~翌日・生徒会室~
紬「和ちゃん、出来た!出来たわ!」
和「出来たって…もうシナリオが完成したの?」
紬「そうなの、昨日の夜に頑張って仕上げました~」
和「…まあ、とりあえず読ませて貰うわよ」
…
和「何これ?」
紬「何って、今回の計画のシナリオよ?」
和「いや、それは分かるんだけど…」
紬「駄目かしら?」
和「駄目って事は無いわ」
和「私達が本当にそういう事件に逢ったみたいに、良く書けてると思う」
和「でも、どうして紬以外の全員がラストで殺されちゃうのよ」
和「探偵役にもなってないし、連続殺人事件にすらなってない」
和「これじゃ単なる大量殺人事件、それも紬が犯人ってどういう事?」
和「もしかしてこれ、何かの小説のあらすじを」
和「登場人物だけ変えて、そのまま写したとかじゃないの?」
紬「うふふっ、バレちゃった♪」
紬「凄く似たシチュエーションの作品があったから、ちょっと遊んでみたの」
紬「でも、丸写しじゃないのよ?ちゃんと今回の舞台に合う様に書き換えてあるわ」
和「紬、あなたね…真面目にやらないんだったら私も協力しないわよ?」
紬「ウソウソ、冗談よ」
紬「どういう風に書いて良いのか分からなかったから」
紬「とりあえずお手本になる様な物を作ってみたかっただけ」
紬「和ちゃんが良く書けてるって言ってくれたのなら」
紬「こういう風に作れば良いって事よね、分かったわ」
和「まあ、そういう事なら良いんだけど…」
~合宿3日前・生徒会室~
紬「ふぅ…大体こんな感じかしら」
和「書き終わった?」
紬「ええ、ちょっと見て貰える?」
和「良いわよ」
…
和「紬、あなた私をからかってるの?」
和「この前見せて貰ったのと全く同じ書き出しじゃない」
紬「まあまあ、そんな事を言わずに全部読んでみて?」
紬「途中からちゃんと書き換えてあるから」
和「分かったわよ…じゃあ、細かい部分も確認していくからね?」
紬「ええ、お願いするわ」
和「まず最初に、夜になってから外部との連絡手段を遮断」
和「遮断って、具体的には?」
和「電波が届く場所だったら、携帯の1個でも持ってたら無理な話よ?」
紬「それは、私に考えがあるから大丈夫」
紬「普通の電話は何処か1箇所、見ても分からない場所のコードを抜いておきましょ」
紬「町まで歩いて行くのは難しい距離だから」
紬「少なくとも朝までは建物の中に閉じ込められる事になるわね」
和「なるほど、此処まではこの前見せて貰ったシナリオと殆ど同じね」
紬「ええ、そうね」
紬「でもこの先からは、ちゃんと書き換えてあるわよ?」
和「どれどれ…」
和「次は…私が何処かに隠れる」
和「何処を探しても見付からない事で騒ぎになる…」
和「前のシナリオだと最初に姿を消すのは紬だったわね」
和「紬は探偵役なんだから、まあこの修正は当たり前なんだけど…」
紬「あら?やっぱり最初に姿を消しちゃうのは残念?」
和「そ、そんな事無いわよ…次に行くわね」
紬(もぅ…素直じゃないんだから)
和「紬がみんなを上手く誘導して脱出手段を提案、そのまま一夜を過ごす」
和「澪と梓、唯と憂を一緒にしてあげて…」
和「残った律に紬が真相を打ち明ける」
和(律と一緒になるのは、紬なのね…)
紬「その時に、私がりっちゃんを建物の外に連れ出すわ」
和「連れ出すって…外は物凄く寒いはずよね、その後はどうするの?」
和「それに、私が隠れる為の場所も必要になるわね」
紬「今度の計画に使う建物の奥にはね、小さな山小屋があるの」
紬「建物からは死角になってて距離も結構離れてるから」
紬「知らない人は絶対に気が付かないと思うわ」
紬「暫くの間はそこに、和ちゃんと一緒に隠れて貰おうかなって」
和「それなら良いんだけど…」
和「でも問題は、そこで律が素直に頷いてくれるかどうかね」
和「律の事だから…何でこんな事をするんだ!って、そんな感じになりそうよ?」
紬「ええ、なるかもしれない」
和「何かしらの対策が必要になるわね、律を確実に説得する為には」
和「それで?紬の考えた案は?」
紬「案?案なんて無いわよ?」
和「いや、無いって言われても…」
紬「ごめんなさい、実はこの辺でもうアイデアが出なくなっちゃって」
紬「最後までお話を書けなくなっちゃったの」
和「ほんとね、次のページから真っ白じゃない」
和「こんなペースで書き進めて間に合うの?」
和「今日だけだったら私も付き合ってあげるけど」
紬「ありがとう…でも良いの、私はもうこれ以上書くつもりは無いから」
紬「やっぱりね、この計画には無理があるかなって思う」
紬「もしこれを実行したとしても」
紬「多分、最初の1人が姿を消して半日位が限界」
紬「特に澪ちゃんは凄く怖がっちゃうと思うから」
紬「どういう風に進めても、可哀想になってしまって最後までは続けられないわ」
紬「だからもう良いの、私が探偵役になる」
紬「そういうお話を考える事だけでも」
紬「それを和ちゃんに聞いて貰える事だけでも凄く楽しかった」
紬「それに場所は折角確保出来たんだから」
紬「普通に合宿をして、和ちゃんと憂ちゃんも呼んで楽しく過ごす」
紬「それだけも…ううん、それで十分かなって思うわ」
和「そう、紬がそういう風に思ってるなら…それで良いかもしれないわね」
~合宿2日目・昼・紬の部屋~
和「それで、話って何?」
紬「和ちゃんはあの計画、まだ覚えてるかしら?」
和「計画って、紬が考えてた連続殺人事件を解決するって話?」
和「ええ、覚えてるけど…まさか今から実行する気?」
紬「そうだと言ったら?」
和「まあ、紬がどうしてもやりたいって言うなら協力しても良いけど」
和「でもあそこから先の話、それに律を説得する方法は考え付いたの?」
紬「ううん、それは何も考えてないわ」
和「それじゃ駄目でしょ…」
紬「でもね、1つだけ良い事を思い付いたの」
和「良い事ね…一応聞いてみるけど、何かしら?」
紬「和ちゃんと私の役、交換して実行してみない?」
和「…」
和「…ちょっと待って、意味が分からないわ」
紬「つまりね、私が最初に姿を消すの」
紬「和ちゃんはみんなを上手く誘導して」
紬「梓ちゃんと澪ちゃん、憂ちゃんと唯ちゃんを2人きりにする」
和「私はその間に律を説得して外に連れ出す…」
和「でも、連れ出した後の計画は何も無いんでしょ」
和「アドリブでどうにかしなさいって事?」
和「無理よ、そんなの」
和「それに、私にだって律を説得する自信は無いわ」
紬「自信なんて必要無いわよ」
紬「和ちゃんは何も言わなくて良いから」
和「どういう意味?」
紬「つまりね、和ちゃんにも2人きりの時間」
紬「プレゼントしてあげたいなって思ったの」
和「駄目よそんなの!」
和「そんな事急に言われても、私にはどうして良いか分からないわ…」
和「それに、そんな事をしたらやっぱり律は怒ると思う」
和「その時には…その、仲良くなれる…かもしれないけど…」
和「でも、後で私達がやった事だって気が付いたら嫌われちゃうわよ!」
和「律には、嫌われたくない…」
紬「大丈夫よ、全部私が考えてやった事にすれば良いの」
紬「私が連続殺人事件の真似事をするいたずらをして…」
紬「でも途中で上手く行かなくなって失敗」
紬「そういう事にしちゃえば、和ちゃんが嫌われる心配なんて何も無いわ」
紬「非難されるのは私だけで済むわよ」
和「紬、そんな風に言われて、私が納得すると思う?」
紬「思わないわね」
紬「でも、和ちゃんはさっき言ったわよ」
紬「私がどうしてもやりたいって言ったら協力してくれるって」
和「ええ、言ったけど…」
紬「和ちゃんが役の交換を嫌だって言うんだったら」
紬「最初の計画通り、和ちゃんには今夜消えて貰うわね」
紬「私が今夜、りっちゃんと一夜を一緒に過ごして」
紬「吊り橋効果を一杯利用して、仲良くなっちゃおうかしら」ウフフ
紬「和ちゃんは知ってるわよね?」
紬「私が女の子同士の恋愛に対して凄く積極的だって事」
紬「私だったら、りっちゃんの喜びそうな事、一杯言ってあげられる」
紬「朝までは長いから、その間に私の事を好きにさせる自信があるわ」
紬「少しでも好きにさせれば、その気持ちはどんどん膨らんでいって…」
紬「後でこの事がバレてもお釣が来る位、私の事を好きになってるの」
紬「別にりっちゃんの事なんて好きでも何でも無いんだけど」
紬「お遊びで付き合ってみるのも良いかもしれないわね」
紬「ああ、夜が早く来ないかしら」
紬「りっちゃんと過ごせる一夜、楽しみで仕方が無いわ♪」
和「はぁ…分かったわよ、降参する」
和「悔しいけど、それが全部嘘だって分かってても」
和「私はそんな事絶対にさせたくないって思っちゃったし」
和「さっき紬が言ってくれた事、してみたいって思っちゃったわね」
紬「あら?私は嘘なんて言ってないわよ?」
紬「でも和ちゃんがそうしたいのなら…うふふっ、もちろん代わってあげる」
和「ええ、代わって貰う事にするわ」
和「でもね、私はお礼なんて言わないわよ」
和「律の事、遊びで付き合っても良いだなんて」
和「そんな事を言う相手に、お礼なんて絶対に言わない」
紬「そう、じゃあ私はこれで」
紬「後は計画通りに」
和「待ちなさい」
紬「何かしら?」
和「さっき言った事、私に教えなさい」
紬「教える…何を?」
和「…」
和「律が何を言ったら喜ぶのか、教えなさい///」
紬「…」
紬「ええ、良いわよ」ウフフ
~夜・お風呂~
紬「このサウナには、中からしか開けられない非常口があるのよね」
紬「ぱっと見ただけでは分からない様に、昨日の内に壁紙を貼ってみたけど」
紬「バレちゃったらこの計画も台無し」
紬「それでも良いんだけど…今日1日だけは気が付かれないで欲しいわ」
紬「とりあえず鍵をかけてから」
ガチャッ
紬「さ、寒いわね…」
紬「早くみんなの携帯を回収しに行かないと」
紬「着信音だけで見付からなかったら…まあその時はその時ね」
~深夜・2階の廊下~
和「静かね…」
律「ああ…静かだな」
和「律は怖くない?」
律「それは、正直怖いよ」
律「何が起こってるのかさっぱり分からないからな」
律「あたしだって、泣きたくなる位に怖いさ…」
和(ごめん紬、やっぱり私にはこれ以上隠す事、出来ないよ…)
和「律、あのね…」
律「でもな、和が一緒に居ると安心出来るよ」
和「え?」
律「迷惑をかけっぱなしのあたしが言うのも変だけど」
律「和には凄く感謝してる」
律「何時も軽音部を見守ってくれてる事、分かってるから」
律「和が居てくれると、和に見守って貰えると…」
律「何時もみたいに、安心出来るんだよ」
和「律…」
律「唯の事が心配なんだよな?それは分かってるよ」
律「でも、軽音部の為に色々としてくれてる事」
律「それは凄く感謝してるって、言っておきたかったんだ」
律「こんな時じゃないと…は、恥ずかしくて言えないからな」アハハ
和「…」
律「う、嘘じゃないぞ?」
律「あたしは本当に…」
ギュッ
律「え?どうしたんだよ?和」
和「怖いの」
律「え?怖い?」
和「怖いから、このままで居て?」
律「あ、ああ…別に良いけど」
律「何だよ、和も案外怖いのが苦手だったりするんだな」
和「ええ、凄く怖い…」
和(律の事が好きになり過ぎて…怖いの…)
和「ねえ、律」
律「何だ?」
和「さっき言った事、本当?」
和「澪と梓の事、これで良いって言ってたけど…」
律「…」
律「どうしてそんな事を和が聞くんだ?」
和「え?そ、それは…」
律「朝まで時間はたっぷりあるんだ」
律「是非それを聞かせて貰おうじゃないか」
和「律、分かってて言ってるわね」
律「まあな…和よりはこういう事、慣れてるつもりだぞ?」
律「あたしは和の事はあまり知らない」
律「でも…今はそうだな、知りたいって思ってるよ」
律「だから聞かせてくれよ、和の事…」
和「うん…」
律「うん…だって、可愛いな!」
和「も、もう!そんな言い方しないでよ!///」
…
…
…
最終更新:2011年04月29日 19:11