紬「ねぇねぇりっちゃん!わたし行ってみたいところがあるの!」フンス!

律「おっ、どこに行きたいんだ?ゲーセン?カラオケ?ボーリングもいいなーみんなも誘う?」

紬「ううん、わたしね…りっちゃんとふたりで行ってみたいの」

律「そっか。いいぜー。お金がそんなにかかんないとこなら」

紬「お金なら大丈夫!わたしが出すから!」

律「いいっていいって。半分づつにしようぜ。それでどこに行きたいんだ?」

紬「どんなところでも付き合ってくれる?」

律「ああ、もちろんだ」

紬「えっとね………引かない?」

律「う、うん………引かない(たぶん)」

紬「その……りっちゃんわたしね…………」







紬「ラブホテルに行ってみたいの!」

律「却下」

紬「えぇ~……」


紬「りっちゃんのうそつき!どこでも付き合ってくれるって言ったのに!」プンスカ

律「場所によるわ。大体なんでそんなとこに行きたいんだよ!」

紬「だって…キラキラしたりくるくるしたり水族館みたいだったり南国かと思えば宮殿みたいだったりメリーゴーランドがあってお馬さんが回ってたり…ラブホテルってすっごく楽しいところなんでしょ?」

律「なんでそんなにくわしいんだ……」

紬「ほんとにそんなかんじなの?」

律「ん、あ、えっと…、いや………わ、わたしが知るわけねーだろ…」

紬「そっかぁ…」

律「だいたいそんなとこ行ってなにしたいんだよ…おもしろいとこならもっと他にあるぞー?」

律「バッセンとかビリヤード場とか卓球場とか……そうだ、スケートしに行かね?たのしーぞー真央ちゃんみたいにくるくるまわったりな」

紬「わたしはラブホテル行きたいの!」フンスフンス

律「(頑固だなぁ…)ダーメ。そこは女子高生ふたりで行くとこじゃないっつーの」

紬「うそだぁー」

律「うそじゃない」

紬「女子高生だってふたりでラブホテルくらい行ったりするんじゃない?」

律「行かねーよ」

紬「行くわよ!」

律「行かねえってば。どこの女子高生が行くんだよ…見たことあるのか?」

紬「わたし先週見たよ」

律「なにを?」

紬「りっちゃんが梓ちゃんとふたりでラブホテルに入るの」

律「」

紬「梓ちゃんとはいっしょに入るのに、」

紬「わたしとは嫌なのね。りっちゃんヒドい。ヒドいわりっちゃん」グスン

律「み、見間違いじゃないのか…」

紬「わたしがりっちゃんと梓ちゃんを見間違えるわけありません!」フンス!

律「」

紬「りっちゃん、うそつくの?なんでごまかそうとするの?なにかやましいことでも??」

律「いや…あれは…だな。そのぅ……このこと誰かにしゃべった?」

紬「ううん。だれにも言ってないよ」

律「(ほっ…)あ、あれはだな…たまたま一人で出かけたら梓とバッタリ会ってだな…」

律「奇遇だなーってなったんだ。それからふたりでちょっとブラブラしてて…」

律「そうしたらさぁ…梓のやつ、急におなかの調子が悪いって言い出してうずくまっちゃって…」

律「どこかで休ませなくちゃ、って慌てて近くを探したらそこにホテルが…」

紬「フーン」シラー

律「だからその…ムギが考えてるようなことはなにもない!ほんとだ!」

紬「そっかぁ~そうなのねー」

律「ああ…そうだ。そうなんだ。わかってくれたか?」

紬「うん。わかったわ。あ、そうだりっちゃん一言忠告」

律「なんだ?」

紬「首筋にバンソコ貼るのは露骨だからやめたほうがいいって、梓ちゃんに伝えておいて」

律「」

律「む、むしさされってたいへんだよなー…」

紬「あれ?りっちゃんって虫だったの?人間じゃなかったんだ」

律「あのそのいやそうじゃなくってだから…」

紬「せめて見えないところにしたらいいのに」

律「いやー、そのー…」

紬「嫌がる子についイタズラしたくなっちゃうのも、」

紬「この子は自分のものだ、って印をつけたくなっちゃう気持ちもわかるけど…」

紬「もっと要領よくやったほうがいいとわたしは思うなー」

律「すみません…ど、どうかこのことは…」

紬「大丈夫。誰にも言わないから」

紬「特に澪ちゃんには絶対言わないから安心して」

律「それは絶対でおねがいします」

紬「というわけでラブホテル行こっか♪」

律「いやでもムギ…こういうのはやっぱりよくないよ…」

紬「……わたしとじゃ、いや?」

律「あ!いやそういうわけじゃなくて…やっぱりさ。こういうのは本当に好きな相手と…」

紬「わたし、好きよ。りっちゃんのこと」

律「…冗談だろ?」

紬「冗談じゃないよ。本気。ずっと好きだったんだけどなぁ…こうやってふたりで遊びに行くとき…いつもよりおしゃれしてるのに気づかなかった?」

律「まぁ…なんとなく」

紬「うそ」

律「…」

紬「朝、教室に入るときまずりっちゃんのこと探しちゃうし、もし運良く登校路でいっしょに慣れたらその日は一日しあわせで…」

紬「お茶の時間はね、りっちゃんがどんなお菓子好きなのかな?っていつも観察してるの」

紬「りっちゃんがおいしそうに食べてたらそのお菓子、なるべく何度ももってくるようにしてたのよ。りっちゃんのケーキだけちょっと大きめに切ったりね」

紬「気がつくといつもりっちゃんのこと考えてるわ。いつだって頭いっぱいになっちゃうから授業中や演奏中も、ついついぼーっとしちゃって」

紬「りっちゃんからメールが来るとね。ただの連絡事項でもうれしく全部保存しちゃうの」

紬「メールの返事、いつも返すの遅くてごめんね。なんて返していいか、考えすぎてわけわかんなくなっちゃって…大した返事かえすわけでもないのにね」

紬「…大変なのよ、わたし」

律「…」

紬「ぜーんぜん気づいてなかったのね。りっちゃん」

律「…ごめん」

紬「謝らないでよ。謝られたらわたし、すっごく惨めになっちゃう」

律「…わたし、どうしたら」

紬「ごめんね。困らせるようなこと言って」

律「いや…」

紬「大丈夫。知ってたから。りっちゃんがわたしのこと好きじゃないって知ってたから。だから大丈夫よ。今更傷ついたりなんて、しないよ」

紬「でもね、一つだけお願い聞いてくれる?そうしたらきっぱり諦めるし、困らせるようなことはもうしないから」

律「……わかった。お願いって?」

紬「セックスしてください!」

律「うわぁ。雰囲気ぶちこわし」

紬「ねぇおねがい!一回でいいから!おねがいします!」

律「中学生男子みたいなこと言ってんじゃねぇ!ダメ!それは絶対ダメ!」

紬「じゃあみんなにバラしちゃうよ。梓ちゃんとホテル行ったこと」

律「うっ…それは…」

紬「いいの?バラして??」

律「……バラせるもんならバラしてみろ!脅迫には屈しねーぞ!」

紬「いっいいのかなー♪いーのかなー♪そーんなこーとー言っちゃって~。澪ちゃんが聞いたらどうなるかなぁ~…」

律(ドキ)

紬「澪ちゃんケッペキだからそういうの許さないだろうなぁ…ゲンコツ何発炸裂するのかな~新記録でちゃうかな~りっちゃんの頭の形、かわっちゃうかも~☆」

律(かわいい顔してこの悪魔め……)

紬「かわいそうなりっちゃん。わたしが代わりにぶたれてあげようか?」

律(どっちに転んでもムギが得するのかよっ)

律「決めた!脅迫には屈しない!言うなら言え!」

紬「そんな脅迫だなんて…わたしはりっちゃんと…」

律「れっきとした脅迫だよ!」

紬「ほ、ほんとに言っちゃうよ!?それでもいいの?!」

律「ああいいとも。元はと言えば自分で蒔いた種だ。覚悟くらいできてるさ」

紬「…」ゴソゴソ

紬「…」ピッピッピ

律「…」

紬「…」ピ

律「…なにしてんだ」

紬「消したよ」

律「え」

紬「写メ。りっちゃんが梓ちゃんとホテルに入るとこ」

律「撮ってたのかよ」

紬「…言わないよ。言うわけないじゃない」

律「…ほんとに?」

紬「ほんとだよ。だってもう、そんなことしたって何の意味もないもん」

律(…ほっ)

紬「あーあ…」

律「?」

紬「一大決心だったんだけどなぁ…せっかくの告白だったのに。フられちゃったね、わたし」ニコ

律「…こんな告白があるか」

紬「あるよ。告白だよ。決まってるじゃない」

律「………やり方があまりに悪すぎるっつーの」

紬「ごめんね。だってああでもしなきゃ、逆転できないって思ったから」

律「…どーゆーことだよ」

紬「わたしじゃ澪ちゃんにも梓ちゃんにも、ぜったい勝てないもん」

紬「自分でもバカだなーっておもったけど」

紬「あれくらいやって、もしうまくいったら」

紬「一生に一度の思い出くらい作れるかも、って」

紬「そう思ったの」

紬「ごめんね、りっちゃん」

紬「わたし、帰るね」

律「…」

律「…待てよ」ギュ

紬「手、離してよ」

律「…離さない」

紬「離してよ。離してくれなきゃわたし、帰れないよ」

律「…帰るなよ。行きたいところ、あるんだろ?」

紬「もうないよ、そんなところ」

律「ムギにはなくてもわたしにはある。行きたいところ」

紬「…」

律「行きたいところがあるんだ、ムギと。ムギといっしょに」ギュウ

紬「…りっちゃん。手、痛い」

律「ごめん…でも離さない」

紬「やさしく、しないで。ひどいよ。そういうことするのが一番、傷つく」

律「ごめん。でも…今日はもうちょっとだけムギといっしょにいたい」

紬「心にもないこと言っちゃって」

律「あるよ。ホントのことだ」

紬「わたし、梓ちゃんじゃないよ?」

律「わかってる」

紬「澪ちゃんでもないよ」

律「当たり前だ」

紬「…」

律「ムギといっしょにいたいんだ」

紬「…りっちゃん」


一方平沢家…

唯「ハックション!」

憂「お姉ちゃん風邪?気をつけてね」

唯「あ、うん」

唯(うーん、なんのことかわかんないけど、わたしだけ蚊帳の外っぽい気がするのはなんでだろ??)


じご!

律「…」

紬「…」

律「…」

紬「…」

律「…」

紬「…しちゃったね」

律「…しちゃったな」

紬「…なーんか」

紬「夢みたい」

律「…だな」

紬「…後悔してる?」

律「まさか」

紬「あ、うそついた」

律「うそじゃねーって」

紬「大丈夫。誰にも言わないから」

紬「でもりっちゃんのこと、いままでよりもっと乙女な目で見ちゃうかも」

律「…ハハ」

紬「うそうそ。ちゃんと普通にするから。今まで通り」ウフ


律「…」

紬「…」

律「…時間、大丈夫か?」

紬「…うん、そろそろ」

律「じゃあ、でよっか。送ってくよ」

紬「…大丈夫。ひとりで帰れるよ」

律「いいよ。送るよ。駅まで」

紬「ううん。大丈夫」

律「送るって」

紬「いい」

律「なんで」

紬「やめようよ」

律「なにを」

紬「恋人みたいなこと、するの」

紬「そういうの、やめよ」

律「べつにそういうわけじゃ…」

紬「だよね。りっちゃんにとっては”おあそび”だもんね」

紬「ゲーセン行ったり、」

紬「駄菓子屋さん行ったり、」

紬「カラオケ行ったり…」

紬「それとおんなじだもんね」

律「…ちげーよ」

紬「いいじゃない。それで。わたしはそれで満足よ?」

律「…」

紬「…ねぇりっちゃん」

律「なに?」

紬「また…ふたりでいっしょに遊んでくれる?」


律「………」


律「………もc」


紬「ごめん、やっぱいまのなしね。もうやめよ。ふたりだけで会うの」

律「…なんで?」

律「いいじゃん、遊ぶだけなら」

紬「だめ」

律「遊ぶだけなら、いいじゃん」

紬「…だめ」

律「なんで…いいじゃん」

紬「だめ…よくないよ。わたしたちがしたことって最低のことだよ」

紬「だからきょうでおしまい。もしまたりっちゃんとふたりっきりになっちゃったらわたし…きっと……ごめんもう帰る!」バツ

律「ムギ!」


よくあさ!

律(結局一睡もできなかった…)ズーン

律(わたしってなんでいつもああなんだろう…)

律(あーそうだ。そうだよ。雰囲気に流されやすいんだ…)

律(あずさ……ムギ……どういう顔して会えばいいんだ…)

律(今日は部活いきたくない…授業が終わったらさっさと帰ろう)

梓「おはようございます、律先輩」

律「うわっ!あ、あずさ!??!」

梓「な、なんですかそんなに驚いて…こっちがびっくりするじゃないですか…」

律「いやそのぅ…ちょっと考え事しててな…」タハハ

梓「そうですか…にしても早起きですね。今日は日直ですか?」

律「ま、まぁ…な。ちょっと目が早く覚めちゃって…梓も早いな」

梓「はぁ。実は昨日一睡もできなかったもので」

律「どうした?なにか悩みでもあったのか?」

梓「…ご自分の胸に聞いてみたらいかがですか?」

律「は?」

梓「…」

律「…な、なんのこと?」

梓「………ハァ」

律「た、ため息はやめてほしいなぁ~…」

梓「メール」

律「え?」

梓「………ハァ~~」

律「さ、さっきよりため息が大きいんですけど…」

梓「昨日はどこで何してたんですか?」

律「え?!きのう?え~~っっと……きのう…きのうかぁ……なにしてたかなぁ…」

梓「へぇ。言えないんですね。言えないことしてたんですね」

律「(こういうときだけ勘が鋭い…)あ、いやそういうんじゃないぞ。いつもと変わりない休日すぎて印象に残ってないんだ!」

梓「はぁ。そうですか。じゃあなんでメール、返してくれなかったんですか?」

律「うそ?メール、送ってくれてた?」スチャ

律(うわぁ…梓からメール17件、不在着信32件)

律(し、しまったぁ~…昨日はそれどころじゃなかったから…)

律「ごめん!ぜんっっぜん気づいてなかった!ごめん梓!」

梓「…あれ、見せてくださいよ。律先輩が謝るときによくやってるやつ」

律「…マジで?ここでやるの?ここ…通学路ナンデスケド…」ヒトイッパイミテル

梓「いいですよ別に。悪いと思ってないなら。じゃ、さよなら」

律「ごめんなさいすみませんでした大変申し訳ございませんでした」ドゲザ!

梓「いいですよ。あやまんなくて」

律「(土下座までさせといてそれか)ごめんってば」

梓「冷めたんでしょ」

律「冷めてないって」

梓「飽きたんでしょ」

律「飽きるわけないだろ」

梓「…他に好きな人、できたんでしょ」

律「……」

律「………そ、そんなことねーよ」

梓「……キライ」ダッ

律「あっ!おい梓!待てってば!」ダッ

律(な、なんでこうなる…)←自業自得


きょうしつ!

律「ふぁ~あ」

唯「お?りっちゃん隊員!今日も眠そうですな!」

律「いやぁ…きのう寝らんなくてさ」

澪「どーせドラクエのレベル上げでもしてたんだろ」

律「ちがわい!わたしにだって悩みくらいあるわい!」

唯「えっ、なになに?りっちゃんなにか悩み事あるの!?」

澪「唯。聞くだけムダだぞ。律の悩みなんてどーせ大したことないから」

唯「わかった!背が伸びないことでしょ!」

律「うるせー!そんなことじゃねーよ!」

唯「じゃあおっぱい!」

律「チガウ!そして声がデカイ!」

唯「えー、じゃあなに?なに悩んでるの??」

律「あーっと、まぁ…えーうー、それはだな…」


紬「どうしたの?なになになんの話??」

律 ドキッ

澪「ああ、律に悩みがあるらしくてな。どーせたいしたことないだろうって話」

唯「りっちゃんは背が伸びないことに悩んでるんだよ…ムギちゃん」

律「だからそれは違うってば…(まぁ悩んでるといえばそうだが)」

紬「ふぅ~ん。なに悩んでるのかわかんないけど、」

紬「言いたくないならムリに言わなくていいんじゃない?」ニコ

律「あ、その、ム、ムギ……」


キーンコーンカーンコーン


紬「ほら、チャイム鳴ったよ。席に戻らなきゃ」プイッ

唯「ほ~い」

澪「おい律、いくら眠いからって授業中居眠りするなよ」

律「…わぁーてるよ」

律(ムギ……)

律(…目、合わせてくれなかったな)



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