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763 名前:名前が無い程度の能力[長いか? sage] 投稿日:2007/12/21(金) 21:10:25 ID:tIkK92Hk0 「ツリーの飾りつけはこんなものでいいのか?」 「この天気だといい具合のホワイトクリスマスになりそうね」 「ケーキの材料は香霖堂と八雲家で用意できるそうです」 「姉さん、他に演奏できそうな曲はない?」 紅魔館で開かれるクリスマスパーティの準備はちゃくちゃくと進行していた。 当日披露する芸に磨きをかけるもの、あの巨大な紅魔館をドレスアップするもの、 幻想卿では珍しい洋菓子の材料を確保するもの、仲の悪い人同士を同じ座につけるための根回しに奔走するもの。 紅魔館当主が戯れに言い出したこの会は、最早幻想卿を巻き込んだ一大イベントとなろうとしていた。 その様子を、涙目で見つめる少女が一人。 「で、なんでそのパーティに私が招待されていないのよ……」 「シャンハーイ(招待状の配送漏れは?)」 「わざわざ天狗の里に入り込んでまで家探ししたのに見つからなかったじゃない」 頭まで布団に潜り込んだまま、上海人形に愚痴る。 「シャンハーイ(何食わぬ顔で当日参加しちゃえば?)」 「……招待されてないのに行くわけにはいかないでしょ」 「シャンハーイ(プライドなんて捨てちゃえばいいのに)」 そうね、とひとりごちて指から人形に伸びた糸を外す。 そう、自分がプライドなんて持たない、恥知らずだったらどんなによかっただろう。 例えば、あの氷精のように振舞えるなら、こんなにも悩むことはなかっただろうに。 暗鬱な気分を落ち着かせようと、目を瞑って楽しかったことを思い出す。 魔理沙と魔道書を取り合ったこと、永遠の夜や肝試し、六耀魔女との共同研究、皆で開いた茶会。 楽しい思い出には、いつも友人がいた。今はもう誰もいない。 「もう、魔界に帰っちゃおうかな……」 「シャンハーイ(魔理沙が悲しむよ)」 悲しむなら、今ここから私を連れ出して。 その想いは、言葉にはならなかった。 幻想卿中に設置してあった人形たちから送られてくる情報は、アリスを悲しませるものばかりだった。 まるで、幻想卿の住民から自分だけが忘れ去られたかのように、アリスという言葉が出てこない。 12月24日はどんどん近付いていき、それでも呼ばれる気配すらないので、彼女はそのうち、考えるのをやめた。 そして、クリスマスイヴの日 「おーい、アリス! いるかー!」 「ま、魔理沙!?」 思いがけない訪問に、アリスは寝巻きのままベッドから飛び出した。 気持ちが逸り、うまく開錠の魔法を扱えない。二、三度失敗し、ようやく鍵が開き、 「「メリークリスマス!」」 「み、みんな……っ!」 扉を開けたアリスを出迎えたのは、魔理沙、霊夢を初めとした幻想卿の面々だった。 思わず崩れ落ちるアリス。みっともないとは思いつつも、彼女は目から流れ落ちる涙を止めることは出来なかった。 「みんな、みんなてっきり私のこと忘れているかと思って……」 「酷いなアリス。忘れるわけないじゃないか」 魔理沙が笑いながらほうきを差し出す。柄の先にくくり付けられた看板『ドッキリでしたー』 「お前の人形にバレないようにするの、苦労したんだぜ」 アリスは全身が脱力するのを感じた。 怒るべきだ、また馬鹿なことを、永夜組は隠すの得意よね、そういえばパジャマのままじゃない。 色々な感情が脳裏を席巻するが、それを倍する安堵に身を委ねながら、彼女は 「あはは、綺麗に騙されちゃった」 とだけ答えた。 「それじゃ、私たちは今から紅魔館でクリスマスパーティするから、また来年!」 「え?」

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