!」
椅子に座り両手両脚を縛られているというのに、四季映姫は、
相変わらず意志の強そうな目をして、僕を見上げていた。
ああ、イライラする。
бб
今思えばはらわたが煮えくり返る。
こいつの、こいつのちょっとした手違いか何かというので、僕はなんと地獄に落とされてしまったのだ。
生前、まだ希望に満ちた将来もあり、これからの人生を精一杯生き抜いてやろうと思った矢先、
不慮の事故に巻き込まれ、気付けば病院に運ばれ、気付けば三途の川を渡り、そして気付けば地獄に放り込まれていたのだ。
心当たりなど何一つない。人を貶めたこともなければ、いたずらに生命も奪ったことはない。
それなのに、気付けば僕は地獄に落とされていた。
地獄での日々は言葉に違わぬまさしく地獄の日々だった。
毎日鬼たちに殴られる蹴られる、焼かれる、煮られる。
嫌になって首をつろうにも、死ぬことさえ許されない。たまったものではない。
「お前さんが生きてるうちにやったことの罰だ。」とまるで正義の味方であるかのように鬼達は酒をあおり、がははと笑う。
そして嬉しそうに僕を棒で叩く。
自業自得と思い何もかも諦めれば少しは楽になれるかもしれない。
長く長く、これから先永遠に続くのであろう地獄の日々、僕はなんどもなんども鬼達の金棒でひっぱたかれるなか、
なんどもなんども自分が生まれて死ぬまでにしたことを思い返していた。
僕は知らないうちにとんでもない罪を犯していたのだろうか。
しかし、いくら心の中を探ってみても、思い出るのはかつての輝いていた日々ばかり。
あまりに対照的な理想と現実の落差は、いっそう僕の胸を締め付けた。
もうあの日にはどうやったって戻りっこできない。
毎日のように弱いものをいじめては楽しそうに笑う鬼を見れば一目瞭然だ。
もう何年、いやもう何十年経ったかもしれない。
地獄の生活にもすっかり慣れてしまったある日のこと、突然閻魔が僕を呼び出したのである。
いくら苦痛の地獄といえど、単調な毎日にうんざりしていたところだったので、
いい助け舟と、僕はその閻魔の元へと赴くことにした。
会ってみればただの子供、娘だった。
朱塗りの柱に金の欄間、厳かを絵に描いたようなだだっ広い部屋で、
ちょんと机に向かって座っていた場違いな少女、それが閻魔、四季映姫だった。
四季映姫は僕が部屋に入ってきたのに気付くと、書類をばさばさとまとめて口を開いた。
「コホン、はじめまして。」
そう言うと掛けなさいと椅子を差し出された。
いやに偉そうな振る舞いだった。
見た目が子供だけに、余計偉そうな態度が目に付いた。
「実はあなたに謝らなくてはならないことがあります。」
四季映姫はさらっとそう言った。
「貴方を、手違いで地獄に送ってしまった事です。」
特に悪びれる様子もなく、ただ書いてあった文字を読み上げただけのようにそう言った。
あまりになんでもないことのように言うので、僕は、はぁそうですかと生返事をしただけだった。
それに、特に驚きもしなかった。なんとなくそんな気はしていたし。
ひとつ驚いたとすれば、僕が何も驚かなかったということくらいだろうか。
もう僕の身体も心も、それほどまでにボロボロになっていたということだろう。
もうどうだっていい、どうせ生き返ってあの輝いていた日に戻ることもないのだ。
長い沈黙が続いて、四季映姫が口を開きそれを破った。
「今回は私に誤りがあったことを認めます。ですがですよ、間違いでも貴方が地獄へ行ってしまったということは
なんらか地獄と縁があったということ、すなわち生前の善を怠ったからに他ならず………」
僕が何も言わないと思ってか、四季映姫はとうとうと話し出した。
僕は、あっけにとられていた。
四季映姫は、自分のミスをよそに、説教を始めたのだ。
それまでの空っぽだった心に、だんだんとイライラとした何かが溜まってきていた。
「それでですが……。」
話が一区切り付いたのか、四季映姫はコホっと咳払いをし、お茶をすすってからまた口を開いた。
「問題は貴方のこれからの行き先です。今すぐ天国に送ってしまいたいところなのですが、今の貴方は少々臭います。
地獄に長い間いたために臭いが染み付いてしまっているのです。そんな身体で楽園へ行けば、たちまち追い出され
貴方は行き場を失ってしまいます。そうなればお終いです。貴方の魂は煙のように消えてなくなってしまう。」
四季映姫はぺらぺらとそう喋ると、くいとお茶を飲み込んでから言った。
「そこでです!」
机を手のひらでぱんと打つ。
「貴方には地獄の臭いが抜け落ちるまでここで働いてもらいます。心配することはありません、寝床と食べ物は用意してあげます。
それに、貴方のようなどこにでもいる人間が閻魔の元で働けるなどめったにない経験、どうです?悪くないでしょう!」
四季映姫は自信満々の笑顔でそう言いきると、腕を組んでふんと鼻息をならした。
その顔は本当にその辺を楽しそうに走り回っているような子供そのもので、
これが本当に子供の頃に絵本で読んだ閻魔なのだろうかと疑問になった。
そうして次の日から、断ることも出来ずいつの間にか閻魔の雑用としての日々がはじまった。
б
はっきり言って楽な仕事ではなかった。
いや、地獄とくらべればなんと言うこともない。
しかしいちいち気にさわるのが閻魔の小言だ。
やれお茶がぬるい、掃除した部屋が汚い、終いには寝るのが遅いだの勉学に励めだのと私生活にも口出しをしてくる始末。
いちいち何かするたびに口やかましく言われてはこちらの心が持たないので、言われたことを直していけば、
「貴方は私の言いつけをよく守り行動を改善するのでお説教のしがいがあります。」
と嬉しそうにまた粗を探して重箱の隅を突くようにちくちくと説教を始める。
たまったものではない。
そこだけ考えればただぼけっと何も考えずいれば時間が過ぎていた地獄の方がよかったかもしれない。
考えれば考えるだけ腹が立つ。
こうなったのも、もともとはあの四季映姫のせいなのだ。
そう、それなのに自分の責任は棚に上げ、自分は悪びれる様子もなく嬉しそうに説教、説教、説教。
こんな小娘にと思えば、余計にむしゃくしゃする。
そこで、僕はある計画を企てていた。
四季映姫に、閻魔にかわって罰を与えること。
б
ある日のことだった。
その日僕は掃除に洗濯に、四季映姫に言いつけられていた山ほどの仕事を終え、寝床に倒れこんだ所だった。
「お呼びだよ。」
そう僕を呼んだのは三途の川の船頭、小野塚小町という死神だった。
死神に呼ばれるなど縁起でもない。
この死神がお迎えに来る時は、たいてい四季映姫が僕に急な用事を押し付ける時だ。
今日だって、例外ではないだろう。
四季映姫は今日僕が起きた時からずっと書類をあれやこれやと引っ掻き回し忙しそうだった。
大方僕に手伝わそうというと言うのだろう。嫌な予感はしたが。
やれやれ、勘弁してくれよとぼやきながら僕は四季映姫の元へと向かった。
「あ、よく来てくれました。何とかしてこの仕事を明日までに終わらせなくてはいけません。
今から二人で協力すれば何とかできるはずです。お願いできますね?」
そう言って四季映姫は山のような書類を遠慮なくどっかと僕の目の前に置いた。
あまりの無茶で急で無神経な要求に僕ため息をもらす。
「ほら、またそうやってすぐに溜息をつく、貴方の悪い癖です。さぁ、早速取り掛からないと間に合いませんよ。」
そう言って四季映姫は鼻の穴を大きくして得意げに僕の癖を見つけて指摘すると、
さっさと自分の分にペンを走らせた。
б
「よかった、おかげで全部終わらせることが出来ました!」
四季映姫がそう声をあげたのは取り掛かってから半日ほど経った後だったろうか。
机に突っ伏して寝ていた小野塚小町がむくと顔を上げる。
途中まで頻繁に運んで来てくれていていたお茶をすすると、もうすっかり冷たくなっていた。
大きく伸びをしてから、中に鉄骨でもの入れられたかのようにかちこちになった肩をさすりながら、
新しいお茶を入れてこようかと立ち上がると、
いつの間にかすうすうと寝息を立てている四季映姫が視界に写った。
「まったく、寝顔だけは可愛いんだけどね。」
小野塚小町が四季映姫に毛布を掛けながらそう言う。
確かに、寝顔だけ見ればまるでクラスの出し物で変装をしている子供のように見える。
そんなことを思っていると、自分は寝るから後は宜しくと小野塚小町は立ち上がった。
б
四季映姫を彼女の寝室に運んで、ベッドに降ろす。
辺りは静かで、誰もいる気配は無い。
はっきり言って、四季映姫に復讐するなら今が絶好のチャンスだった。
やるなら、今しかない。
ポケットには、彼女を縛り付けるための縄と、鞭。
すやすやと眠る顔はやはりどう見ても子供だったが、戸惑うことはなかった。
気付けば四季映姫の下で働かされてもう随分経った。
今日のために生きてきた。
この日のために毎日を耐えてきた。
それが今日で僕は報われる。
そう思うと、これからいよいよ攻め込むという戦に駆り出された兵士のように、
握り締めたこぶしの中で、じんわりと汗が皮膚から染み出すのを感じた。
そのとき、コンコンと誰かが四季映姫の部屋のドアをノックするのが聞こえた。
ガチャとドアを開けて入ってきたのは、小野塚小町だった。
「そうそう、忘れるところだった。はい、コレ。」
そう言って小野塚小町は包みをした小さな箱を僕に手渡した。
「あたいからじゃないよ。そこでいびきかいてる閻魔さまからさ。」
分からないといった顔をする僕に、小野塚小町はあきれた様な笑みを浮かべてこう言った。
「やだな、バレンタインデーって言うんだろ?今日は。」
バレンタインデー……?
なんだっけ、……それ。
бб
「やはり、怒っているのですか……。」
四季映姫が恐る恐る口を開く。
怒る、それはなんに対してか。僕を地獄に送ったことについてか、それについてろくに謝りもしないことについてか、
毎日雑用としてこき使ったことについてか。
どれを指して聞いたのか分からなかったが、僕は四季映姫の質問に答えた。
どうせ答えなど全て同じだ。
「ええ、勿論。」
そう言って僕は手に持った鞭をぐいぐいと曲げた。
部屋の真ん中に置かれた四季映姫を縛った椅子の周りを、こつこつと僕は歩く。
四季映姫がいつも口うるさく言うように真似をして言った。
「映姫さま、人は誰でも過ちを犯します。無論閻魔さまであろうと、そうですね?」
「……。」
「過ちは誰にでもある。けれど過ちを犯せばそれまで?反省すれば許してもらえる?
違いますね、映姫さまのお役目にあるように、過ちを犯せば罪を償わなくてはならない。」
「………。」
「ですね?」
そう四季映姫の顔を覗き込むと、黙っていた四季映姫は口を開き、
いつもと違い焦ったように早口で言った。
「こんな、こんなことをすれば、きっと次は貴方は地獄におちます……!今ならまだ酌量の余地がある、
今からでも遅くはありません、一時の感情に流されれば必ず後々後悔を……!貴方には、罪人になってほしくありません!」
「いいえ映姫さま。今日のことは僕が常日頃から成し遂げなければと思っていたこと。
そしてこれが、今僕に出来る精一杯の善行。」
「そ、そんなっ……!!」
僕への説得は諦めたのか、なんとかここから逃れようと四季映姫は身体を捻る。
縛っていた縄がぎゅうぎゅうと音を立てる。
いくら閻魔様といえども痛いことは嫌いなようだ。
僕はすっと四季映姫に近寄ると、カチャカチャと彼女のスカートのベルトに手をかける。
「な、なにを!?」
身体を振って暴れる四季映姫を押さえつけると、ベルトを抜き取り、スカートのホックをはずす。
いとも簡単にするりと四季映姫からスカートを剥ぎ取ると、二本の白い脚があらわになる。
「ちょ、……ちょっと、………!」
四季映姫は恥ずかしそうに脚を隠そうともじもじとした。
閻魔としての権力を表す冠、衣装を身に纏っていながら、必死に下着を見られまいとするのは、なんとも間抜けな姿である。
四季映姫は声にならない声を出し、俯いた顔はみるみるうちに赤くなっていった。
ここまで恥ずかしい思いをさせられるなど、初めてのことだったのではなかろうかと思うほど。
「映姫さまは可愛いパンツを穿くんですね。」
「………な、……!!」
ふざけて言ってみると、案の定顔を真っ赤にして固まる四季映姫。
こうなってしまってはもう普段の偉そうな四季映姫の姿は微塵も見られない。
「う、……あう………!」
必死に何か言おうとするが、いつものよく喋る口が上手に回らず、四季映姫の口から出てくるのは意味の繋がらない単語だけだった。
そんな普段からは想像も出来ないほどうろたえる四季映姫を見て、僕は心にかつてない快感を感じていた。
いつも偉そうで、誰も彼もを見下ろし、二言目には説教をたれていた生意気なあの四季映姫が、
今できるたった一つのことが僕の前で羞恥に頬を染めるだけ。
いいざまだ。
僕にもし閻魔以上の力があるならば、四季映姫をこれから毎日この姿で亡霊たちの前に立たせてやろう。
四季映姫は必死に足元を隠しながら、それでもなお震える小さな声で説教をするのだろうか。
考えただけで笑いがこぼれる。それを見れないのが残念だけど。
「では覚悟はいいですか。」
そう言って僕は鞭を握りなおす。
「え、ま、まっ……」
ふっと四季映姫が顔を上げる。
さっきまでの赤かった顔が一変してとたんに青くなる。
今度は焦って言葉も出ないのか口をぱくぱくと開るだけ。
僕の手に握られた鞭を見つめる四季映姫の頬を、たらと一筋の脂汗が流れる。
彼女の顔を眺める。
今何を考えているのだろうか。
今すぐに味あわされることが約束されている苦痛、自分は叩かれたらいったいどんな醜い叫びを上げるのだろうか、
止めてと言って許してくれるのか、……自分はそれほどまでに間違ったことをしたのだろうか。
見受けられる、恐らく四季映姫が今味わう感情、後悔か、恐怖か、自責か。
僕がずっと地獄で飲まされ続けてきた、煮えたぎった鉛のように喉奥に張り付いて剥がれないような嫌な感じ。
なかなかいい表情を見せてくれる。
その顔、ぜひ苦痛に歪むのも見てみたい。
僕は鞭を高く振りかぶると、四季映姫の膝目掛けて思いっきり振り下ろした。
パァァン!!!
タイヤをパンクさせたような空気を張り裂くような大きな音。
僕が鞭を振りぬいた轟音のあと一瞬、一瞬だけ辺りに静寂が生まれる。
僕は四季映姫の顔を見て見放さなかった。この高圧的な顔が如何様にして苦悶に歪むのか、しっかりと見ておきたかった。
見逃さない、一瞬何が起こったのかわからない顔をする四季映姫。
そして徐々に形を崩す、眼、鼻、口。
耐え難い痛みが、電撃のように四季映姫の身体全体を駆け巡る。
痛みに耐えられなくなりついにあげる布を裂いたような叫び声。
「ああああぁァァァァっっ!!!!!」
いくら声を出しても、激痛は身体から抜けることなく、何度も身体の中を踏み付け、脳の中をかき乱す。
目玉が飛び出るほど、内臓がひっくり返るほどに叫んでも、この耐え難い痛みをごまかすことが出来ない。
覚悟はしていたが、初めてまざまざと気付かされる、何をされても叫ぶことしか出来ないという絶望。
その後も四季映姫は首を身体を振って二度三度喚き声を上げ続け、静かになるまでには少しの時間がかかった。
「うっ、……ううう………っ!!」
見るとびくびくと痙攣する四季映姫の白く細かった脚の膝に、たった今出来たばかりの、痛々しいほどに腫れ上がった青あざ。
そこを鞭の先っぽで突いてやるとピクンと四季映姫が反応する。
耐えればいい、どんな痛みにも耐えてやる。四季映姫は最初そう決めたはずだった。
そのとき脳の奥に、ちらと黒い影が見えたのを、四季映姫は見てみぬふりをした。
しかしやがてどんどんと大きくなる黒い影、今でははっきりとその姿を現し、四季映姫の視界を覆いつくしている。
耐えられない。我慢できない。
そう思い知らされた瞬間、どうしようもない感覚と共に、四季映姫の意識が遠退いた。
パン、と気を失った四季映姫の頬をはたいてやると、意識を呼び戻された四季映姫がふるふると震えながら顔を上げた。
脂汗でべっとりと頬に張り付いた乱れた髪、開いた瞳孔。
僕はくっと四季映姫のあごを手でつかんで僕の方を向かせる。
「あ……、ああ………!!」
激痛に、恐怖に怯えきった顔。
予想以上にすごくいい顔をする。
このまま固めてしまって仰々しい題名をつけて地獄のオブジェにしてもいい。
親指で四季映姫の口元に付いていたよだれをすくってやると、ぐっと彼女の頬に擦り付ける。
「痛かったですか?映姫さま。」
四季映姫は何も答えず、どこを見ているかも分からず、ただ小刻みに震えるだけだった。
僕はコホンと咳払いをするともう一度同じ質問をする。
「映姫さま、痛かったですか?」
ハッと四季映姫の眼の焦点が元に戻る。
そして二秒ほどかけて今の僕の質問の意味を理解すると、カクカクと人形のように首を縦に振った。
痛い痛い痛い、
ほらこんなにも私は痛がっている、貴方の思い通りに痛がっている。
だから、だからもう………!!
今のをもう一度味あわされたら、今度こそ本当に耐えられない。
だから四季映姫は必死に首を振った。涙も鼻水も、拭いている暇などない。
まるでお仕置きを逃れたい犬。
嫌がおうにもゾクゾクさせられる。
「そうですか。じゃあ次はもっと痛いですからね。」
なんでもないように言うと、僕はまた鞭を振り上げた。
四季映姫が絶望する。
文字通りの絶望、頭の中が真っ白になる。何も考えられない。
けれど、自分を守るため、本能的に手段を何か探す。藁にもすがる思い。
そして、四季映姫の口から出たたった一つの言葉。
「あ、い……いや!!!」
パァァン!!!
容赦なく振り下ろした僕の鞭が打ったのは、今度は反対側の膝。
ぷっと足の皮膚が裂け、つーっと赤い血が白い脚の上をすべりおりる。
痛みは相変わらずきしむ骨を伝わって最短距離で脳に襲い掛かる。
身体の中からばらばらにされそうな、冗談ではない感覚。
パァァァァン!!!
「―――っっっっ!!!!」
今度は叫ぶ暇も与えない。
二発目、三発目と間髪いれず四季映姫の脚を叩く。
膝、腿、すね、ふくらはぎ、全体に痛みが行くよう満遍なく叩いていく。
めくりあがる皮膚、はじけ飛ぶ血肉。
四季映姫の白く美しかった足は見る影もなく、そこらじゅうが青あざと切り傷でボロボロになっていた。
「ふーっ、フーっ、ふーっ!!!」
四季映姫は下唇を噛んでなんとかぎりぎりのところで自我を保ち続けていた。
唇は裂け、口元にはいくつもの歯痕が残っている。
ふぅ、と僕は息を調える。
改めて四季映姫を見下ろすと、カクカクと小刻みに肩を震わせているだけで、もう正気が残っているかどうかも分からない。
少なくとももう脚は感覚が残っていないのだろう。
痛々しいほどに腫れ上がった四季映姫の脚を、自分の彫り上げた彫刻を見るように満足げに眺めていると、
四季映姫の足元に、椅子からぽたぽたと水滴が落ち、木目の床に水たまりを作っていた。
ぐいと四季映姫の足を広げる。
「お漏らしですか、映姫さま。」
僕は顔をしかめ、汚いものを見るように侮蔑を含みそう言う。
もう顔を赤く染める余裕などないらしく、眼を閉じて俯くだけ。
はぁ、はぁ、と肩で息をする四季映姫の表情は朦朧としており、今は意識を保っているのが精一杯といったところだった。
つまらない、動かない人形をぶったたいても何も面白くなんてない。
二、三発はたいて気を入れてやろうかと思ったときだった。
「………ずっと、……」
四季映姫がぽつりと小さな声で何か言った。
「ずっと、怨んでいたのですか……?」
俯いたまま、四季映姫は目だけをこちらにやる。
「ええ、ずっと、ずっと僕は今日の日のために生きてきた。今日の日を夢見て、あなたの雑用に、説教に感じる怒りを、
ずっと胸のうちに押さえつけてきたのです。」
僕が質問に答えてやると、四季映姫はずっと遠くを見るような目をして、
そうですか、とだけ力なく言った。
何を見ているのか、何も見ていないのか、ぽつ、ぽつと四季映姫は呟いていた。
「……ずっと、………ずっと貴方の事を、……貴方のためと………」
静かな沈黙が続くなか、
四季映姫は静寂にかき消されそうなほど小さな声で言った。
「貴方のこと、……大好きだったのに………。」
つーっと一粒、四季映姫の目じりから、静かに涙がこぼれた。
僕の心の奥が、ざわ、とうごめく。
ぼんやりとした部屋の光に当たってきらきらと光るその涙は綺麗で、
なんだかその一粒で全てを許してしまいそうなほどだった。
かつての僕だったら恐らくそうしただろう。
けれど僕はもう変わってしまった。
かつて四季映姫が言っていた地獄の臭いとか言うやつ、あれはもう多分一生とれることはないんだろう。
僕は自分の手のひらを見つめた。
この手首を切り裂けば多分、墨汁のように黒く、油のようにどろどろした液体が溢れでてくるんだろう、
臓物は生ゴミみたいな異臭を放ち、頭の中にはムカデのような大きな虫がたくさん巣食っているかも知れない。
もう、後戻りなんか出来ないんだ。
自分は、自分の知らないうちに、鬼とか悪魔とか、そんなものになっていたんだと思う。
だから、平気で僕は言った。
「僕は、あなたの事が大嫌いです。」
息を吸って、目いっぱい四季映姫を見下しながら言う。
「大嫌い、顔を見るのも、声を聞くのも、うんざりなくらい。」
四季映姫は僕の言葉を噛み締めるように、少し経ってから、そう、とだけ言った。
ぽろっと、四季映姫の眼から、二粒目の涙が零れ落ちた。
「ちっ!!」
なんでか、僕の心はイライラしていた。
僕は舌打をすると、四季映姫の脚を持ち上げて、つま先のとがった革靴を脱がし、白い靴下をするりと脱がす。
白くて長い指と、綺麗な足のつめ。
びくと四季映姫が反応する。
四季映姫が何か言おうとするが、僕はその前に四季映姫の爪を目掛けて、思いっきり靴のかかとの部分で踏ん付ける。
「あぐうぅっ!!!」
爪が割れる。
血がにじみ、いびつな形に変形する爪。
ゴリっと僕の靴の下で四季映姫の足の指が悲鳴を上げる。
僕はそのまま四季映姫の爪を蹴り上げる。
「ああぁァっっ!!!」
パーンと二、三枚爪がめくりあがった。
首を振って叫び声をあげる四季映姫。
もう、どうだっていい、四季映姫の苦痛に歪んだ顔も、叫び声も、もう興味がなかった。
ここまできたら、もう後戻りできない。
今すべきことは、四季映姫に罰を与えること、痛めつけること、苦しめること。
僕の心にあるのは、僕を動かすのは、それだけだった。
そうしないと、どうにかなってしまいそうだった。
「はぁっ、はぁっ!ハァッ!!」
もう見る影もない。だらしなく口をゆがめ、よだれを垂らし涙を流し息を荒げるその様子からは、
全てが恐れおののく閻魔大王の面影などどこにも残っていなかった。
「もうっ、……はぁっ、ゆ、許して……!!助けて……、はあ、ハァッ!!」
そう涙を流して泣き喚く四季映姫の、今度は逆の脚の靴を脱がす。
「ウグッ…、もう、いや……!!これ以上、これ以上こんな貴方の姿を見たくない……!」
ぴたっと僕は動きを止めた。
四季映姫の言葉を聞いていると、ぞっと背筋に寒気が走るようだった。
いつもそうだ、四季映姫の言葉を聞いていると、どんな時だって、
どんどんと、実は僕が間違ったことをしているんじゃないかという気になってくる。
冗談じゃない、僕は間違ったことなんて何一つしていない。
僕は慌てて頭の中のもやもやしたものを振り払う。
けれど、僕の足元を揺さぶるような四季映姫の言葉は、するりと耳から入って、
トンカチでガンガンと、僕の頭蓋骨を内側からうるさく叩いた。
僕は手に持っていた四季映姫の靴を後ろに放り投げる。
「最後にしましょう。」
僕はポケットからペンチを取り出して言った。
「………え、……?」
「もう二度とその小生意気な説教が出来ないように、映姫さまの舌を引っこ抜いて、それで、それで全てを許してあげましょう。」
四季映姫の顔が途端にざっと青くなる。
「閻魔が舌を抜かれるなんて、いい話の持ちネタになるでしょう?」
僕は冗談交じりにそう言うと、僕は四季映姫の膝の上に馬乗りになって、細っこい喉を思いっきり締め上げる。
「うぐうッ……!!!!」
苦しそうにがたがたと椅子を揺らす四季映姫。
どんどんと顔に血が溜まっていく。
一分が経って、ガクガクと四季映姫の身体が跳ねるが、放さない。
後ろで縛られていた縄からどうにか手を抜こうと、手首の皮が剥がれるほど引っ張っていたが、
段々その腕に力が入らなくなってきている。
まだまだ、意識がとぶ寸前まで放さない。
「う……くぅ、……!!」
四季映姫の肩がぴくぴくと震えはじめる。
そろそろか。
僕はパッと、四季映姫の首を掴んでいた手を放す。
「ぶはぁ、ハァ!ハァ!はぁっ!!」
すかさず四季映姫の小さな口の中に手を入れ、ペンチを突っ込む。
「ハァッ、ハァッ!!ふあ、……ひ、ひや……!!!」
これまでないほどに四季映姫が暴れる。
ギシギシと四季映姫を縛っている縄のきしむ音がする。
非情な音だった。
こういう時こそ、物には言葉なんて通じなくて、まして感情なんて無いんだって事を思い知らされる。
四季映姫の肩を抱きこむようにして固定し、無骨なペンチで四季映姫の口の中を引っ掻き回すと、
舌を捕らえて挟む。
「ひや、っっ!!!ひゃめ………っ!!!」
四季映姫の表情が恐怖に埋め尽くされる。
はぁはぁ、と速い感覚で、四季映姫の口に入れた手に生温かい息がかかる。
「さようなら、映姫さま。」
僕はそう言うと、ぎゅうっとペンチを持つ手に力をこめた。
б
あれから僕はまた地獄にもどされ、またあの嫌だった日々を送っている。
また単調で退屈な日々の繰り返し。
こっちに来る時捨ててしまったけれど、あの日小野塚小町から渡された小箱は、
何だったのだろうと考えることだけが、唯一の暇つぶし。
fin
元 ttp://fukunyu.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/src/fuku0022.txt
-[[罪の報いを受ける閻魔様]]:7スレ171