~その後・生徒会室~

和「怪我はもう大丈夫なの?」

紬「ええ、血は一杯出ちゃったけど急所じゃなかったから」

紬「むしろ、血を見た事にびっくりして倒れちゃったのね」

和「良くは無いんだけど…まあ、良かったわね」

紬「ええ、憂ちゃんの怪我もそれ程重く無くて良かったわ」

和「それで、紬の叔父さんがこんな事を起こした理由は分かったのかしら?」

紬「和ちゃんなら分かるんじゃないの?」

和「紬は一人っ子だから財産目当てとかそういうラインかしらね」

和「まあ他人が口出しする事じゃないか…」

和「ごめんなさいね、変な事を聞いちゃって」

紬「ううん、良いのよ」

和「そう言えば…私には1つだけ、この事件で分からない事があるんだけど」

和「紬の考えを聞いても良いかしら?」

紬「ええ、どんな事?」

和「憂は一時的にとは言え、唯に犯人扱いされたんでしょ?」

和「どうして唯に反論しなかったんだろうってね」

和「いや、もちろんしたんでしょうけど…でも、憂らしくないわ」

和「憂なら理詰めで唯の事、説得出来たんじゃないかしらってね」

和「もちろん、そうなってしまったら最悪の展開になってたんでしょうけど…」

和「でも、ちょっと納得がいかないかなって」

紬「憂ちゃんはね、どんなに理不尽な事を言われても」

紬「唯ちゃんに言われた事だったら、深層心理ではそれを正しいと思いたいの」

紬「だから、自分は犯人じゃないとは言えるけど」

紬「唯ちゃんの言った事は矛盾の塊なのに、それに対しては殆ど反論出来なかったわ」

紬「1番の問題はね、憂ちゃんに7人以外の犯人を指摘される事だったの」

紬「でも、唯ちゃんが最初に7人以外誰も居ないって言ってくれたから」

紬「憂ちゃんは真犯人を指摘する事も出来なくなった」

紬「そういう事じゃないかしら?」

和「唯はそこまで計算してたと思う?」

紬「ええ、思うわ」

和「凄いわね…そんな事を一瞬で考え付く唯も凄いと思うけど」

和「それはあの2人だからって事である程度は納得出来る」

和「でも、それを理解してる紬は凄いわ」

和「私の方が付き合いは長いのに…ちょっと悔しいわね」

紬「和ちゃんも軽音部に入ってみるのはどうかしら?」

紬「唯ちゃんともっと仲良くなれるし、憂ちゃんとの接点も増えるわよ?」

紬「それに…」

和「良いのよ、紬」

和「私は今の立ち位置で十分満足してるから」

和「紬はこの事件の事、みんなには謝ったの?」

紬「ええ、ごめんなさいって一言だけね」

和「それだけ?」

紬「それだけよ」

和「私も手伝ったとは言え、元はと言えば紬の発案で始まった事なのに…酷い話ね」

紬「ええ、酷い話ね」

和「でも、私もそれで良いって思うわ」

紬「和ちゃんは外から、私は中から軽音部の事を何時も見守ってる」

紬「だから分かるのよね、これ以上は謝っちゃいけないって」

和「そうね、その通りよ」

和「軽音部のみんなは…もちろん憂もだけど、誰も今回の事は恨んでない」

紬「でも外からだけじゃなくて、和ちゃんもたまには中から見守ってみない?」

紬「見学だけでも良いの、誰か1人…凄く喜んでくれる人が居るかもしれないわ」

和「…だ、誰の事かしら」

紬「それはもちろん…私よ」

紬「実はね…私、和ちゃんの事がずっと前から…好きだったの」

和「…」

紬「あれ?ちょっとは焦ったりとかしなかった?」

和「ええ、全然」

和「冗談で言ってるって事位、すぐに分かるわよ」

和「今回の事で少しはそういう部分、鍛えられたから」

紬「つまらない…」

和「今日も部活があるんでしょ?さっさと行ったらどうなの」

紬「しかも冷たい…」

紬「折角和ちゃんにはとっておきのプレゼント、用意して来たのに」

和「プレゼントね」

和「どうせ何か企んでるんでしょうけど、一応何なのか聞いてあげるわよ」

紬「これよ」

和「特賞ヨーロッパペア旅行…」

紬「商店街の福引で当たったの~」

和「いや、私パスポート持ってないんだけど…」

紬「そうなの?じゃあ、これならどうかしら?」

和「1等沖縄ペア旅行…」

紬「プレゼント♪プレゼント♪」

和(紬の場合、本当に当たった可能性があるって所が何とも…)

和「まあ良いわ、貰えるなら貰っておくわよ」

和「でも、どうして急に?」

紬「え~とね、今回の事でお詫びにって思って」

和「紬…あなたね、自分でそんな必要は無いって言った所でしょ?」

和「それとも何?私だけは何時までも恨んでると思ってる訳?」

紬「ううん、そんな事は無いんだけど…でも」

紬「和ちゃんには酷い事をして…酷い事を言っちゃったから…」

紬「それだけは、和ちゃんが良いって言ってくれても自分が許せない」

紬「だから…」

和「分かったわよ、何か理由があって言ったんだと思うんだけど」

和「それも聞かないでおくわよ」

紬「ありがとう、和ちゃん」

和(あれはきっと、傍に犯人が居たから仕方なく言ってたんでしょう…)

和(少しでも油断させようと思って、積極的に協力してるフリをして…)

和(心にも無い事を…)

紬「ところで、誰を誘うの?」

和「もちろん決まってるじゃない、紬よ」

紬「りっちゃんじゃないの?」

和「ええ…実はね、私は紬の事が好きになっちゃったの」

紬「嘘!?」

紬「こ、困ったわ…そ、そんな事、急に言われても…」アセアセ

和「ふふっ、冗談よ、冗談」

紬「え?」

和「紬、あなた他の人の恋愛は積極的に後押しするのに」

和「自分が好きって言われたらそんなに慌てちゃうのね」

紬「だって…」

和「紬には色々として貰ったから、少しは私にも何かさせなさい」

紬「ええ、その時が来たら…是非お願いするわね」



~部室~

澪「誰も来ないな」

梓「そうですね」

澪「梓、ちょっと後ろを向いてくれないか?」

梓「え?はい、良いですけど…」

澪「出来れば立ち上がってくれ」

梓「こうですか?」

澪「そう、そのまま…動くなよ?」

梓「は、はい」

ギュッ

梓「あ…」

澪「今でも信じられないな」

梓「何がですか?」

澪「憂ちゃんも私も、こんなに小さな梓に背負われてたなんてな」

梓「言ったじゃないですか」

梓「憂の時は、澪先輩が待っててくれるって思ったから…頑張れたんですよ」

澪「私の時は?」

梓「澪先輩の時は…ごめんなさい」

梓「頑張ったんですけど、結局最後まは…」グスッ

澪「どうして謝る?」

梓「だって…結局私は、澪先輩を助けられなかった訳ですし…」

澪「そんな事は無いだろ?」

澪「梓があそこまで運んでくれたから、凍死だけは避けられたんだ」

澪「あのまま放置されてたら、私は今此処に居ないんだぞ?」

澪「梓は私の命の恩人だよ…」

澪「こんなに小さな体で、良く頑張ってくれたよ…」ナデナデ


~部室の外~

紬「どうしたの2人共?」

唯「し~っ、駄目だよムギちゃん」

紬「…」

紬「部室の中には此処に居ない2人が居て、入りにくい状況って所かしら?」

律「そういう事だ」

律「今は慌てて練習する時期でも無いだろうから」

律「今日はこのまま解散って事で良いだろ」

律「暫くしたら今日の部活は無しってメールしておくよ」

紬「ええ、そうしてあげましょ」

紬「でも、りっちゃんは帰る前に生徒会室に寄ってね?」

唯「お、何時の間にかお熱い関係になってる和ちゃんからのお誘いですかな?」

律「いや、別にお熱くは無いだろ」

紬「そうなの?じゃあ和ちゃんにはりっちゃんがそう言ってたって…」

律「言わなくて良い!言わなくて良いから!」

紬「りっちゃんは本当に分かりやすいわね」

唯「ね~」

律「…」

律「また何か企んでるんじゃないだろうな?」

紬「もちろん、企んでるわよ♪」

律「まあムギの事だからな…分かったよ、生徒会室に寄ってから帰る」

紬「うふふっ、りっちゃんは素直だから…大好きよ」

律「…」

律「それを言われると、あたしの方が未だにゾクッてするな…」


~その後・平沢家~

憂「駄目だよお姉ちゃん、ちゃんと全部食べないと」

憂「ピーマンもニンジンも凄く栄養があるんだよ?」

唯「うん、それは分かってるんだけど…何時もみたいに残しちゃ駄目?」

憂「そっか、私の料理なんて食べられないって事なんだ…」

憂「お姉ちゃんは私を殺人犯だなんて言っちゃう位だものね…」

憂「私の事なんて、実は嫌いだったんだ…」

憂「そんな私の作った料理なんて、食べられないよね…」

唯「違う!違うよ憂!何回も説明したでしょ?あれは演技で言っただけだよ!」

憂「ほんとに?」

唯「ほんとほんと!」

憂「じゃあ…私の事、好き?」

唯「うん、大好きだよ~」

憂「お姉ちゃんは、大好きな人が作った料理を残しちゃう様な人じゃないよね?」

唯「うっ…」

憂「お姉ちゃん、何時までソファーでゴロゴロしてるの?」

憂「今日は一杯宿題が出たって言ってたじゃない」

憂「ちゃんとやらないと駄目だよ?」

唯「うん、そうなんだけど」

唯「あの、憂が代わりにやってくれるとか…」

憂「お姉ちゃん、それじゃ自分の為にならないでしょ?」

唯「でも…」

憂「…」

憂「そっか、お姉ちゃんは大好きな人が心配してるのに…」

憂「それを無視しちゃう様な人だったんだね…」

唯「うっ…」


~唯の部屋~

唯「う~ん、憂は最近どうしたんだろ?」

唯「優しい所は同じなんだけど、私がわがままを言うと厳しい…」

カチャ

唯「昨日撮った新しい待ち受け画面、憂は何時見ても可愛いな…」エヘヘ

唯「そうだよね、憂が言ってる事は全部正しいんだから、頑張らないと!」

唯「でも、宿題沢山あるなあ…もっと早くやっておけば良かった…」


コンコン…ガチャッ

憂「入るね、お姉ちゃん」

唯「あれ?憂、どうしたの?」

憂「ケーキと紅茶の差し入れだよ」

唯「え?ケーキ!?」

憂「私も宿題手伝ってあげる、それを食べたら一緒に頑張ろうね」

唯「ほんとに?憂、ありがと~」

憂「それはね、私の意地だよ」

唯「意地?」

憂「紬さんに指摘されたんだけど、私はお姉ちゃんが言う事だと」

憂「どんな事でも正しいって思いたいんだって」

憂「うん、確かに今まではそうだったね」

憂「お姉ちゃんがどんなにわがままを言っても、笑って許しちゃってた」

唯「うっ…確かにそうなのかも…」

憂「それが結果的には良かったんだけど…」

憂「でもそれって、私達の事は紬さんも同じ位に良く知ってるって事でしょ?」

憂「そんなの…悔しいじゃない」

憂「お姉ちゃんの事、私の方がずっとずっと好きなんだから…」

憂「お姉ちゃんの事は、私の方がずっと知っていたい」

憂「紬さんには負けたくない」

憂「だからね、私は例えお姉ちゃんが言う事でも、全部正しいなんて思わない」

憂「間違ってる事は間違ってるって、ちゃんと言うからね」

憂「紬さんの考えは間違ってたって思わせたい」

唯(それって、単に私をしっかりさせたい為のこじつけなんじゃ…)

憂「分かった?お姉ちゃん」

唯「う、うん…分かったよ」

唯(でも、そうだよね…)

唯(好きな人の気持ちは誰よりも知っておきたいっていう所は、私にも分かる)

唯(憂がどうしてこんな事をするのか分からないって思った時…)

唯(私もちょっとだけ悔しかった)

唯「私も、ムギちゃんには負けたくないな…」

唯「憂の事は誰よりも知っておきたいよ」

唯「だからね、今日からは一緒に寝よう!」

唯「学校も一緒に行って、帰って来る時も一緒」

唯「家に居る時も一緒」

唯「ずっとずっと一緒に居れば…憂の事、もっと分かるんじゃないのかな?」

憂「それは良いかもしれないね」

憂「でも、流石にずっと一緒は無理だよ、お姉ちゃん」

唯「分かってるよ~、でもそれ位、憂とは一緒に居たいって事だよ!」

憂「うん、私もお姉ちゃんと一緒に居たい、それは同じだよ」

憂(私が悔しがってこういう風に言えば…)

憂(お姉ちゃんは私の事、もっと知りたいって思ってくれる…)

憂(もしかして、これも紬さんの思惑通りなの?)

憂(でも、お姉ちゃんと仲良くなれるんだったらそれでも良いやって思う)

憂(私達は結局、最後まで紬さんのシナリオ通りに動いてただけかもしれない)

憂(例えそうだったとしても、紬さんには感謝の言葉しかないんだけど…)

唯「どうしたの?憂」

憂「ううん、何でも無いよ」

憂「ただね、紬さんの考えてくれる合宿なら、また参加してみたいなって考えてた」

唯「合宿?そうだね、次も是非憂に、それに和ちゃんにも参加して欲しいな~」

唯「次は夏休みに合宿かな?でも、春休みに合宿しても良いんだよね」

唯「明日、ムギちゃんに言ってみるよ!」

憂「うん!楽しみにしてるね」

憂(その時までには紬さんにも良い人が見付かってると…嬉しいんだけどな)



おしまい