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204 名前:名前が無い程度の能力[sage] 投稿日:2007/09/28(金) 22:40:05 ID:mrz9r6uY0
最近おかしなことが立て続けに起こる、と私は考えていた
好物の油揚げを買いに人里へ降りて見れば、人間は私に対して余所余所しい
元々好かれている訳でも無いのだが、私を見た途端逃げ出すというのは今まで無かったことだ
豆腐屋の主人はいつも通り笑顔で油揚げを売ってくれた
しかし、持ち帰って早速かぶりつくとガキッっという音とともに口の中に鉄の味が広がった
驚いて油揚げを見てみると中に釘が何本も入っていた。口からは血が滴り落ちる
翌日、文句を言いに行くと店主は平謝り。何でも子供の悪戯だそうだ
昨日は好物を味わえなくて悲しい気持ちになったが、子供の悪戯にいちいち目くじらを立てるのもバカらしい
気を取り直して油揚げを注文すると、調理器具が壊れたので売ろうにも商品は無いと言う
がっかりして人里から帰る途中に後ろから石を投げられた
何事かと思い振り向くと、子供が顔を歪ませて私を睨んでいる
「よくもおばあちゃんを苛めたな!」
そう言い終わるが否や再び石を投げつけてくる
全く心当たりは無いが、好物を味わえなくて少々頭にきていた私はお灸をすえてやることに決めた
足元にクナイでも投げつけてやろうか。そう考えて袖に手を入れた瞬間、家の中から母親とおぼしき人間が飛び出してきた
「お許し下さい、お許し下さい。この子は何も解らない子供なのです」
子供を抱きかかえて地面に頭をこすらんばかりに許しを乞う母親
それでもなお、憎しみのこもった眼差しで私を見つめる子供
気がつくと遠巻きに他の人間が集まっていた
無数の畏怖と敵意の視線が私を射抜く
一体これはどういうことだ?
とんと見当がつかないが、これほどの注目の中で大暴れする程愚かでは無い
巫女やハクタクが来る前に帰ることにした
さっきのは何だったのだろう、子供の台詞や人間達の敵意の視線。
何度思い返しても心当たりは無かった
「人里からは」人間を攫ったことは無いし、橙がちょっかいをかけたということも無いはず
人里で暴れると巫女が来るよ。と脅かすと真っ青な顔で震えたものだ
人間に嫌われようがどうでもいいが、油揚げが買えなくなるのは痛い
事情を知ってそうな誰かに相談してみようか
そう思いながら丘に帰る途中、カメラを持った天狗をみかける
あれはいつぞやの新聞記者。丁度いい、もしかしたら何か知ってるかもしれない
声を掛けると愛想よく挨拶してきた
「お久しぶりです、その節はどうも」
まずは世間話からと思い新聞の売れ行きはどうかと調子は問うと
「いやあ、それがさっぱりでして。
そこで私、天狗だけじゃなくて人間にも新聞を配ることにしたんですよ。
なんとそうしたら大当たり、おかげさまで大勢の人に読んでもらってます。
あ、藍さんもお一つ如何ですか?」
勧められるままに新聞を読んでみると全ての疑問が氷解した
見出しは
[式を使って死者の国を荒らしまわる九尾の妖獣]
文を見るとニコニコして解説してくる
「人間って、死者をとても大切に敬うんですよね。
ですからそれを刺激するネタを書いたら凄い反響でした。
ああ、ちょっとネタが古いのは内緒ですよ。
お陰で天狗の新聞レースでも一躍トップです。
天狗の中には人間は数に含めないなんて言ってる奴もいますけど、
そんなにいつも最下位の私に抜かれたのが悔しかったのかしら。うふふ。」
嬉しそうに自慢する文
以前三途の川の公式を求めたことについての取材を受けた後に酒を振舞った際、
「本当はいつも他の天狗にバカにされて悔しいのです」とポツリと愚痴を漏らしていた文の姿を思い出す
決して悪い子ではないのだ。一度だけは許してやろうか
複雑な胸中で文に新聞を返し、丘へ帰ることにした
次に油揚げを食べられるのは何十年後だろうかと思いながら