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3.うどんげをいじめる 竹林を周回しているうちに朝日が上ってくるようになってもうだいぶ経つ。 俺の生活はあの四ヵ月半によってすっかりかわってしまった。 早朝に目が覚め、暇さえあれば立ったままでも眠りを貪るのはともかくとして 毎日適当に運動をしないと体が落ち着かなくなってしまったのにははなはだ参っている。 こうして毎朝はやくから、以前と同じ基礎トレーニングを欠かさず行うのが日課だった。 「また早くなったね。さっさと戻って朝御飯にしよう」 竹林の出入り口(と言うべきか、そこはただの藪である)では案内係のてゐが待っていてくれる。 そして、てゐに導かれ永遠亭に戻ってみれば、そこには愛すべき姫が待っておられるのだ。 「おはよう○○、今日ももうランニングは終わった?」 おはようございます姫、左様にございます。 自分だけならばともかく、姫がそれに付き合ってこられるのが、どうも歯がゆいのだ。 元はといえば、俺は姫をお守りするためにと訓練をはじめたはずなのだが 「こっちの用意はもう済んでるわよ。また一日付き合うわ」 その結果の介抱を姫に任せているようでは本末転倒としか言いようがない。 『笑わせるわ』 あの言葉が脳裏をよぎる。 まさしくその通りなのだろう。自分はまだまだ不甲斐ないやつでしかない。 鈴仙、いつの間にかその名で呼ぶことも殆どなくなったが、彼女の言うとおりだったのだ。 姫をお守りするため、自分の甘さを克服するためにも、俺は休まない。 たとえ鈴仙・・・否、軍曹が病床から出てこれなくても。 その軍曹はといえば、原因不明の病でもう一ヶ月も寝たきりであった。 俺が近寄ろうとすると拒絶の声をあげ、果ては命令とまでいうものだから その容態は看護をしている連中からの伝聞だけになってしまう。 しかし、そこのところがどうにも不明瞭で釈然としないのだ。 そもそも永琳様の手にかかれば多少の病は簡単に治るはずだが、その永琳様は 仮にも弟子が寝込んでいるにもかかわらずほったらかしにしているし、 姫に聞いてもはぐらかすばかりで明瞭な答えは得られなかった。 看護を担当している兎に尋ねても要領を得ない回答しかかえってこない。 あの鬼軍曹がいったいどうしたというのだろうか。 とてつもなく重たい病なのか、あるいは何か別の問題なのか、俺には見当もつかなかった。 気がつけば 「○○」 俺は軍曹の部屋に接した廊下に立ち尽くしていた。 「○○、また此処?」 永琳様の言葉で我に返る。そうだ、俺は今日こそ事の真相を確かめようと 「心配なのは分かるわ、でも今のあの子は、駄目よ」 何が駄目なのですか、俺にとって軍曹は― ―あるいは、軍曹はもう助からないのかもしれない。 そんな恐ろしい想像が時折、脳裏をかすめることがある。 あのとてつもなく強大でいかなる相手も打ちのめすような無敵を具現化したような軍曹が 突然倒れて面会謝絶なのだ、そう考えるのも一理あるだろう。 だが俺は否定した。頭の中で必死にそれを否定した。 俺にとって軍曹はすでに大きな存在だった。軍曹がいなくなるなど考えたくもない。 軍曹は俺の人生を、価値観を変えてしまった。以前の怠惰で不健康な生活など もはや考えられないことだ。 これだけの時間で幻想郷の環境に適応させてくれた軍曹は俺にとってもはや・・・ 永琳様はやさしい顔でうなずかれる。 「解っているわ、○○。あの子もだって、貴方の面倒を見れないのを悔やんでいるのよ」 大丈夫なのですか、軍曹は。また以前のように戻ることができますか 「きっとできるわ。時間がかかりそうだけど、きっとよ」 信じますよ、永琳様。どうか軍曹を・・・ 永琳様は俺の肩を掴んで頷かれた。 俺はそれ以上を求めなかった。 そろそろ夜も更けてきていて、その時間帯は姫が月を眺めるのに付き合えと仰るのだ。 俺は名残惜しくもその場を離れて 全部 全部聞こえたぞ 全部だ 全部聞いてた あいつは あいつにとって私は"軍曹"か 敬愛すべき上官というわけか これは光栄だな あれだけの仕打ちをしておいて敬愛の念をもって上官に接してくれるとは あれほどのやつはそういない きっといい男になる そのあいつに 私は 女として見られていないんだ あいつの中での私はもう固まっているのか もうだめだ きっとあいつは一生私を人生の師としてしか見てくれないにちがいない あああああ ふすまがひらいていた そこにはわたしのししょうであるところのえいりんさまがまんめんのえみをうかべて わたしをみくだしていたのだ そしてししょうはこうのべられた 「優曇華、もう解ったでしょ。あの子は姫のもの」 私はそこではじめて自分がなぜあそこまで脅迫的にあいつを虐待したのか理解した 私はそこではじめて自分が姫に対して何をしたのか理解した 私はそこではじめて自分が姫に負けたことを理解した 私はそこではじめて自分があいつを奪い損ねたことを理解した 「し、し、し!師匠!」 私の声は裏返ってそれはそれはひどいものだったろう 「優曇華。貴方の気持ちはわかるわ。でも貴方は姫のペットでしょう?」 ペット風情が主人の恋敵になどなりはしない。そんなことは最初からわかっていたはずだ しかし私はそれを理解することを拒んだ。認めようとしなかった。認めたくなかった。 「狂気の瞳で○○を狂わせてしまわなかったのはよく我慢したわね」 師匠が私の背に腕を回す。抱擁だったが、それが一瞬何かよくわからなかった まだ波長がつかめていないのか、そう思ったが違う。涙で霞んで何も見えていなかったのだ 「師匠、わたし、私は・・私は!!」 抱擁したまま師匠は言った。 「笑わせるわ」 「え?」 そうだ、師匠は怒っていたのだ。 師匠の大事な姫に反抗した私に怒りを向けていたのだ。 波長はやっぱり掴めていなかった。普通なら怒りなどすぐ察知できるのに。 「どこまでも能無しのゴミクズね」 「し・・・え?師匠・・・ししょ・・・」 涙でぐちょぐちょになった顔のまま鈴仙は真っ白になっていた。 抱擁した鈴仙の背中をさすりながら永琳は、かつて鈴仙が○○に向けた侮蔑と非難の言葉を そのまま愛弟子へとぶつけ続けた。 「○○にかまけて私との薬の修行を放り出していたことは不問だと思った?」 「ぅ・・ぁ・・・ご、ごめんなさい、ごめんなさい!ごめ・・・」 鈴仙は罪悪感と絶望感と喪失感の黒い巨大な塊に押しつぶされた。 彼女の瞳はもはや何も映してはいなかった。 月兎といえ、心の支えの足りない少女が一人で背負うには たかが恋煩いの代償であるにもかかわらず、それはあまりに重すぎた。 ただ薄れいく意識の淵で、鈴仙は、半年ほども前、 姫に夢中で自分に振り向いてくれない○○に不満を感じたあの日のことを思い出して どうしてこんなことになったのか思い出そうとしたが それも叶わないまま、途切れた。 今宵の月は格別だった 姫は毎日のように聞かせてくれる 月で昔何があったのかを 故郷の話を いつか姫と、できることなら軍曹と 一緒に月の土を踏んでみたいと そんなことを考えながら 転寝をする姫の頭部を膝に抱えながら 思うのだ ending No,4096

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