★★

幼馴染に会えなくてさぞ残念がっているだろうと、同じ名前の日本酒を手土産に帰って来たわたしを、エプロン(憂の使ってたやつ)姿のりっちゃんが出迎えてくれた。

「なんだよその気遣い」

「いらないの?」

「飲みます。ありがとうございます」

「素直でよろしい」

両手を合わせてお辞儀をするりっちゃんに、
胸(高校生のときよりおっぱいは随分大きくなった)を張りながらお酒を差し出す。
さも厳かに、といった調子でりっちゃんが受け取り、口角をあげてニッと笑う。

ニッ。

わたしも笑う。
りっちゃんの表情は高校時代から更新されてない。単にずっと一緒にいるから変わってない気がするだけなのか、それともりっちゃん自身が成長してないからか。両方かな、たぶん。




今日は水炊きだぞ、と言いながらりっちゃんが鍋を運んでくる。
おおっ、これならお酒も進むね。さいこう!

昔に比べお肉が減りお野菜が増えた鍋をつつきながら、りっちゃんが仕事の愚痴をこぼす。
百貨店の外商さんともなると、いろいろ大変らしいです。

愚痴、と言ってもりっちゃんだから、上手にユーモアを交えつつ面白おかしく喋るので、聞いてるこっちもあんまりストレスがたまらない。
でも要所要所を聞いていると、りっちゃんの会社はどうやらあんまり安泰ではなさそう。ま、りっちゃんなら会社潰れて転職してどこいっても、それが何の仕事でもそれなりにそつなくこなしそうだけどね。

「それでさぁ、埒があかないから言ってやったんだよ。文句があるなら日本語で言え、って」

「通訳の人もいたんでしょ?」

「いるけどさ…都合が悪いことは訳さないんだよ」

最近は外国の会社との取引担当にさせられたらしく、いろいろ苦労してるみたい。
言葉が違うとコミュニケーションをとるのは大変だろうな。
同じ日本語喋っててもお互い理解し合うのが難しいのに。
いや、相手のことだけじゃなくて自分のことを自分で理解するのだって難しい。
わたしはどこまでわたし自身のことをわかっているんだろう。




「りっちゃん」

「どした?」

りっちゃんはちっとも澪ちゃんのことを聞いてこない。
まるでわたしと澪ちゃんが今日会っていたことがなかったみたいに。

「なんで避けるの?」

「…」

黙っちゃうんだ。こういうとこわかりやすいなぁ。
面倒ごとが嫌いな割に、ごまかすのは下手だよね。

「いや、唯が何も言わないから」

わたしもわたしで、言いたいことがあるならはっきり言えばいいと考えながらも、
りっちゃんに聞かれなかったら言う気もなかった。

りっちゃんは黙ったまま両手を合わせてごちそうさますると、
ヒョイと鍋を持ち上げて台所に運んで行った。

この調子だとまた帰るとか言い出しそうだな。

「りっちゃん、洗い物しとくよ。先にお風呂入ってきちゃって」

「いいよ。今日はかえ…」

「明日休みだよね。わたしもなの。DVD借りてきたんだけど夜通し見ようよ」

「夜更かしは肌が荒れるぞ」

そう言いながらりっちゃんは鍋の残りをシンクの三角コーナーにざっと流した。

「バックトゥーザフューチャーだよ」

「観たことあるよ、それ」

「わたしも、面白いよね」

「1と2はな」

スポンジに洗剤をつけて鍋を洗うりっちゃん。

「りっちゃんはさぁ」

「んー」

きゅっきゅっと音を立てながら鍋をこする。

「過去に戻りたい、って思ったことある?」

「なくはないかなぁ…」

鍋をひっくり返して裏も丁寧に。

「いつ? いつに戻りたい?」

「そうだなぁ…」

りっちゃんは鍋をこする手を休め、うーんとうなりだした。

わたしならいつだろう。
やっぱり高校時代? それとも大学?
確かに楽しかったけど、じゃあ今がそんなに嫌かと聞かれたらそれほどでもないとも思う。

…案外今が一番楽しいときなのかもしれない。

「まーでも、別にいいかな。過去に戻らなくても。でも・・・」

「でも?」

「未来に行くのは怖い」

りっちゃんはそれだけ言うと、水を出して泡だらけの鍋を洗い流し始めた。



「りっちゃんってさ。将来のこと考えてるの?」

しまったバカなことを聞いたと思った。
りっちゃんがいちばん聞かれたくない言葉だって知ってるから。
それはわたしだってそう。
わたし達の間でそれは禁句のはずだった。

仕事のこととか。
家庭のこととか。
結婚とか出産とか。年金とか保険とか親の介護とか。うんぬん。

女が一人で生きていくには、まだまだ世の中メンドクサイことがいっぱいです。

時々自分たちを卑下したように冗談めかして話すことはあっても、本当に真剣に先のことなんて考えようとしなかった、考えるのが怖かった。

澪ちゃんもムギちゃんもあずにゃんも憂も、
みんなちゃんと家庭を持ったり、夢を叶えたりして“立派な”大人になっていくのを見て、
不安にならないわけないじゃん。

それでもそんな不安なんて微塵もないように振舞って、
わたし達だけはなんとなくダラダラ昔のよしみでこうしてつるんで、
ずっと昔から変わらない二人の振りをし続けていたかった。




「結婚してみようかと思って」

ジャージャーとうるさい水音のせいで聞こえないのか、りっちゃんはちっとも答えない。

「澪ちゃんがいい人紹介してくれるんだってさ」

りっちゃんはやけに丁寧に鍋を洗う。

あの頃みたいに五人一緒じゃないけれど、りっちゃんがいれば毎日楽しい。
でも周りはわたし達がこのまま二人でい続けることを果たして許してくれるのかな。
わたしにはその確信もないし、逆らってまで今の生活を続ける自信もない。
りっちゃんは? どう思う?




水音が止まった。

「唯がいいならさ」

布巾を手に取り、鍋の外側を拭いていく。

「してみれば、結婚」

「りっちゃん」

「なに」

「だいっキライ」




いつまでもこっちを見ようとしないりっちゃんにひと言投げつけて、わたしはそのまま家を飛び出した。
追いかけてきてほしかったのかもしれないし、わたしが出てったらりっちゃんは勝手に帰るわけにいかないだろうという計算もあった。

夜の街を当てもなく歩き続けて、橋の真ん中で立ち止まった。
見下ろした川の流れは暗くてよく見えないけれど、さらさらと流れる音は聞こえた。

見知った街なのに、今自分がどこにいるのかわからなくって、
果たしてこのまま家に帰れるのか不安がよぎる。

いつまでも同じところにいられないのか、
同じところにいるつもりが知らない間に別のところにきてしまったのか、
今が一体そのどちらなのかわからない。
心も身体もなにもかも、迷子だ。

暗闇に目が慣れて、川の流れが見え始めた。
さらさらと水が流れていく。
いい年こいた女が、ひとりぼっちで真夜中に橋の真ん中から川を見下ろしているのはわかる。
ずっと続くものなんてないんだ、という随分昔に経験した当たり前のことを思い出しながら、足元の石ころを拾い上げ、夜の川に放り投げた。





しばらくボケーっと川の流れを見ているうちにいつの間にか隣にりっちゃんが立っていて、ぎゅっとわたしの左手を握り、そのまま引っ張り家まで連れて帰ってくれた。

りっちゃんは笑いもせず、泣きもせず、怒っているのかもしれないけれど何も言わず、ただ手を握って家まで一緒に帰った。
りっちゃんの手。思ったより冷たいね。
手をつなぐのはいつ以来だろう。思い出せない。

迷子のわたしを家まで送り届けると、りっちゃんはそのまま出て行った。

別れる前にもう一度言ってやった。

「だいっキライ」




りっちゃんは背中を向けたまま何も言わずに出て行った。


ああ、次いつ来るか、聞くの忘れちゃった。


次は、
あるんだろうか。

見上げた夜空に星が二つ、瞬いていた。

★★

-2ヶ月後-

それから。
2ヶ月の間、りっちゃんは一度もウチに来なかった。

高校、大学、就職。地元に帰ったわたし達だけは、離れることなくふたりずっと一緒だった。
かれこれ20年近くもずっと一緒だった。
昔は幼馴染のりっちゃんと澪ちゃんの二人の付き合いの長さに引け目を感じることがあったけど、今となってはもうそんなこと気にすることも少なくなった。

りっちゃんと出会って以来、2ヶ月も顔も見ない声も聞かないなんて初めてだ。

会わない間にわたしは一つ歳をとり、四捨五入すればめでたく四十路、これからアラサーじゃなくてアラフォーに突入しちゃったわけだけれど、その記念すべき日にも連絡はなく。めでたくもないから別にいーんけどさっ。ふん。

ヘンな別れ方をして、意地を張ってるつもりじゃなかったけど、こっちからは電話もメールもしなかった。
りっちゃんからも連絡はない。



お見合い、なんてちゃんとした形式でやるのは初めてだったけど、相手はそんな悪くない…というかわたしの年齢とか学歴とか職歴とか考えたら申し分ない人だった。
憂の旦那さんの学生時代の同級生だって。要はお医者様。やったね玉の輿。

イケメンじゃないけど顔は悪くないし、話もそれなりに上手いし、音楽もケッコー詳しくて好きだっていうバンドの趣味も悪くないし、3回くらいデートしてみたら思ったより楽しくて、割りと盛り上がった。




「ねぇ澪ちゃん。澪ちゃんはさ。結婚してよかった、って思う?」

はじめのお見合いの後、澪ちゃんに聞いてみた。
澪ちゃんの旦那さんはえーっと確か会社の先輩さんだ。

就職で初めての一人暮らし。初めての東京。
そこで澪ちゃんの心の支えになってあげられたのがその人だった…のかな?
学生時代の澪ちゃんしか知らないと、男の人と付き合ってる姿が想像しづらい。

澪ちゃんは少し間を置いて答えた。

「よかったよ。そうに決まってるじゃないか。…今のわたしにとって一番大事なのは、家族だよ。そんなの…当たり前のことだよ。そんなこと聞くなよ」

まるで自分に言い聞かせるみたいに、強い口調だった。

家族…か。
じゃあ澪ちゃんは結婚してよかったってことだね。




なんていうか。
結婚なんてさギャンブルみたいなものじゃない?

大好きでどうしても一緒にいたい、離れたくない、ずっと一緒にいたい、って人とならともかくさ、

まわりのみんながそうしろって言うから、とか、
みんな結婚するのが当たり前だから、とか、
結婚して子供産むのが女の幸せ、とか、
普通は結婚するもんでしょ、とか、
そろそろいい歳だから、とか、

別にいいんだけどさー、そういうもんなんだろうし。
先々のことを考えたらその方が得策だっていうことはわからないでもない。

でもさー、だからってよくわからない人と一緒に暮らせる? 大して好きでもない人と。
暮らし始めてから後悔したって遅いかもしんないじゃん。

ちゅーことは結局のところ、してみないとそれが成功だったか失敗だったかわからないんじゃない?
それってギャンブルと一緒だよね。
幸福なんてそういうものなのかなー。

んー、わかんない。

してもしなくても幸福になれるのかなれないのかわかんないなら、
してみるのも一興ってやつですか!

いっちょ人生、賭けてみますか!

悪くないかもね。結婚も。


そう思うようになってきた金曜の夜。
次の日に四度目のデートを控えた夜。


明日は神戸だよ。三宮だよ。中華街だよ。メリケン波止場だよ。クルーズだよ。
そして100万ドルの夜景を堪能しつつ、ホテルでディナーだよ。シャンパンあけちゃうよ〜。

しかもお泊まりだよ。

神戸なんてめっちゃひさしぶり。
そーいや昔付き合ってた人とルミナリエ見に行ったなぁ…人だらけで疲れた記憶しかない。
いやいや、悪い記憶を思い出してどーすんの。

阪急なんて滅多に乗らないし、乗り継ぎを確認しとないと約束の時間に間に合わないどころか、行き着くことすらできないイヤ〜な予感がする。
知らないうちに兵庫の奥の山の方に行っちゃってたりとか。行きたいの海のほうなのにっ。梅田駅が大きすぎるのがよくないんだよっ!

とにかく明日は大事な日。しょーねんばなのです。
だから寝坊したら一巻の終わり。付き合い酒も断って、帰りの電車ではスマホで調べた路線を何度も見直し、今日は早く寝ようかと帰宅すると、玄関から明かりが漏れていた。




ドアの前で立ち止まる。
あれ…鍵がなかなか見つからない…どこ入れたっけ……あ、あった。よし鍵穴に通して、っと。
鍵を持つ手が震える。

え、わたし、どーしたのさ。よし…ふんすっ








「おかえり」

「…ただいま」

リビングに入る。ソファーに腰掛けたりっちゃんが自然にわたしを出迎えた。
右手でペットボトルの蓋を閉め、テーブルに置くとわたしをじっと見つめる。
わたしは思わず目を逸らして台所の冷蔵庫に向かった。

「冷蔵庫の中の発泡酒、飲んでくれてよかったのに」

「いや、いい」

そんなこと気にする柄でもないくせに。
合鍵、返しに来たのかな。

「いいワインもあるんだよー、こないだ貰っちゃって……」

「それもいい」

どうしてもりっちゃんに目線が合わせられない。背中を向けながら声をかける。
うわ。なにかおかしい。相手はりっちゃんだよ? なんで?



2ヶ月ぶりだからなのかなんなのか、りっちゃんは珍しく自分からなにも話そうとしない。
わたしもなぜだか何をしゃべっていいものかわからないし、もちろん明日のことは言うつもりもなかった。

こんなときアルコールの力を借りれたらよかったのだろうけれど、わたしは明日を控えていたし、
どうもりっちゃんも一切飲む気がないらしい。
黙ったままソファーでふたり、だらんと腰を落ち着ける。
TVの消えたリビングは静寂に包まれていたけれど、いつもなら耳障りな時計の針の音は気にならず、
ばくばくと脈を打つ自分の心音ばかりがやかましかった。




「これ、お土産」

静寂を破ったのはりっちゃんだった。
そう言ってテーブルに置いたのは銀色の袋。
獅峰特急龍…? 袋に貼られたシールに読み方不明の漢字が並ぶ。なにこれ。

「上海のお土産。って言ってもこれくれた人は香港で買ったらしいけど」

は? 上海? 香港? なにそれ。

「中国茶だって。飲んでみようぜ」

わたしと会わなかった2ヶ月の間、りっちゃん、中国行ってたの? 旅行? 出張?
頭が混乱しているわたしを放ったまま、りっちゃんは手際よくお茶の準備を進めた。



なんとか龍とかいう覚えらんないややこしい名前のお茶は、はっきり言っておいしくはなかった。
高校時代、毎日お茶を飲んでいたせいで、わたし達はかなりお茶にはウルサイ。

「うすいね」

「味も香りもな」

ムギちゃんならきっともっと上手に淹れたんだろうな。
おいしいお茶ならもっと会話、弾んだかもな。
いまさらどうしようもないな。
いや、りっちゃんのヘタクソなお茶の淹れ方が悪いんじゃなくてね…

ふたたび訪れる静寂が心苦しい。
とにかくなにか喋らないと…

「あ、そうだりっちゃん、ごはん食べた? 簡単なものでいいなら今から作るけど」

「いや、いいよ。お腹減ってない。それより唯、明日ヒマか? 温泉でも行かね?」




一瞬、息が止まった。

りっちゃんにそう言われた途端、
中華街もメリケン波止場もクルーズも、調べた路線図も待ち合わせ場所も、お泊まりもしょーねんばも、100万ドルの夜景すら
あとかたもなく脳内から消え去って、

きれいさっぱりなくなった。

★★

ひらひらと宙を舞う雪が、手のひらに触れた。

「閉めろよ、窓。寒いよ」

「あ、ごめん」


降る雪を見ているうちに、高校時代作った冬の歌を思い出して、ついボケっとしてしまった。
ガラガラと窓を閉めてから、改めて部屋の中を眺める。
8畳のスペースに二つの並んだ布団と、ブラウン管のTV。ブラウン管…ブラウン管…?! ひさしぶりに見た。

宿泊費もさることながら、温泉地だというのにこうも簡単に宿泊できちゃうあたり、中身もある程度想定がつくというか。
せっかくの気ままな独身女二人旅、こういうときこそ普段溜め込んだ小金をパァーッ!と使うときじゃないのかって…まぁ思いつきの突発旅行なんだからしょーがないよね。
なんだか文句ばっかつけてるようだけど、全然いい宿だし。温泉もサイコーだったし。

「値段の割には悪くない部屋だな」

りっちゃんもやっぱそう思うよね。

「うん。温泉も気持ちよかったしね」

「だな。三十路半ばの疲れた肉体にはもってこいだな。腰が軽くなった気がする」

「オバちゃんくさいです。りっちゃん隊員」

でも同感です。わたしは足のむくみが取れた気がします、りっちゃん隊員。

「うっせ。お前もオバちゃんだろ。唯隊員」

その通りです。温泉に入って若返るなら永遠に入っていたいです、りっちゃん隊員。


窓の外の暗闇には白い雪がひらひらと舞い続けている。
それを肴にしようと、駅前で買った地酒の一升瓶を開けた。
茶櫃の中から湯呑み茶碗を二つ取り出し、均等に注ぎ分ける。とぶとぷ。

かんぱーい。

磁器と磁器が触れ合い、カチンと無機質な音を立てた。

「おいし」

「だな」

「雪見酒だね」

「だな」

醸造アルコールが五臓六腑にしみる。
わたしにはシャンパンよりもこういうチープなお酒が合ってるよ。


他に宿泊客はいるのかいないのか。
昼過ぎから降り始めた雪が、音をすべて飲み込んでしまったよう。観光地とは思えない静けさだった。

窓の外には…100万ドルの夜景どころか雪しか見えない。
中華街の豪華な食事の代わりに、お昼はコンビニで肉まんを買って食べた。
旅行に来てまで肉まんかよ、ってりっちゃんは言ったけど、昨日まで気分は中華だったんだからこうでもしなけりゃわたしの胃袋は納得してくれない。

「明日、どこ行く?」

「竹生島…とか?」

「何があるの?」

「弁天さんがいるって…芸能の神様だからギター上手くなるかもな。
 あと、なんか瓦みたいなの投げたりできるらしいぞ」

クルーズの代わりに、フェリーに揺られて竹生島、か。
それもいっか。
そうそうりっちゃん、“瓦”じゃなくて“かわらけ”だよ。相変わらずおバカだね。



お酒がもう残りわずかまで減ってきた。

りっちゃんはこういうとき、自分から何も言わない。
自分で旅行に誘ったくせに、何も言わない。
言いたいことがあるくせに、思わせぶりな態度をとって相手に口火を切らせようとする。
今日はちっともわたしの目を見てこない。
今だってずっと窓の外ばっか見てる。
わたしに声をかけさせるつもりだ。
何が雪見酒だ。
そんな趣深いことなんて普段してないくせに。
雪なんて肴になりゃしないよっ。
お酒の肴にするならスルメイカの方がずっとおいしいよっ。

お酒を全部飲み終えたら、そのまま眠って起きたら明日は竹生島。お船に揺られてゆらゆらと。
弁天さんを拝んで、かわらけ投げて、またお船に揺られて…それでおしまい。
一体何がしたいのさ。



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