澪「へぇ」

律「もうダメだ、耐えられない……」

澪「耐えられないのか」

律「私はこの軽音部という束縛に疲れた」

澪「退部するのか」

律「何で?」

澪「お?」

澪「耐えられないんじゃないのか」

律「耐えられない」

澪「律は耐えられなくなったらどうなるわけ」

律「寝る」

律「おやすみなさい」

澪「おやすみ」

ガチャ

梓「こんにちは」

澪「……」

梓「こ ん に ち は 」

澪「うるさい」

律「ZZZ」

澪「律が寝てるんだぞ」

梓「す い ま せ ん 」

梓「律先輩の寝顔可愛い」

律「ZZZ」

梓「お尻さわっちゃお」サワ

律「イヤン」

澪「どうした梓」

梓「何が」

澪「なぜ律のケツを触った」

梓「耐えられなかったから」

梓「毎日毎日、この部室で労働者のごとく部活をする」

梓「そんな日々に耐えられなくなりました」

澪「そうか」

梓「もう限界なんです」

澪「じゃあ出ていけ」

梓「どこから?」

澪「軽音部から」

梓「それは嫌です」

梓「この部室の外にはヤバい奴がいる」

澪「なんだ」

澪「バレていたのか」

唯「バレていたのか」

梓「やはり隠れていたんですね」

唯「ああ、隠れていた」

梓「もう一人いるはずだ」

紬「私のことか」

澪「どうした」

唯「なぜ怯える」

紬「私たちはお前の味方だ」

梓「ウソを言うな」

澪「ウソじゃない」

梓「ではなぜ律先輩は寝ているんだ」

澪「それは……」

律「寝不足だからだ」フラ

澪「律、無理をするな」

唯「律ちゃん」

律「みんな落ち着け、私は大丈夫だ」

律「大丈夫……大丈夫なんだ」

律「ワガママ言っていいか」

澪「ああ、何でも言ってくれ」

律「海に行きたい」

梓「お、良いね良いね」

紬「行っちゃう感じ?」

律「波を見たいんだ」

澪「波?」

律「そう、寄せては返す、波を」

澪「波だけで良いのか」

トンちゃん「亀は見なくて良いのか」

律「ああ」

律「波だけで良い」

紬「じゃあ行きますか」

梓「あ、車とかで行くんですか」

紬「徒歩で」

梓「お、徒歩ですか」

澪「心配するな、海ならすぐ近くにある」

梓「え」

澪「扉を開けてみろ」

梓「はい」ガチャ

ザザーン

梓「う、海だ……」

バタン

律「梓!」

ガチャ

律「あ、あれ?」

律「海が無くなっている」

澪「梓は海とともに消えた」

ヒュルルルルルルル

澪「今はただ砂が空間を流動するのみ」

律「全て砂になってしまった」

律「ああ」

律「私は間違っていた」

律「海も砂漠も怖い」

律「楽しさなんか一つもない」

澪「やっと気付いてくれたか」

律「鳥かごの中だけが私の居場所だったんだ」

澪「そうだ」

澪「さぁ、私の胸元へ来なさい」オイデオイデ

律「ああ、ああ……」フラフラ

ガチャ

梓「その女の言うことを聞いてはいけない」

唯「ん?」

紬「どういう意味かしら」

梓「あれ? 澪先輩と律先輩はどこいったですか」

唯「ねぇ、あずにゃん制服に何か付いてるよ」ヒョイ

紬「本当ね」

唯「これ何だろう?」

梓「あ、それは」

梓「トンちゃんですよ」

トンちゃん「あ、あ、あ」

梓「どうしたのトンちゃん」

トンちゃん「水が飲みたい……」

紬「トンちゃんカラカラじゃない」

唯「水槽に戻してあげようよ」

梓「ダメですよ」

梓「トンちゃんは水槽から出たいと言ったんです」

梓「死んでも戻さない」

トンちゃん「あうう」

唯「そっか……」

紬「でもこのままじゃ死んじゃうよ」

梓「紅茶に漬けてみますか」

ポチャン

唯「おわ」

梓「どうですかトンちゃん」

トンちゃん「……」

ガチャ

律「おい」

澪「トンちゃんは水槽に戻してやれ」

梓「嫌です」

トンちゃん「水槽に帰りたい」

律「鳥は鳥かごへ、亀は水槽へ」

澪「それでみんな幸せなんだよ」

梓「うむむむ」

トンちゃん「水槽に帰りたい」

梓「しょうがないですね」

ポチャン

トンちゃん「ああ助かった」

唯「トンちゃんは水槽が似合ってるよ」

梓「でもさっきはトンちゃんは水槽から出たいと言ったんです」

梓「あのトンちゃんはどこに行ったんですか」

律「そのトンちゃんは消えてしまったんだ」

梓「え」

梓「と、ということは、さっき耐えられないと寝ていた律先輩は」

澪「消えた」

律「みんな消えていく」

梓「私も消えていくのですか」

律「そうだ」

律「ほら、もうみんないないだろう?」

梓「え?」

梓「だ、だれもいない……」

梓「私も、いなくなっていく……」

梓「さようなら」

律「さようなら」