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東方学園~卒業~」(2013/07/10 (水) 18:33:03) の最新版変更点

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※この作品は【[[東方学園~権力~]]】【[[東方学園~学力~]]】【[[東方学園~教師~]]】【[[東方学園~才能~]]】【[[東方学園~正義~]]】と同じ設定です。 最終話なので全部読んでくれると嬉しいかな。 ---- 【東方学園~卒業~】 「ねぇみておかーさま! これ!」  小さな金髪の少女が人形を手にし、それを母親と思しき銀髪でサイドテールが印象的な女性にみせている。  人形はフェルト素材でできており、お世辞にもうまいとは言えない出来であった。 「頑張ったわねアリスちゃん。やっぱりアリスちゃんには才能があるわね」  それでも母親と思しき女性は眩しいという言葉が相応しい明るい笑みで、アリスの頭を撫でる。 「ほんと!? わたし、これからももっとがんばるね!!」  アリスは母親に負けず劣らずの笑みを浮かべて答えた。  その二人の姿は、見るものまでを幸せにするような、微笑ましいものであった。 「……ス……リス」 「……ん」 「おい、アリス」  アリス・マーガトロイドが目を開けると、輝かしい太陽を背にした霧雨魔理沙が身体を揺さぶりながら声を掛けている。  背中には日光と体温で生暖かくなった鉄柵の感触。どうやらアリスははすっかり自分の居場所となった屋上でうたた寝をしてしまっていたらしい。 「お、目が覚めたか。もうそろそろ昼休みが終わるぜ」 「……あら、もうそんな時間なのね」  アリスはのっそりと立ち上がる。 「ありがとう。起こしてくれて」 「いやいいんだぜ別に。どうしたんだ? 屋上で一人で」 「ああ、これを作ってたのよ。完成させたらつい眠っちゃったのね」  アリスの手に握られているのは上海人形であった。その細かい作り込みは職人技と言っていいほどだろう。 「ああ、それか……」 「あら何? 私の人形、気に入らない?」 「い、いや、そういうわけじゃないけどよ……」  アリスは笑いながら上海人形を魔理沙に渡す。 「それじゃあ、いつもの通りお願いね」 「あ、ああ……」  魔理沙は俯きながらもその人形を手にし、じっくりと人形を見つめた。  まるで人形の目線が、自分を責めているように感じた魔理沙は、すぐに視線をそらし、先に階段を降りたアリスの後を追った。 ◇◆◇◆◇  寒い冬も峠を越し、だんだんと暖かくなってきた。暖かな陽日は東方学園の生徒たちが通る通学路を照らしていた。  多くの生徒達がスタスタと歩いていくなか、藤原妹紅と蓬莱山輝夜はゆったりとした歩調で歩いていた。 「ふあぁ~……」 「何よ、だらしないわねぇ」  だらしなく欠伸をする妹紅に輝夜が注意をする。 「仕方ないだろ……昨日の課題がめんどくさくてよぉ。お前はとっとと終えて寝ちまうし」 「あなたとは頭の出来が違うからね。これでも一応特待クラスですから」 「お、お前なあー!」  二人が賑やかに騒いでいると、後ろから駆けてきた少女が妹紅の背中にぶつかる。 「あっ……ご、ごめんなさい!」 「いや、いいんだよ。って、お前は……」 「それじゃあ急ぐのでこれで!」 「あ! おい!」  ぶつかった少女、右手に茄子のような色をした傘を持ち、左手に人形を抱えた多々良小傘は挨拶もほどほどに颯爽と人ごみの中へと走り込んで いった。 「……はぁ」 「何? まだ小傘の事気にしているの?」 「いや、そういうわけじゃないんだが、実際に話すとな……」 「まーた始まった。いい加減にしなさい。過去に囚われてないで、今この刹那を必死に頑張ればいいだけよ。まったく、すぐに後ろ向きになるん だから。前にも直せって言わなかったっけ?」 「ああ、そうだったな。すまない。それにしても……」 「それにしても?」  妹紅が何か腑に落ちないことがあるように眉をひそめて言ったため、輝夜は妹紅に質問した。 「いやさ、人形持ってる奴、増えたなって……」 「ああ、アリスの傘下の奴らでしょ。確かに増えたわね。なんだか勢力を目につけて見せられてる感じね」 「ああ、にしても、急に増えたよな」 「うん、確かにね……」  妹紅の言う通り、現在東方学園の至る所で人形を見かけるようになった。上海人形、蓬莱人形、仏蘭西人形、露西亜人形、和蘭人形等々、その 種類は様々であった。  最近では教室の隅などに置かれていることも多く、すっかり日常化した風景と化しつつあった。 「なんなんだろうな、妙な胸騒ぎがするんだが……」 「考えすぎじゃないの?」 「うーん、そうなのかなぁ……」 「……うん、着々と増えてきたわね」  同時刻、アリスは屋上で髪を風に靡かせ登校中の生徒たちを見ながら言う。 「でも、さすがにこれからやろうとしてることって、やりすぎなんじゃ……」  恐る恐る鈴仙・優曇華院・イナバがアリスに言った。 「何言ってるのよ。言ったでしょ、私はこの学校を壊すって。そのために霊夢だって脅して丸め込んだんだから」 「は、はぁ……」  優曇華はバツが悪そうに顔を書いた。どうもこれからアリスが行おうとしていることには乗り気ではないようである。 「すいません! 遅れましたっ!」  その時、息を切らしながら小傘が扉を開けて屋上に出てきた。 「ああいいのよ別に。細かいことは気にしないで」 「は、はい! ところで、早苗達は?」 「ああ、あいつらなら今回は呼んでないわ。だって、下手に言いふらされても困るでしょ?」 「あー確かに。まぁ、あとでこの分も付け加えて可愛がってあげればいいか」 「ふふ、あなたも随分と板についてきたのね」 「まぁね。こういうのなんていうんだっけ? さでずむ?」  そうアリス達が談笑している中、一人離れて空を見ていた魔理沙の手元には、黒い箱のような物体が握り締められていた。 ◇◆◇◆◇ 「おかしい、絶対におかしい!」 「ど、どうしたのよ急に」  放課後、部活もなく生徒のいない学校の廊下で突然妹紅が厳しい表情で叫んだため輝夜は狼狽してしまう。 「人形だよ人形! こんな急に、しかもこれだけの量が学校に出回ってるんだよ! 明らかに意図したとしか思えない! そうに違いない!」 「いや、そうと決めつけるのには決め手が足りないんじゃない?」 「いや、私の勘が言ってる!」 「勘って……霊夢じゃないんだから……」 「その霊夢だっておかしい! 最近妙におとなしいじゃないか。それにいくらこの学園の校則がゆるいからってこんなに大量の私物の持ち込みを あの鬼風紀委員長が許すはずないじゃないか!」 「確かに、そう言われてみれば……うーん、でもねぇ……」  妹紅の説明も最もであるが、輝夜はそれだけでは早計であると言いたげに腕を組み右手の手の甲の上に顎を乗せた。 「そんなに確証が欲しかったら、私が証拠をあげようか?」  突如背後から声が認め二人が振り向くと、そこにいたのはかつて輝夜の取り巻きであった因幡てゐがいた。 「てゐ……あなた、それどういう意味?」  輝夜がてゐを睨みながら言った。 「そんな怖い顔はやめてよ姫様。私は別に姫様に見限りをつけて離れていったんじゃないよ。姫様のお遊びには付き合ってたけど、本気だったの は鈴仙ぐらいだって姫様も分かってたんじゃない?」 「……まぁ確かに、今思うとね……」 「そんなことはどうでもいいだろ。それで、証拠ってどういう意味なんだ?」  てゐは懐から黒い箱のようなものを取り出し、妹紅に投げつける。 「これって……ボイスレコーダー?」 「そ。ちょっとあいつらの中のある奴に頼まれてね。ま、これも商売商売。まぁ聞いてみなよ」  妹紅は言われた通りにボイスレコーダーの再生ボタンを入れた。 『……それじゃあ、人形は全て学園内に配置されたのね』 『うん、指示されたとおりの場所に全部置いてきたよ』  ボイスレコーダーからは聞こえてきたのは、アリスと小傘が人形について会話していたものであった。 『でも、本当に大丈夫なの? 人形を爆発させて学校をめちゃくちゃにするなんて』 「はぁ!!?」  妹紅が素っ頓狂な声を上げて驚く。 「おい! どういうことだよ、爆発って!!」 「落ち着きなさい妹紅、もっと先を聞かないと分からないわ」  慌てふためく妹紅を輝夜が冷静に諭す。  テープレコーダーからは依然アリスと小傘の会話がつづいていた。 『ええ、少なくともあなた達には迷惑がかからないようにするわ。安心して』 『いや、それで私達がよくてもアリスさんが……』 『いいのよ別に。改革に犠牲はつきものでしょ?』 『改革ねぇ……こんなことで本当に変わるものなの?』 『人はね、過ちから学ぶものなの。でもそれは関心をもたれないと意味が無いのよ。これぐらいの大ごとにでもしないと、誰も関心なんか持って くれないわ』 『そんなものなのかなぁ……』 『そんなものよ。予定通り、今日の五時に爆発させる予定だから、それまでには帰っているのよ』  そこでテープは途切れた。一同を静寂が包み込む。 「なんだよこれ……おかしいだろ……おかしいだろ絶対!!」  最初に口を開いたのは妹紅だった。  「明らかにまともな頭で考えることじゃない! もう完全に復讐の枠から逸脱してるじゃないか……!」 「……そうね。それよりも、今の言葉が本当なら、早く人形を全部回収してどこか安全な所に運ばないといけないわ」  輝夜は近くの教室に掲げられている時計を見る。爆発の時間まであと一時間ほどであった。 「そうね、学校裏の迷いの竹林がいいわ。てゐ、貴方あそこ詳しいでしょ。私達が学校にある人形を全部回収してくるから、何処かよさそうな 場所を教えて」 「うーん……ま、仕方ないね。私に頼んだ奴が結構羽振りがよかったから、サービスの一貫でやってあげる」 「そ、ありがと」  輝夜は手早く言うと、妹紅と共に学校にある全ての人形を回収しに行った。 ◇◆◇◆◇  町を赤く染める夕焼けを見ながら、アリスと魔理沙は二人屋上で佇んでいた。アリスは鉄柵に手をかけ、魔理沙は鉄柵より少し離れた位置に 立っていた。アリスがふと腕時計を見る。 「……そろそろね」 「……ああ」  魔理沙が力なく応答する。その時、バンと扉を力強く開け放つ音が聞こえアリスと魔理沙は扉の方を振り向いた。そこには、息をゼェゼェと 切らせている輝夜と妹紅の姿があった。 「お、お前ら……!」  魔理沙が驚きながら反応する。 「あなた達が此処に来たってことは、人形は全部回収されたってことね」 「ええ、全部迷いの竹林の安全な場所に処理したわ。あなたの悪巧みはこれでおしまいよ」  輝夜がアリスにそう言い放つと、アリスはクスッと軽く笑い、殺伐としたその場では異端なほど穏やかな笑みを魔理沙に向けて言った。 「よかったわね魔理沙、あなたの悪あがきの勝ちよ」  その言葉に、魔理沙、輝夜、妹紅の三人は呆気に取られた。 「アリス……知ってたのか!? 私がお前の会話を録音していたことを!?」 「ええ、もちろんよ。あなたの嘘ほど分かりやすいものはないわ」  アリスは鉄柵に腰を掛けて続けた。 「私の凶行が勝つか、あなたの私を止めようとする悪あがきが勝つか、賭けてみたくなったのよ。結果はあなたの勝ちね。おめでとう」 「なぁ、ひとつ聞いていいか」  妹紅が静かに、落ち着いた口調でアリスに言った。 「何?」 「どうして、人形を爆発させて学校をめちゃくちゃにしようと思ったんだ? ただのいじめの復讐にしては度が過ぎている。むしろ、今のお前は そんなことを擦る必要はないはずだ。どうしてだ?」 「別に。ただこの学校が反吐が出るほど嫌いなだけ」 「っ!! そんな理由で――」 「私ね、今はこんなだけれど、昔はそれなりの大きな家で幸せに暮らしていたのよ」  アリスが妹紅の声を遮るように大声で言った。 「私の母親はとっても優しくて、私がお世辞にも可愛いとは言えないような人形を作っても優しく褒めてくれたわ。私、本当にお母様が大好きだ った。でもね、この学校に入って少しした後、とあるいじめグループに目をつけられてね。私が相談したら、お母様が学校に掛けあってくれた。 でも、いくら学校に掛けあっても聞く耳を持たれなかった。逆にそのいじめっ子を擁護までしだす限り。仕方ないわね、いじめっ子の親から多額 の寄付金を貰っていたんだもの。そしてその話を聞いたグループのリーダーが親にそのことを言ったらしいわ。その後、私のお母様はひき逃げに あった。ピンと来たわよ。あいつらの差金だってね。証拠に、お母様をそんな目に合わせたことを、あいつら自身認めたもの」  妹紅達はあくまで淡々と話すアリスの話を黙って聞いていた。アリスは一呼吸おいてさらに続ける。 「そいつらは私が力を手に入れレミリアをいじめ返した後、真っ先に潰させてもらったわ。でも、それでも私の気持ちは収まらなかった。他の権 力を笠に着ている奴らをいくら潰しても、どうにもならなかった。そして私のどうにもならないどす黒い気持ちの矛先が、この学園に向かったわ け。これぐらいでかい不祥事の一つでも起こせば、この学園もただでは済まないからね」 「……でも、それもこれで終りよ」  輝夜が厳しい顔つきで、しかしどこか優しさを含んだ口調で言った。 「ああ、もうこれ以上くだらない憎しみ合いはなしだ。ここで終わらせなくちゃいけないんだ。お前の気持ちは痛いほどわかるさ。でもな、やっ ちゃいけないこととってのはある。お前のやってることは、明らかにやっちゃいけないことなんだ。私だって輝夜を許せた。輝夜だって変われた。 今度は、お前が変わる番だ」 「なぁアリス、もう止めにしよう。私はずっと言い出せなかった。お前がこうなっちまったのは私が原因だ。そんな私がお前にこんなことを言う のは今更だって分かってる。でも今は苦しいことしかない。私は、昔みたいに、ただお前と楽しくやっていきたいだけなんだ……」  妹紅と魔理沙が立て続けに言った。アリスは、ただそれを黙々と聞いていた。そして、魔理沙が消え入るような声で言い切ると、アリスはとう とう口を開いた。 「……そうね。でも私は、もう戻れないところまで来てしまったの」 「そんなことない! アリス、私がついている! 二人でやり直そうぜ……」 「ありがとう魔理沙。でも私、もう疲れちゃったの。だから……」  アリスは、ゆっくりと鉄柵から手を放して、上体を後ろに倒し―― 「っ!! アリスあんた!!」 「おいっ!」 「アリスっ!!」 「さよなら――」  アリスは、眩しいという言葉が相応しい明るい笑みで、ただ静かに、夕日に赤く染められながら、落ちていった。 『▲月◎日、幻想郷立東方学園生徒、アリス・マーガトロイドさんが学校の屋上から飛び降り、病院へ運ばれた。自殺未遂と思われる。 素早い連絡と必死の救命により一命は取り留めたものの、意識は回復しておらず、依然予断を許さない状況である。自殺を図った理由として、 以前から問題視されていた学園内でのいじめや、癒着等による特定生徒の贔屓などが上げられている。警察はアリスさんの意識が戻り次第、 自殺の理由を聞くと共に、学園における運営状況を調査していく予定。                                                                                                                            ――文々。新聞から抜粋』 ◇◆◇◆◇  桜吹雪が生徒たちの通る通学路に舞い落ちる。季節は春、東方学園の講堂では、淡々と卒業式が行われていた。  学力優秀により選出された在校生代表であるチルノが送辞を行い、卒業生代表が答辞を述べる。他にも様々な典型的儀礼を行い、卒業式が終了 する。  輝夜と妹紅は卒業証書の入った筒を持ちながら、ゆっくりと桜の花びらが舞い散る道を歩いていた。 「それで、お前はこれからどうするんだ?」 「そうね、流石に卒業してまでお世話になる気はないわ。大学に通いながら、ゆっくりと永琳の家で彼女の帰りを待とうと思う」 「あいつの帰り、いつになるか分からないんだろ?」 「ええ、でも、いつまでも待つわ。例え、永遠の時が流れようともね」 「お前らしいな。ところで、大丈夫なのか? お前、ひとりで生活出来るか?」 「もう、バカにしないでよ。あなたに嫌でも鍛えられたからね。それに、てゐもいるし。なんでも、契約はまだつづいているうんたらかんたらとか なんとか言ってたわ。なんだかんだで心配してくれてるのかしらね。それとも、私のそばで甘い蜜でも吸いたいだけかしら」 「優曇華は?」 「あいつは逃げてばっかでどこにいるかしらないわよ。逃げるのが専売特許なのかしらね」 「あいつらしいな」 「そ、あの子らしいの」  輝夜は手に持った筒を回しながら言った。二人はくすくすと笑いあう。 「そうか……私は金がないから大学に行かないから、寂しくなるな」 「別にいつでも会えるでしょ。そんな顔しないの。まったく寂しがり屋さんね」 「……わ、悪かったな」  輝夜の言葉を聞いた妹紅ははにかみながらも微笑む。すると、その時、輝夜の正面に誰かがぶつかった。横を向いて話していたため前方への注意 が散漫になっていたらしい。 「あ、ご、ごめんなさい!」 「いや、別にいいのよ……って、レミリアじゃない」 「はい! いや、その……ごめんなさい!」 「いや、別に謝らなくても……」 「お嬢様、こんなところにいたんですか?」  背後から十六夜咲夜が現れる。どうやら離れ離れになっていたらしい。 「……うー! さくやー!!」 「はいはい、大丈夫ですよ。そのうーうー言うのやめて下さい。すみません、ご迷惑おかけしました」  咲夜は輝夜達に向かって瀟洒にお辞儀をする。 「い、いや別に……」 「お嬢様、行きますよ」 「……うー!」 「だからそのうーうー言うのをやめて下さいって言ってるじゃないですか!」  咲夜とレミリアは賑やかに人ごみの中へと消えていく。 「……変わったよな」 「……ええ、変わったわね」  二人は顔を見合わせて言った。 「……そういえばアリス、今頃大丈夫かなぁ……」 「まだ意識は戻っていないらしいわ。魔理沙がつきっきりで看病してるみたいだけど、この前様子見た時は、どちらかと言うと魔理沙の方が心配 になったわ。凄い気に病んでいて見ていられなかったもの」 「そうか……あいつは、自分自身を犠牲にして、学校を変えた……あいつのあの行動のおかげで、幾分かは学校はマシになったもんな……」 「あくまで幾分かだけれどもね。あの学校では今だ理不尽な格差によるいじめは止まないわ……」 「ああ、そうだな……」  二人はそれ以上会話することなく、静かに桜並木の間を歩いていった。      魔理沙はベッドに横たわっているアリスの手をがっちりと握り締めていた。アリスは人工呼吸器を付け、ただ静かに呼吸だけをしている。   「なぁアリス、今日は卒業式だぜ。私は面倒だったからでなかったけどな、ははは」  魔理沙が力なく笑いかけても、アリスは一向に返事をしない。それでもただ魔理沙は続ける。 「今日は天気がいいな。ここからだと、町並みが一望できていいな。桜が綺麗だぜ」  魔理沙は尚をも話しかける。彼女の瞳には、アリスしか写っていない。 「なぁ、私、とっても楽しい夢を見たんだ。夢の中では皆仲がよくてな。私とお前は魔女でさ、同じく魔女で、凄いでかい図書館を持ってる パチュリーと一緒に、本を読んだりお茶したりするんだぜ。レミリアや咲夜達もついでに一緒にな。そこで私が本を借りたりして。霊夢がいる 神社で皆で馬鹿騒ぎして、弾幕ごっこって遊びでなんでも決めるんだ。より美しい方が勝ちなんだぜ。輝夜はお姫様で、妹紅といっつも 喧嘩ばっかしてさ。すっごい、すっごい楽しかったんだ……なぁアリス、もしかして、お前はそっち側にいるんじゃないのか? もしかして、 こっちの世界が夢でさ、そっちの世界が本物だったりしてな……だったらさ、アリス。はやく私も起こしてくれよ……こんなゴミゴミした 何の面白味もない幻想郷なんかつまらないぜ。はやく、私を元の幻想郷に戻してくれよ。な、アリス……」  魔理沙は消え入るような声でそう言うと、アリスの胸にゆっくりと顔を埋めた。 『患者番号三十二番、霧雨魔理沙  極めて特異な妄想(妄想の内容は別資料参照)を抱いており、  現実を夢と認識している。    原因としては、友人の自殺未遂によるものと思われる。    患者は非常に危険な状況であり、下手に刺激をすれば精神に  さらなる異常を来す危険がある。    冷静な対処と治療が必要である。  備考:自殺未遂をした患者の友人との接触は週に一回として      おくこと。     投薬については別資料参照。                                 』  ~東方学園、終~ ---- 幻想郷が誰かの夢オチとか妄想オチとかって素敵だと思いません? どうでもいいけど私はてるもこよりかぐえー、アリマリよりアリパチュの方が好き。 ---- - バッドエンドに見えたがそんな事は無かった &br()いいハッピーエンドだわ -- 名無しさん (2010-04-04 17:22:53) - 主役が輝夜と妹紅か &br()いいラストだった -- Aーfd (2010-04-04 17:38:45) - 神綺様ぁぁぁあああ! -- 名無しさん (2010-04-04 18:09:35) - なんという大どんでん返し -- 名無しさん (2010-04-04 18:48:59) - ヤッパリ最後はハッピーエンドが最高だぜ!!!作者お疲れ様でした、そしてありがとう!!! &br() -- 外道 (2010-04-04 19:18:16) - しんきさま・・・・・・・・・ちくしょう &br()どうしようにもならない救いの無さがやけにリアリティだったぜ。 &br()が、終わりはなんともいえぬさわやかさ。鬱エンドじゃなくて本当に良かった。ありがとう! -- 名無しさん (2010-04-05 23:10:32) - お前らのコメを見てやはりこのまとめウィキを見に来る住人は格が違うことが分かったw -- 名無しさん (2010-04-06 00:41:28) - これはハッピーエンドと言えるのだろうか・・ -- 名無しさん (2010-04-06 18:44:14) - ↑バッドエンドを想像してみたらいかにこれがハッピーか分かる -- 名無しさん (2010-04-06 19:07:49) - 自殺未遂はアリスのほうだったかぁ &br()ハッピーエンドでなにより -- 名無しさん (2010-04-06 20:46:28) - アリスが戻らないとハッピーエンドなんか言わせないんだからっ…うぅ… -- 名無しさん (2010-04-06 23:35:53) - ↑だそうです作者さん。その後の話みたいな感じでもうちょっと書いてみてわどうでしょうか?リクエストを希望します。 -- 外道 (2010-04-06 23:51:21) - いい話(?)なのにおぜうさまで吹いてしまったじゃないか -- 名無しさん (2010-04-07 03:12:45) - ↑↑無駄なもねは要らない。 &br()若しくは話がつまらなくなるから要らない -- 名無しさん (2010-04-07 07:12:55) - 結果的にレミリアとかも救われてるし良い話だった -- 名無しさん (2010-04-07 08:11:37) - うどんげが一貫して小物で噴いた -- 名無しさん (2010-04-07 21:46:17) - 魔理沙の最後の言葉で涙腺死んだ &br()願望が滲み出てて切なすぎるぜ・・・ -- 名無しさん (2010-04-07 23:21:55) - うどんげの扱い吹いたw &br()逃げ癖酷いもんなw -- 名無しさん (2010-04-09 07:27:46) - 明らかに神主の妄想だけどな! -- 名無しさん (2010-04-13 14:23:52) - ↑まさにその通りだw -- 名無しさん (2010-07-04 07:13:37) - 魔理沙……:: -- 名無しさん (2010-07-04 12:28:14) - てゐは美味しい役持っていくなぁ -- 名無しさん (2010-07-06 06:35:24) - アリスが自爆するかと思った -- 名無しさん (2010-07-24 02:22:26) - うわぁぁぁぁぁぁぁぁああ &br()つか幻想郷自体が妄想だとは -- 名無しさん (2010-08-06 15:04:34) - いやぁ、いいハッピーエンドだった。 &br()概ね救われたし、清々しい気分になった。 -- 名無しさん (2010-11-04 05:35:19) - おぜうさま幼児退行してるじゃないかwww -- 名無しさん (2010-11-05 17:03:30) - 子傘、フラン、美鈴、パチュリーはどうなったんだ &br()てかてゐが思ったよりいい奴 &br()輝夜と一緒にいる辺り少なくともうどんげよりはいい奴 -- 名無しさん (2011-05-15 01:29:00) - 新説:幻想郷は魔理沙の妄想 -- 名無しさん (2011-11-08 18:40:15) - うーwww -- 名無しさん (2013-01-22 22:49:46) #comment(vsize=2,nsize=20,size=40) 
※この作品は【[[東方学園~権力~]]】【[[東方学園~学力~]]】【[[東方学園~教師~]]】【[[東方学園~才能~]]】【[[東方学園~正義~]]】と同じ設定です。 最終話なので全部読んでくれると嬉しいかな。 ---- 【東方学園~卒業~】 「ねぇみておかーさま! これ!」  小さな金髪の少女が人形を手にし、それを母親と思しき銀髪でサイドテールが印象的な女性にみせている。  人形はフェルト素材でできており、お世辞にもうまいとは言えない出来であった。 「頑張ったわねアリスちゃん。やっぱりアリスちゃんには才能があるわね」  それでも母親と思しき女性は眩しいという言葉が相応しい明るい笑みで、アリスの頭を撫でる。 「ほんと!? わたし、これからももっとがんばるね!!」  アリスは母親に負けず劣らずの笑みを浮かべて答えた。  その二人の姿は、見るものまでを幸せにするような、微笑ましいものであった。 「……ス……リス」 「……ん」 「おい、アリス」  アリス・マーガトロイドが目を開けると、輝かしい太陽を背にした霧雨魔理沙が身体を揺さぶりながら声を掛けている。  背中には日光と体温で生暖かくなった鉄柵の感触。どうやらアリスははすっかり自分の居場所となった屋上でうたた寝をしてしまっていたらしい。 「お、目が覚めたか。もうそろそろ昼休みが終わるぜ」 「……あら、もうそんな時間なのね」  アリスはのっそりと立ち上がる。 「ありがとう。起こしてくれて」 「いやいいんだぜ別に。どうしたんだ? 屋上で一人で」 「ああ、これを作ってたのよ。完成させたらつい眠っちゃったのね」  アリスの手に握られているのは上海人形であった。その細かい作り込みは職人技と言っていいほどだろう。 「ああ、それか……」 「あら何? 私の人形、気に入らない?」 「い、いや、そういうわけじゃないけどよ……」  アリスは笑いながら上海人形を魔理沙に渡す。 「それじゃあ、いつもの通りお願いね」 「あ、ああ……」  魔理沙は俯きながらもその人形を手にし、じっくりと人形を見つめた。  まるで人形の目線が、自分を責めているように感じた魔理沙は、すぐに視線をそらし、先に階段を降りたアリスの後を追った。 ◇◆◇◆◇  寒い冬も峠を越し、だんだんと暖かくなってきた。暖かな陽日は東方学園の生徒たちが通る通学路を照らしていた。  多くの生徒達がスタスタと歩いていくなか、藤原妹紅と蓬莱山輝夜はゆったりとした歩調で歩いていた。 「ふあぁ~……」 「何よ、だらしないわねぇ」  だらしなく欠伸をする妹紅に輝夜が注意をする。 「仕方ないだろ……昨日の課題がめんどくさくてよぉ。お前はとっとと終えて寝ちまうし」 「あなたとは頭の出来が違うからね。これでも一応特待クラスですから」 「お、お前なあー!」  二人が賑やかに騒いでいると、後ろから駆けてきた少女が妹紅の背中にぶつかる。 「あっ……ご、ごめんなさい!」 「いや、いいんだよ。って、お前は……」 「それじゃあ急ぐのでこれで!」 「あ! おい!」  ぶつかった少女、右手に茄子のような色をした傘を持ち、左手に人形を抱えた多々良小傘は挨拶もほどほどに颯爽と人ごみの中へと走り込んで いった。 「……はぁ」 「何? まだ小傘の事気にしているの?」 「いや、そういうわけじゃないんだが、実際に話すとな……」 「まーた始まった。いい加減にしなさい。過去に囚われてないで、今この刹那を必死に頑張ればいいだけよ。まったく、すぐに後ろ向きになるん だから。前にも直せって言わなかったっけ?」 「ああ、そうだったな。すまない。それにしても……」 「それにしても?」  妹紅が何か腑に落ちないことがあるように眉をひそめて言ったため、輝夜は妹紅に質問した。 「いやさ、人形持ってる奴、増えたなって……」 「ああ、アリスの傘下の奴らでしょ。確かに増えたわね。なんだか勢力を目につけて見せられてる感じね」 「ああ、にしても、急に増えたよな」 「うん、確かにね……」  妹紅の言う通り、現在東方学園の至る所で人形を見かけるようになった。上海人形、蓬莱人形、仏蘭西人形、露西亜人形、和蘭人形等々、その 種類は様々であった。  最近では教室の隅などに置かれていることも多く、すっかり日常化した風景と化しつつあった。 「なんなんだろうな、妙な胸騒ぎがするんだが……」 「考えすぎじゃないの?」 「うーん、そうなのかなぁ……」 「……うん、着々と増えてきたわね」  同時刻、アリスは屋上で髪を風に靡かせ登校中の生徒たちを見ながら言う。 「でも、さすがにこれからやろうとしてることって、やりすぎなんじゃ……」  恐る恐る鈴仙・優曇華院・イナバがアリスに言った。 「何言ってるのよ。言ったでしょ、私はこの学校を壊すって。そのために霊夢だって脅して丸め込んだんだから」 「は、はぁ……」  優曇華はバツが悪そうに顔を書いた。どうもこれからアリスが行おうとしていることには乗り気ではないようである。 「すいません! 遅れましたっ!」  その時、息を切らしながら小傘が扉を開けて屋上に出てきた。 「ああいいのよ別に。細かいことは気にしないで」 「は、はい! ところで、早苗達は?」 「ああ、あいつらなら今回は呼んでないわ。だって、下手に言いふらされても困るでしょ?」 「あー確かに。まぁ、あとでこの分も付け加えて可愛がってあげればいいか」 「ふふ、あなたも随分と板についてきたのね」 「まぁね。こういうのなんていうんだっけ? さでずむ?」  そうアリス達が談笑している中、一人離れて空を見ていた魔理沙の手元には、黒い箱のような物体が握り締められていた。 ◇◆◇◆◇ 「おかしい、絶対におかしい!」 「ど、どうしたのよ急に」  放課後、部活もなく生徒のいない学校の廊下で突然妹紅が厳しい表情で叫んだため輝夜は狼狽してしまう。 「人形だよ人形! こんな急に、しかもこれだけの量が学校に出回ってるんだよ! 明らかに意図したとしか思えない! そうに違いない!」 「いや、そうと決めつけるのには決め手が足りないんじゃない?」 「いや、私の勘が言ってる!」 「勘って……霊夢じゃないんだから……」 「その霊夢だっておかしい! 最近妙におとなしいじゃないか。それにいくらこの学園の校則がゆるいからってこんなに大量の私物の持ち込みを あの鬼風紀委員長が許すはずないじゃないか!」 「確かに、そう言われてみれば……うーん、でもねぇ……」  妹紅の説明も最もであるが、輝夜はそれだけでは早計であると言いたげに腕を組み右手の手の甲の上に顎を乗せた。 「そんなに確証が欲しかったら、私が証拠をあげようか?」  突如背後から声が認め二人が振り向くと、そこにいたのはかつて輝夜の取り巻きであった因幡てゐがいた。 「てゐ……あなた、それどういう意味?」  輝夜がてゐを睨みながら言った。 「そんな怖い顔はやめてよ姫様。私は別に姫様に見限りをつけて離れていったんじゃないよ。姫様のお遊びには付き合ってたけど、本気だったの は鈴仙ぐらいだって姫様も分かってたんじゃない?」 「……まぁ確かに、今思うとね……」 「そんなことはどうでもいいだろ。それで、証拠ってどういう意味なんだ?」  てゐは懐から黒い箱のようなものを取り出し、妹紅に投げつける。 「これって……ボイスレコーダー?」 「そ。ちょっとあいつらの中のある奴に頼まれてね。ま、これも商売商売。まぁ聞いてみなよ」  妹紅は言われた通りにボイスレコーダーの再生ボタンを入れた。 『……それじゃあ、人形は全て学園内に配置されたのね』 『うん、指示されたとおりの場所に全部置いてきたよ』  ボイスレコーダーからは聞こえてきたのは、アリスと小傘が人形について会話していたものであった。 『でも、本当に大丈夫なの? 人形を爆発させて学校をめちゃくちゃにするなんて』 「はぁ!!?」  妹紅が素っ頓狂な声を上げて驚く。 「おい! どういうことだよ、爆発って!!」 「落ち着きなさい妹紅、もっと先を聞かないと分からないわ」  慌てふためく妹紅を輝夜が冷静に諭す。  テープレコーダーからは依然アリスと小傘の会話がつづいていた。 『ええ、少なくともあなた達には迷惑がかからないようにするわ。安心して』 『いや、それで私達がよくてもアリスさんが……』 『いいのよ別に。改革に犠牲はつきものでしょ?』 『改革ねぇ……こんなことで本当に変わるものなの?』 『人はね、過ちから学ぶものなの。でもそれは関心をもたれないと意味が無いのよ。これぐらいの大ごとにでもしないと、誰も関心なんか持って くれないわ』 『そんなものなのかなぁ……』 『そんなものよ。予定通り、今日の五時に爆発させる予定だから、それまでには帰っているのよ』  そこでテープは途切れた。一同を静寂が包み込む。 「なんだよこれ……おかしいだろ……おかしいだろ絶対!!」  最初に口を開いたのは妹紅だった。  「明らかにまともな頭で考えることじゃない! もう完全に復讐の枠から逸脱してるじゃないか……!」 「……そうね。それよりも、今の言葉が本当なら、早く人形を全部回収してどこか安全な所に運ばないといけないわ」  輝夜は近くの教室に掲げられている時計を見る。爆発の時間まであと一時間ほどであった。 「そうね、学校裏の迷いの竹林がいいわ。てゐ、貴方あそこ詳しいでしょ。私達が学校にある人形を全部回収してくるから、何処かよさそうな 場所を教えて」 「うーん……ま、仕方ないね。私に頼んだ奴が結構羽振りがよかったから、サービスの一貫でやってあげる」 「そ、ありがと」  輝夜は手早く言うと、妹紅と共に学校にある全ての人形を回収しに行った。 ◇◆◇◆◇  町を赤く染める夕焼けを見ながら、アリスと魔理沙は二人屋上で佇んでいた。アリスは鉄柵に手をかけ、魔理沙は鉄柵より少し離れた位置に 立っていた。アリスがふと腕時計を見る。 「……そろそろね」 「……ああ」  魔理沙が力なく応答する。その時、バンと扉を力強く開け放つ音が聞こえアリスと魔理沙は扉の方を振り向いた。そこには、息をゼェゼェと 切らせている輝夜と妹紅の姿があった。 「お、お前ら……!」  魔理沙が驚きながら反応する。 「あなた達が此処に来たってことは、人形は全部回収されたってことね」 「ええ、全部迷いの竹林の安全な場所に処理したわ。あなたの悪巧みはこれでおしまいよ」  輝夜がアリスにそう言い放つと、アリスはクスッと軽く笑い、殺伐としたその場では異端なほど穏やかな笑みを魔理沙に向けて言った。 「よかったわね魔理沙、あなたの悪あがきの勝ちよ」  その言葉に、魔理沙、輝夜、妹紅の三人は呆気に取られた。 「アリス……知ってたのか!? 私がお前の会話を録音していたことを!?」 「ええ、もちろんよ。あなたの嘘ほど分かりやすいものはないわ」  アリスは鉄柵に腰を掛けて続けた。 「私の凶行が勝つか、あなたの私を止めようとする悪あがきが勝つか、賭けてみたくなったのよ。結果はあなたの勝ちね。おめでとう」 「なぁ、ひとつ聞いていいか」  妹紅が静かに、落ち着いた口調でアリスに言った。 「何?」 「どうして、人形を爆発させて学校をめちゃくちゃにしようと思ったんだ? ただのいじめの復讐にしては度が過ぎている。むしろ、今のお前は そんなことを擦る必要はないはずだ。どうしてだ?」 「別に。ただこの学校が反吐が出るほど嫌いなだけ」 「っ!! そんな理由で――」 「私ね、今はこんなだけれど、昔はそれなりの大きな家で幸せに暮らしていたのよ」  アリスが妹紅の声を遮るように大声で言った。 「私の母親はとっても優しくて、私がお世辞にも可愛いとは言えないような人形を作っても優しく褒めてくれたわ。私、本当にお母様が大好きだ った。でもね、この学校に入って少しした後、とあるいじめグループに目をつけられてね。私が相談したら、お母様が学校に掛けあってくれた。 でも、いくら学校に掛けあっても聞く耳を持たれなかった。逆にそのいじめっ子を擁護までしだす限り。仕方ないわね、いじめっ子の親から多額 の寄付金を貰っていたんだもの。そしてその話を聞いたグループのリーダーが親にそのことを言ったらしいわ。その後、私のお母様はひき逃げに あった。ピンと来たわよ。あいつらの差金だってね。証拠に、お母様をそんな目に合わせたことを、あいつら自身認めたもの」  妹紅達はあくまで淡々と話すアリスの話を黙って聞いていた。アリスは一呼吸おいてさらに続ける。 「そいつらは私が力を手に入れレミリアをいじめ返した後、真っ先に潰させてもらったわ。でも、それでも私の気持ちは収まらなかった。他の権 力を笠に着ている奴らをいくら潰しても、どうにもならなかった。そして私のどうにもならないどす黒い気持ちの矛先が、この学園に向かったわ け。これぐらいでかい不祥事の一つでも起こせば、この学園もただでは済まないからね」 「……でも、それもこれで終りよ」  輝夜が厳しい顔つきで、しかしどこか優しさを含んだ口調で言った。 「ああ、もうこれ以上くだらない憎しみ合いはなしだ。ここで終わらせなくちゃいけないんだ。お前の気持ちは痛いほどわかるさ。でもな、やっ ちゃいけないこととってのはある。お前のやってることは、明らかにやっちゃいけないことなんだ。私だって輝夜を許せた。輝夜だって変われた。 今度は、お前が変わる番だ」 「なぁアリス、もう止めにしよう。私はずっと言い出せなかった。お前がこうなっちまったのは私が原因だ。そんな私がお前にこんなことを言う のは今更だって分かってる。でも今は苦しいことしかない。私は、昔みたいに、ただお前と楽しくやっていきたいだけなんだ……」  妹紅と魔理沙が立て続けに言った。アリスは、ただそれを黙々と聞いていた。そして、魔理沙が消え入るような声で言い切ると、アリスはとう とう口を開いた。 「……そうね。でも私は、もう戻れないところまで来てしまったの」 「そんなことない! アリス、私がついている! 二人でやり直そうぜ……」 「ありがとう魔理沙。でも私、もう疲れちゃったの。だから……」  アリスは、ゆっくりと鉄柵から手を放して、上体を後ろに倒し―― 「っ!! アリスあんた!!」 「おいっ!」 「アリスっ!!」 「さよなら――」  アリスは、眩しいという言葉が相応しい明るい笑みで、ただ静かに、夕日に赤く染められながら、落ちていった。 『▲月◎日、幻想郷立東方学園生徒、アリス・マーガトロイドさんが学校の屋上から飛び降り、病院へ運ばれた。自殺未遂と思われる。 素早い連絡と必死の救命により一命は取り留めたものの、意識は回復しておらず、依然予断を許さない状況である。自殺を図った理由として、 以前から問題視されていた学園内でのいじめや、癒着等による特定生徒の贔屓などが上げられている。警察はアリスさんの意識が戻り次第、 自殺の理由を聞くと共に、学園における運営状況を調査していく予定。                                                                                                                            ――文々。新聞から抜粋』 ◇◆◇◆◇  桜吹雪が生徒たちの通る通学路に舞い落ちる。季節は春、東方学園の講堂では、淡々と卒業式が行われていた。  学力優秀により選出された在校生代表であるチルノが送辞を行い、卒業生代表が答辞を述べる。他にも様々な典型的儀礼を行い、卒業式が終了 する。  輝夜と妹紅は卒業証書の入った筒を持ちながら、ゆっくりと桜の花びらが舞い散る道を歩いていた。 「それで、お前はこれからどうするんだ?」 「そうね、流石に卒業してまでお世話になる気はないわ。大学に通いながら、ゆっくりと永琳の家で彼女の帰りを待とうと思う」 「あいつの帰り、いつになるか分からないんだろ?」 「ええ、でも、いつまでも待つわ。例え、永遠の時が流れようともね」 「お前らしいな。ところで、大丈夫なのか? お前、ひとりで生活出来るか?」 「もう、バカにしないでよ。あなたに嫌でも鍛えられたからね。それに、てゐもいるし。なんでも、契約はまだつづいているうんたらかんたらとか なんとか言ってたわ。なんだかんだで心配してくれてるのかしらね。それとも、私のそばで甘い蜜でも吸いたいだけかしら」 「優曇華は?」 「あいつは逃げてばっかでどこにいるかしらないわよ。逃げるのが専売特許なのかしらね」 「あいつらしいな」 「そ、あの子らしいの」  輝夜は手に持った筒を回しながら言った。二人はくすくすと笑いあう。 「そうか……私は金がないから大学に行かないから、寂しくなるな」 「別にいつでも会えるでしょ。そんな顔しないの。まったく寂しがり屋さんね」 「……わ、悪かったな」  輝夜の言葉を聞いた妹紅ははにかみながらも微笑む。すると、その時、輝夜の正面に誰かがぶつかった。横を向いて話していたため前方への注意 が散漫になっていたらしい。 「あ、ご、ごめんなさい!」 「いや、別にいいのよ……って、レミリアじゃない」 「はい! いや、その……ごめんなさい!」 「いや、別に謝らなくても……」 「お嬢様、こんなところにいたんですか?」  背後から十六夜咲夜が現れる。どうやら離れ離れになっていたらしい。 「……うー! さくやー!!」 「はいはい、大丈夫ですよ。そのうーうー言うのやめて下さい。すみません、ご迷惑おかけしました」  咲夜は輝夜達に向かって瀟洒にお辞儀をする。 「い、いや別に……」 「お嬢様、行きますよ」 「……うー!」 「だからそのうーうー言うのをやめて下さいって言ってるじゃないですか!」  咲夜とレミリアは賑やかに人ごみの中へと消えていく。 「……変わったよな」 「……ええ、変わったわね」  二人は顔を見合わせて言った。 「……そういえばアリス、今頃大丈夫かなぁ……」 「まだ意識は戻っていないらしいわ。魔理沙がつきっきりで看病してるみたいだけど、この前様子見た時は、どちらかと言うと魔理沙の方が心配 になったわ。凄い気に病んでいて見ていられなかったもの」 「そうか……あいつは、自分自身を犠牲にして、学校を変えた……あいつのあの行動のおかげで、幾分かは学校はマシになったもんな……」 「あくまで幾分かだけれどもね。あの学校では今だ理不尽な格差によるいじめは止まないわ……」 「ああ、そうだな……」  二人はそれ以上会話することなく、静かに桜並木の間を歩いていった。      魔理沙はベッドに横たわっているアリスの手をがっちりと握り締めていた。アリスは人工呼吸器を付け、ただ静かに呼吸だけをしている。   「なぁアリス、今日は卒業式だぜ。私は面倒だったからでなかったけどな、ははは」  魔理沙が力なく笑いかけても、アリスは一向に返事をしない。それでもただ魔理沙は続ける。 「今日は天気がいいな。ここからだと、町並みが一望できていいな。桜が綺麗だぜ」  魔理沙は尚をも話しかける。彼女の瞳には、アリスしか写っていない。 「なぁ、私、とっても楽しい夢を見たんだ。夢の中では皆仲がよくてな。私とお前は魔女でさ、同じく魔女で、凄いでかい図書館を持ってる パチュリーと一緒に、本を読んだりお茶したりするんだぜ。レミリアや咲夜達もついでに一緒にな。そこで私が本を借りたりして。霊夢がいる 神社で皆で馬鹿騒ぎして、弾幕ごっこって遊びでなんでも決めるんだ。より美しい方が勝ちなんだぜ。輝夜はお姫様で、妹紅といっつも 喧嘩ばっかしてさ。すっごい、すっごい楽しかったんだ……なぁアリス、もしかして、お前はそっち側にいるんじゃないのか? もしかして、 こっちの世界が夢でさ、そっちの世界が本物だったりしてな……だったらさ、アリス。はやく私も起こしてくれよ……こんなゴミゴミした 何の面白味もない幻想郷なんかつまらないぜ。はやく、私を元の幻想郷に戻してくれよ。な、アリス……」  魔理沙は消え入るような声でそう言うと、アリスの胸にゆっくりと顔を埋めた。 『患者番号三十二番、霧雨魔理沙  極めて特異な妄想(妄想の内容は別資料参照)を抱いており、  現実を夢と認識している。    原因としては、友人の自殺未遂によるものと思われる。    患者は非常に危険な状況であり、下手に刺激をすれば精神に  さらなる異常を来す危険がある。    冷静な対処と治療が必要である。  備考:自殺未遂をした患者の友人との接触は週に一回として      おくこと。     投薬については別資料参照。                                 』  ~東方学園、終~ ---- 幻想郷が誰かの夢オチとか妄想オチとかって素敵だと思いません? どうでもいいけど私はてるもこよりかぐえー、アリマリよりアリパチュの方が好き。 ---- - バッドエンドに見えたがそんな事は無かった &br()いいハッピーエンドだわ -- 名無しさん (2010-04-04 17:22:53) - 主役が輝夜と妹紅か &br()いいラストだった -- Aーfd (2010-04-04 17:38:45) - 神綺様ぁぁぁあああ! -- 名無しさん (2010-04-04 18:09:35) - なんという大どんでん返し -- 名無しさん (2010-04-04 18:48:59) - ヤッパリ最後はハッピーエンドが最高だぜ!!!作者お疲れ様でした、そしてありがとう!!! &br() -- 外道 (2010-04-04 19:18:16) - しんきさま・・・・・・・・・ちくしょう &br()どうしようにもならない救いの無さがやけにリアリティだったぜ。 &br()が、終わりはなんともいえぬさわやかさ。鬱エンドじゃなくて本当に良かった。ありがとう! -- 名無しさん (2010-04-05 23:10:32) - お前らのコメを見てやはりこのまとめウィキを見に来る住人は格が違うことが分かったw -- 名無しさん (2010-04-06 00:41:28) - これはハッピーエンドと言えるのだろうか・・ -- 名無しさん (2010-04-06 18:44:14) - ↑バッドエンドを想像してみたらいかにこれがハッピーか分かる -- 名無しさん (2010-04-06 19:07:49) - 自殺未遂はアリスのほうだったかぁ &br()ハッピーエンドでなにより -- 名無しさん (2010-04-06 20:46:28) - アリスが戻らないとハッピーエンドなんか言わせないんだからっ…うぅ… -- 名無しさん (2010-04-06 23:35:53) - ↑だそうです作者さん。その後の話みたいな感じでもうちょっと書いてみてわどうでしょうか?リクエストを希望します。 -- 外道 (2010-04-06 23:51:21) - いい話(?)なのにおぜうさまで吹いてしまったじゃないか -- 名無しさん (2010-04-07 03:12:45) - ↑↑無駄なもねは要らない。 &br()若しくは話がつまらなくなるから要らない -- 名無しさん (2010-04-07 07:12:55) - 結果的にレミリアとかも救われてるし良い話だった -- 名無しさん (2010-04-07 08:11:37) - うどんげが一貫して小物で噴いた -- 名無しさん (2010-04-07 21:46:17) - 魔理沙の最後の言葉で涙腺死んだ &br()願望が滲み出てて切なすぎるぜ・・・ -- 名無しさん (2010-04-07 23:21:55) - うどんげの扱い吹いたw &br()逃げ癖酷いもんなw -- 名無しさん (2010-04-09 07:27:46) - 明らかに神主の妄想だけどな! -- 名無しさん (2010-04-13 14:23:52) - ↑まさにその通りだw -- 名無しさん (2010-07-04 07:13:37) - 魔理沙……:: -- 名無しさん (2010-07-04 12:28:14) - てゐは美味しい役持っていくなぁ -- 名無しさん (2010-07-06 06:35:24) - アリスが自爆するかと思った -- 名無しさん (2010-07-24 02:22:26) - うわぁぁぁぁぁぁぁぁああ &br()つか幻想郷自体が妄想だとは -- 名無しさん (2010-08-06 15:04:34) - いやぁ、いいハッピーエンドだった。 &br()概ね救われたし、清々しい気分になった。 -- 名無しさん (2010-11-04 05:35:19) - おぜうさま幼児退行してるじゃないかwww -- 名無しさん (2010-11-05 17:03:30) - 子傘、フラン、美鈴、パチュリーはどうなったんだ &br()てかてゐが思ったよりいい奴 &br()輝夜と一緒にいる辺り少なくともうどんげよりはいい奴 -- 名無しさん (2011-05-15 01:29:00) - 新説:幻想郷は魔理沙の妄想 -- 名無しさん (2011-11-08 18:40:15) - うーwww -- 名無しさん (2013-01-22 22:49:46) - えーてるはきもい本気できもい -- 名無しさん (2013-07-10 18:33:03) #comment(vsize=2,nsize=20,size=40) 

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