~憂の部屋~

唯「憂、寒くない?」

憂「うん、ちょっと寒いね…」

唯「私のウエアを着る?」

憂「そんな事をしたら、今度はお姉ちゃんが寒いでしょ?」

唯「う~ん、じゃあ…」

憂「駄目!駄目だよ!」

憂「今、他の誰かのウエアを取りに行こうって思ったでしょ?」

唯「うん、それしかないかなって…」

憂「駄目だよ、此処に出入りする時は大丈夫だったけど」

憂「外に出たら何が起きるか分からないんだよ?」

憂「この部屋からは絶対に出ない方が良いよ」

唯「でも、夜になったら布団を被ってても」

唯「我慢出来ない位に寒くなるかもしれないよ?」

憂「それは、確かにそうだけど…」

唯「それにね、憂」

唯「私にはこの事件の犯人、もう分かってるんだ」

唯「だから外に出ても大丈夫なんだよ」



~ペンション→町への道~

梓「そんな…澪先輩まで…」

梓「泣きたい…でも、泣いちゃ駄目だ…」

梓「今私に出来る事は何なのか、考えないといけない」

梓「まずは…」


梓「良かった、息はちゃんとしてる」

ユサッ…ユサッ…

梓「起きて下さい、澪先輩!」

ユサッ…ユサッ…

梓「澪先輩!」


梓「駄目だ、全然目を覚まさないよ…」

梓「食料と水はあるけど…」

梓「でもこのままじゃ、こんな場所で目を覚まさなかったら…」

梓「凍死…しちゃうよね」

梓「どうすれば良いんだろう…」

梓「澪先輩を此処に置いていくのが、1番良い方法なのは分かってる」

梓「そうすれば、私だけでも助かる可能性はある」

梓「でも、此処から町まで何時間かかるか分からないけど」

梓「澪先輩を此処に置いて行ったら…」

梓「例え助けを呼ぶ事が出来たとしても」

梓「この場所を見付けるまでに…澪先輩は、死ぬかもしれない」

梓「それに此処からなら、元の建物の方が絶対に近いはず」

梓「あそこなら暖を取る方法だって…何かあるよね」

梓「…」

梓「駄目だよ、迷ってる暇なんて無い!」

梓「だったら…だったら少しでも澪先輩が助かる方法を取れば良いだけだよ!」




梓「憂より、重い…」

梓「荷物もあの時より一杯あるし…」

梓「道に出るまでは下り坂だけど、凄く歩きにくい…」

梓「でも、私が頑張らないと…」

梓「頑張れば、澪先輩はきっと褒めてくれる」

梓「ご褒美を貰う為に、お仕置きして貰う為に…頑張らないと…」



~憂の部屋~

憂「え!?」

憂「お姉ちゃん今、何て言ったの!?」

唯「私には犯人が分かってる、そう言ったんだよ」

唯「私達以外にこの建物に誰かが居る…そんなのは全部嘘」

唯「最初からこの建物には私達以外、誰も居なかったんだ」

憂「嘘…」

憂「じゃあお姉ちゃんは、私達の中に犯人が居るって言うの?」

唯「うん、私達の中に居たんだね」

憂「誰?誰なの?」

憂「もしかして、澪さんと梓ちゃんのどっちかだって言うの?」

憂「だとしたら、2人は今一緒に居るはずだから…」

唯「犯人じゃないもう片方が危ない?」

憂「う、うん…」

憂「でも、あの2人のどっちがが犯人だなんて…そんな事、考えたく無いよ…」

唯「考える事は無いよ、あの2人はどっちも犯人じゃないから」

唯「澪ちゃんとあずにゃんは、もう帰って来ないんじゃないかな…」

憂「…」ゴクリ

憂(この建物に居たのは7人)

憂(もしお姉ちゃんの言う通りに、他に誰も居なかったとすれば…)

憂(紬さん、和ちゃん、律さんが犯人とは考えられない)

憂(澪さんと梓ちゃんでも無い)

憂(だとしたら、残るのは…)

憂「もしかして…もしかして、お姉ちゃんが犯人なの?」

憂「そ、そんな事言わないよね?そんな冗談言わないよね?」

唯「うん、そんな冗談は言わないよ」

憂「良かった、ビックリしたよ」

唯「…」

唯「憂、私は犯人じゃ無いって言ったんだよ」

唯「だったら、誰が犯人なのかは…分かるよね?」



~ペンション→町への道~

梓「はぁ…はぁ…」

梓「こんなに歩いたのに…道に辿り着けないなんて…」

梓「方向が間違ってたのかな…このままじゃ…きっと…」

梓「あっ…」

ドサッ

梓「はぁ…はぁ…」

梓「もう立てない…歩けないよ…澪先輩…」


梓「でも、良かった…」

梓「私は1人じゃない…澪先輩と一緒なんだ…」

梓「眠い…」

梓「幻覚かな…私達が居た建物が…見えるよ…」

梓「でも…もう…動けない…」

梓「このまま…眠っちゃっても…良いよね…澪先輩…」



~憂の部屋~

憂「もしかして…」

憂「お姉ちゃんは私が犯人だなんて言わないよね?」

唯「憂は私が犯人だって言うの?」

憂「そんな事言わないよ!お姉ちゃんが犯人だなんてあり得ない!」

唯「だったら、自分が犯人だって言ってるのと同じだね」

憂「ち、違うよ…私は犯人じゃない…」

憂「私がそんな事する訳ないのに…」

唯「私もそう思いたかったよ…でもね」

唯「こんな物見付けちゃったら、言い訳出来ないよね?」

憂「え?それは!」

唯「さっき憂の着替えを出してあげる時に見付けたんだよ」

唯「全員分の携帯電話、憂が持ってたんだ」

唯「私のお気に入りの携帯も真っ二つ…みんな壊されちゃってるね」

唯「凄いよ憂、私はもちろんだけど、誰にも気が付かれずにこんな事が出来るなんて」

憂「し、知らないよ!私、そんなの知らないよ!」

唯「でもね、これは憂のバッグから出て来たんだよ?」

唯「みんなの携帯が無くなったのがこの事件の始まりで」

唯「憂がこれを持っているという事は」

唯「この事件を起こした犯人だって言ってるのと同じだよ」

唯「みんなを何処へ隠したの?もう、殺しちゃったの?」

唯「澪ちゃんとあずにゃんは、私が見た時には何とも無かったけど」

唯「でも憂の事だから、見逃すなんて失敗はしないかな」

唯「私も、この後で殺されちゃうんだろうね…」

唯「多分薬か何かで眠らされて、山に捨てられるんだ」

唯「憂はただ1人の生き残りとして、こう言うんだろうね」

唯「私が全員を殺して、最後に憂を此処で殺そうとした」

唯「でも失敗して山へ逃げ込んで、その途中で遭難」

唯「憂の言った通りに、私の死体が山で見付かるんだよ」

唯「真実は誰にも分からない、憂以外には誰にも分からないからね」

憂「酷い…酷過ぎるよ、お姉ちゃん…」

憂「私は足を怪我してるんだよ?そんな事、出来る訳が無いじゃない…」

唯「それも全部嘘、そうやって油断させて私に何かをするんだよね」

憂「違う、違うよお姉ちゃん!どうして私の言ってる事を信じてくれないの?」

唯「もう良いんだよ、憂」

唯「全部分かってても、憂とはもう少し一緒に居たかった…」

唯「でも、此処まで言っちゃったらもう無理だよね」

唯「憂にはそんなに可哀想な事、させられないよ」

唯「大丈夫、私は1人で山に入って死んで来るから…安心して良いよ?」

唯「憂がどういうつもりでこんな事を考えたのかは分からなかったけど…」

唯「でも良いんだ、憂が…憂が生きててくれるんだったら」

唯「私はそれだけで良いんだよ」

唯「じゃあ憂、元気でね」

ガチャッ

憂「待って!待ってよお姉ちゃん!」



~建物の外→山の中~

唯「さて、私はこれから死ぬのか…」

唯「どれ位歩けば良いんだろう、分からないや」

唯「とりあえず歩ける所まで歩いて、そこで寝てれば良いのかな?」

唯「そのまま眠っちゃえば、苦しまなくて済むよね」




唯「疲れた…どれ位歩いたんだろ?」

唯「建物も全然見えないや」

唯「じゃあ、此処で寝てれば良いって事だよね…」


唯「憂…おやすみなさい」


~憂の部屋~

憂「私、本当に1人になっちゃったんだね…」

憂「どうしてこんな事に…」

憂「お姉ちゃん、どうして私の言った事を信じてくれなかったの…」

プルルルルルル…

憂「?」

プルルルルルル…

憂「何の音?」

プルルルルルル…

憂「電話?電話の音だ!」

プルルルルルル…

憂「うっ、痛い…まだ歩けない…」

憂「でも、これが最後のチャンスかもしれない…行かないと…」

ガチャッ

プルルルルルル…

憂「音は…下?1階の食堂かな…」

憂「痛い…けど、歩かなきゃ…」

~食堂の外~

プルルルルルル…

憂「お願い、もう少しだけ…」

プルルルルルル…

憂「あともうちょっとだから…」

プルルルルルル…チン

憂「そ、そんな…」

憂「で、でも…電話がかかって来るって事は…」

憂「こっちからもかけられるはずだよね!」



~食堂~

憂「電話は、確か奥の方に…」

憂「警察に連絡出来れば…」

憂「今だったらお姉ちゃんは、お姉ちゃんはきっと助けて貰えるよ…」

憂「だから電話を、電話をかけないと!」

カチャ

憂「1…1…0…」

憂「…」

憂「嘘…」

憂「音が…全然聞こえて来ない…」

憂「嘘でしょ?さっきまで電話は…鳴ってたじゃない…」

プルルルルルル…

憂「えっ…」

プルルルルルル…

憂「どうして…」

プルルルルルル…

憂「どうして…電話が鳴ってるの…」

プルルルルルル…

憂「どうして…」

プルルルルルル…

憂「どうして…音が上から…聞こえて来るの…」

プルルルルルル…

憂(上を…上を見た方が良いの?)

プルルルルルル…

憂(駄目だよ…体が動かない…)

プルルルルルル…

憂(怖いよ…見たくないよ…)

プルルルルルル…

憂(違う…見たくないんじゃない…見れないんだ…)

プルルルルルル…

憂(今気が付いた…)

プルルルルルル…

憂(受話器から…何か煙みたいなのが出てる…)

プルルルルルル…

憂(駄目…意識が…遠く…なって…いく…)

プルルルルルル…

プルルルルルル…ドサッ

プルルルルルル…

プルルルルルル…チン




憂(…)

憂(私…どうしたんだろう…)

憂(どうして…こんな所で寝てるんだろう…)

憂(電話を…電話をかけなきゃ…いけないのに…)

憂(ぼんやり…何かが…見える…)

憂(誰か…倒れてる…)

憂(紬さん…だ…)

憂(和ちゃん…)

憂(律さん…)

憂(澪さん…)

憂(梓ちゃんも…居る…)

憂(そうだよ…電話をかける事に…夢中になってたけど…)

憂(最初からみんな…倒れてたよね…)

憂(みんな…死んでるの?)

憂(みんな死んでしまって…生き残ったのは…)

憂(…)

憂(違う…お姉ちゃんが犯人だなんて…そんな事…あり得ない…)

憂(じゃあ…犯人は…)





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