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霊夢が地獄を目指して飛び立ってから数時間後。 里ではサリエルの言葉を信じて逃げるか、まだ様子を見るかで話し合いが行われていた。 命蓮寺も脱出の準備をしているという事で、里にはサリエルを信じる人間が増えて来ている。 しかしいきなり現れた者を簡単に信用していいのかという意見も、まだまだ里にはあった。 「これ以上会議に時間を取られては、脱出も間に合わなくなる。そろそろ答えを出すべきだと、私は思うが……」 集会場に集まった里の男達に混ざって、上白沢 慧音は意見を述べる。 その提案に周りの男達も、頷き賛同の意思を示した。 それを受けて里の長老と思わしき、長い髭を蓄えた老人が口を開く。 「それではこれより多数け…うぐおっ!?」 ところがそこへ突然襲いかかる地響き。 同時に見張りの男の大声が、里中に響き渡った。 「敵襲! 敵襲だ!」 「なんだって!?」 その言葉に反応し、急いで集会場を飛び出す慧音。 すると何やら里の東門の方から、次々と人が逃げ出して来ていた。 「……くっ! もしや魔界の者達が言っていたのは、これの事か!」 もう三幻想の攻撃が始まったと言うのか。 慧音は人の流れに逆らい、東門へと向かって行く。 やがて見えて来る東門の姿。 そこには門を斬り落とし里に入って来た謎の侵入者が、畑道を堂々と歩いていた。 「!! 何者だ!」 咄嗟に剣を取り出し、慧音は侵入者に身構える。 その侵入者は奇妙な狐の面を被り、陰陽師のような格好をしていた。 更に手には見覚えのある、二本の刀を握っている。 慧音はそれが何なのか、一つだけ心当たりがあった。 「その刀………楼観剣と白楼剣じゃないのか? あれは魂魄家の物の筈。何故お前が…」 「愚かしい。人とはこれ程までに理解力の低い者なのでしょうか。実に嘆かわしい……」 「……そ、その声は………」 「私は偉大なる神に仕える神官。神は里を滅ぼせと、人間に罪を償わせろと申しておられます。  貴方は半獣のようですが、人間を庇うのであれば同罪です。我らが神の命により、その魂奉げてもらいましょう」 「罪……だって?」 すると狐面の女は、刀を振り慧音に襲いかかる。 慌てて慧音は剣を構え、喉元に迫ったその一撃を防ぎ切った。 狐面の女はそんな慧音を見て、余裕を感じさせる声色で喋り出す。 「やるようですね」 「お前の言う事が何なのかは分からん。だが里に手を出す事は私が許さん!」 「愚かな。里を滅ぼす事は神が決めた運命なのです。貴方は神に逆らうつもりですか?」 「そんな神に従う道理はない!」 「何処までも愚かな方だ。自分達が罪人だと言う事が、理解出来ないのですね。嘆かわしい。  しかし貴方一人が戦ったところで、運命が変わるとでも?」 その瞬間、里の西門の方から爆音が響き渡って来た。 まさかこいつは囮で、他に仲間がいたのだろうか。 思わぬ事態に、西門を確認しようと後ろを向く慧音。 だが狐面の女は、そんな隙だらけの慧音に斬りかかって来た。 「し、しまっ…」 すでに刀は、慧音の喉元に迫って来ている。 今から反応したのでは間に合わない。 慧音は、一撃を覚悟し咄嗟に目を瞑る。 ところがその斬撃は、ある人物によって受け止められた。 「慧音!」 「……も、妹紅!?」 その人物、藤原 妹紅は狐面の女の刀を炎で止める。 実は妹紅は何やら里が騒がしかったので、何かあったのではと駆け付けてくれていたのだ。 そのまま斬撃を受け流し、妹紅は狐面の女を蹴り飛ばす。 そして背中の炎を燃え上がらせると、空高く飛び上がっていった。 「西門は私に任せろ! 慧音はそいつとの戦いに専念してくれ!」 「すまない!」 そう言うと妹紅は慧音にその場を託し、西門を目指して飛んで行く。 西門に向かうなら、妹紅の方が早く着けるだろう。 それより自分は、目の前の敵をどうにかしなくては。 そう考え慧音が正面を向くと、狐面の女が歩いて向かって来ていた。 「……加勢してもらわなくてよかったのですか?」 「問題ない。お前は私が此処で食い止めるからな!」 「自分の実力が分からないとは……本当に貴方は救えない」 それに慧音は再び剣を構え、狐面の女と戦いを始める。 一方で妹紅は全速力で飛んで行き、西門へと辿り着いていた。 「………酷い有様だなぁ」 しかしそこに広がっていたのは、荒らされた門や畑。 耕された土は吹き飛ばされ、あちらこちらに散らばっていた。 幸い冬場なので畑に出向いていた者はおらず、犠牲者は出ていないようだ。 だが里の人達が一生懸命耕した畑を滅茶苦茶にされ、妹紅は怒りで頭に血が上っていた。 「一体誰がこんな事を……」 「あ~らら、まだ残ってる人がいたの~」 「!!」 その時、突如上空から聞こえて来た謎の声。 妹紅は慌てて声の主を探し、月が輝く空を見上げる。 するとそこには舞踏会にでも出るかのような格好をして、箒に腰かける仮面の女の姿があった。 「あ~ら、レディを下から覗くなんて破廉恥ですわよ?」 「これはお前がやったのか!」 「誰がやったかは大した問題ではありませんわ。すべては神の御意志のままに。起こるべくして起こった必然ですわ」 「ふざけた事を!」 「所詮は人間、私達の高貴な理想は理解出来ないようですね。  ですが神のお力を一目見れば、忽ち己の無力さと愚かさを思い知る事となるでしょう」 「やる気か……受けて立つ!」 「あら、下賎ですこと。貴方に私達の創る理想郷を生きる資格はありませんわ。此処で消えなさい」 そう言って貴族面の女は、袖からミニ八卦炉を出し熱線を放つ。 それを妹紅はかわすと宙に飛び上がり、貴族面の女に向かって行った。 「遂に……始まってしまった……」 阿求は里の中心に避難しながら、戦いの衝撃と爆音に身を震わせている。 恐らく襲撃は三幻想の誰かによるもの。 ならばその一人であるサリエルも動く筈なのだが、何故か先程から姿が見えない。 これは三幻想の仕業ではないという事なのか。 それとも… 「!!」 そこへ響いて来る、ズドンという新たな倒壊音。 聞こえて来たのは北門の方だ。 まさか新手の襲来か。逃げながらも警戒する阿求。 そんな阿求等里の人間達に更に追い打ちをかけるように、見張りの者の声が里中に木霊して来た。 「南門、敵襲だ! とても持ち堪えられそうにない! 撤退する!」 その声とほぼ同時に、爆散する南門。 此処からでは何が起こったのか、完全には把握出来ない。 しかしこれだけははっきりと分かる。 遂に里の守りの四つの門が、すべて破壊されてしまったのだ。 「囲まれた………」 どの門にも正体不明の襲撃者がいる。 更にそのうち二人は、防衛を突破し自由に動ける状態だ。 もう里の人間に逃げる場所はない。 里の中心に辿り着いた阿求は、その混乱した状況を目の当たりにした。 「すでに慧音さんと妹紅さんは戦闘中だ! ならば我々が戦うしかあるまい!」 「しかし門を守る為にあらゆる手を尽くしてみたが、どれも効果がなかった。今、動いても無駄死になるだけでは……」 「なら黙って殺されるのを待てと言うのか!」 怒号を上げる里の男達。 神に祈りを奉げる里の女達。 泣き叫ぶ幼い子供達。 最早、里の団結は崩壊しきっていた。 「皆さん! 落ち着いてください!」 そこへ声を張り上げる、一人の女性。 里の人間の関心が一気に女性へと集まる。 するとその女性、白蓮は里の人間に向かってぺこりと頭を下げた。 「すみません。侵入者の調査に時間をかけ、遅れてしまいました。しかしもう大丈夫です!  里は私達、命蓮寺が命に代えても守りきってみせます!」 その言葉を合図に、白蓮の許に現れる5人の命蓮寺のメンバー。 彼女達は白蓮に跪き、その指令を待つ。 白蓮はそっと目を瞑り悲しそうな表情をすると、彼女達に指令を出し始めた。 「………本来はルールに基づき穏便に対応するべきなのですが……相手が本気な以上、止むを得ません。  戦闘を許可します。里を襲う侵入者を………止めて下さい」 白蓮のその言葉を待っていたと言わんばかりに、命蓮寺のメンバー達はにやりと笑う。 そして大声で、 『了解!』 それだけ言うと各門へ走り去っていった。 それを里の男達は、心配そうに見送る。 「……本当に大丈夫なんですか? 聖さん」 白蓮はそんな男達に、不安そうな表情を浮かべて振り返った。 「確かに心配です。殺生には染まってほしくはないのですが……」 その丁度同時刻、東門付近。 そこでは慧音が全身傷だらけになりながらも、狐面の女と戦っていた。 慧音はすでに限界まで体力を消耗しており、荒い呼吸を繰り返しながらも必死に立ち続けている。 対して狐面の女は焦りすら見せずに、冷酷な眼差しを仮面の隙間から向けていた。 「いい加減、諦めたらどうですか? 貴方の実力では私には敵いませんよ」 「………断る! 私は里を見捨てたりはしない!」 「……そうですか。では最初に神の裁きを与えるのは貴方にしましょう」 そう言って刀を鞘にしまい、狐面の女は居合いの構えを取る。 「随分と穏やかじゃないわね。スペルカードルールはどうしたの」 だが突如現れた妖怪の言葉に、狐面の女は警戒し構えを解いた。 そして話しかけて来た妖怪、雲居 一輪へと視線を向ける。 その姿を確認すると、狐面の女は問い掛けに答え出した。 「あれは幻想郷を守りつつ、決闘で勝負をつける為のルールでしょう? 私達が従う理由はありません」 「幻想郷がどうなっても構わない、と」 「私達が目指す理想郷は、こんなちっぽけな箱庭ではないのです。貴方達とは着眼点からして違うのですよ」 「…………貴方達が話の通じない相手でよかったわ。これで姐さんを後悔させなくてすむ」 すると一輪は法輪をぐるぐると回し出す。 その間に入道の雲山は、慧音を摘み上げ安全な所に避難させた。 やがて法輪は形状がはっきりと見えない程、高速で回転し始める。 一輪はそんな法輪を、勢いよく狐面の女に投げ付けた。 「何かと思えばそんな物……所詮は人間を庇う妖怪ですか」 余裕たっぷりといった様子で、狐面の女は飛んで来た法輪を刀の鞘で弾く。 しかし鞘は法輪にぶつかった途端、真っ二つに斬れてしまった。 そのままブーメランのように、一輪の許に戻っていく法輪。 それは一輪の指で止まると、チャクラムのように変化した姿を周囲に曝した。 「……ほう」 「今日は派手に暴れるわよ?」 真剣な眼差しで、狐面の女と対峙する一輪。 だが命蓮寺が送り込んだ妖怪は、彼女だけではなかった。 そのうちの一人が、貴族面の女と戦う妹紅の許へやって来る。 しかし妹紅は、すでに疲労困憊の状態だった。 「……はぁ……はぁ……」 「うふ、うふふふふふふふ! あと何回死んだら貴方は倒れるのかしら?」 そんな妹紅を見下ろして、貴族面の女は嘲り笑う。 完全に相手のペース。今の妹紅に勝ち目はない。 それが分かっているのか、貴族面の女はすでに勝利を確信している。 だがそこへ突然、巨大な影が映り込んで来た。 「あら?」 影の正体を確める為、貴族面の女は上を向く。 するとそこには、真っ直ぐ落ちて来る巨大な錨の姿があった。 「えええぇぇぇぇ!?」 「イヤッッホォォォオオォオウ!!」 どう考えても自然に落ちて来た物ではない巨大な錨。 その上には、一人の妖怪の姿も見える。 何処の誰だか知らないが、こちらに敵意のある相手なのは明らかだ。 貴族面の女は、その錨をかわし事無きを得た。 しかし錨と共に落ちて来た妖怪、村紗 水蜜は錨を片手で担ぎ上げるとにやりと笑う。 そして妹紅の方へ振り向くと、親指を立てその白い歯を輝かせた。 「私、推参ッ! 貴方が妹紅!? 此処は私に任せて先に行け!」 「………あ、ありがとう……」 とりあえずお礼を言い、妹紅は手を頭の後ろに当てお辞儀する。 それに文句を言おうとした貴族面の女の言葉を、村紗は大声で喋り出して遮った。 「さて、お客様! 当船にご乗船いただき、本日は誠にありがとうございます!  当船は間も無く地獄に向けて出港いたします! 忘れ物などないよう、お気をつけください!」 「な、何なんですの貴方…」 「指差し確認! 準備OK! 目指すは勝利! 出発進行!」 そう言うと村紗は錨をぶんぶん振り回して、楽しそうに貴族面の女に向かって行く。 「よく分からないが、慧音を助けに行くなら今のうちだな」 その隙に妹紅は、東門へと飛び立って行った。 慧音と妹紅が戦っていた東門と西門に対し、北門と南門の守りは里の人間によるものしかない。 簡単に里の防衛を突破して、二人の仮面の女がまんまと里に侵入してしまう。 だがそちらにも命蓮寺の刺客が、勢いよく向かって来ていた。 「あっははは! な~んだ、簡単じゃん! これならボク一人で十分だったよ!」 畑道を進みながら、南門を撃ち破った仮面の女は高らかに笑う。 その格好は、まるで道化のようで顔には白黒の道化の仮面をつけていた。 「にひひひひ! そんなに楽勝だったなら、私とも一戦やってみない?」 そんな道化面の女に小屋の上から話しかける妖怪、封獣 ぬえ。 ぬえはにやにやと笑いながら道化面の女の前に立つと、何か思うところがあるのかジロジロ女を見始めた。 「……あら? 貴方、どっかで会ったかしら。なんか見た事あるような……」 「え~? ボク、君と会った事なんてないよ~? 気のせいじゃないかな~」 「……確かに気は完全に別人ね。………他人の空似かな? 仮面で顔も見えないし。  …まぁ、別に誰だっていいのよ。私は悪い奴を倒さなくちゃいけないの。だから大人しくやられなさい」 「ボク、悪い奴じゃないよ。正しい事をしているよ。ボク達神官は神様の為に、人間の魂を一生懸命集めているんだよ」 「へぇ~、それってご褒美でも出るの? なら私と一緒ね。私も聖のご褒美がほしくて戦ってるの。  でもご褒美って何かな~。美味しい南蛮菓子だといいな~。カステイラとか金平糖とか~……」 「そんな小さな話と、ボク達のする事を一緒にしないでほしいね。ボク達は理想郷を創る為に頑張ってるんだよ。  ボク達の神様が創る、素晴らしき理想郷の為にね!」 「………あっそう。でも私は興味ないわ。あんた達の理想なんて、私が分からなくしてあげる!」 そう言ってぬえは三叉槍を取り出し、道化面の女に突き付ける。 しかし道化面の女は、訳分かんないといった感じに首を傾げ出す。 そのままピョンと後ろに跳ぶと、三叉槍の間合いから距離を取った。 「どうして邪魔をするの? ボクの邪魔をするって事は、神様に背く事なんだよ? それが分からないの?」 「神様? そんな奴の事なんか知らなーい。だって私、他人に命令されるの大っ嫌いだもの! にひひ!」 「なら仕方ないね。ボクが魅せる奇跡のショーで、神様に従わない悪人共を排除しなくちゃねぇ!」 途端に道化面の女は、自分の周りに竜巻を起こす。 それにぬえはにやりと笑って、道化面の女へと向かって行った。 「………………」 一方で崩壊した北門を抜け、最後の仮面の女は里の中心に向かって進む。 周囲の家は彼女により壊され、無残な姿を曝している。 その道中に、二人組の妖怪が待ち受け立ち塞がった。 「やあ、侵入者。随分里を荒らし回ってるようじゃないか」 「……お前達は……」 「何が目的かは知りませんが、これ以上の横暴は許しません」 二人組の妖怪、ナズーリンと寅丸 星は 南米部族のような格好で、儀式用の仮面をつけた女を睨み付ける。 「悪いがここまで暴れてもらっては、こちらもそれ相応の対応をし…」 「がああああぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ!!」 「!!」 だが儀式面の女は突然凄まじい大声を上げ、こちらを威圧して来た。 「何故だ! 何故人間を守る、妖怪! お前達には妖怪達の怨みの声が聞こえないのか!?」 「何なんだ、君は。いきなり騒がしい」 「恨みの声? 一体何の事を…」 「分からないのか! 今まで多くの妖怪達が、人間に退治と言われ不当に葬られてきた!  妖怪だけじゃない! 様々な生物が人間の犠牲になって来た! それらの怨念が私に語りかけるのだ!  人間を滅ぼしてくれ、我々の怨みを晴らしてくれとな!」 「はぁ……」 「我らが神は、そんな者達の仇を取ってくれる! 人間を血祭りに上げ、屍の山に変えてくれる!  故に私も神の理想郷の為に働くのだ! それが分からないお前達は、妖怪の裏切り者だ!  お前達、裏切り者にかける情けなどない! 私がこの場で屍に変えてくれる!」 すると儀式面の女は、何処にしまっていたのか夥しい量のナイフを投げて来る。 「ふん、くだらない」 しかしそれをナズーリンは二本の薙刀を、星は槍を取り出し薙ぎ払った。 「そんなものが聞こえるのは、君が怨霊に取り憑かれているからさ」 「死者の為に生者を危険に曝す事は出来ません! 貴方は私達が止めます!」 「それがお前達の正義か!? そんな悪しき思想は私が叩き潰してやる!  我らが神の創り出す理想郷に、お前達の居場所など存在しないのだ!」 各門で戦闘を始める命蓮寺の妖怪達。 白蓮は彼女達を信じ、里の人間の保護を優先していた。 「まだ避難していない人はいませんか? 怪我をしてる人はいませんか? 気付いた人は、すぐに知らせてください」 里の人間に呼び掛けて、白蓮は状況を確認する。 その冷静な対応は、里の人間の動揺も次第に取り除いていった。 そこへ、一人の妖怪が歩いてやって来る。 「……貴方は確か…」 「幽香さん!」 それは里にも度々、買い物に訪れていた幽香だった。 強力な見知った妖怪の登場に、里の人間達の間で歓迎の声が上がる。 「幽香さんがいれば百人力だ!」 「これで里は救われる!」 「あんな連中は、一網打尽だ!」 そんな里の人間達の反応を受けて、白蓮も彼女が味方なのだと判断した。 「貴方が幽香さんですね。私は聖 白蓮、命蓮寺の創立者です。今は少しでも味方が多い方がいい。手を貸してくれますか?」 そう言って白蓮は、幽香にそっと手を差し出す。 だが幽香は俯いたまま、何も喋らない。 「……どうかしましたか?」 その瞬間、突然幽香は傘を白蓮に突き刺そうとして来た。 それを咄嗟に、白蓮は指で挟んで止める。 そして哀しそうな表情を浮かべて、幽香に問い掛け始めた。 「すみません。何か気に障る事でも、言ったでしょうか? しかしこのような抗議の仕方は、よろ…」 「五月蝿い」 しかし幽香は、ぼそりとそう呟き傘を手放し殴りかかる。 白蓮は掌で拳を受け止めると、その手を握り幽香の攻撃を止めた。 その光景に遅れて起こる、里の人間達のどよめきの声。 だが徐々に事態を呑み込むと、蜘蛛の子を散らすように逃げ出していった。 「何故ですか……。何故このような事を……」 幽香に必死に問い掛ける白蓮。 「ご託はいらないわ。ただぶっ潰すのみ」 しかし幽香は白蓮の手を払い除けると、右手を振りかぶり殴りかかって来た。 それを白蓮は受け流し、幽香に向かって走り出す。 「幽香さん………」 ただ一つだけ白蓮の心に引っ掛かっているのは、幽香が感情を押し殺しとても辛そうな瞳をしている事だった。 [[続き>いざ倒れ逝くその時まで:34スレ723 3]] #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)

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