【そして、とある未来】
【午前9時01分】
唯(45)「おーい、朝だよ~」
唯の息子(15)「う~ん……zzz」
唯「ほら、こーちゃん。今日は大事な日なんじゃないの?」
子「うん……? 大事な日…………」ムニャムニャ
子「あ、やべ! 今日はデートじゃん!」
唯「ほら、さっさと起きる!」
子「うわわわ!」
子「っていうか、イマ何時?!」
唯「9時を少し回ったとこ」
子「よかった、セーフ……」ホッ
唯「でもでも、準備があるから余裕はないよ」
唯「まずは顔洗って、ボサボサ頭を整えて、朝ごはんを食べちゃって!」
子「おー」
唯「お、来た来た。遅いよ~!」
子「やー、なかなかセットが決まんなくて」
唯「まったく。この子はモー……」
唯「ホラ、ごはん用意したげたから、さっさとする!」
子「サンキュー、母ちゃん! いただきまーす!」
子「うめー」モグモグ
唯「うふふふ」
唯「ねーねー、こーちゃん?」
子「ん、何?」
唯「今日のデート相手って、確か同じバンドのベース少女ちゃんだっけ?」
子「や、何べん言わすんだよ。同じ部の先輩。3年生で、担当はドラム!」
唯「あー、そっかそっか。そーだった!」
唯「ねーねー。因みにどんなコ? かわいい??」
子「う、うん。めっちゃいい人だし、すっげーカワイイひと、だよ///」
唯「ほほー、いいですなぁ……///」
唯「ねーねー。今日のデートだけどさぁ……」
子「?」
唯「その、母ちゃんも、一緒に同伴しちゃ、ダメかな???」
子「…………絶体ダメ! なにいってんだアンタ!!」
唯「だったら、こっそり尾行しつつ、記念のビデオ撮影とか…………」
子「……カンベンしてくれよ。付いてくんな!」シッシッ
唯「ヴー、けち~」
子「まったく……」
唯「しかしまー、感慨深いなー」
子「えっ、何が?」
唯「私の子も、自分と同じく高校から軽音部入ってバンド組んだとか。やっぱ遺伝だなーって」
子「……まぁ軽音部っていうか、あれだけど」
子「…………なぁ母ちゃん?」
唯「んー?」
子「その、母ちゃんも昔バンドしてたって言うけど、それは本当の話なん?」
唯「ほんとほんと、大マジだよ~」
子「え~」
唯「『え~』とはなにか(怒)」
子「だってさ、母ちゃんがバンドしてた風とか、練習頑張ってた様には思えねーもん」
唯「このー、言うようになったね~」
唯「あれだよ、こー見えても母ちゃんは、若いときは凄腕バンドマンだったのだからっ」エッヘン!
子「……例えば、どのくらい?」
唯「デビュー曲が、ニ○ニコ動画ランキングで1位取ったり!」
子「……えぇぇ」
唯「文化祭のライブでも、母ちゃん達の演奏を聴きに、めちゃめちゃ人が集まったり……」
子「……んん、どのくらい??」
唯「……ご、五十万人くらい、だったと思う!」
子「それは、ウソでしょ?」
唯「…………すみません、これは嘘でした」
唯「やー、でもね。練習とかは毎日やってたんだから!ほんと!!」
子「へー」
唯「放課後に毎日集まって、みんなで一時間くらい……」
子「一時間くらい……?」
唯「……お茶会をしたり!」
子「……お茶会!?」
唯「その後みんなでまた、一時間くらい、お喋りしたり!」
子「お喋り!??」
唯「そんでそんで、それから練習をね、ちょっとやってた!」
子「……」
唯「……あー何か『そこはもっと練習しようよ』とか思ってるでしょ!」
子「……ん、まぁ少し」
唯「ふーんだ!」
唯「いいんだよ。私たちは楽しい一時を過ごせてたんだから!」
子「うん、まぁね。楽しいのが何より」
唯「……ちなみに、こーちゃんはバンドとか、楽しい?」
子「あ、俺? うん。スッゲー、楽しいよ!」
子「先輩も仲間も、みんないい人でさ。ケンカしたりもするけれど」
唯「うんうん」
子「それでも自分のやりたい事に挑戦できて、上手くいって、」
子「でも本当に本当に大事なトコは、思った通りにはならなくて」
唯「ほうほう」
子「大変な事も多いけど、まぁそれでも、あの場所で、あの皆と頑張っていきたいって、思ってる」
唯「おー、いいね~。私とはゼンゼン違うけど、青春そのものだね~」
唯「ふふふ。いいことだよー。そんな素敵な場所と、出会えた人達を、大切にしてね!」
子「……あぁ」
唯「きっと、きっとね!」
唯「自分が望む場所で頑張れたって思い出と、一緒に過ごした仲間との思い出は、」
唯「この先ずっと、自分を支えてくれる、人生の宝物になるから……」
子「……かーちゃん、いいこと言うなぁ」
唯「あー、でも楽しいコトだけじゃ駄目だよ~」
子「うん?」
唯「しっかり勉強もして、将来できたら、お堅い職業に就きなさい!」
子「あぁ、分かってるよ~」
唯「ま、とにかく今日のデート頑張って!」
子「おっと、そろそろ出発の時間だな」
唯「それじゃ、あーゆーれでぃ?」
子「いえっさー!」
唯「服装や髪形!?」
子「バッチリ!」
唯「ハンカチにティッシュ!?」
子「ポケットに!」
唯「デートプランは!?」
子「一週間、練りに練った計画と、そのメモ帳!」サッ
唯「よろしい!」
唯「最後に、お財布と携帯は?」
子「どっちもココに……って、ああヤベー!」
唯「どしたの?」
子「ケータイの充電が、もう10%もない!」
唯「また!? 寝る前に充電しときなさいって言ったじゃん!」
子「ああああ、どーしよー」
唯「まったくモー、この子ったらホント残念系男子なんだから」ヤレヤレ
子「……母ちゃんには言われたくねーよ」
子「まぁいいや。充電なくても問題ないっしょ」
唯「あれ、もう行くの?」
子「あぁ、帰りはあんまり遅くなんねー様にするから!」
唯「はいはい。気をつけてね。いってらっしゃーい!」ノシ
子「行ってきまーす!」ノシ
ガチャッ バタン!
タッタッタッタッタッ♪
唯(ふふふ、楽しそうな足音を鳴らして走ってった♪)
唯(……さてさて)
唯(それじゃ、私も出掛けますか~)
最終更新:2018年02月17日 20:49