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438 名前:wiki管理人 投稿日:2006/10/03(火) 00:55:08 [ wnV4gLEM ]
「……お腹……すいた……」
何週間もの空腹に霊夢は布団から一歩も動けずにいた。頬は殆ど肉がそぎ落とされ、腕は皮、脚は骨だけと言っても過言ではない。背中と腹は文字通りくっつきそうだ。食べられるものは全て食べた。食べ尽くした。そして蓄えは底をついた。狩りをしようにも、動物達も悉く消えた。誰かの差し入れ何ぞとても期待できない。何故なら、幻想郷全体が飢饉に陥っているのだ。
紅魔館ではメイドの首が一人残らず切られ、人里は空腹の妖怪の襲撃に遭い全滅。永遠亭は蓬莱人二人の夕餉に兎達は全て兎鍋にされたと言う。勿論、月兎の鍋の日もあった。
ぎし。
霊夢は誰かが床を踏みしめる音を聞いた。妖怪か、人間か。それさえも、今の霊夢には解らなかった。だがその声は酷く聞き覚えがあり、
「霊、夢……生きてるか……?」
箒を杖代わりに、見るからに、風が吹けば飛んで行きそうな位痩せこけた魔理沙が居た。
霊夢は眼だけを動かし、魔理沙の姿を確認する。台所の方から歩いてくるところを見ると、大方物色でもしていたのであろう。何かがある事は無いのに。
「霊夢ぅうぅ……ある、んだろ?まだ、少しとってあるんだろ?」
ぎし、ぎしり。一歩一歩。魔理沙は布団に転がっている霊夢に歩みを進める。
「隠さないでくれよぉ……っっ。わたし、もう、お腹ぁぁあへってさ…ぇ…。夜雀も虫も食ったんだけどさぁ、全然足りないんだよ……、ああ、そういえばチルノは冷たくて旨かったよなあ。ハクタクは人間の時で味が違ってさぁあ、一粒で二度おいしっかたんだよぉぉぉぉおお。アリスはゲロ不味でさぁぁ、なあ霊夢ぅうう……お腹空いてんだよ………賽銭やる、からさぁっっ!ほらこんなに!食べ物と交換しようぜえ!!交換しよう!!」
じゃららららららら。
大量の硬貨や紙幣が霊夢の体に撒かれた。ぴくん、と霊夢は睫毛を震わせたが、その以上の反応はしなかった。
「何処に隠してあるだぁああ!?賽銭箱の裏には無かったっ、台所にも物置にも箪笥にもだぁぁぁ……うぅ……ひどいぜ霊夢むぅぅ人がこんなに頼んでるのにいいっぃ……ひどいぜぇぇええ……」
「静かにして、魔理沙」
小さな声で、はっきりと霊夢は言った。仰向けに寝て、眼を閉じて規則正しく呼吸を繰り返す。もう、霊夢は指の一つ動かすのも辛いのであろう。
「静かにぃ?お前が食べ物隠してるから悪いんだろおお!!」
叫ぶ魔理沙は霊夢に圧し掛かり、全身の力をこめて、霊夢の細い首を、これまた細い指で思いっきり締めた。
「けひひいい、霊夢ぅまだ生きててくれてよかったぜ!!死体は硬くて不味いんだよよおおおおおぉぉぉお!」
がぶっ
魔理沙の顎が引っ張られた霊夢の腕に歯を立てる。
霊夢は反応しなかった。それさえも億劫になったのか。それとも……
数時間後。
骨に張り付いた僅かな肉を惜しんでいた魔理沙だったが、ようやく最後の部位を食べ終えた。
「ひ、最高、だった、ぜ。霊夢ぅの、味。ひ、ひひ、うま、かったぜ。つ次は、けひ、誰が、食べ物持ってそうかなぁぁ……ひ」