~合宿2日前・部室~

紬「合宿をしま~す!」

唯律澪梓「…」

紬「あら?みんなどうしたの?」

律「…すまんムギ、もう1度言ってくれないか?」

紬「合宿をしま~す!」


紬「どうしてみんな何も言ってくれないの?」グッスン

澪「いや、いきなりそんな事を言われてもな…」

梓「合宿って夏休みにやりましたよね?」

紬「ええ、やったわね」

唯「ムギちゃん、それを忘れてしまって…ま、まさか記憶喪失!?」

紬「唯ちゃん、もちろん夏休みに合宿をしたのは覚えてるわよ」

紬「でも、冬休みにも合宿したいって思わない?」

唯「へ?そう言われてみれば…うん、してみたいね!」

律「でも、年末年始はムギにも色々と予定があるんだろ?」

律「そういうのも考えて、去年は初詣だけ誘ったんだけど…良いのか?」

紬「もちろんよ!」

紬「部活の時間にこうしてお茶を飲んで、練習をして…」

紬「それだけでも毎日が凄く楽しいわ」

紬「でも、折角出会えたみんなと…」

紬「軽音部のみんなと、もっと色々してみたいって思うの」

紬「私の予定なんて気にしなくても良いのよ?」

律「そうか…いや、悪かったな」

律「そういう所に気を使うなんて、らしく無かったって思うよ」

紬「ううん、私の方こそごめんなさい」

紬「本当にそう思ってるなら、誘って貰えるのを待っているだけじゃなくて」

紬「もっと積極的に、私の方から誘う位にならなきゃ駄目だって気が付いたの」

紬「だから今日は合宿を提案してみたんだけど…駄目かしら?」

律「ムギがそう言ってくれるなら、あたしには反対する理由は何も無いな」

澪「私も賛成だ」

澪「但し練習はちゃんとする事、それが条件だぞ?」

梓「私も練習が思いっ切り出来るんでしたら賛成したいです」

唯「じゃあ、もう決まりだね?」

紬「決まりなの?良かったわ!」

律「後は…そうだな、さわちゃんも誘っておこう」


~職員室~

さわ子「冬休みにも合宿ね…良いんじゃないの?」

唯「さわちゃん先生も一緒に行くよね?」

さわ子「ごめんなさい、私はちょっと行けそうにないと思うわ」

さわ子「学校が休みの間でもね、色々と仕事ってあるものなのよ?」

律「そっか…じゃあ、あたし達5人で行って来るか」

さわ子「合宿って何処でやるつもりなの?」

さわ子「交通費も少しだけなら部費から出してあげるけど」

律「え?そう言えば場所なんて聞いて無かったな」

律「ムギ、今回は何処の別荘でやるつもりなんだ?」

紬「え~とね、今回は別荘じゃなくて」

紬「○○県○○市の山奥にね、ペンションが1件あるんだけど」

紬「そこでやりたいなって思うの」

澪「ペンションって事は、部屋を借りるって事か?」

唯「じゃあ、今回は泊まるのにもお金がかかるんだね…」

梓「○○県って結構遠いですよね?」

梓「私、今月はちょっとお小遣いピンチなんですけど…」

紬「大丈夫よ、交通費も宿泊費もかからないから」

律「それはムギの力で何とかなるってやつだろ?」

律「毎回そういうのに頼るのは、ちょっと悪い気もするんだよな…」

紬「ううん、そういう意味で言ったんじゃないの」

紬「私に任せて頂戴」

紬「みんなは自分の楽器と…後は寒くても大丈夫な服装だけお願いね?」

さわ子「決まりなのかしら?」

さわ子「まあみんなの事だから大丈夫だと思うけど、気を付けて行ってらっしゃい」


~平沢家~

憂「お姉ちゃん、冬休みの予定はもう立てた?」

唯「冬休みは…合宿をします!」

憂「合宿?今日初めて聞いたけど、それって何時決まったの?」

唯「今日決まったんだよ~」

憂「へぇ~、そうなんだ」

憂「で、何時から行くの?」

唯「明後日から!」

唯「それでね、朝早い電車に乗るから6時に起きなきゃいけないんだよ」

唯「憂、悪いんだけど…もし寝てたら起こしてね?」

憂「…」

唯「あれ?憂、聞いてる?」

憂「え?うん、聞いてるよ…」

憂「6時だね、分かった」

憂「ちゃんと起こしてあげるから安心して?」ニコッ

唯「うん、お願い!」

唯「合宿、楽しみだよ~」


~憂の部屋~

憂「折角貰ったのに…これ、どうしよう」

憂「捨てちゃうのも勿体無いし…」

ピピピピ…ピピピピ…

憂「電話?あ、和ちゃんだ」


~合宿1日目・午後~

唯「雪、雪だよ!りっちゃん!」

律「雪だな!唯!」

唯律「うお~~~!!!」ドドドドドドド…


澪「あの2人は何処に行っても同じテンションだな」

梓「こんなに沢山の雪を見たのは、きっと初めてなんでしょう」

澪「まあ、そう言ってる私も初めてだからな…気持ちは分かるよ」

澪「しかしそれにしても、随分と山奥にあるんだな」

梓「そうですね、駅前の町から車で1時間以上かかりましたし…」

梓「それに周りには何も無いだなんて、凄い所ですね」

澪「建物は綺麗で良いと思うけど、こんな場所に泊まりに来る人は居るのか?」

紬「ええ、何時もは結構来るそうよ」

紬「こういう静かな場所でゆっくりしたい人って多いみたいなの」

澪「そうか…ん?何時もは?」

梓「あの、さっきから気になってたんですけど」

梓「曇って少し薄暗くなって来たのに、玄関も部屋の灯りも付いてないですよね…」

梓「もしかして、誰も居ないんじゃないんですか?」

紬「正解よ、梓ちゃん」

澪「誰も居ないって、どういう事だ?」

紬「それは後で説明するわ、まずは中に入りましょ?」

梓「そうですね、さっきまでは車の中だったから感じなかったんですけど」

梓「此処、凄く寒いです…」

澪「そうだな…あれ?律と唯は何処に行ったんだ?」

ガチャッ

紬「え!?」

律「軽音部の皆様」

唯「ようこそいらっしゃいました!」

澪「…何だその格好は?」

梓「メイド?」

律「いや~、建物の裏側まで回ってみたんだけど」

律「寒くて仕方が無かったから中に入らせて貰ったんだよ」

唯「そしたらね?中にこの服が5着用意してあってね」

唯「私達の名前が書いてあったから着ても良いんじゃないかなって思って」

紬「…」

唯「あれ?もしかして…駄目だったの?」

紬「ううん、そんな事は無いわ」

紬「それは私達の為に用意して貰った服だから良いんだけど…」

唯「う~、さ、寒いね~」

律「確かに、この格好じゃ外には出られないな…」

律「みんな、早く中に入れよ」

澪「そうだな、お邪魔しよう」

梓「ムギ先輩も早く」

紬「ええ…そうね」


~食堂~

紬「もう一度確認したいんだけど、りっちゃんは何処から入ったの?」

律「何処って、普通に裏口からだけど?」

澪「どうしたムギ、何か気になる事でもあるのか?」

紬「ううん…多分、私の思い過ごしだと思うから…」

唯「でも、何で誰も居ないんだろうね?」

梓「そうですよ、まず最初にそれを聞きかったんです」

澪「確かにおかしいな、此処ってペンションだろ?」

澪「お客さんが居ない事はあるかもしれないけど」

澪「従業員が誰も居ないっていうのはおかしくないか?」

律「そうか、そう言われてみればそうだな…どうしてだ?ムギ」

紬「そうね、まずはそれを説明するわ」

紬「みんなにはね、此処で5日間だけ従業員として働いて欲しいの」

律「つまり…住み込みのアルバイトって事か?」

紬「りっちゃん、理解が早くて助かるわ」

紬「それが此処に無料で泊まらせて貰える為の条件」

紬「交通費もちゃんと事前に貰ってるから安心してね」

澪「それは助かるんだけど、いきなりバイトって言われてもな…」

澪「泊まる人の接客とかしないといけないんだろ?」

澪「しかも律と唯が着てる服で…」

澪「そ、そんなの恥ずかしくて出来ないぞ…」

紬「大丈夫よ澪ちゃん、泊まる人は誰も来ないから」

澪「え?どうしてだ?」

紬「このペンションはね、私の遠い親戚の方が夫婦で経営してるんだけど」

紬「今は2人で海外旅行に行ってるの」

紬「その間、建物が無人になっちゃうのは良くないからって」

唯「分かったよ!私達はその間、お留守番をしてれば良いんだね!」

紬「そう、お留守番ね」

紬「でもそれだけじゃ駄目なのよ?ちゃんとお仕事もしないと」

紬「お客さんは誰も来ないんだけど、丁度良い機会だからって」

紬「この食堂とお風呂、それに泊まるお部屋のお掃除をお願いされてるの」

律「掃除か…まあ嫌いじゃないんだけど」

律「あたし達みたいな素人がやって良いものなのか?」

紬「大丈夫よ、此処は高級ホテルじゃないんだから」

紬「何時もみんながやってるみたいに、普通にお掃除すれば良いの」

澪「でも、いい加減にやるとムギに迷惑がかかるんだろ?」

澪「だったら、手抜きはしないでしっかりとやろうな」

梓「そうですね、特に約1名の先輩には気を付けて欲しいです」チラッ

唯「あずにゃん酷いよ~、私だってやる時にはやるんだからね!」

梓「分かってますって、冗談ですよ」

梓「唯先輩もこういう時にはサボったりしない人ですからね」

律「お、梓が唯を褒めるなんて珍しいんじゃないのか?」

澪「そうでも無いぞ、陰では結構褒めてたりするからな」

唯「あずにゃん…やっぱり、あずにゃんは私の事が…」

唯「でも、ごめんね?私にはもう心に決めた人が居るんだ…」

梓「それも分かってますから」

梓「そういう勘違いされそうな言い方、止めた方が良いと思いますよ」

梓「その人、唯先輩の事に関しては冗談が通じませんから」

唯「え?あずにゃんには誰の事か分かるの?」

梓「ええ、まあ…」

律澪(いや、バレバレだろ…)

澪「ところで…どうして掃除するだけなのに、こんな服が用意されてるんだ?」

澪「いや、確かにメイドの仕事の中には掃除もあるんだろうけど…」

澪「でも、今回はこれを着てやる理由が無いと思うぞ?」

紬「駄目よ澪ちゃん、これもアルバイトの条件に入ってるんだから」

澪「そうなのか…じゃあ仕方が無いな、後で着替えるよ」

紬「そうね、是非そうして頂戴」ウフフ

律(澪、騙されてるぞ~)

律(…)

律(まあ唯とあたしは良いとして…)

律(梓はこういうノリは止めそうな気もするんだが…どうなんだ?)チラッ

梓(澪先輩のメイド服姿…見たい!是非見たい!)

律(…)

律(超ウットリしてるぞ…)



澪「1階にあるのはこの食堂とお風呂…」

澪「隣の部屋は乾燥室って書いてあったけど何の部屋だ?洗濯物でも乾かすのか?」

梓「澪先輩、それはスキーとかの道具を乾かしておく部屋ですよ」

澪「スキーは…いや、スノボーもやった事は無いんだけど」

澪「出来るんだったらやってみたいな…道具とかはレンタルさせてくれるのか?」

紬「ええ、スキーだけなら道具は一式揃ってるわよ」

紬「ゲレンデは裏に斜面が少しあるだけで、リフトも無いからちょっと大変だけど…」

紬「でも、私達の貸切状態だからきっと楽しいと思うわ♪」

梓「道具を貸して貰えるなら、私も久しぶりにやってみたいですね」

澪「梓は経験があるのか?」

梓「ええ、自分で言うのも何ですけど結構上手いんですよ?」

澪「そうか…じゃあ、私は梓に教えて貰おうかな」

梓「は、はい!是非教えてあげたいです!」

紬「部屋の中も見てみる?」

澪「そうだな、ちょっと見てみたいな」


~乾燥室~

澪「へぇ~、結構本格的なんだな…」

梓「あの…ムギ先輩」

紬「何かしら?梓ちゃん」

梓「ウエアは他に無いんでしょうか?」

紬「ごめんなさい、此処にあるだけなの」

澪「梓のサイズに合いそうなのが無いのか?」

梓「いえ、1着だけあるんですけど…」

澪「だったら良いじゃないか、試しに着てみたらどうだ?」

紬「サイズはピッタリみたいね?」

梓「そうですけど…でも、どうして尻尾とネコミミが付いてるんですか?」

紬「さあ、どうしてかしら?」

梓(さっきのメイド服もそうだけど)

梓(絶対にムギ先輩のオーダーメイドだよ…)

梓「これを着て滑るのは、ちょっと恥ずかしいですよ」

紬「そうかしら?可愛くて良いと思うんだけど…澪ちゃんはどう思う?」

澪「私は良いと思うな」

澪「梓の可愛い所が引き立つと言うか…ん?どうして後ろを向くんだ?」

梓「な、何でもありません!」

紬「梓ちゃん、もし気に入らなかったら無理に着なくても良いのよ?」

梓「いえ!私はこれを大変気に入りました!」

紬「そう?良かったわ」ウフフ

澪「隣にもう1つ部屋があったけどそこは?」

紬「オーナーさんの部屋よ」

澪「なるほど、後は2階に泊まる部屋が8つあったな」

澪「部屋はどうするんだ?好きに決めて良いのか?」

紬「ええ、でも部屋の作りは全部同じよ?」

澪「何処でも一緒なら、手前から5部屋にすれば良いか…」

澪「誰が居るのか分かった方が良いと思うから、紙に書いて貼っておこう」

紬「そうね、じゃあそれは澪ちゃんにお願いするわ」

紬「今日はみんな疲れてると思うから、お食事をしてお風呂に入って…」

紬「後は寝るだけで良いと思うんだけど、澪ちゃんはやっぱり練習したい?」

澪「いや、今日は流石に疲れたからそれで良いと思う」

梓「私もそれが良いと思います、唯先輩と律先輩は既に寝ちゃってますし」

紬「電車の中でも2人ではしゃいでたものね」

澪「仕方ないな、夕食は3人で作るか…材料はあるんだよな?」

紬「ええ、冷蔵庫の中は好きに使っても良い事になってるわ」


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