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紅魔館炎上www その1:28スレ639」(2020/07/31 (金) 02:16:25) の最新版変更点

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※キャラ性格設定改変注意 ※グロ表現あり 今、紅魔館が炎上している。 炎は一気に燃え上がり、館はあっと言う間に火に包まれた。 夜だというのに空は真っ赤に染まり、秋だというのに真夏のように暑い。 既に避難した住人達は湖畔からその悪夢を見守っていた。 これはもう・・・消火は無理だ。 誰もがそう思っていた。 この炎は正真正銘、本物の地獄の業火。 全てを焼き尽くすまで、決して消えはしないだろう。 そもそもの原因は、この日一匹の地獄鴉が館に招かれたことにある。 この館の主は、地底の太陽と言われた彼女に興味を持っていた。 吸血鬼である主にとって、その天敵である太陽は一種の憧れのような存在だったのかも知れない。 が、それがまずかった。 その地獄鴉は圧倒的な力こそ持っていたが、それを扱うには余りに知能が低すぎた。 こともあろうに火力の抑え方を度忘れし、最大限のパワーを解放してしまった。 その超高温、超高圧に耐え切れず制御棒は崩壊。 数百メートルもの火柱が上がり、傍にいたメイド達を一瞬にして消滅させた。 一方、当の地獄鴉は「うにゅう」と不気味な音を立てながら床を融かし、地面へ沈んでいった。 恐らくブラジルへ行ったのだろう。 館には魔法による耐火処理がなされていたとは言え、無事で済む訳がなかった。 「報告します。妹様は地下室に、パチュリー様と小悪魔は図書館に、  その他、大勢のメイド達が館のあちこちに取り残されています」 「そう。そして助けに行けるのは私達だけという訳ね」 「早くしないと手遅れになりますよ!」 湖畔にいたのは紅魔館の主であるレミリアと、そのメイドの咲夜、そして門番の美鈴。 咲夜は、火の手が上がると真っ先にレミリアを連れて逃げ出した。 美鈴は、門番という役職のお陰で最初から館にはいなかった。 他には運よく逃げられたメイド妖精が数人程度である。 避難出来たのは、それだけしかいないのだ。 最重要人物であるレミリアが無事であるとは言え、大多数の住人達はまだあの火の中にいる。 一刻も早く彼女達を助け出さなければ。 「お嬢様、指示をお願いします!」 「妖精達は・・・見捨てなさい」 「・・・はい」 これは一見非情な選択の様だが、正しい判断だ。 雑多な妖精メイドの命など、愛しい妹や親友の命とは比べるべくもない。 そもそもどうせ死んだところで、その内また生き返るのが妖精だ。 命懸けで助けに行くことすら馬鹿馬鹿しくなってくる。 救助する者は決まった。 地下室のフランと、図書館のパチュリーと小悪魔だ。 しかしたった3人とは言え、今の館に飛び込んでいくのは極めて危険である。 特にフランの救助は非常に困難だ。 地下室は館の奥深くにあるからだ。 「そ、それでは私は妹様を、美鈴はパチュリー様と小悪魔を助けに!」 咲夜が叫んだ。 「はい!」 美鈴もそれに呼応する。 「私はどうするのよ?」 「お嬢様はここにいてください。中はとても危険です」 咲夜は主を守る、つもりだった。 「駄目よ、地下室には私が行く。図書館には美鈴が。咲夜はここで待ってなさい」 「え・・・?」 主から下された、まさかの待機命令。 全く予想だにしていなかった。 「3人で行くのなら分かります。ですが、何故私が残るのですか!?」 「人間のお前が一番死にやすい。傷も治らない。他に理由がある?」 「・・・危険なのは誰だって一緒です。私も行きます」 「お前が来なければ、お前を助ける手間が省ける」 「・・・・・・・・・」 もう咲夜の心情を気遣う余裕など無い。 そんな歯に衣着させぬ言葉の前に、咲夜は黙るしかなかった。 そして己の無力さを呪いながら、炎の中へ飛び込んでいく2人を見守った。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- 「パチュリー様、早く逃げてください! 今ならまだ間に合いますよ」 「嫌よ。ここを見捨てて逃げるなんて、私には出来ない」 「だって、死んでしまったら元も子もないではないですか!」 「とにかく術さえ間に合えばいいのよ。あんたも手伝いなさい!」 灼熱地獄と化した図書館に二人の悲鳴が響く。 既に図書館の外、館の地下廊下は火の海である。 何も二人はこのような事態になるまで、指を銜えて待っていた訳ではない。 散々、魔法による消火を試みてきた。 しかしどういう訳か火は一向に収まらない。 パチュリーは地獄鴉がやらかしたことは知らなかったが、この炎が普通の炎でないことはすぐに理解出来た。 せめて図書館とその蔵書は守り抜きたい。 館に見切りを付けた二人は、図書館全体に防火用の結界を張った。 だが、地獄の業火に長時間耐えられるような結界をこんな短時間で作れる訳がない。 結界の限界は近く、既に幾つかの本棚が燃え出していた。 追い詰められたパチュリーは最後の策として、図書館ごと外に転移させようとしている。 それならば本も自分の命も助かる。 しかし、この巨大な図書館を移転させるには、明らかに時間が足りないのだ。 どう考えたって、間に合う筈が無い。 そこで小悪魔は本を諦めて逃げることを勧めていた。 「もう、どうやったって術は間に合いません! パチュリー様も分かっている筈です!」 「私がここを捨てて、一人で逃げられるような奴だと思ってるの!?」 逃げろと言う小悪魔に、嫌だと言うパチュリー。 今は言い争いをしているような状況じゃないのに。 バタンッ!! その時、ドアが勢いよく開け放たれた。 「二人とも! 無事ですか!?」 そこに美鈴が現れた。 「め、美鈴さん! 助けに来てくれたんですか?」 「ええ、妹様の方はお嬢様が行ってる。早く脱出しましょう」 美鈴の両手は赤黒く変色しており、血が滴っていた。 ここまで来るのに、気で炎を吹き飛ばして道を作っていたのだから無理も無い。 顔にも大きな火傷の痕があり、自慢の赤いロングヘアーも焼き縮れている。 更に小悪魔は、彼女の手が拳を握ったまま開かないことに気が付いた。 ドアを閉める時に、両手のグーでノブを挟むようにして閉めていたからだ。 きっと火傷でくっ付いてしまったのだろう。 「助けに来て貰って悪いけど・・・あなた一人で逃げてよ。私はここを守らなくちゃいけない」 それでもパチュリーは依然として図書館を見捨てるつもりは無かった。 「お気持ちは分かりますが、そんな事言っている場合じゃないです。行きましょう」 「何よ! 私がどれだけ・・・ぐぅ」ドサッ 台詞を言い切る前に、パチュリーは倒れた。 その後ろには、分厚い百科事典を持った小悪魔がいた。 「ごめんなさい、パチュリー様。でもこれしかなかったんです」 あくまで強情な彼女に、遂に強硬手段に打って出たのだ。 「さあ美鈴さん、早くパチュリー様を外へ・・・」 「うん、分かったわ、こあ」 小悪魔はパチュリーを抱えあげようとしたが・・・ 「駄目・・・頼むから・・・」 何とパチュリーは気絶していなかった。 「お願いよ・・・どうか私を放って置いて。お願い」 「ですが、お嬢様はパチュリー様を助けろと・・・」 「我侭なのは分かってる。レミィも館を失った。だけど、それでも私は・・・」 美鈴は暫く考え込んでしまった。 想像以上に彼女の図書館への愛情は深かったのだ。 やがて美鈴はこう言った。 「分かりました。では、こうしましょう」 ドスッ!「おご・・・ぉぉおぅ!?」 美鈴の拳が、パチュリーの鳩尾へめり込んだ。 武術に精通した美鈴の渾身の当身、ひ弱な魔女に耐えられる訳が無い。 「ごめんなさい、パチュリー様。でもこれしかなかったんです」 「美鈴さん。早く、パチュリー様を」 「分かってる。急がないと」 今度こそ二人はパチュリーを連れ出そうとした。 しかし・・・ 「嫌、私・・・絶対にここから離れない」 パチュリーの手が、美鈴の右足を掴んでいた。 全く、何と言う執念だろうか? 何がこれほどまでに、彼女の脆弱な体を動かしているというのか? 「私はどうなっても構わない。だけどこの図書館は・・・ぐえっぇ!!」 美鈴にすがるパチュリーの後頭部へ、小悪魔の踵が落とされた。 「ごめんなさい、パチュリー様。でもこれしかなかったんです」 「パチュリー様は私が背負って行くから、手伝って!」 「はい!」 両手が開かなくなった美鈴の代わりに、小悪魔がパチュリーを抱え上げた。 そして美鈴の背中に乗せて、紐でグルグル巻きにして固定した。 これなら美鈴も思う存分、拳を使うことが出来る。 「もう時間が無いです! 早く!」 小悪魔がドアを開け放った。 そして美鈴が外へ飛び出そうとした、その時・・・ 「待って、わた・・・うげっ!」 美鈴の後頭部ヘッドバットがパチュリーの顔面にヒットした。 「ごめんなさい、パチュリー様。でもこれしかなかったんです」 何だかんだで無駄な時間を費やしてしまったが、ようやく脱出することが出来そうだ。 図書館の外の通路は既に火の海になっていた。 「はぁぁぁぁぁぁぁ・・・やぁぁ!!!」 美鈴が掛け声と共に正拳を突き出す。 すると拳から迸った気が炎を掻き消した。 一時的ではあるが、道が出来たのだ。 「今の内に早く・・・」 美鈴は振り返り、小悪魔に脱出を促した。 しかし・・・小悪魔は首を横に振った。 「こあ・・・? 何してるの?」 「実はですね、私は図書館から出られないんですよ」 「え、嘘・・・?」 図書館司書としてパチュリーに召還された小悪魔は、契約上図書館から離れられないことになっていた。 そう言えば、小悪魔はいつも図書館にいた。 パチュリーが守りたかったのは、本だけではなかったのだ。 「それじゃ、つまりあなたは・・・」 「あはは、困りましたね。100年契約ですから解約も出来ませんし」 小悪魔は軽く笑って見せた。 「さあ、どうせ助からない私のことなんて放って置いて。  早くしないと美鈴さんもパチュリー様も死んでしまいますよ?」 「こあ・・・・・・」 美鈴が迷っている間にも、廊下は再び火に包まれつつあった。 逃げ道はだんだんと狭まって来ている。 悲しいけど、美鈴が取れる行動はこれしかない。 「ごめんなさい!」 一人残った小悪魔を見捨てて駆け出した。 美鈴が一度だけ振り返ると、炎の向こうで小悪魔が手を振っていた。 やはり笑いながら。 その頃、レミリアも妹のいる地下室に辿り着くことが出来た。 しかし妹を一目見て、最悪の事態になりつつあることを理解した。 「うわぁぁぁぁ! やだ! 怖いっ、助けて! 助けてっっ!!」 妹は恐慌状態になっていた。 考えてみれば当然だ。フランは火事など体験したことも無ければ、遠巻きに見たことさえ無い。 辛うじて本で読んだことがあるか無いかくらいだ。 まして、どうして火事が起こっているのか、それを知らない。 部屋で大人しくしていたら、いつの間にか炎に囲まれていたのだろう。 しかし、レミリアは我を失った妹がどのような者であるか、誰よりも良く知っている。 とにかく、手に負えないなんてものではない。 現に今、目の前の物を手当たり次第に破壊しているではないか。 いくら魔法で特別に強化されているとは言え、 この火災とフランの攻撃の中で部屋が崩壊していないのは正に奇跡としか言いようが無い。 こいつを外まで連れて行くことを考えると、眩暈がしそうだ。 「お、落ち着きなさい! 私が助けに来たわよ!!」 「嫌ぁ! 怖いっ! 怖いっ! 怖いっ!」 とりあえずは落ち着かせようと、妹に抱きついた。 それでもフランは陸に上げられた魚の様に暴れ続ける。 そんな事をしている間にも、火は益々強くなっていく。 「うわぁっ!?」 レミリアは吹っ飛ばされてしまった。 なおもフランは暴れ続ける。 「お姉様ッ! お姉様ッ! 助けてよっ!!」 「私はここにいるよ! もう大丈夫だから、落ち着いてよ! フラン!!」 今のフランは、目の前のものも碌に見えていないらしい。 そして遂に、部屋は限界を超えてしまった。 「うわぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」 轟音と共にフランの部屋は崩れ去った。 「フラン・・・?」 今、レミリアの目の前には瓦礫の山。 そして周りは一面、火の海。 それと・・・ 「ああああああっっっ!!! 熱いよ!! 熱いよっ!!! 熱いいぃぃっ!!!!!」 瓦礫の下で火達磨になったフランがいた。 全身を焼かれながらのた打ち回り、悶え、泣き叫ぶ。 そんな妹の姿を見て、レミリアは覚悟を決めた。 不思議と死ぬのは怖くなかった。 「待ってて! 今助けるから!!」 まず瓦礫を蹴り上げ、妹を引っ張り出す。 次に火を消してやろうとしたが、服や砂を被せたくらいでは消えやしない。 そこで火達磨のまま、妹を抱え上げて脱出することにした。 フランの体を包み込んでいる炎が、レミリアにも引火した。 熱い。しかし、レミリアは歯を食い縛って耐えた。 更なる狂乱に陥ったフランが腕の中で暴れる。 フランの右手の爪が、レミリアの背中を深く抉る。 フランの左の拳が、レミリアの鎖骨を砕く。 痛い。しかし、レミリアは泣きながらそれに耐えた。 暫く走っていると突然目の前の天井が崩れ、二人の行く手は塞がった。 レミリアはフランを降ろし、モグラの様に素手で穴を掘り出した。 熱で脆くなっていたのか、爪がベリッと剥がれた。 口から絶叫が漏れ、双眸から大粒の涙が溢れ出す。 それでも穴を掘り続けた。 本来は爪の下にある柔らかい皮膚で硬い土砂を掘り出す。 いつしか、レミリアは子供の様に泣いていた。 そして指の肉が削げ落ち骨の先端が見え始めた頃、穴はようやく向こう側へと繋がった。 急いで妹を担ぎ、その穴に入る。 しかし、もう少しで潜り抜けられるというところで、前に進めなくなった。 どうやら自分の羽が引っかかってしまったらしい。 レミリアは大きく息を吸い込み、そして全身を前に押し出した。 「~~~~~っっ!!!」 ブチッブチッ! という音がして、彼女の羽は引き千切られた。 そうして穴を抜けた彼女は、再び妹を連れて燃え盛る廊下を走っていった。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- 「あややややや、特ダネ! 特ダネですよ!」 「文さん、そんなに近付くと危ないですよ」 闇夜を明るく照らす紅魔館。 その周りを、街灯に引き寄せられた羽虫の様に飛び回る2つの影があった。 この大火災の一報を聞き付けてやって来た天狗達だ。 カシャ! カシャ! カシャ! 「椛! 新しいフィルムをお願いします」 「は、はい」 「これは帰ったらいつもの3倍は刷らないと足りませんよ。今月の新聞大賞は私のものですね!」 夢中でカメラのシャッターを押し続ける射命丸。 今夜の彼女は、フィルムを残すつもりなど一切無い。 全てこの一大スペクタルを撮るのに使うつもりでいた。 いささか近付き過ぎたのか、炎に面した肌がじりじりと火傷しそうなくらいに熱い。 翼に火の粉が降りかかり、引火してしまうのではないかと椛は心配していた。 それでも射命丸は更なる迫力を求め、熱ににじり寄っていく。 「ははは、明日が楽しみです。私の新聞見てみんな度肝を抜かしますよ!」 「はあ・・・」 椛は新聞が売れるかどうかはともかく、それを読んでも驚く奴はいないと思った。 今、湖畔に出来ている人だかりを見れば。 「すみませーん、ビール追加で!」 「はーい」 「こっちは焼酎と串焼き」 「は、はい。今すぐお持ちしますね」 夜雀が必死に働く。 商機とばかりに屋台と共に馳せ参じたが、まさかこんなに人妖達が集まるとは思っても見なかった。 休む間もありゃしないし、明日はまた酒や食材の買出しに行かなければならないだろう。 お陰で既に通常の一か月分の売り上げを稼ぎ出してはいたが。 「ワハハハハハ! 凄いなー。これを消すのは、流石に私でも無理かなー?」 と、へべれけになった子鬼。 「わあ! 見てくださいよ、神奈子様、諏訪子様。こんなの外の世界でも見たことありませんよ」 「ああ、そうだね早苗」 「うちの神社にもこれくらい人が来たらいいのにね」 たった今、到着した守矢神社の風祝と二柱。 「花見で一杯もいいですが、こういうのも悪くないですね。紫様」 「でも前に高層ビルに飛行機が突っ込んだ時なんか、もっと凄かったわよ?」 「妖夢、焼きそばおかわり」 「幽々子様、いい加減にして下さい」 スキマ妖怪と、その親友の亡霊達もいた。 「何よ! 無理だって言うの!?」 「無理、無理」 「無理なのかー」 「畜生! だったら見てなさい、本当に・・・」 「駄目だよ! チルノちゃん、落ち着いて!」 「止めないでよ大ちゃん! あんなの、私が氷付けにしてやるんだから!」 友人達に挑発された氷妖が無謀にも館に突っ込もうとしている。 保護者役の大妖精がそれを力尽くで止めていた。 「ハハハハハハ!! 飲め! 飲め!」 「もっと酒持って来い!!」 他にも名も無き人間や妖怪達が多数。 ここには幻想郷中から野次馬達が集まっていた。 真夜中、紅魔館の方角の空が急に明るく赤くなったのを見た為だ。 レミリアの日頃の行いのせいだろうか。 いけ好かない彼女の館が燃えるのは、日々刺激に飢えている彼らにとっては最高の娯楽になった。 悲しいかな、この悲劇の目の前で大宴会が催されている。 「師匠、応急処置が終わりました」 「お疲れ様、うどんげ」 一方、永遠亭の薬師達は浮かれてなどいなかった。 仕事の為にやって来たのだが、夜雀の様に金が目当てではない。 人命救助という尊い使命があるのだ。 「それで、患者の容態は?」 「ええ。急性アルコール中毒のようです。水をたらふく飲ませて安静にさせました」 「・・・全く。火事だと聞いたから急いで来たのに、どうして酔っ払いの看護なんか・・・」 「酔い止めの薬なんて持って来てないですしね」 本来なら火災があれば救急患者でごった返している筈だ。 しかしこの時は違った。 何しろ、現場から脱出しているのはほぼ無傷のメイドが数名のみ。 残りは全て炎の中。故に死者は多いが、重傷者などいない。 泥酔者や酔っ払いの喧嘩で怪我を負った者達の面倒を見る羽目になった。 「もう帰りましょうか? 救急患者もいないようですし・・・」 「駄目よ。これから運び出される人がいるかも知れない」 「ですけど・・・あれじゃ・・・」 優曇華院が燃え盛る館を見つめる。 もう、いつ崩壊してもおかしくないような状態だ。 生存者など期待出来そうも無い。そう考えていた。 「霊夢! お前も来ていたのか!?」 「魔理沙! それに・・・咲夜!」 周囲の様子を探っていた霊夢は、魔理沙と咲夜を見つけることが出来た。 霊夢がここにいるのは、勿論火事の見学の為などではない。 おかしな空を見て、またレミリアが馬鹿な異変を起こしたのではないかと思ったからだ。 これは異変では無かったが、紅魔館に起きていることを知って大いにショックを受けた。 魔理沙の方は、完全に興味からここに来た。 しかしこんな大惨事が起きているとは予想だにしていなかった。 そして湖畔で呆然と立ち尽くす咲夜を見つけ、彼女を励ましつつ一緒に館を見守っていたのだ。 「つまり・・・皆、まだあの中にいると・・・?」 「そうよ。本当は私も助けに行きたかったけど・・・」 「まあ、あの連中のことだ。滅多な事じゃ死にやしないさ」 二人は咲夜の友人であり、紅魔館の住人達とも親交が深い。 他の野次馬どもとは比べ物にならないほど、咲夜の話に親身になって聞いてくれた。 「レミリアの判断は正解ね。あなたじゃ時間を止めたところで、入った瞬間に丸焦げよ」 「だからね、マスタースパークで火を吹き飛ばして・・・」 「そんなことしたら、完全に崩壊するぜ? とどめを刺すつもりか?」 「崩壊する前に私が時を止めて助けに行くのよ」 「そんな上手く行けばいいけどね、火が消えたところに誰もいなかったらどうするの?」 咲夜はずっと、こんな感じだった。 幾度となく助けに行こうとして、その度に魔理沙や霊夢に止められていた。 「とにかく、奴らを信じてここで待つんだ。私達にはそれしかない」 「でも、もしも誰も戻って来なかったら・・・私は一人ぼっちじゃない・・・」 「馬鹿言わないでよ! 私だって本当はレミリア達を助けた・・・」 「お~い。霊夢~、お前は飲まないのか~?」 その時、霊夢の背後から素っ頓狂な声が聞こえた。 「萃・・・香?」 酔っ払いの子鬼に見付かったらしい。 「こっちはもう、出来上がってるぞ~。お前も ヒック 飲め~」 これだから酒乱は性質が悪い。 萃香も本当はこんな場で宴会など、不謹慎だと分かっていた。 だが、あたりに漂う宴会の雰囲気に抗える彼女ではない。 ついつい酒に手を出し、終いにはこの有様だ。 「萃香、悪いけどあっち行って」 「何だ~? ウィック 今日は随分つれないじゃないか~?」 「・・・ごめんなさい、咲夜。こいつ、酔っ払ってるのよ」 「・・・・・・」 「いい? 今はあいつらを信じるのよ。レミリアだって伊達に・・・」 「あ~ん、霊夢! あなたも来ていたのね!?」 「うわぁ!?」 正に神出鬼没。スキマ妖怪が突然、後ろから霊夢に抱きついてきた。 「会いたかったわよ~、れいむぅ~。あの火事見てたら・・・ゆかりん、怖くなっちゃった!」 「ば、馬鹿! 止めなさいよ、紫!!」 「・・・・・・」 「咲夜! こんな奴、放っておきま・・・」 「あれ~? れいむひゃんでわぁ~、ないれふかぁ~?」 「早苗・・・?」 顔は真っ赤、目は虚ろ、その歩みは千鳥足。 完全無欠の泥酔者となった早苗が、そこにいた。 下戸の癖に調子に乗って飲み続けた結果がこれだ。 「もひかひて、れいむひゃんもぉ、のみにきたんれふかぁ~?」 「そ、そんな訳が無いじゃない!!」 「あれぇ~? はは~ん、さてはしんこうをあつめようってぇ、こんたんなのれふねぇ~」 「この馬鹿・・・」 「れもあまいれふよ~? こんなかじ、わたひのきせきをつかえばぁ~  ・・・・・・  ・・・・・・  ・・・・・・  うぷっ!  おぐぉぉぉぉぉぉ!! ごばぁぁぁぁぁ!! ぐへぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!  うげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!」」 ビチャビチャビチャビチャビチャビチャ・・・・・ 「・・・・・・」 「その・・・何だ、咲夜。お前の今の気持ちは、良く分かる。でも・・・」 「あやややや、咲夜さんじゃないですか!?」 「・・・!?」 追い討ちとばかりに、そこへ天狗がやって来た。 「まいど! 清く正しい射命丸です! 2,3聞きたい事があるのですが?」 「・・・・・・」 「ズバリ! 今のお気持ちは!?」 「・・・・・・」 「出火元は何なんでしょうか?」 「・・・・・・」 「まだ中にレミリアさん達が取り残されているそうですが、本当なのでしょうか?」 「・・・・・・」 「メイドのあなただけがここにいるというのには、何か訳が・・・?」 「・・・・・・・・・」 「咲夜、泣いていいのよ・・・泣きなさいよ・・・」 「・・・・・・・・・ぅ・・・ぅぅぅ・・・」 「おい! あれ見ろよ!」 突然、魔理沙が声を張り上げた。 炎上する館の玄関を指差している。 見れば、誰かが中から出て来たではないか。 それはパチュリーを背負った美鈴だった。 咲夜、魔理沙、永琳、射命丸らが彼女に駆け寄る。 「美鈴! 無事だったのね!?」 「パチュリー、大丈夫か!?」 「どきなさい! 今すぐ手当てをするから!!」 「清く正しい射命丸です! 九死に一生を得た訳ですが、今のお気持ちは・・・?」 こうして救助された二人は、永琳の手によって応急処置がなされた。 咲夜達がそれを見守る。 「あの・・・二人は助かるのですか?」 「門番は助かると思う。でも魔女の方はかなり悪いわね」 「そうですか・・・」 「二人とも永遠亭に運ぶわよ。ここじゃまともな治療が出来ない」 「・・・咲夜さん?」 その時、美鈴がそう呟いた。 「美鈴!?」 「こら! 安静にしていなさい!」 「質問します! 中の様子はどうだったのですか!?」 美鈴は永琳と射命丸の言葉を無視し、咲夜と話を始めた。 「ごめんなさい。こあは・・・助けられませんでした」 「そう・・・」 「お嬢様と妹様は・・・?」 「・・・まだ出て来てないわ」 「まだ・・・ですか・・・?」 それからすぐに、美鈴とパチュリーは永遠亭に運ばれていった。 咲夜は付き添いで付いて行きたかったが、レミリア達が残っている以上そうもいかない。 代わりに魔理沙と、生き残ったメイド妖精達が行った。 「レミリアのことも気になるわね」 「お嬢様、妹様・・・」 残された咲夜と霊夢はレミリア達の無事をひたすら祈り続けていた。 しかし、どれだけ待っても彼女達は一向に現れない。 一分一秒ごとに可能性は狭まっていくと言うのに。 そして美鈴達の救出から20分ほどした頃・・・ 「もう、駄目ね・・・」 「咲夜・・・!?」 遂に咲夜が音を上げた。 「いくら吸血鬼でも、燃え尽きて灰になったら助からない・・・」 「ちょっと・・・」 霊夢は黙り込んでしまった。 探していた。少しでも希望が持てそうな、そんな言葉を。 そして二人に長い沈黙が訪れた。 「あのさ、上手く言えないけどレミリ・・・」 霊夢がようやく言葉を紡ぎだしたその時・・・ 「おぉぉぉぉ! 見てみろよ!! あれ!」 野次馬どもから歓声が上がった。 それに反応して振り返った咲夜達が見たものは・・・ 轟音と共に崩壊していく紅魔館だった。 「おー本当に崩れた!」 「いやぁぁん、怖いわぁ! 幽々子!!」 「すごいれふねぇ~、かなこさま、すわこさま」 「椛! 今の撮れましたか!?」 クライマックスを目にして、暢気な観客達のボルテージは一気に跳ね上がった。 しかし、そんなものは傍観者の感想。 当事者にとっては悪夢以外の何者でもない。 「嘘・・・嘘、よね?」 「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」 霊夢は放心し、咲夜は泣き崩れてしまった。 「どうして!? どうしてよ!? 何で私より先にお嬢様が死ななきゃいけないの!?」 「レミリア・・・こんなこと、信じられない・・・」 「!? 待って、咲夜! あれを見て!?」 霊夢がそう言って、依然として燃え続ける紅魔館跡を指差した。 「おい! 何だ、あれ?」 「こっちに来るぞ!!」 なんと灼熱の炎の中から火の玉が一つ、飛び出してきた。 走るように、転がるようにして、湖へ一直線に向かっていく。 「咲夜、あれって・・・」 「も、もしかして・・・」 そして火の玉は湖に到達した。 ざぱんっ! と水に飛び込み、じゅぅぅぅ・・・と熱の冷める音がした。 咲夜と霊夢は当然、それを追いかけて湖に入る。 「いたわよ!」 深夜であったが、火事のお陰で明るかったのが幸いした。 すぐに湖に落ちたそれを霊夢が見つけ、抱え上げる。 髪も顔も全身余すところなく丸焦げだったが、確かにそれは人の形をしている。 「ちょっと! あなた、ひょっとして・・・」 「うん・・・霊・・・夢?」 変わり果てた姿でも、声だけはそのままだ。 これは間違いなくレミリアだ。 「レ、レミリア!?」 「お嬢様! ご無事でしたか!?」 「ああ・・・咲夜? 私より、早くフランを・・・」 「妹様もいるのですか・・・?」 「このあたりに・・・浮かんでいると思うから・・・」 咲夜は急いでフランを探し始めた。 だが、決して暗くは無いと言うのにフランらしき人影は見付からない。 まさか湖底に沈んでしまったのだろうか? そう考え始めた頃、水面を探る指先に何かが当たった。 大きさは赤子より少し大きいくらいだろうか? 真っ黒な炭の塊が浮かんでいた。 「これが・・・妹様?」 「ごめんなさい。そんなにしてしまって。でも、まだ中は生焼けだと思うから・・・」 咲夜がその炭塊を優しく指で撫でる。 すると表面がボロリと崩れ、中から赤黒い肉が姿を現した。 微かにその肉が脈打っているのも分かる。 これは吸血鬼が復活するには十分な大きさだろう。 「妹様・・・!」 咲夜は思わずそれを抱きしめた。 妹も救出され、安心したレミリアは・・・ 「・・・ありがとうね、霊夢」 「何よ?」 「あなた、来てくれてたのね・・・」 「魔理沙も一緒よ。まあ、私はあんたが死ぬとは思ってなかったし・・・」 「うん、それでこそ霊・・・」 「あやややややや、もしかしてレミリアさん!?」 「れみりあひゃん、こんなんなちゃったんれふかぁ~?」 「これじゃ、誰なのか分からないわねぇ」 「でも、これで生きてるんだから凄いよなー」 何もしてくれない癖に好奇心だけは強い、どこまでも物好きな野次馬達が集まってきた。 「ほ、ほら、どきなさいよ! 今すぐこいつらを永琳のところに運ぶんだから」 霊夢が野次馬を追い払う。 「レミリアさん、質問です! 今のお気持ちを率直にお願いします!!」 「あ! こらっ!!」 しかし射命丸は霊夢の制止を聞かず、強引にインタビューを始めた。 「やはり不死身の吸血鬼と言えど、今回ばかりは危なかったのですか?」 「・・・うるさい」 「全身を火傷されているようですが、辛いのですか?」 「決まってるでしょうが・・・」 「命は助かったものの、紅魔館を消失してしまいました。それについてはどうですか?」 「あ・・・」 「紅魔館はとても歴史ある建物だった訳ですが、当主として、その責任については?」 「うぅぅ・・・嫌ぁ・・・・・・ああ・・・」 「見たところ手ぶらですが、財産などは持ち出せたのでしょうか?」 「ぁ、ぁ・・・ぁ・・・ぁぁぁあ・・・・・・」 「ズバリ! 明日からどうやって生活していくのですか!? その計画などは・・・?」 「ぅぁ・・・」 レミリアは白目を向いて気絶してしまった。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- 「う、ん・・・」 「フラン! 気が付いたのね!?」 「え、お姉様? ここは・・・?」 フランが3日ぶりに目を覚ますと、見知らぬ病室にいた。 ベッドから起き上がろうとするも、体が動かない。 よく見れば自分の体から手足が無くなっていた。 彼女にとって最後の記憶は、自分の部屋で遊んでいたら急に焦げ臭くなったこと。 当然、自分に何が起きたのか、さっぱり分からなかった。 「おうちが・・・火事になっちゃったの?」 「そうよ。本当に危なかったんだから」 「妹様の回復力には、永琳もびっくりしていましたよ。蓬莱人の癖に」 レミリアと咲夜から、事の顛末を聞かされた。 ショッキングな内容ではあったが、姉が命懸けで自分を助けてくれたことにはとても感謝した。 次にフランが気になったのは、紅魔館の他の住人たちの安否だ。 「それで・・・みんなはどうしたの?」 「妖精達は殆ど全滅です。ですが、復活するので心配はいりません」 「うん・・・」 「美鈴は無事よ。ここに入院してるけど、すぐに良くなるって」 「本当!? 良かった・・・」 「ですが、小悪魔は死にました」 「こあが・・・死んだ・・・?」 「それとパチェだけど・・・助かった。助かったけど・・・」 「・・・? どうしたの?」 「まだ目が覚めてないのよ。とても危険な状態だって、医者は言ってた・・・」 「・・・そんな・・・!?」 「それと、目覚めたばかりで悪いけど、大事な話があるの。ちょっと来てくれる?」 フランは咲夜に抱えられ、隣の病室へ移動した。 そこは美鈴とパチュリーがいた。 美鈴は全身包帯姿だったものの、意識もハッキリとして元気そうだ。 しかしパチュリーは・・・死んだように動かない。 人工呼吸器と点滴を付けられベッドに寝かされた姿は、見るからに痛々しい。 「パチェ・・・」 「ずっと、こんな感じです。何度呼びかけても反応がありません」 「全身火傷に全身打撲、脳震盪に内臓破裂、後頭部陥没に鼻骨骨折・・・他は覚えきれませんでした」 「すみません・・・私がもっとしっかりしていれば・・・!」 「美鈴・・・そんなこと言わないで。あなたは本当によく頑張ってくれたわ」 本来なら、生きて再会出来たことを喜び合う筈だった。 しかし現実はそうも甘くは無い。 更に、もっと現実的で大きな障害が彼女達の目の前に立ちはだかっていた。 「それで・・・咲夜、今の私達の状況は?」 「はい。紅魔館は全焼しました。そして財産も全て一緒に燃えてしまいました。  しかも、紅魔館跡の炎は依然として燃え続けています。あと数百年は消えないそうです。  焼け跡から貴重なものを掘り出そうと考えてましたが・・・それも無理です。  昨日、延焼防止のために霊夢と一緒に周辺の木々を伐採しておきました」 「つまり、私たちは・・・」 「一文無しです。私以外は、着る服さえありません」 レミリアは大きくため息をついて椅子に腰掛けた。 そして力なくこう呟いた。 「一文無し・・・ね。まさか名門貴族の私が、そんなことになるなんて・・・」 「・・・それと生き残ったメイド妖精達ですが、解雇しました。残したところで役には立たないでしょう」 「妥当な判断ね。今の私には部下を養うような余裕は無いし」 「お姉様、これから私達どうすればいいの?」 フランが不安そうに聞いて来た。 一夜にして全てを失ったのだ。 今まで館に守られて生きてきた彼女には、未来なんて想像出来なかった。 「これからね・・・働いてお金を貯めて、紅魔館を再建するのよ」 「・・・そんなこと、出来るの?」 「さあね・・・」 「当面の間は無傷の私が動きます。お嬢様はここで怪我人の看護をして下さい」 「何言ってるの? 咲夜、それに美鈴、あなた達もクビよ」 「えええ!?」 「どうしてですか!?」 「今、言ったでしょう? 部下を養うような余裕は無いって」 「そんな・・・」 「いい? 私と一緒にいるくらいなら、一人で生きていく方がずっといい。それくらい、分かるでしょ?」 「でも・・・あの時、私は何も出来ませんでした。せめて、これからお嬢様のお役に・・・」 「馬鹿ねぇ。従者の癖に、主を養うつもり? そんなことして、あなたに何の得があるのよ?」 「得とか、損とか、私はそんな事は考えてません」 「駄目よ。私なんか、さっさと見捨てて新しい人生を始めなさい」 「ですが・・・・・・」 「フラン、あなたも分かってくれるわよね」 「うん・・・分かってる・・・」 「さあ、これで決まりね。今までありがとう、咲夜、美鈴」 「・・・いえ! 私はお嬢様と一緒にいます!!」 美鈴がそう叫んだ。 「あんたねぇ・・・今の私の話、聞いてないでしょ?」 「私も・・・メイドを辞めません」 美鈴に触発されたのか、咲夜までそう言ってきた。 「あんた達、どうするつもりよ?」 「人里あたりで働いて、お金を貯めて・・・お嬢様と一緒に紅魔館を再建します」 「私も働きます! 今は動けませんけど・・・」 「だから! もう、私にはあなた達を雇えないのよ! だってお金が無いもの」 「でも、元々給金なんて無かったじゃないですか?」 「休みも無かったですし」 「でも! 食べ物も、着るものも、住む場所の世話も出来ないのよ!?」 「構いません」 「私も、構いません」 「その上、紅魔館を再建するお金まで貯めるなんて・・・どう考えても損じゃない!」 「私はお嬢様と妹様さえいれば、損なんてしませんよ」 「また、紅魔館の門の前に立ちたいんです」 「お姉様・・・私も、やっぱりみんなと一緒にいたい」 「フラン、あなたまで・・・」 「咲夜と美鈴に甘えちゃうみたいだけど・・・一緒に紅魔館に戻りたい」 「この、馬鹿・・・!」 「お嬢様、私達を・・・これからも傍に置いて下さいますか?」 「分かったよ・・・またよろしくね。私も、頑張るから・・・」 レミリア達の新しい日々が始まった。 いつかまた、紅魔館に戻れる日を願って・・・ -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- [[紅魔館炎上www その2:28スレ639]]へ続く - パッチェさんのくだりでこれはひょっとしてギャグなのか?と思ったけど、続くこあの話で泣きそうになった。 &br()野次馬共に怒りを覚えた。永遠亭の二人は他の連中との対比もあって良い奴らだと思えた。 &br() &br()ぱっちぇさんの怪我・・・ -- 名無しさん (2009-10-04 23:08:26) - 数百年炎上・・・・・ &br()サイレントヒルの元になった町じゃないか -- 名無しさん (2009-10-04 23:42:36) - なんでタイトルに草生えとんねん! -- 名無しさん (2009-10-04 23:51:32) - うぜぇ丸w &br() &br()こあ… &br()パチェはその為に拘っていたのか -- 名無しさん (2009-10-05 01:27:58) - パチェのケガの半分くらいが美鈴とかこぁのせいな件について。そしてお空が?過ぎるwww -- 名無しさん (2009-10-05 01:51:38) - パッチェさんwww &br() &br()どう考えてもww -- 名無しさん (2009-10-05 08:15:10) - 野次馬どもめ……リアルでもここまでは……いや、似たようなもんか? -- 名無しさん (2009-10-05 11:37:43) - レミリアはさとりに損害賠償を請求するべきだ -- 名無しさん (2009-10-05 15:51:59) - どう考えてもギャグだろww &br()不思議理論満載過ぎるwwwwwwww -- 名無しさん (2009-10-05 16:40:26) - とりあえず早苗と射命丸…もとい野次馬に殺意が -- 名無しさん (2009-10-05 20:33:32) - これはお空いぢめってことでOK? -- 名無しさん (2009-10-05 23:02:17) - これパチュ苛めだろ、可哀想だけど吹いたwww -- 名無しさん (2009-10-06 13:45:35) - 野次馬共は地獄の業火に焼かれちまえ。 -- 名無しさん (2009-10-06 21:15:44) - 射命丸や酔っ払い共、もとい野次馬達に怒りを覚えた &br()同時に霊夢や魔理沙、永遠亭の住人が良い人だと思った。 &br()パチュリーとこぁ&紅魔組の絆に泣いた(泣 -- 名無し (2009-12-30 01:47:04) - 野次馬については自業自得だと・・・ -- 名無しさん (2010-01-29 18:56:20) - 野次馬どもを見たとき本気で殺意が芽生えた……!! -- 名無しさん (2010-06-30 18:18:51) - おいうぜぇ丸w -- 名無しさん (2010-08-13 11:58:36) - 目から忠誠心が・・・ -- 名無しさん (2010-08-13 16:11:37) - 「ま、待って…ゴフゥっ!」 &br()だけでSS書けそうだなww -- 名無しさん (2010-08-13 17:08:07) - 「全身火傷に全身打撲、脳震盪に内臓破裂、後頭部陥没に鼻骨骨折・・・他は覚えきれませんでした」 &br()まあ皆だと思うが、なぜこうなったのか分かる人は挙手ー &br() -- 名無しさん (2010-12-03 09:23:30) - 紅魔館のみんながかわいそう・・・、野次馬は消えろ -- 名無しさん (2010-12-15 04:54:48) - いじめスレの文ってなんでこんなにウザいんだよwwww &br() &br() &br()感動した -- 名無しさん (2010-12-29 19:13:17) - めーりんの力ならパチュリーを健康な状態のまま &br()引っ張り出す事だってできただろwww &br()まあそれでその後の展開が良くなったかは微妙な所だが。 -- 名無しさん (2010-12-29 19:31:53) - それで霊夢と魔理沙が野次馬共を蹴ちらすんですね。分かります。 -- 名無しさん (2011-01-09 11:07:05) - タイトルに芝を生やすなww &br() -- 名無しさん (2011-05-23 09:47:00) - 野次馬マジワロス &br()常識にとらわれないにも程があるだろ早苗さんよ &br() &br() &br()まあ、地霊殿に損害賠償を要求すればOK -- 名無しさん (2011-06-12 22:16:58) - ごめんなさいパチュリー(ry &br()どんだけ言ってんだよw -- 名無しさん (2013-05-07 20:35:05) - w &br() &br() &br() -- q (2013-05-09 10:03:32) - 良い話だった 野次馬しね。あとパチュリーのくだりってギャグなの?いじめかと思った -- 名無しさん (2013-05-26 09:19:24) - 作者が新聞嫌いなのは伝わった -- 名無しさん (2013-05-31 06:47:52) - 霊烏路空ワロスゥゥゥゥ。パチュリーワロタァァァァ -- 動かぬ探究心 (2013-06-03 19:50:32) - 糞地底妖怪ども死ねついでに野次馬どもも地獄の業火に焼かれろ -- 名無しさん (2013-06-26 14:58:05) - マジで泣いた -- れいうた (2013-06-27 02:44:16) - 射命丸は一回爆発四散すべきだと思う -- yona (2013-07-26 15:22:27) - タイトルの「www」は要らないと思うんだが -- れいうた (2013-08-16 16:28:55) - あの野次馬どもの顔を壁に叩きつけて顔面の骨全部粉々にして湖に沈めてもいいかァァァァァ…?(黒笑) -- 名無(ry (2013-08-28 00:33:17) - 野次馬、射命丸に感謝。あの団結ゼロの基地外人食い巨人もどき集団を嘲笑してくれたことに感謝。 -- 風吹けば名無し (2013-11-17 02:03:00) - お空を招待したのがおぜう自身なのだから地霊殿に責任は無いのでは? -- 名無しさん (2014-03-31 03:41:58) - 何故にブラジル…? -- 名無しさん (2014-06-18 18:22:07) - いやはや、愉しげですね、人の絶望する姿を見るのは &br()蟲ケラから脚をもぎ取って息絶えるまで観察するときのような、初恋のような素敵な官能を覚えますな -- 名無しさん (2014-06-19 17:31:41) - 紅魔厨必死だねー。大嫌いな紅魔がこうなるのは最高だよ &br()野次馬サイコー!お空を連れてきたクソコウモリの自業自得やな -- 名無しさん (2014-12-15 03:24:01) - ネタ満載でクソワロタ -- 名無しさん (2014-12-19 10:50:56) - 感動。その一言だけ。 -- おぜうさま (2014-12-27 18:58:33) - さとり「飼い主の責任?ご冗談をwお空を紅魔館に誘ったのは他ならぬレミリアさんご本人でしょう?自業自得ですよ」 -- 名無しさん (2016-03-12 03:15:34) - ↑えーき「じゃああの地獄鴉は等活地獄…いえ、今回は沢山の者が亡くなったので阿鼻地獄行きで良いですよね?」 -- 名無しさん (2016-03-13 23:19:57) - 後日治療費入院費を永遠亭が請求するも払えず薬の被験者になりました &br()おわり -- 名無しさん (2016-03-14 04:42:51) - うぜぇ丸クソワロタw &br()(野次馬死ねw) -- 名無しさん (2016-03-15 17:08:58) - 緊急事態で質問をバカみたいに続ける射命丸…うぜえ -- 名無しさん (2016-04-15 22:03:05) - 紅魔勢必死だなって言ってる奴必死すぎワロタw -- 名無しさん (2016-04-29 19:56:39) - バカラスなウゼェ丸はジビエの刑だ! -- 名無しさん (2016-12-13 03:09:57) - こぁ -- 名無しさん (2018-02-17 23:01:53) #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)
※キャラ性格設定改変注意 ※グロ表現あり 今、紅魔館が炎上している。 炎は一気に燃え上がり、館はあっと言う間に火に包まれた。 夜だというのに空は真っ赤に染まり、秋だというのに真夏のように暑い。 既に避難した住人達は湖畔からその悪夢を見守っていた。 これはもう・・・消火は無理だ。 誰もがそう思っていた。 この炎は正真正銘、本物の地獄の業火。 全てを焼き尽くすまで、決して消えはしないだろう。 そもそもの原因は、この日一匹の地獄鴉が館に招かれたことにある。 この館の主は、地底の太陽と言われた彼女に興味を持っていた。 吸血鬼である主にとって、その天敵である太陽は一種の憧れのような存在だったのかも知れない。 が、それがまずかった。 その地獄鴉は圧倒的な力こそ持っていたが、それを扱うには余りに知能が低すぎた。 こともあろうに火力の抑え方を度忘れし、最大限のパワーを解放してしまった。 その超高温、超高圧に耐え切れず制御棒は崩壊。 数百メートルもの火柱が上がり、傍にいたメイド達を一瞬にして消滅させた。 一方、当の地獄鴉は「うにゅう」と不気味な音を立てながら床を融かし、地面へ沈んでいった。 恐らくブラジルへ行ったのだろう。 館には魔法による耐火処理がなされていたとは言え、無事で済む訳がなかった。 「報告します。妹様は地下室に、パチュリー様と小悪魔は図書館に、  その他、大勢のメイド達が館のあちこちに取り残されています」 「そう。そして助けに行けるのは私達だけという訳ね」 「早くしないと手遅れになりますよ!」 湖畔にいたのは紅魔館の主であるレミリアと、そのメイドの咲夜、そして門番の美鈴。 咲夜は、火の手が上がると真っ先にレミリアを連れて逃げ出した。 美鈴は、門番という役職のお陰で最初から館にはいなかった。 他には運よく逃げられたメイド妖精が数人程度である。 避難出来たのは、それだけしかいないのだ。 最重要人物であるレミリアが無事であるとは言え、大多数の住人達はまだあの火の中にいる。 一刻も早く彼女達を助け出さなければ。 「お嬢様、指示をお願いします!」 「妖精達は・・・見捨てなさい」 「・・・はい」 これは一見非情な選択の様だが、正しい判断だ。 雑多な妖精メイドの命など、愛しい妹や親友の命とは比べるべくもない。 そもそもどうせ死んだところで、その内また生き返るのが妖精だ。 命懸けで助けに行くことすら馬鹿馬鹿しくなってくる。 救助する者は決まった。 地下室のフランと、図書館のパチュリーと小悪魔だ。 しかしたった3人とは言え、今の館に飛び込んでいくのは極めて危険である。 特にフランの救助は非常に困難だ。 地下室は館の奥深くにあるからだ。 「そ、それでは私は妹様を、美鈴はパチュリー様と小悪魔を助けに!」 咲夜が叫んだ。 「はい!」 美鈴もそれに呼応する。 「私はどうするのよ?」 「お嬢様はここにいてください。中はとても危険です」 咲夜は主を守る、つもりだった。 「駄目よ、地下室には私が行く。図書館には美鈴が。咲夜はここで待ってなさい」 「え・・・?」 主から下された、まさかの待機命令。 全く予想だにしていなかった。 「3人で行くのなら分かります。ですが、何故私が残るのですか!?」 「人間のお前が一番死にやすい。傷も治らない。他に理由がある?」 「・・・危険なのは誰だって一緒です。私も行きます」 「お前が来なければ、お前を助ける手間が省ける」 「・・・・・・・・・」 もう咲夜の心情を気遣う余裕など無い。 そんな歯に衣着させぬ言葉の前に、咲夜は黙るしかなかった。 そして己の無力さを呪いながら、炎の中へ飛び込んでいく2人を見守った。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- 「パチュリー様、早く逃げてください! 今ならまだ間に合いますよ」 「嫌よ。ここを見捨てて逃げるなんて、私には出来ない」 「だって、死んでしまったら元も子もないではないですか!」 「とにかく術さえ間に合えばいいのよ。あんたも手伝いなさい!」 灼熱地獄と化した図書館に二人の悲鳴が響く。 既に図書館の外、館の地下廊下は火の海である。 何も二人はこのような事態になるまで、指を銜えて待っていた訳ではない。 散々、魔法による消火を試みてきた。 しかしどういう訳か火は一向に収まらない。 パチュリーは地獄鴉がやらかしたことは知らなかったが、この炎が普通の炎でないことはすぐに理解出来た。 せめて図書館とその蔵書は守り抜きたい。 館に見切りを付けた二人は、図書館全体に防火用の結界を張った。 だが、地獄の業火に長時間耐えられるような結界をこんな短時間で作れる訳がない。 結界の限界は近く、既に幾つかの本棚が燃え出していた。 追い詰められたパチュリーは最後の策として、図書館ごと外に転移させようとしている。 それならば本も自分の命も助かる。 しかし、この巨大な図書館を移転させるには、明らかに時間が足りないのだ。 どう考えたって、間に合う筈が無い。 そこで小悪魔は本を諦めて逃げることを勧めていた。 「もう、どうやったって術は間に合いません! パチュリー様も分かっている筈です!」 「私がここを捨てて、一人で逃げられるような奴だと思ってるの!?」 逃げろと言う小悪魔に、嫌だと言うパチュリー。 今は言い争いをしているような状況じゃないのに。 バタンッ!! その時、ドアが勢いよく開け放たれた。 「二人とも! 無事ですか!?」 そこに美鈴が現れた。 「め、美鈴さん! 助けに来てくれたんですか?」 「ええ、妹様の方はお嬢様が行ってる。早く脱出しましょう」 美鈴の両手は赤黒く変色しており、血が滴っていた。 ここまで来るのに、気で炎を吹き飛ばして道を作っていたのだから無理も無い。 顔にも大きな火傷の痕があり、自慢の赤いロングヘアーも焼き縮れている。 更に小悪魔は、彼女の手が拳を握ったまま開かないことに気が付いた。 ドアを閉める時に、両手のグーでノブを挟むようにして閉めていたからだ。 きっと火傷でくっ付いてしまったのだろう。 「助けに来て貰って悪いけど・・・あなた一人で逃げてよ。私はここを守らなくちゃいけない」 それでもパチュリーは依然として図書館を見捨てるつもりは無かった。 「お気持ちは分かりますが、そんな事言っている場合じゃないです。行きましょう」 「何よ! 私がどれだけ・・・ぐぅ」ドサッ 台詞を言い切る前に、パチュリーは倒れた。 その後ろには、分厚い百科事典を持った小悪魔がいた。 「ごめんなさい、パチュリー様。でもこれしかなかったんです」 あくまで強情な彼女に、遂に強硬手段に打って出たのだ。 「さあ美鈴さん、早くパチュリー様を外へ・・・」 「うん、分かったわ、こあ」 小悪魔はパチュリーを抱えあげようとしたが・・・ 「駄目・・・頼むから・・・」 何とパチュリーは気絶していなかった。 「お願いよ・・・どうか私を放って置いて。お願い」 「ですが、お嬢様はパチュリー様を助けろと・・・」 「我侭なのは分かってる。レミィも館を失った。だけど、それでも私は・・・」 美鈴は暫く考え込んでしまった。 想像以上に彼女の図書館への愛情は深かったのだ。 やがて美鈴はこう言った。 「分かりました。では、こうしましょう」 ドスッ!「おご・・・ぉぉおぅ!?」 美鈴の拳が、パチュリーの鳩尾へめり込んだ。 武術に精通した美鈴の渾身の当身、ひ弱な魔女に耐えられる訳が無い。 「ごめんなさい、パチュリー様。でもこれしかなかったんです」 「美鈴さん。早く、パチュリー様を」 「分かってる。急がないと」 今度こそ二人はパチュリーを連れ出そうとした。 しかし・・・ 「嫌、私・・・絶対にここから離れない」 パチュリーの手が、美鈴の右足を掴んでいた。 全く、何と言う執念だろうか? 何がこれほどまでに、彼女の脆弱な体を動かしているというのか? 「私はどうなっても構わない。だけどこの図書館は・・・ぐえっぇ!!」 美鈴にすがるパチュリーの後頭部へ、小悪魔の踵が落とされた。 「ごめんなさい、パチュリー様。でもこれしかなかったんです」 「パチュリー様は私が背負って行くから、手伝って!」 「はい!」 両手が開かなくなった美鈴の代わりに、小悪魔がパチュリーを抱え上げた。 そして美鈴の背中に乗せて、紐でグルグル巻きにして固定した。 これなら美鈴も思う存分、拳を使うことが出来る。 「もう時間が無いです! 早く!」 小悪魔がドアを開け放った。 そして美鈴が外へ飛び出そうとした、その時・・・ 「待って、わた・・・うげっ!」 美鈴の後頭部ヘッドバットがパチュリーの顔面にヒットした。 「ごめんなさい、パチュリー様。でもこれしかなかったんです」 何だかんだで無駄な時間を費やしてしまったが、ようやく脱出することが出来そうだ。 図書館の外の通路は既に火の海になっていた。 「はぁぁぁぁぁぁぁ・・・やぁぁ!!!」 美鈴が掛け声と共に正拳を突き出す。 すると拳から迸った気が炎を掻き消した。 一時的ではあるが、道が出来たのだ。 「今の内に早く・・・」 美鈴は振り返り、小悪魔に脱出を促した。 しかし・・・小悪魔は首を横に振った。 「こあ・・・? 何してるの?」 「実はですね、私は図書館から出られないんですよ」 「え、嘘・・・?」 図書館司書としてパチュリーに召還された小悪魔は、契約上図書館から離れられないことになっていた。 そう言えば、小悪魔はいつも図書館にいた。 パチュリーが守りたかったのは、本だけではなかったのだ。 「それじゃ、つまりあなたは・・・」 「あはは、困りましたね。100年契約ですから解約も出来ませんし」 小悪魔は軽く笑って見せた。 「さあ、どうせ助からない私のことなんて放って置いて。  早くしないと美鈴さんもパチュリー様も死んでしまいますよ?」 「こあ・・・・・・」 美鈴が迷っている間にも、廊下は再び火に包まれつつあった。 逃げ道はだんだんと狭まって来ている。 悲しいけど、美鈴が取れる行動はこれしかない。 「ごめんなさい!」 一人残った小悪魔を見捨てて駆け出した。 美鈴が一度だけ振り返ると、炎の向こうで小悪魔が手を振っていた。 やはり笑いながら。 その頃、レミリアも妹のいる地下室に辿り着くことが出来た。 しかし妹を一目見て、最悪の事態になりつつあることを理解した。 「うわぁぁぁぁ! やだ! 怖いっ、助けて! 助けてっっ!!」 妹は恐慌状態になっていた。 考えてみれば当然だ。フランは火事など体験したことも無ければ、遠巻きに見たことさえ無い。 辛うじて本で読んだことがあるか無いかくらいだ。 まして、どうして火事が起こっているのか、それを知らない。 部屋で大人しくしていたら、いつの間にか炎に囲まれていたのだろう。 しかし、レミリアは我を失った妹がどのような者であるか、誰よりも良く知っている。 とにかく、手に負えないなんてものではない。 現に今、目の前の物を手当たり次第に破壊しているではないか。 いくら魔法で特別に強化されているとは言え、 この火災とフランの攻撃の中で部屋が崩壊していないのは正に奇跡としか言いようが無い。 こいつを外まで連れて行くことを考えると、眩暈がしそうだ。 「お、落ち着きなさい! 私が助けに来たわよ!!」 「嫌ぁ! 怖いっ! 怖いっ! 怖いっ!」 とりあえずは落ち着かせようと、妹に抱きついた。 それでもフランは陸に上げられた魚の様に暴れ続ける。 そんな事をしている間にも、火は益々強くなっていく。 「うわぁっ!?」 レミリアは吹っ飛ばされてしまった。 なおもフランは暴れ続ける。 「お姉様ッ! お姉様ッ! 助けてよっ!!」 「私はここにいるよ! もう大丈夫だから、落ち着いてよ! フラン!!」 今のフランは、目の前のものも碌に見えていないらしい。 そして遂に、部屋は限界を超えてしまった。 「うわぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」 轟音と共にフランの部屋は崩れ去った。 「フラン・・・?」 今、レミリアの目の前には瓦礫の山。 そして周りは一面、火の海。 それと・・・ 「ああああああっっっ!!! 熱いよ!! 熱いよっ!!! 熱いいぃぃっ!!!!!」 瓦礫の下で火達磨になったフランがいた。 全身を焼かれながらのた打ち回り、悶え、泣き叫ぶ。 そんな妹の姿を見て、レミリアは覚悟を決めた。 不思議と死ぬのは怖くなかった。 「待ってて! 今助けるから!!」 まず瓦礫を蹴り上げ、妹を引っ張り出す。 次に火を消してやろうとしたが、服や砂を被せたくらいでは消えやしない。 そこで火達磨のまま、妹を抱え上げて脱出することにした。 フランの体を包み込んでいる炎が、レミリアにも引火した。 熱い。しかし、レミリアは歯を食い縛って耐えた。 更なる狂乱に陥ったフランが腕の中で暴れる。 フランの右手の爪が、レミリアの背中を深く抉る。 フランの左の拳が、レミリアの鎖骨を砕く。 痛い。しかし、レミリアは泣きながらそれに耐えた。 暫く走っていると突然目の前の天井が崩れ、二人の行く手は塞がった。 レミリアはフランを降ろし、モグラの様に素手で穴を掘り出した。 熱で脆くなっていたのか、爪がベリッと剥がれた。 口から絶叫が漏れ、双眸から大粒の涙が溢れ出す。 それでも穴を掘り続けた。 本来は爪の下にある柔らかい皮膚で硬い土砂を掘り出す。 いつしか、レミリアは子供の様に泣いていた。 そして指の肉が削げ落ち骨の先端が見え始めた頃、穴はようやく向こう側へと繋がった。 急いで妹を担ぎ、その穴に入る。 しかし、もう少しで潜り抜けられるというところで、前に進めなくなった。 どうやら自分の羽が引っかかってしまったらしい。 レミリアは大きく息を吸い込み、そして全身を前に押し出した。 「~~~~~っっ!!!」 ブチッブチッ! という音がして、彼女の羽は引き千切られた。 そうして穴を抜けた彼女は、再び妹を連れて燃え盛る廊下を走っていった。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- 「あややややや、特ダネ! 特ダネですよ!」 「文さん、そんなに近付くと危ないですよ」 闇夜を明るく照らす紅魔館。 その周りを、街灯に引き寄せられた羽虫の様に飛び回る2つの影があった。 この大火災の一報を聞き付けてやって来た天狗達だ。 カシャ! カシャ! カシャ! 「椛! 新しいフィルムをお願いします」 「は、はい」 「これは帰ったらいつもの3倍は刷らないと足りませんよ。今月の新聞大賞は私のものですね!」 夢中でカメラのシャッターを押し続ける射命丸。 今夜の彼女は、フィルムを残すつもりなど一切無い。 全てこの一大スペクタルを撮るのに使うつもりでいた。 いささか近付き過ぎたのか、炎に面した肌がじりじりと火傷しそうなくらいに熱い。 翼に火の粉が降りかかり、引火してしまうのではないかと椛は心配していた。 それでも射命丸は更なる迫力を求め、熱ににじり寄っていく。 「ははは、明日が楽しみです。私の新聞見てみんな度肝を抜かしますよ!」 「はあ・・・」 椛は新聞が売れるかどうかはともかく、それを読んでも驚く奴はいないと思った。 今、湖畔に出来ている人だかりを見れば。 「すみませーん、ビール追加で!」 「はーい」 「こっちは焼酎と串焼き」 「は、はい。今すぐお持ちしますね」 夜雀が必死に働く。 商機とばかりに屋台と共に馳せ参じたが、まさかこんなに人妖達が集まるとは思っても見なかった。 休む間もありゃしないし、明日はまた酒や食材の買出しに行かなければならないだろう。 お陰で既に通常の一か月分の売り上げを稼ぎ出してはいたが。 「ワハハハハハ! 凄いなー。これを消すのは、流石に私でも無理かなー?」 と、へべれけになった子鬼。 「わあ! 見てくださいよ、神奈子様、諏訪子様。こんなの外の世界でも見たことありませんよ」 「ああ、そうだね早苗」 「うちの神社にもこれくらい人が来たらいいのにね」 たった今、到着した守矢神社の風祝と二柱。 「花見で一杯もいいですが、こういうのも悪くないですね。紫様」 「でも前に高層ビルに飛行機が突っ込んだ時なんか、もっと凄かったわよ?」 「妖夢、焼きそばおかわり」 「幽々子様、いい加減にして下さい」 スキマ妖怪と、その親友の亡霊達もいた。 「何よ! 無理だって言うの!?」 「無理、無理」 「無理なのかー」 「畜生! だったら見てなさい、本当に・・・」 「駄目だよ! チルノちゃん、落ち着いて!」 「止めないでよ大ちゃん! あんなの、私が氷付けにしてやるんだから!」 友人達に挑発された氷妖が無謀にも館に突っ込もうとしている。 保護者役の大妖精がそれを力尽くで止めていた。 「ハハハハハハ!! 飲め! 飲め!」 「もっと酒持って来い!!」 他にも名も無き人間や妖怪達が多数。 ここには幻想郷中から野次馬達が集まっていた。 真夜中、紅魔館の方角の空が急に明るく赤くなったのを見た為だ。 レミリアの日頃の行いのせいだろうか。 いけ好かない彼女の館が燃えるのは、日々刺激に飢えている彼らにとっては最高の娯楽になった。 悲しいかな、この悲劇の目の前で大宴会が催されている。 「師匠、応急処置が終わりました」 「お疲れ様、うどんげ」 一方、永遠亭の薬師達は浮かれてなどいなかった。 仕事の為にやって来たのだが、夜雀の様に金が目当てではない。 人命救助という尊い使命があるのだ。 「それで、患者の容態は?」 「ええ。急性アルコール中毒のようです。水をたらふく飲ませて安静にさせました」 「・・・全く。火事だと聞いたから急いで来たのに、どうして酔っ払いの看護なんか・・・」 「酔い止めの薬なんて持って来てないですしね」 本来なら火災があれば救急患者でごった返している筈だ。 しかしこの時は違った。 何しろ、現場から脱出しているのはほぼ無傷のメイドが数名のみ。 残りは全て炎の中。故に死者は多いが、重傷者などいない。 泥酔者や酔っ払いの喧嘩で怪我を負った者達の面倒を見る羽目になった。 「もう帰りましょうか? 救急患者もいないようですし・・・」 「駄目よ。これから運び出される人がいるかも知れない」 「ですけど・・・あれじゃ・・・」 優曇華院が燃え盛る館を見つめる。 もう、いつ崩壊してもおかしくないような状態だ。 生存者など期待出来そうも無い。そう考えていた。 「霊夢! お前も来ていたのか!?」 「魔理沙! それに・・・咲夜!」 周囲の様子を探っていた霊夢は、魔理沙と咲夜を見つけることが出来た。 霊夢がここにいるのは、勿論火事の見学の為などではない。 おかしな空を見て、またレミリアが馬鹿な異変を起こしたのではないかと思ったからだ。 これは異変では無かったが、紅魔館に起きていることを知って大いにショックを受けた。 魔理沙の方は、完全に興味からここに来た。 しかしこんな大惨事が起きているとは予想だにしていなかった。 そして湖畔で呆然と立ち尽くす咲夜を見つけ、彼女を励ましつつ一緒に館を見守っていたのだ。 「つまり・・・皆、まだあの中にいると・・・?」 「そうよ。本当は私も助けに行きたかったけど・・・」 「まあ、あの連中のことだ。滅多な事じゃ死にやしないさ」 二人は咲夜の友人であり、紅魔館の住人達とも親交が深い。 他の野次馬どもとは比べ物にならないほど、咲夜の話に親身になって聞いてくれた。 「レミリアの判断は正解ね。あなたじゃ時間を止めたところで、入った瞬間に丸焦げよ」 「だからね、マスタースパークで火を吹き飛ばして・・・」 「そんなことしたら、完全に崩壊するぜ? とどめを刺すつもりか?」 「崩壊する前に私が時を止めて助けに行くのよ」 「そんな上手く行けばいいけどね、火が消えたところに誰もいなかったらどうするの?」 咲夜はずっと、こんな感じだった。 幾度となく助けに行こうとして、その度に魔理沙や霊夢に止められていた。 「とにかく、奴らを信じてここで待つんだ。私達にはそれしかない」 「でも、もしも誰も戻って来なかったら・・・私は一人ぼっちじゃない・・・」 「馬鹿言わないでよ! 私だって本当はレミリア達を助けた・・・」 「お~い。霊夢~、お前は飲まないのか~?」 その時、霊夢の背後から素っ頓狂な声が聞こえた。 「萃・・・香?」 酔っ払いの子鬼に見付かったらしい。 「こっちはもう、出来上がってるぞ~。お前も ヒック 飲め~」 これだから酒乱は性質が悪い。 萃香も本当はこんな場で宴会など、不謹慎だと分かっていた。 だが、あたりに漂う宴会の雰囲気に抗える彼女ではない。 ついつい酒に手を出し、終いにはこの有様だ。 「萃香、悪いけどあっち行って」 「何だ~? ウィック 今日は随分つれないじゃないか~?」 「・・・ごめんなさい、咲夜。こいつ、酔っ払ってるのよ」 「・・・・・・」 「いい? 今はあいつらを信じるのよ。レミリアだって伊達に・・・」 「あ~ん、霊夢! あなたも来ていたのね!?」 「うわぁ!?」 正に神出鬼没。スキマ妖怪が突然、後ろから霊夢に抱きついてきた。 「会いたかったわよ~、れいむぅ~。あの火事見てたら・・・ゆかりん、怖くなっちゃった!」 「ば、馬鹿! 止めなさいよ、紫!!」 「・・・・・・」 「咲夜! こんな奴、放っておきま・・・」 「あれ~? れいむひゃんでわぁ~、ないれふかぁ~?」 「早苗・・・?」 顔は真っ赤、目は虚ろ、その歩みは千鳥足。 完全無欠の泥酔者となった早苗が、そこにいた。 下戸の癖に調子に乗って飲み続けた結果がこれだ。 「もひかひて、れいむひゃんもぉ、のみにきたんれふかぁ~?」 「そ、そんな訳が無いじゃない!!」 「あれぇ~? はは~ん、さてはしんこうをあつめようってぇ、こんたんなのれふねぇ~」 「この馬鹿・・・」 「れもあまいれふよ~? こんなかじ、わたひのきせきをつかえばぁ~  ・・・・・・  ・・・・・・  ・・・・・・  うぷっ!  おぐぉぉぉぉぉぉ!! ごばぁぁぁぁぁ!! ぐへぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!  うげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!」」 ビチャビチャビチャビチャビチャビチャ・・・・・ 「・・・・・・」 「その・・・何だ、咲夜。お前の今の気持ちは、良く分かる。でも・・・」 「あやややや、咲夜さんじゃないですか!?」 「・・・!?」 追い討ちとばかりに、そこへ天狗がやって来た。 「まいど! 清く正しい射命丸です! 2,3聞きたい事があるのですが?」 「・・・・・・」 「ズバリ! 今のお気持ちは!?」 「・・・・・・」 「出火元は何なんでしょうか?」 「・・・・・・」 「まだ中にレミリアさん達が取り残されているそうですが、本当なのでしょうか?」 「・・・・・・」 「メイドのあなただけがここにいるというのには、何か訳が・・・?」 「・・・・・・・・・」 「咲夜、泣いていいのよ・・・泣きなさいよ・・・」 「・・・・・・・・・ぅ・・・ぅぅぅ・・・」 「おい! あれ見ろよ!」 突然、魔理沙が声を張り上げた。 炎上する館の玄関を指差している。 見れば、誰かが中から出て来たではないか。 それはパチュリーを背負った美鈴だった。 咲夜、魔理沙、永琳、射命丸らが彼女に駆け寄る。 「美鈴! 無事だったのね!?」 「パチュリー、大丈夫か!?」 「どきなさい! 今すぐ手当てをするから!!」 「清く正しい射命丸です! 九死に一生を得た訳ですが、今のお気持ちは・・・?」 こうして救助された二人は、永琳の手によって応急処置がなされた。 咲夜達がそれを見守る。 「あの・・・二人は助かるのですか?」 「門番は助かると思う。でも魔女の方はかなり悪いわね」 「そうですか・・・」 「二人とも永遠亭に運ぶわよ。ここじゃまともな治療が出来ない」 「・・・咲夜さん?」 その時、美鈴がそう呟いた。 「美鈴!?」 「こら! 安静にしていなさい!」 「質問します! 中の様子はどうだったのですか!?」 美鈴は永琳と射命丸の言葉を無視し、咲夜と話を始めた。 「ごめんなさい。こあは・・・助けられませんでした」 「そう・・・」 「お嬢様と妹様は・・・?」 「・・・まだ出て来てないわ」 「まだ・・・ですか・・・?」 それからすぐに、美鈴とパチュリーは永遠亭に運ばれていった。 咲夜は付き添いで付いて行きたかったが、レミリア達が残っている以上そうもいかない。 代わりに魔理沙と、生き残ったメイド妖精達が行った。 「レミリアのことも気になるわね」 「お嬢様、妹様・・・」 残された咲夜と霊夢はレミリア達の無事をひたすら祈り続けていた。 しかし、どれだけ待っても彼女達は一向に現れない。 一分一秒ごとに可能性は狭まっていくと言うのに。 そして美鈴達の救出から20分ほどした頃・・・ 「もう、駄目ね・・・」 「咲夜・・・!?」 遂に咲夜が音を上げた。 「いくら吸血鬼でも、燃え尽きて灰になったら助からない・・・」 「ちょっと・・・」 霊夢は黙り込んでしまった。 探していた。少しでも希望が持てそうな、そんな言葉を。 そして二人に長い沈黙が訪れた。 「あのさ、上手く言えないけどレミリ・・・」 霊夢がようやく言葉を紡ぎだしたその時・・・ 「おぉぉぉぉ! 見てみろよ!! あれ!」 野次馬どもから歓声が上がった。 それに反応して振り返った咲夜達が見たものは・・・ 轟音と共に崩壊していく紅魔館だった。 「おー本当に崩れた!」 「いやぁぁん、怖いわぁ! 幽々子!!」 「すごいれふねぇ~、かなこさま、すわこさま」 「椛! 今の撮れましたか!?」 クライマックスを目にして、暢気な観客達のボルテージは一気に跳ね上がった。 しかし、そんなものは傍観者の感想。 当事者にとっては悪夢以外の何者でもない。 「嘘・・・嘘、よね?」 「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」 霊夢は放心し、咲夜は泣き崩れてしまった。 「どうして!? どうしてよ!? 何で私より先にお嬢様が死ななきゃいけないの!?」 「レミリア・・・こんなこと、信じられない・・・」 「!? 待って、咲夜! あれを見て!?」 霊夢がそう言って、依然として燃え続ける紅魔館跡を指差した。 「おい! 何だ、あれ?」 「こっちに来るぞ!!」 なんと灼熱の炎の中から火の玉が一つ、飛び出してきた。 走るように、転がるようにして、湖へ一直線に向かっていく。 「咲夜、あれって・・・」 「も、もしかして・・・」 そして火の玉は湖に到達した。 ざぱんっ! と水に飛び込み、じゅぅぅぅ・・・と熱の冷める音がした。 咲夜と霊夢は当然、それを追いかけて湖に入る。 「いたわよ!」 深夜であったが、火事のお陰で明るかったのが幸いした。 すぐに湖に落ちたそれを霊夢が見つけ、抱え上げる。 髪も顔も全身余すところなく丸焦げだったが、確かにそれは人の形をしている。 「ちょっと! あなた、ひょっとして・・・」 「うん・・・霊・・・夢?」 変わり果てた姿でも、声だけはそのままだ。 これは間違いなくレミリアだ。 「レ、レミリア!?」 「お嬢様! ご無事でしたか!?」 「ああ・・・咲夜? 私より、早くフランを・・・」 「妹様もいるのですか・・・?」 「このあたりに・・・浮かんでいると思うから・・・」 咲夜は急いでフランを探し始めた。 だが、決して暗くは無いと言うのにフランらしき人影は見付からない。 まさか湖底に沈んでしまったのだろうか? そう考え始めた頃、水面を探る指先に何かが当たった。 大きさは赤子より少し大きいくらいだろうか? 真っ黒な炭の塊が浮かんでいた。 「これが・・・妹様?」 「ごめんなさい。そんなにしてしまって。でも、まだ中は生焼けだと思うから・・・」 咲夜がその炭塊を優しく指で撫でる。 すると表面がボロリと崩れ、中から赤黒い肉が姿を現した。 微かにその肉が脈打っているのも分かる。 これは吸血鬼が復活するには十分な大きさだろう。 「妹様・・・!」 咲夜は思わずそれを抱きしめた。 妹も救出され、安心したレミリアは・・・ 「・・・ありがとうね、霊夢」 「何よ?」 「あなた、来てくれてたのね・・・」 「魔理沙も一緒よ。まあ、私はあんたが死ぬとは思ってなかったし・・・」 「うん、それでこそ霊・・・」 「あやややややや、もしかしてレミリアさん!?」 「れみりあひゃん、こんなんなちゃったんれふかぁ~?」 「これじゃ、誰なのか分からないわねぇ」 「でも、これで生きてるんだから凄いよなー」 何もしてくれない癖に好奇心だけは強い、どこまでも物好きな野次馬達が集まってきた。 「ほ、ほら、どきなさいよ! 今すぐこいつらを永琳のところに運ぶんだから」 霊夢が野次馬を追い払う。 「レミリアさん、質問です! 今のお気持ちを率直にお願いします!!」 「あ! こらっ!!」 しかし射命丸は霊夢の制止を聞かず、強引にインタビューを始めた。 「やはり不死身の吸血鬼と言えど、今回ばかりは危なかったのですか?」 「・・・うるさい」 「全身を火傷されているようですが、辛いのですか?」 「決まってるでしょうが・・・」 「命は助かったものの、紅魔館を消失してしまいました。それについてはどうですか?」 「あ・・・」 「紅魔館はとても歴史ある建物だった訳ですが、当主として、その責任については?」 「うぅぅ・・・嫌ぁ・・・・・・ああ・・・」 「見たところ手ぶらですが、財産などは持ち出せたのでしょうか?」 「ぁ、ぁ・・・ぁ・・・ぁぁぁあ・・・・・・」 「ズバリ! 明日からどうやって生活していくのですか!? その計画などは・・・?」 「ぅぁ・・・」 レミリアは白目を向いて気絶してしまった。 -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- 「う、ん・・・」 「フラン! 気が付いたのね!?」 「え、お姉様? ここは・・・?」 フランが3日ぶりに目を覚ますと、見知らぬ病室にいた。 ベッドから起き上がろうとするも、体が動かない。 よく見れば自分の体から手足が無くなっていた。 彼女にとって最後の記憶は、自分の部屋で遊んでいたら急に焦げ臭くなったこと。 当然、自分に何が起きたのか、さっぱり分からなかった。 「おうちが・・・火事になっちゃったの?」 「そうよ。本当に危なかったんだから」 「妹様の回復力には、永琳もびっくりしていましたよ。蓬莱人の癖に」 レミリアと咲夜から、事の顛末を聞かされた。 ショッキングな内容ではあったが、姉が命懸けで自分を助けてくれたことにはとても感謝した。 次にフランが気になったのは、紅魔館の他の住人たちの安否だ。 「それで・・・みんなはどうしたの?」 「妖精達は殆ど全滅です。ですが、復活するので心配はいりません」 「うん・・・」 「美鈴は無事よ。ここに入院してるけど、すぐに良くなるって」 「本当!? 良かった・・・」 「ですが、小悪魔は死にました」 「こあが・・・死んだ・・・?」 「それとパチェだけど・・・助かった。助かったけど・・・」 「・・・? どうしたの?」 「まだ目が覚めてないのよ。とても危険な状態だって、医者は言ってた・・・」 「・・・そんな・・・!?」 「それと、目覚めたばかりで悪いけど、大事な話があるの。ちょっと来てくれる?」 フランは咲夜に抱えられ、隣の病室へ移動した。 そこは美鈴とパチュリーがいた。 美鈴は全身包帯姿だったものの、意識もハッキリとして元気そうだ。 しかしパチュリーは・・・死んだように動かない。 人工呼吸器と点滴を付けられベッドに寝かされた姿は、見るからに痛々しい。 「パチェ・・・」 「ずっと、こんな感じです。何度呼びかけても反応がありません」 「全身火傷に全身打撲、脳震盪に内臓破裂、後頭部陥没に鼻骨骨折・・・他は覚えきれませんでした」 「すみません・・・私がもっとしっかりしていれば・・・!」 「美鈴・・・そんなこと言わないで。あなたは本当によく頑張ってくれたわ」 本来なら、生きて再会出来たことを喜び合う筈だった。 しかし現実はそうも甘くは無い。 更に、もっと現実的で大きな障害が彼女達の目の前に立ちはだかっていた。 「それで・・・咲夜、今の私達の状況は?」 「はい。紅魔館は全焼しました。そして財産も全て一緒に燃えてしまいました。  しかも、紅魔館跡の炎は依然として燃え続けています。あと数百年は消えないそうです。  焼け跡から貴重なものを掘り出そうと考えてましたが・・・それも無理です。  昨日、延焼防止のために霊夢と一緒に周辺の木々を伐採しておきました」 「つまり、私たちは・・・」 「一文無しです。私以外は、着る服さえありません」 レミリアは大きくため息をついて椅子に腰掛けた。 そして力なくこう呟いた。 「一文無し・・・ね。まさか名門貴族の私が、そんなことになるなんて・・・」 「・・・それと生き残ったメイド妖精達ですが、解雇しました。残したところで役には立たないでしょう」 「妥当な判断ね。今の私には部下を養うような余裕は無いし」 「お姉様、これから私達どうすればいいの?」 フランが不安そうに聞いて来た。 一夜にして全てを失ったのだ。 今まで館に守られて生きてきた彼女には、未来なんて想像出来なかった。 「これからね・・・働いてお金を貯めて、紅魔館を再建するのよ」 「・・・そんなこと、出来るの?」 「さあね・・・」 「当面の間は無傷の私が動きます。お嬢様はここで怪我人の看護をして下さい」 「何言ってるの? 咲夜、それに美鈴、あなた達もクビよ」 「えええ!?」 「どうしてですか!?」 「今、言ったでしょう? 部下を養うような余裕は無いって」 「そんな・・・」 「いい? 私と一緒にいるくらいなら、一人で生きていく方がずっといい。それくらい、分かるでしょ?」 「でも・・・あの時、私は何も出来ませんでした。せめて、これからお嬢様のお役に・・・」 「馬鹿ねぇ。従者の癖に、主を養うつもり? そんなことして、あなたに何の得があるのよ?」 「得とか、損とか、私はそんな事は考えてません」 「駄目よ。私なんか、さっさと見捨てて新しい人生を始めなさい」 「ですが・・・・・・」 「フラン、あなたも分かってくれるわよね」 「うん・・・分かってる・・・」 「さあ、これで決まりね。今までありがとう、咲夜、美鈴」 「・・・いえ! 私はお嬢様と一緒にいます!!」 美鈴がそう叫んだ。 「あんたねぇ・・・今の私の話、聞いてないでしょ?」 「私も・・・メイドを辞めません」 美鈴に触発されたのか、咲夜までそう言ってきた。 「あんた達、どうするつもりよ?」 「人里あたりで働いて、お金を貯めて・・・お嬢様と一緒に紅魔館を再建します」 「私も働きます! 今は動けませんけど・・・」 「だから! もう、私にはあなた達を雇えないのよ! だってお金が無いもの」 「でも、元々給金なんて無かったじゃないですか?」 「休みも無かったですし」 「でも! 食べ物も、着るものも、住む場所の世話も出来ないのよ!?」 「構いません」 「私も、構いません」 「その上、紅魔館を再建するお金まで貯めるなんて・・・どう考えても損じゃない!」 「私はお嬢様と妹様さえいれば、損なんてしませんよ」 「また、紅魔館の門の前に立ちたいんです」 「お姉様・・・私も、やっぱりみんなと一緒にいたい」 「フラン、あなたまで・・・」 「咲夜と美鈴に甘えちゃうみたいだけど・・・一緒に紅魔館に戻りたい」 「この、馬鹿・・・!」 「お嬢様、私達を・・・これからも傍に置いて下さいますか?」 「分かったよ・・・またよろしくね。私も、頑張るから・・・」 レミリア達の新しい日々が始まった。 いつかまた、紅魔館に戻れる日を願って・・・ -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- [[紅魔館炎上www その2:28スレ639]]へ続く - パッチェさんのくだりでこれはひょっとしてギャグなのか?と思ったけど、続くこあの話で泣きそうになった。 &br()野次馬共に怒りを覚えた。永遠亭の二人は他の連中との対比もあって良い奴らだと思えた。 &br() &br()ぱっちぇさんの怪我・・・ -- 名無しさん (2009-10-04 23:08:26) - 数百年炎上・・・・・ &br()サイレントヒルの元になった町じゃないか -- 名無しさん (2009-10-04 23:42:36) - なんでタイトルに草生えとんねん! -- 名無しさん (2009-10-04 23:51:32) - うぜぇ丸w &br() &br()こあ… &br()パチェはその為に拘っていたのか -- 名無しさん (2009-10-05 01:27:58) - パチェのケガの半分くらいが美鈴とかこぁのせいな件について。そしてお空が?過ぎるwww -- 名無しさん (2009-10-05 01:51:38) - パッチェさんwww &br() &br()どう考えてもww -- 名無しさん (2009-10-05 08:15:10) - 野次馬どもめ……リアルでもここまでは……いや、似たようなもんか? -- 名無しさん (2009-10-05 11:37:43) - レミリアはさとりに損害賠償を請求するべきだ -- 名無しさん (2009-10-05 15:51:59) - どう考えてもギャグだろww &br()不思議理論満載過ぎるwwwwwwww -- 名無しさん (2009-10-05 16:40:26) - とりあえず早苗と射命丸…もとい野次馬に殺意が -- 名無しさん (2009-10-05 20:33:32) - これはお空いぢめってことでOK? -- 名無しさん (2009-10-05 23:02:17) - これパチュ苛めだろ、可哀想だけど吹いたwww -- 名無しさん (2009-10-06 13:45:35) - 野次馬共は地獄の業火に焼かれちまえ。 -- 名無しさん (2009-10-06 21:15:44) - 射命丸や酔っ払い共、もとい野次馬達に怒りを覚えた &br()同時に霊夢や魔理沙、永遠亭の住人が良い人だと思った。 &br()パチュリーとこぁ&紅魔組の絆に泣いた(泣 -- 名無し (2009-12-30 01:47:04) - 野次馬については自業自得だと・・・ -- 名無しさん (2010-01-29 18:56:20) - 野次馬どもを見たとき本気で殺意が芽生えた……!! -- 名無しさん (2010-06-30 18:18:51) - おいうぜぇ丸w -- 名無しさん (2010-08-13 11:58:36) - 目から忠誠心が・・・ -- 名無しさん (2010-08-13 16:11:37) - 「ま、待って…ゴフゥっ!」 &br()だけでSS書けそうだなww -- 名無しさん (2010-08-13 17:08:07) - 「全身火傷に全身打撲、脳震盪に内臓破裂、後頭部陥没に鼻骨骨折・・・他は覚えきれませんでした」 &br()まあ皆だと思うが、なぜこうなったのか分かる人は挙手ー &br() -- 名無しさん (2010-12-03 09:23:30) - 紅魔館のみんながかわいそう・・・、野次馬は消えろ -- 名無しさん (2010-12-15 04:54:48) - いじめスレの文ってなんでこんなにウザいんだよwwww &br() &br() &br()感動した -- 名無しさん (2010-12-29 19:13:17) - めーりんの力ならパチュリーを健康な状態のまま &br()引っ張り出す事だってできただろwww &br()まあそれでその後の展開が良くなったかは微妙な所だが。 -- 名無しさん (2010-12-29 19:31:53) - それで霊夢と魔理沙が野次馬共を蹴ちらすんですね。分かります。 -- 名無しさん (2011-01-09 11:07:05) - タイトルに芝を生やすなww &br() -- 名無しさん (2011-05-23 09:47:00) - 野次馬マジワロス &br()常識にとらわれないにも程があるだろ早苗さんよ &br() &br() &br()まあ、地霊殿に損害賠償を要求すればOK -- 名無しさん (2011-06-12 22:16:58) - ごめんなさいパチュリー(ry &br()どんだけ言ってんだよw -- 名無しさん (2013-05-07 20:35:05) - w &br() &br() &br() -- q (2013-05-09 10:03:32) - 良い話だった 野次馬しね。あとパチュリーのくだりってギャグなの?いじめかと思った -- 名無しさん (2013-05-26 09:19:24) - 作者が新聞嫌いなのは伝わった -- 名無しさん (2013-05-31 06:47:52) - 霊烏路空ワロスゥゥゥゥ。パチュリーワロタァァァァ -- 動かぬ探究心 (2013-06-03 19:50:32) - 糞地底妖怪ども死ねついでに野次馬どもも地獄の業火に焼かれろ -- 名無しさん (2013-06-26 14:58:05) - マジで泣いた -- れいうた (2013-06-27 02:44:16) - 射命丸は一回爆発四散すべきだと思う -- yona (2013-07-26 15:22:27) - タイトルの「www」は要らないと思うんだが -- れいうた (2013-08-16 16:28:55) - あの野次馬どもの顔を壁に叩きつけて顔面の骨全部粉々にして湖に沈めてもいいかァァァァァ…?(黒笑) -- 名無(ry (2013-08-28 00:33:17) - 野次馬、射命丸に感謝。あの団結ゼロの基地外人食い巨人もどき集団を嘲笑してくれたことに感謝。 -- 風吹けば名無し (2013-11-17 02:03:00) - お空を招待したのがおぜう自身なのだから地霊殿に責任は無いのでは? -- 名無しさん (2014-03-31 03:41:58) - 何故にブラジル…? -- 名無しさん (2014-06-18 18:22:07) - いやはや、愉しげですね、人の絶望する姿を見るのは &br()蟲ケラから脚をもぎ取って息絶えるまで観察するときのような、初恋のような素敵な官能を覚えますな -- 名無しさん (2014-06-19 17:31:41) - 紅魔厨必死だねー。大嫌いな紅魔がこうなるのは最高だよ &br()野次馬サイコー!お空を連れてきたクソコウモリの自業自得やな -- 名無しさん (2014-12-15 03:24:01) - ネタ満載でクソワロタ -- 名無しさん (2014-12-19 10:50:56) - 感動。その一言だけ。 -- おぜうさま (2014-12-27 18:58:33) - さとり「飼い主の責任?ご冗談をwお空を紅魔館に誘ったのは他ならぬレミリアさんご本人でしょう?自業自得ですよ」 -- 名無しさん (2016-03-12 03:15:34) - ↑えーき「じゃああの地獄鴉は等活地獄…いえ、今回は沢山の者が亡くなったので阿鼻地獄行きで良いですよね?」 -- 名無しさん (2016-03-13 23:19:57) - 後日治療費入院費を永遠亭が請求するも払えず薬の被験者になりました &br()おわり -- 名無しさん (2016-03-14 04:42:51) - うぜぇ丸クソワロタw &br()(野次馬死ねw) -- 名無しさん (2016-03-15 17:08:58) - 緊急事態で質問をバカみたいに続ける射命丸…うぜえ -- 名無しさん (2016-04-15 22:03:05) - 紅魔勢必死だなって言ってる奴必死すぎワロタw -- 名無しさん (2016-04-29 19:56:39) - バカラスなウゼェ丸はジビエの刑だ! -- 名無しさん (2016-12-13 03:09:57) - こぁ -- 名無しさん (2018-02-17 23:01:53) - 誰も現実で起こったテロを挙げるBBAの不謹慎さに触れてないんか &br()やはりあいつが一番たちが悪い -- 名無しさん (2020-07-31 02:16:25) #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)

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