―さらに3日後―

ブチッブチッ

梓「……うっ………いだっ!」

梓は自分の髪を抜いていた

ブチッブチッ

梓「……うぐっ………あうっ…」

足を切断した時ほどではないが、これも流石に微かな痛みは走る

ブチッブチッ

梓「……くっ………うぅ…」

梓は抜き続ける。端から見れば完全な異常者だった

―1週間後―

梓「………」

ガチャガチャ

梓は着ていた服を脱いで、切断した足と抜いた髪の毛、そして自分の服を使って何かを作っている

梓「………」

ガチャガチャ

ここに来て時々何かを組み立てるような素振りを見せていたが、それを思い起こさせる作業だった

梓「………」

梓は無言のまま、ただひたすら作業を続けていた

―2週間後―

梓「……や、やった!できた!」

梓が作っていたもの、それはギターだった

梓「……やった……やった……ううう」

ボロボロのギターだった。髪の毛を弦にして作ったギター、骨と肉を上手く利用し、形を整えるために包んだ服は血で滲んでいる

梓「……こ、こうしちゃいられない!早速作業しなきゃっ!」

梓はこの膨大な時間を活かして作曲しようと考えていた。そのために身を削ってまでギターを作ったのであった

梓「……ふ~ふ♪……ん~ん♪」

ジャンジャン

梓は久しぶりの作曲に取りかかった。響くギターの音色はどこか不気味さを醸し出していた

梓「……ふんふん♪……ここは、こうした方がいいかな」

ジャンジャン

梓は以前、作曲に没頭している。自分の体の一部を犠牲にしてギターを作るというのは瞑想中に生まれた案だった。

梓「………あ~あ♪……ららら♪」

ジャンジャン

梓「…ふ~、ちょっと休憩しようかな。そうだ!研究の続きをしよっと」

カキカキカキカキ

梓は自分の身を犠牲にした割には妙に落ち着いていた。そして作曲、研究、瞑想と交互に繰り返して時間を潰していく。

梓「………」

カキカキカキカキ

―10万年後―

梓「………」

カキカキカキカキ

唯「…あ、あずにゃん!?」

梓「あぁ、せんぱぁあい、お久しぶりでぇす」

澪「久しぶりって…その足はどうしたんだよ!?」

梓「…えへへぇ……き、切っちゃいました」

梓は不気味な笑みを浮かべながら言う

律「切ったって…何でそんなことしたんだよ!?」

梓「……ギターあが、ほしかたんでぇすぅ」

紬「つ、作ったの!?自分の足で!?」

梓「はあぁい、作りましたぁあ…」

律「……何……何やってんだよ馬鹿!!」

唯「あずにゃん……ひぐ……何で…」

梓「……どぅしてもぉ、欲しくてぇえ」

澪「だ、だからって自分の足を……」

紬「そ、そうよ梓ちゃん!何でそこまでギターを!?」

梓「……えへへぇ」

律「梓!ちゃんと答えろよ!」

梓「……先輩たちにはぁ、ないように見えますか?」

唯律澪梓「え!?」

梓「…私の足がなあぃなんて、嘘ですよぉ」

澪「な、何言ってんだ梓?」

梓「私、頭がおかしくなちゃって……つまり先輩たちの発言はぁ、意味がないんですぅ。現実と妄想の区別がぁ、つかなぃんですう」

唯律澪紬「………」

梓「………そんなことより先輩方ぁ」

律「何だ?」

唯「な、何あずにゃん?」

梓「聞いて、ほしいぃ歌がぁ、ありましてえ」

澪「歌!?」

梓「はいぃ、5万年かけて作った初めての曲でぇすぅ」

紬「ご、5万年……」

梓「……天使にぃ、ふれたよのお返しですぅ、では聞いてくださあぁい!」

ジャンジャンジャンジャン

―――――――――

梓「※★*#~♪」

ジャーン

唯律澪紬「………」

梓は先輩達へ向けたアンサーソングを送った

律「………う、ううう」

唯「……うう………ひぐひぐ」

澪「……ぐす………ううう」

紬「……ううっ……ひっぐ」

唯たちは泣いていた。曲はとても洗練されていた。メロディーラインは素晴らしく、隙がなかった

梓「……えへへ…私のぉ……アンサーソング気に入っていただけぇましたかぁ?」

律「……あぁ、ありがとう……ありがとう梓」

唯「……すごかったよ、あずにゃん!」

澪「あぁ、素晴らしかった」

紬「私、驚いたわ!ここまでのモノが作れるなんて!」

皆、梓に賞賛の声を送る

梓「………えへへ、良かったぁでえすぅ」

唯「……とっても良か*#」

律「あぁ!最高※☆£」

先輩達の声が遠のいていく

澪「私、久しぶりに感動※*#」

紬「私もっ!梓ちゃん§@&※」

梓「………」

もう先輩達の声は完全に聞こえない。梓の見えない観客への演奏会は終わった。

梓「……さ、また時間潰さなきゃ」

そう言うと梓は再び作業に戻った

ー100万年経過ー

梓「………」

カキカキカキカキ

随分時間が経った。慣れとは恐ろしいものだ、今の梓には1秒も1万年も変わらない。

さわこ「……梓ちゃん」

梓「………」

カキカキ

さわこ「梓ちゃん、久しぶり」

梓「……£%#※?」

さわこ「……えぇ、私よ」

梓「∮фЖ♯?*¢#?」

さわこ「………」

梓「………?」

さわこ「………ねぇ、梓ちゃん………早いわ」

梓「♯※☆?」

さわこ「えぇ、早いのよ」

梓「☆※♯?」

さわこ「私の質問に対するあなたの回答が早い。約2300先の会話の返答になってるわ」

梓「☆§*¢?」

さわこ「そうよ、だから私と話す時ぐらい普通に話しましょ」

さわこの言うことは本当だった。梓はわけの分からぬ言語で随分先の会話での返答をしていた。

梓「……すぁ……すいません」

さわこ「いいのよ、ここに来ればみなそうなる」

梓「何故か先が読めるんです。色々な会話のパターンが頭に浮かんできて…それで…」

さわこ「そうね、それにその言葉はどの言語よりも効率的で物事を進めやすい」

梓「はい。……ところで先生、私一つ気になってることがあるんです」

さわこ「何?」

梓「先生、あなたは私の幻覚や妄想の範囲を超えた存在なのでは?」

さわこ「……どういうこと?」

さわこはしかめ面で問いかける

梓「あなたはあなたでこの空間にいるのではないですか?あなたの発言や思考は私の能力の範疇を越えてる気がします」

さわこ「………」

梓「……先生?」

さわこ「……そんなこと……そんなことないわ」

梓「………」

梓にはさわこが一瞬動揺したように見えた。

さわこ「…気のせいよ梓ちゃん、ここは一人で5億年間過ごす場所でしょ?」

梓「……はい」

さわこ「じゃあ私が存在するわけないわ、あなたの生み出した幻想よ」

梓「……そう………ですか」

しかし梓は心の片隅にある違和感を拭えない。

さわこ「………じゃあね、梓ちゃん。また会いましょ」

スッ

梓「………」

さわこはいつも通り消えたように見えた

―1千万年経過―

梓「………」

梓は新たなモノを求めて瞑想を続けている

■「……あず?§&☆?」

○「そこは、#%@こうせう!」

最近見知らぬ何かが話しかけてくる。人間ではない気がした。

梓「………」

しかし梓は集中力を切らさない。瞑想をモノにしている。

◆「あっちから!※&§$!」

▼「そんなとこ、分かれだよ!?」

梓「………」

これは幻聴だろうか。しかしどこか言ってることが的確なような気もした。

◎「……あば……ななな!!」

□「やーやーや、………」

次第にそいつらの言葉は遠のいた。別にそのぐらいの騒音は屁でもなかったがやっと静寂が訪れると梓は思った。

梓「………」

唯「…あずにゃん、ここに来て大分経ったね」

梓「………」

律「あぁ、すげーよ梓!私だったら1日でギブ!」

梓「………」

澪「さすが私たちの後輩だ!」

梓「………」

紬「うふふ、自慢の後輩よ~」

梓「………」

梓はもういちいち反応しない。それよも早く本当の先輩たちと会いたいと思っていた。

律「でさー、唯は………」

唯「えー私はそう………」

いつも通り先輩たちの声は遠のいていく。内心は寂しいがしょうがない。

―1億年経過―

梓「………」

カキカキカキカキ

床に書かれてる内容は完全に人類の英知を超えた内容であった。見知らぬ言語、新たな計算式、はたまた絵のようなものが床一面びっしりと書かれている。

梓「……ふ~」

梓は一息つく。1億年という節目、そして追い求め続けていた答えはあと2、3歩先にあるというような感じだった。

梓「………」

梓は遠くを見つめる。ここに来てからたくさんの曲を作り、真理なるものを膨大な時間をかけて追求した。

梓「私、これから先………」

梓は何か言いかけたが、途中で止めた。

梓「……さっ、あと少し!」

カキカキカキカキ

そう言うと再び梓は作業に戻った。

―3億7千万年目―

梓「……や、やった!」

梓は喜びの表情を見せている。

梓「やった…やった…とうとうここまで…」

この世界の答えまでとうとうあと一歩のところまで梓はきた。

梓「………でも」

梓「ん~~~」

梓「えーと……」

おかしい。最後のパズルのピースが埋まらない。頭脳は人知を超えたレベルのはずなのに。

梓「……ど、どうしよう」

梓「分からない……」

突然の戸惑いだった。今まで比較的スムーズにいっていたものが最後の最後で詰まってしまった。

梓「何で…何で……」

カキカキカキカキ

どれだけ考えても、どれだけ書いても最後の答えは分からなかった。



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