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236 :名前が無い程度の能力:2008/06/21(土) 02:05:11 ID:D2qPKcMs0 「怖いわ怖いわ、蓬莱人怖いわ妖夢」 「大丈夫ですよわたしが幽々子様を、……って暑いからちょっと離れてください」 「だって怖いんですものー!」 「ふふっ」  笑ってしまってら目が覚めてしまうと思っていたけれど、笑ってしまった。  夢を見ていた。  もうお昼前なのか、障子を通った淡い光がお布団にしみこんで、部屋の中は優しい光に溢れていた。  楽しい夢だった。  わたしは布団にもぐりこんで、さっきの夢のことをゆっくりと思い返した。 「ふふっ、うふふっ」  思い出すと、わたしはおかしくなってもう一度笑った。  なつかしい。  あれは確かもうずっと昔のことだ。  わたしは竹やぶのそよぐ音と、半そでの小さな肩を思い返していた。  わたしがずっと摘んでいたあの子のシャツは、よく洗濯されていて白く清潔だった。  わたしを守るとか言って、本当は自分もちょっと怖がってたくせに。  妖夢、そうだ妖夢。 「ようむ」  わたしはゆっくり声に出して言ってみた。  随分久しぶりに口にした名前だった。  上手く言えるか心配だったけれど、わたしの口はまだその言葉をちゃんと覚えていた。  わたしが「ようむ」と言うと、あの子はすぐに飛んできた。  めんどくさそうな顔をしながら、心配そうな顔をしながら、嬉しそうだったりもした。  わたしはあの子のことが大好きだった。  楽しかったなぁ、あの頃は。 「ようむ」  もう一度言ってみた。  優しい響きだった。  わたしの声は、誰の耳にもとどかずに静かにお布団のなかに消えていった。

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