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342 名前:名前が無い程度の能力[sage] 投稿日:2007/10/11(木) 09:45:47 ID:7CUf2D360 パッチュさんいぢめ。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「ねえ魔理沙、夜雀の鳴き声って、どんなだったかしら」 「ちんちん、だ。常識だぜ」 「ねえレミィ、夜雀の鳴き声って、どんなの?」 「ちんちん、でしょ。どうしたのパチェ」  友人たちに聞いてみると、臆面もなくそんな声が返ってきた。どうしろと。  夜雀は「ちんちん」と鳴く。これは事実であり覆しようもない。  もっとも擬音は言語や文化の影響を多分に受けるから、ひょっとしたら米国ではティウンティウンと鳴き、独国ではバームクーヘンバームクーヘンと鳴くのかもしれないが。  ちんちん。どう拙いかはそう、分かるでしょう? こうして心の中で密かに反芻することは出来るが、口に出すなんてもってのほかだ。  私は殊更にそういうのを容認できない質のようだ。強いて言えば体質だ。その鳴き声を思い起こすだに体がムズムズし、余り一緒になる機会は無いけれど、もし耳に入れば、何だか分からない強烈な衝動に苛まれるであろう。  みんな大なり小なり感じている事なのだ。あの夜雀が空気を読んでいないだけなのだ。と、自分を落ち着かそうとした。  しかし、あの魔理沙とレミィが、ちょっと叙事詩カレワラを音読しただけで耳まで真っ赤に染まって下を向いてしまう、ウブで可愛い私の魔理沙とレミィが、さも当然の如くにその忌まわしい言葉を口にする。腰に手を当て得意顔で、「ち」「ん」「ち」「ん」、と一音ごとに形の良い唇が印を結ぶ。  萌える。 じゃなかった。けしからん。じゃなかった。一体どういう事だろうか。  どうも、正常なのはみんなの方で、単に私が変な連想をしているだけなのではないだろうか、という根拠のない疑念に取り付かれそうになる。ぶるぶると頭を振って、よくない考えを振り払った。 「ちんちん、ちんちん、ちんちんちーん♪」  ああ、ついに幻聴が聞こえてくるようになったか。普段は耳鳴りがするほど静粛な図書館、間違ってもそのようなふしだらな雑音などは……  振り返ると、そこに夜雀の顔があった。  睨み付けると、挨拶代わりに「ちん♪」と一声鳴いてくれやがった。何処から紛れ込んだ。鳥くさい。  まずい、あの衝動だ。ぐっと堪える。堪える? 堪える必要があるのだろうか。みなぎってくるこの何かは、新しい自分への道標である気がする。それは悪魔の囁きかもしれないけれど、知識と日陰の魔女にとって、探究は生きる意味であり生そのものだ。  夜雀の嫌味なほどの笑顔に対し、私もめいっぱい唇の端を吊り上げた。  衝動は解き放たれる。直前で認識した。それは、魔法の言葉だ。 「ここは全年齢対象板よ、そこまでにしなさい!」     「パチュリー、お前……」  魔理沙に呼びかけられ、私はようやく正気を取り戻した。  私の腕には、魔法の言葉と同時に解き放たれた最大級の火符が直撃し、変わり果てた姿になったモノが抱かれてあった。  ほとんど炭化した夜雀の身体は、酷く軽かった。 「まりさぁ……」  涙混じりに、乙女度150%増量で魔理沙の方に一歩踏み出す。大抵の女はこれで落ちる。じゃなかった。私の心は折れそうだから、何にでも良いからすがりたい気分だった。  しかし魔理沙は、一歩後ずさってかぶりを振った。 「パチュリー、ごめん。私とお前とでは、人間と種族魔法使いっていう違いがあると思う。普段はその違いを尊重しようと思ってるけどさ、けど駄目だ。生き物を丸焼きにしておいて、憐れむそぶりも見せずに『ああ、焼き鳥が美味しそうに焼けたわ』なんて、たとえ冗談でも私には受け入れられないよ」  私はそんなこと一言も言ってない。大体、『私の火力じゃ、焼き鳥どころじゃないな』なんて、普段から吹聴しているのは、貴女の方じゃなかったかしら魔理沙。  突っ込もうと思ったが、魔理沙は既に背を向けて、足早に図書館を去るところであった。その小脇にはさりげなくうちの本が何冊か抱えられているが、雰囲気的にそれはどうでもいいっぽい。  それから私は咲夜に夜雀の後処理を言いつけると、部屋に籠もり、生と死に関する哲学書を10冊ほど読んだ。いずれも浅薄な内容に思えた。寝よう。しかし眠れないのであと10冊ほど読んだ。アドレナリンが出てきたのでさらに20冊ほど読んだ。  寝ずに迎えた翌朝だが、一応今日から新しい気分で生きよう。一つの命を殺めたことは、死んでから閻魔に詫びるものらしい。ならば今は、生きるのが仕事だ。すなわち、探求こそが仕事だ。  昼ごろ、何事もなかったかのように夜雀が乱入してちんちん歌い始めた。  私はかなり深刻に頭を抱えた。

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