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文は退屈だった。 記事を書こうにもネタが無さすぎた。今の幻想郷は平和すぎた。 「いっそのこと、戦争でも起きてくれないかなぁ・・・」 思わずうたたねをしてしまうほどのうららかな午後の日差しに、文は思わず呟いた。 紅魔館と永遠亭の対立がついに限界を超え、ある日唐突に両者間で本物の殺し合いが始まる。 抗争はまたたく間に他の勢力を巻き込み、ついに幻想郷は本物の戦争状態へと突入する。 従軍記者として最前線で取材を続ける文の新聞はその物凄いリアルな描写に人気急上昇。 最初は単純に嬉しがっていた文。文々。新聞は飛ぶように売れていく。 しかし段々戦局が深刻化していき、文の知っている者たちも戦死していくようになる。 一知人としては悲しみつつも、彼女たちの最期をも記事のネタにしていく文だが、 それらの新聞もまた他の追随を許さない臨場感溢れるものとして文の名声はいよいよ高まる。 当初は冬までには終結すると楽観視されていた戦争は一向に収束する気配を見せず泥沼化し、 既に3年目に突入していた。どの陣営も多くのもはや還ることの無い戦死者を多数出しており その憎悪と復讐心は自分たち以外の陣営の滅亡以外にはもう満たされない程になっていた。 天狗陣営も一人、また一人と戦場に斃れていく。 味方の最期も敵の最期も克明にそのカメラに捉える文。 いまや文は幻想郷で唯一本物の戦場記者だと言われるほどの名声を獲得していた。 文の名声を不動のものに押し上げたのは、 紅魔館攻防戦で多数の犠牲を払いながらも中々突破できない堅固な正門を破るべく 単身爆弾を抱えて突っ込み壮絶なる爆死を遂げて自軍に突破口を開いた河童の英雄の記事、 負傷した守矢神社の巫女を混乱する前線から助け出し、自身はついに追っ手に切り刻まれて 翼を失い無残な墜落死を遂げた白狼天狗の記事だった。 記事を書く際は涙しつつも迸る情熱のままに文章を紡いでいく文だったが、 たまに戦闘の無い日にぼーっとしている時などに、ふと何故か胸がちくちくとするのだった。 戦争も10年目に入り、もはや新聞の読み手すらも居なくなりはてた幻想郷。 どんなに生き生きとした戦場レポを書いてももう読む者がいないのだ。 紅魔館はとっくに壊滅して廃墟と化し、迷いの竹林は焼き払われ兎たちは全て死滅、 永遠亭はその片隅で不死の月人が二人細々と篭城しているに過ぎないし、 博麗神社も守矢神社もかつてのその場所にはそれぞれ大きなクレーターが残っているばかり。 天狗陣営も妖怪山決戦で指導者層を中心にそのほとんどが殺され、 今はただ一人生き残った鴉天狗である文を中心に散発的なゲリラ活動を行なっているに過ぎない。 もうカメラもペンも手帳も持っていない文。両手を塞いでいるのは白狼天狗の形見である剣と盾。 その武具も文自身によってさらに使い込まれ幾つもの刃傷と拭いきれない血糊で薄汚れている。 ある土砂降りの雨の日、鬼の群れと至近距離で鉢合わせした文の一隊。 必死で部隊の方向転換と撤退を図ろうと戦いながらも指揮を飛ばす文だったが、 天狗たちは為す術も無く殺されていく。文もやがて腹部に一撃を受け、地面に仰向けに倒れ込む。 朦朧とする意識の中、逃げ惑う仲間の悲鳴が聞こえ、追撃に移る鬼どもの後ろ姿が微かに見える。 降りしきる雨の中一人取り残される文。灰色の空を眺める。ああ、冷たい雨が気持ちいい。 「最後の鴉天狗、仲間を逃がすために果敢にもあえて鬼の前に立ち塞がり…」書き出しはこうかな。 第一面を飾る華々しい記事になるだろう。そしてみんなが食い入るように読んでくれるだろう。 …あの子を見つけたのもこんな雨の中だった。 泣きじゃくる巫女からあの子の最期を聞かされた時には私は信じなかった。 でも危険も顧みず飛び廻ってついに、あの子を見つけた時、…あの子は私の中で死んだ。 本当はもっと前に死んでいたんだ。私が決定的瞬間を逃すまいと嬉々としてカメラを構えていた時に。 こんな、どろどろの地べたにたった一人で横たわって。降りしきる雨だけが見てたんだ。 あーあ。なんか、つまらないな。戦争なんか、起きなきゃよかったなぁ… 思わずうたたねをしてしまうほどのうららかな午後の日差しに、文は思わず舟こぎをしてしまった。 「私にカメラ持ってれば、今の瞬間、写真に収められたでしょうに」横でくすくすと白狼天狗が笑う。 はっと口をぬぐう。よだれだ。鴉天狗ともあろう者がなんというていたらくだろう。 -完- - 夢で良かった -- 名無しさん (2010-10-19 21:26:46) - 夢じゃなかったら後味悪かったな -- 名無しさん (2010-10-19 21:49:40) - これ、本当に夢か? &br() -- 名無しさん (2010-11-26 09:50:48) - 胡蝶の夢 -- 名無しさん (2010-11-26 15:31:21) - どっちが夢なんだろう &br()どっちでも終わり綺麗だから良いけどさ -- 名無しさん (2011-07-06 22:20:20) - 夢であってください &br() -- 名無しさん (2011-08-25 21:22:07) - ayawar -- 名無しさん (2011-09-23 19:19:20) - 切ない感じの終わり方だなぁ &br() &br() &br()なんか戦争の方が現実な気がするし -- 名無しさん (2013-03-11 12:06:27) #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)
文は退屈だった。 記事を書こうにもネタが無さすぎた。今の幻想郷は平和すぎた。 「いっそのこと、戦争でも起きてくれないかなぁ・・・」 思わずうたたねをしてしまうほどのうららかな午後の日差しに、文は思わず呟いた。 紅魔館と永遠亭の対立がついに限界を超え、ある日唐突に両者間で本物の殺し合いが始まる。 抗争はまたたく間に他の勢力を巻き込み、ついに幻想郷は本物の戦争状態へと突入する。 従軍記者として最前線で取材を続ける文の新聞はその物凄いリアルな描写に人気急上昇。 最初は単純に嬉しがっていた文。文々。新聞は飛ぶように売れていく。 しかし段々戦局が深刻化していき、文の知っている者たちも戦死していくようになる。 一知人としては悲しみつつも、彼女たちの最期をも記事のネタにしていく文だが、 それらの新聞もまた他の追随を許さない臨場感溢れるものとして文の名声はいよいよ高まる。 当初は冬までには終結すると楽観視されていた戦争は一向に収束する気配を見せず泥沼化し、 既に3年目に突入していた。どの陣営も多くのもはや還ることの無い戦死者を多数出しており その憎悪と復讐心は自分たち以外の陣営の滅亡以外にはもう満たされない程になっていた。 天狗陣営も一人、また一人と戦場に斃れていく。 味方の最期も敵の最期も克明にそのカメラに捉える文。 いまや文は幻想郷で唯一本物の戦場記者だと言われるほどの名声を獲得していた。 文の名声を不動のものに押し上げたのは、 紅魔館攻防戦で多数の犠牲を払いながらも中々突破できない堅固な正門を破るべく 単身爆弾を抱えて突っ込み壮絶なる爆死を遂げて自軍に突破口を開いた河童の英雄の記事、 負傷した守矢神社の巫女を混乱する前線から助け出し、自身はついに追っ手に切り刻まれて 翼を失い無残な墜落死を遂げた白狼天狗の記事だった。 記事を書く際は涙しつつも迸る情熱のままに文章を紡いでいく文だったが、 たまに戦闘の無い日にぼーっとしている時などに、ふと何故か胸がちくちくとするのだった。 戦争も10年目に入り、もはや新聞の読み手すらも居なくなりはてた幻想郷。 どんなに生き生きとした戦場レポを書いてももう読む者がいないのだ。 紅魔館はとっくに壊滅して廃墟と化し、迷いの竹林は焼き払われ兎たちは全て死滅、 永遠亭はその片隅で不死の月人が二人細々と篭城しているに過ぎないし、 博麗神社も守矢神社もかつてのその場所にはそれぞれ大きなクレーターが残っているばかり。 天狗陣営も妖怪山決戦で指導者層を中心にそのほとんどが殺され、 今はただ一人生き残った鴉天狗である文を中心に散発的なゲリラ活動を行なっているに過ぎない。 もうカメラもペンも手帳も持っていない文。両手を塞いでいるのは白狼天狗の形見である剣と盾。 その武具も文自身によってさらに使い込まれ幾つもの刃傷と拭いきれない血糊で薄汚れている。 ある土砂降りの雨の日、鬼の群れと至近距離で鉢合わせした文の一隊。 必死で部隊の方向転換と撤退を図ろうと戦いながらも指揮を飛ばす文だったが、 天狗たちは為す術も無く殺されていく。文もやがて腹部に一撃を受け、地面に仰向けに倒れ込む。 朦朧とする意識の中、逃げ惑う仲間の悲鳴が聞こえ、追撃に移る鬼どもの後ろ姿が微かに見える。 降りしきる雨の中一人取り残される文。灰色の空を眺める。ああ、冷たい雨が気持ちいい。 「最後の鴉天狗、仲間を逃がすために果敢にもあえて鬼の前に立ち塞がり…」書き出しはこうかな。 第一面を飾る華々しい記事になるだろう。そしてみんなが食い入るように読んでくれるだろう。 …あの子を見つけたのもこんな雨の中だった。 泣きじゃくる巫女からあの子の最期を聞かされた時には私は信じなかった。 でも危険も顧みず飛び廻ってついに、あの子を見つけた時、…あの子は私の中で死んだ。 本当はもっと前に死んでいたんだ。私が決定的瞬間を逃すまいと嬉々としてカメラを構えていた時に。 こんな、どろどろの地べたにたった一人で横たわって。降りしきる雨だけが見てたんだ。 あーあ。なんか、つまらないな。戦争なんか、起きなきゃよかったなぁ… 思わずうたたねをしてしまうほどのうららかな午後の日差しに、文は思わず舟こぎをしてしまった。 「私にカメラ持ってれば、今の瞬間、写真に収められたでしょうに」横でくすくすと白狼天狗が笑う。 はっと口をぬぐう。よだれだ。鴉天狗ともあろう者がなんというていたらくだろう。 -完- - 夢で良かった -- 名無しさん (2010-10-19 21:26:46) - 夢じゃなかったら後味悪かったな -- 名無しさん (2010-10-19 21:49:40) - これ、本当に夢か? &br() -- 名無しさん (2010-11-26 09:50:48) - 胡蝶の夢 -- 名無しさん (2010-11-26 15:31:21) - どっちが夢なんだろう &br()どっちでも終わり綺麗だから良いけどさ -- 名無しさん (2011-07-06 22:20:20) - 夢であってください &br() -- 名無しさん (2011-08-25 21:22:07) - ayawar -- 名無しさん (2011-09-23 19:19:20) - 切ない感じの終わり方だなぁ &br() &br() &br()なんか戦争の方が現実な気がするし -- 名無しさん (2013-03-11 12:06:27) - 1つの陣営を残して戦争が終結した時、きっとこう思うだろうね。 &br() &br() &br()頼むから夢であってくれ -- 名無しさん (2014-05-30 19:48:32) #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)

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