数週間後、学校

ヒタヒタ

さわこ「さてと、採点終わったしそろそろ帰ろうかしら」

ヒタヒタ

さわこ「すっかり遅くなっちゃったわね。カップラーメンでも買って」

律「さーわちゃん」

さわこ「!?」

さわこ「あああ、りちゃ・・・なんでここに・・・」

律「随分な言葉だな。私はずっとこの時を待ってたっていうのに」


ぼろぼろの制服に、フードを深く被った律がそこに立っていた

律「そろそろ聞かせてくれよ。色々とさ」

さわこ「な、なんのことかしら?」

律「とぼけないでよ。どうして澪がああなったのか、なんでそんなことをしたのか、聞かせてよ」

律「なあ!?」

さわこ「そんな凄んでみせても別に怖くないわよ。たかが高校生が」

律「ああ?」

さわこ「それにそれを聞いたところでどうしようってわけ?それで澪ちゃんが助かるの?」


律「澪が助からないことくらいわかってるよ・・・それでもさわちゃんがこんなことをした理由を聞かないと死んだむぎが浮かばれない」

さわこ「はっ!自分で殺しておいてよく言うわ!」

さわこ「いいわ聞かせてあげる。私はね、軽音部が大嫌いなの」

さわこ「あなたたちみたいなバンドのバの字も知らない小娘が活動してる軽音部は特にねえ!」


律「なんだと?」

さわこ「私がこの学校の軽音部に入っていたのは知ってるわよね?」

律「ああ、ギターがすごくうまかったことも」

さわこ「ふふふ、褒めてくれるの?」

律「うるさい。そんなことはどうでもいいから早く話せ」

律はさわこにアーミーナイフを向けた

さわこ「せっかちね。そんなに焦らなくてもちゃんと話すわよ」

さわこは目を閉じ、ポツリポツリと語り始めた

さわこ「高校のときからライブハウスでライブをしていた私達はインディーズデビューの話も出るほどだったの」

さわこ「その話をもらった時からはもう練習ばかりの日々だった。それこそ血反吐は吐くほどにね」

律「それがなんだっていうんだ」

さわこ「まあ、聞きなさい」

さわこ「私達は在学中にデビューを果たした。本当に嬉しかったわ」

さわこ「デビューできたこともだけど、なにより最高の仲間とバンドができることがね」

さわこ「デビューしてからは勉強は二の次で練習をしていたわ」

さわこ「大学進学や就職など頭になかった。高校を卒業したらもっともっと練習に打ち込んで、メジャーデビューもできると思っていた」

律「そんなにうまかったのになんで先生なんてやっているんだ」

さわこ「諦めたのよ。いや、諦めざるを得なかった」

律「諦めた?なぜ?」

さわこ「仲間の一人がね、狂っちゃったの」

律「なんだと?」


さわこ「それこそ今の澪ちゃんのようにね・・・」

律「ゴミを仲間だと思い込んじまったのか・・・どうして・・・?」

さわこ「さあ?理由はわからないわ」

律「何?」

さわこ「たぶん大きなプレッシャーに押しつぶされたんじゃないかしら」

さわこ「その子は責任感の強い子だったわ。作曲も作詞も全て一人で担って・・・」

さわこ「私達は彼女に頼りすぎていたんだわ・・・そのプレッシャーで彼女は大きなストレスを抱えていた・・・」


さわこ「レコード会社にそのことがバレて、私達はメジャーデビューを諦めるしかなかった。それどころかバンドも解散したわ」

律「なぜ解散する必要がある?そいつの代わりに新メンバーを入れればいい話だろ」

さわこ「それはできなかった・・・この気持ち、あなたもよくわかると思うけど?」

律「どういう意味だ」

さわこ「わからない?あなたは狂った澪ちゃんをクビにしてまで、新しいバンドを組もうと思う?」

律「それは・・・」

律「・・・。思わないな。澪は大切な仲間だ。もし私がさわちゃんと同じ状況だったら、バンドを解散していた」


さわこ「さすがりっちゃんね。仲間思いだこと」

律「あんたもだろ。だがそれと澪に何の関係がある?」

さわこ「さっき言ったでしょ?私はあなた達みたいにのうのうと楽しくバンド活動してる奴が大嫌いなのよ」

さわこ「この高校に赴任してからもあの手この手で軽音部を潰す工作をしていたわ。だからあなた達が来たときも軽音部は廃部寸前だったでしょ?」

律「ああ、おかしいと思ってた。普通どの学校でも軽音部って言ったら部活の中では人気だからな」

さわこ「ある部員は事故に見せかけて二度とギターを持てない体にしたし、ある部員はいじめて引きこもりにさせた」

律「なんでそこまでするんだ・・・あんたは軽音部が好きだったんじゃないのか?」

さわこ「もちろん好きよ。私達のように血反吐を吐くほど練習する部員がいる軽音部ならばね」

律「それはエゴだよ!」

さわこ「なんとでも言いなさい」

律「それじゃあ澪には・・・一体何をしたんだ・・・」

さわこ「集団で強姦してやったわ」

律「・・・!?」

律「本当か・・・?」

さわこ「本当よ。怖がる澪ちゃんが犯されているのを見るのは中々オツだったわ」

さわこ「今までの部員で一番澪ちゃんが嫌いだったのよ・・・!真面目に練習もしないであんなにベースがうまいなんて許せなかった!やる気もないくせに才能を持っているのが我慢できなかった!」

さわこ「だからいつも以上に痛めつけてあげたのよ。10人連続中だし、その後子供ができないように何度も腹を殴ってやったわ」

律「澪・・・」ポロポロ

さわこ「一時間くらい殴ってたかしら?澪ちゃんはもう胃液も吐けないほどだったわ」ポロポロ


律「澪、澪・・・」ポロポロ

その時の澪の姿を想像するだけで、律はいたたまれない気持ちになった

律「どうして・・・」

律「うわあああああああああああああ!!!」

律は渾身の力でさわこにタックルをかまし、二人一緒に床に倒れた
不思議なことにさわこの抵抗はなかった

律「あんたの下らない逆恨みのせいで澪は・・・私達は・・・軽音部は・・・!」ポロポロ

さわこ「謝るわ。私ももう疲れた。お願い殺して」ポロポロ


律は一思いにさわこの腹を掻っ捌いた
勢いよく血が噴出し、内臓がこぼれ落ちた


ごめんねりっちゃん
そうだ、良かったらあっちでバンド組まない?すぐこっちに来るつもりなんでしょ?



うーん、考えておくよ



むぎちゃんもいるし、澪ちゃんも連れてきなさいよ。唯ちゃんはダメ。私のギターが目立たなくなっちゃうからね



そうだな



さわこ「」

律は涙を拭い、澪のいる病院へ向かった



病院

ガチャ

律「澪、いるか?」

澪「」

澪は律(空き缶)が殺されたショックで植物状態のようになっていた

律(澪が幸せになるためにはこれしかないんだ。これしか・・・)

律は澪の上に馬乗りになるとジワジワと澪の首を絞めだした

澪「うっ・・・」

律「大丈夫・・・私もすぐ行くから・・・痛くないから我慢して」ポロポロ

律は精一杯の優しさで澪を殺そうとしていた

バーン!

さわこ「あいつです!あいつが殺人犯です」

律「え?」

警官「患者が危ない!奴を取り押さえろ!」

律は数人の警官に羽交い絞めにされた

律(なんで!?なんでさわちゃんが生きてる!?なんだよこれえ!?)

律はとらわれた宇宙人のような格好で病室から連れ出される
一瞬さわこと目があった
彼女は意地悪くほくそ笑んでいた

律「なんで・・・?どうしてこうなった・・・?どうなってる・・・」





音楽室

澪「ういっす」

紬「こんにちは、澪ちゃん。お菓子用意してあるわよ」

澪「お、今日はシュークリームか!やったぁ!」

澪「ほら律、シュークリーム食べるか?アーンしろ」

律「アーン、パク」

澪「うまいか?」

律「うー!うー!」

澪「そっか・・・良かったな」ポロポロ

澪(どうしてこうなった・・・)ポロポロ


第一章 完





澪「律・・・お前一体どうしてしまったんだよ・・・」ポロポロ

紬「お医者様の話だと、ずっと夢の中にいる状態らしいわ」

律「あはは」

澪「時々ああやって笑うんだよ・・・どんな夢を見てるんだろうな」ポロポロ

紬「正義感の強いりっちゃんだもの。きっと悪の組織を倒しているのよ。」

律「みー!みー!」

澪「ああ、ここにいるよ」

澪「唯はまだこないのか?」

紬「うん、りっちゃんがこうなってからずっと・・・」

律「どらどら!」

澪「ドラムを叩きたいのか?ほら、つれてってやるから」

澪はお姫様抱っこで律を抱きかかえると、ドラムのあるところまで運んだ

澪「これがスティックだ。これでドラムを叩くんだぞ」

律「うあ!」

律は澪に向かってスティックをぶん投げた

澪「こら!危ないだろ!これはこうやって使うんだ」

澪は丁寧に律にドラムのたたき方を教えた

ガチャ

さわこ「やってるー?」

澪「あ、さわこ先生」

律「さわさわ」

さわこ「りっちゃんこんにちは。今日はドラムをやってるの?」

律「あー」

さわこ「そう、良かったわね」ポロポロ


さわ子「唯ちゃんはまだこないの?」

澪「ええ、ずっと・・・」

さわこ「そう、あの子もどうしちゃったのかしらね」

澪「わかりません・・・」

律「ゆー!ゆー!」

澪「そうだな、唯戻ってくればいいな」



澪はてんすになってしまった律をかいがいしく介護した
律をおぶって登下校をし、学校ではトイレ食事の世話なども行った
律の親にはそこまでしなくていいと言われていたのだが、
なぜかやめる気にならなかったし紬やさわこのサポートもありさほど苦ではなかったのである

帰り道、今日も澪は律をおぶって下校していた

澪「律、覚えてるか?」

律「?」

澪「私たち、武道館を目指していたんだぞ」

律「ブドーカン?」


澪「そうだぞ、律がドラムで私がベースでムギがキーボード、唯がギター。この4人で武道館でライブをしようとしていたんだ」

律「ユイ・・・?ブドーカン?」

澪「唯は最初カスタネットしかできなかったんだ。それで武道館ライブするっていうんだから笑っちゃうよな」

律「うんたん・・・うんたん・・・」

澪「!?」

澪「り、律・・・?」

澪「何か思い出したのか!?」

律「唯・・・」

澪「り、律・・・!思い出したんだな!?私がわかるか!?」

律「秋山澪・・・私の親友だ」

澪「律・・・!良かった・・・律ううう!」



次の日、音楽室

律「私はずっと夢を見ていたんだ」

澪「医者もそういっていたな。律は夢を見ている状態だって」

律「ああ、夢の中では澪がゴミを軽音部のメンバーだと思い込んでて、私はむぎを逆恨みして惨殺した」

紬「そんな・・・」

律「さわちゃんは澪にひどいことをして最後に私に殺されたんだ」

さわこ「恐ろしいわね」

律「夢の中では私の味方は唯だけだった。あいつが私を支えてくれていたんだ」

澪「それがなんだっていうんだ?律が変になってしまったのと関係あるのか?」

律「おおありだよ。なぜ夢の中では唯だけが味方だったのか、それは私がああなってしまった原因が唯にあるからなんだ」

澪「どういうことだ?」

律「あの日、私は唯にひどいことをされたんだ・・・私はその現実が受け止められなかった」

律「毎日あんなに仲良く過ごしていたのに・・・友達だと思っていたのに」

律「だから夢の中の唯だけは私の望む唯になったんだと思う」

さわこ「ひどいことって?一体何をされたっていうの?」

律「集団で・・・強姦されたんだ・・・」

澪「なんだって・・・!?」


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