ーーー70年後ーーー

とうとうここに来て100年が経過した

梓「………」

梓「………」

梓は微動だにしていなかった。考えたり勉強するのは意味がないと思い、50年目くらいで止めた。

梓「………」

梓「………」

最早感情も失いかけていた。仰向けになり、ボーと上を見つめている。

梓「………」

それでも一秒一秒をしっかりと感じていた。時間というものをこれほど意識したことはない。

梓「………」

最近は誰も遊びに来ない。一周して正気に戻ったんだろうか。

梓「………」

梓「……?」

気のせいか遠くに人影のようなものが見えた。久しぶりのお客様だろうか

?「おーい!梓ー!」

梓「………」

律「おい梓!だいじょぶか!?」

梓「………」

律「おい!梓!」

梓「…………なん…………何で…………すか」

律「梓っ!?しっかりしろ!お前はここで答えを追求することに決めたんだろ!?」

梓「………追…………求?」

律「そうだよ梓!簡単に諦めるな!何か分かるかもしれないじゃないか!」

梓「…………あ…………………うぅ…………」

最早言葉を話す気力でえ薄らいでいた

律「梓っ!」

律の言葉で思い出す。確かに50年くらい前に自分なりで勉強していたのだ。

梓「……………そう…………でした………ね」

律「梓っ!もう一回頑張るんだよ!けいおん部の部員だろ?なら意地を見せてみろ!」

梓「…………うあぅ…………は…………はい」

梓は力を振り絞り、起き上がって作業を再開しようと試みる

律「頑張れ梓っ!」

スッ

梓「………うぐ…………あうう………」

カキカキ

梓は再び作業を始めた。未知の領域を求めて

――――――――

梓「……………」

カキカキカキカキ

随分時間が立っていた。梓は無心で床に文字やら計算式を書き続けている

梓「………ありがと」

梓「……ズズズ」

梓「…ここを……こう組み立てて」

時にはお礼を言って、時には差し出されたお茶を飲みながら、時には作業を中断して何か組み立てるような素振りを梓は見せていた

梓「よしっ……」

梓「………」

カキカキカキカキ

そしてまた作業に戻る。そんなことをずーと繰り返していた。

ここに来て何と500年が経過していた。

梓「………ん!」

カキカキ

梓は自分でも驚いたような表情を見せていた。明らかに知的レベルが向上しているのを梓は実感する。それも最早頭が良い、天才と言ったレベルではなかった。

純「あーずさ♪」

憂「梓ちゃん、お久しぶり!良かったらこれから遊ばない?」

梓「………」

カキカキカキカキ

純「……梓?」

憂「い、忙しかったかな…」

梓「………」

カキカキカキカキ

梓は二人に耳を貸さず、とにかく書き続けている。何もないと思っていた世界に梓は楽しさを見出していた。

梓「………」

カキカキ

純「……もういいや、行こう憂」

憂「う、うん…」

スッ

梓「………」

梓「………ごめんね二人とも」

梓は意味のない謝罪をした

梓「………」

カキカキカキカキ

梓「………」

カキカキカキカキ

梓は一心不乱に書き続ける。答えが出る可能性を信じて

―さらに500年後―

時はとめどなく流れる。最初はあまりにも非現実的だと思えたことだったが、梓は最早気にもとめなくなっていた

梓「………」

梓「………」

梓は遠くを見つめていた。思考に行き詰まり、手が止まっていた

梓「………」

さわこ「梓ちゃん?手が止まってるわよ?」

梓「………」

さわこ「……梓ちゃん?」

梓「…………詰まりました」

さわこ「え?」

梓「詰まったんです、追求に」

さわこ「詰まった?」

梓「はい…ここと、ここと、ここが分かりません」

梓はビッシリ文字が書かれた床を指差して言う。

さわこ「………そこが分からないの?」

梓「…はい、先生は何か分かりますか」

さわこ「私に聞いても無意味だってことはずっと昔から知ってるじゃない」

梓「……そうですね、すいません」

時々妄想と現実の区別がつかない。そしてそれを繰り返している。

さわこ「………」

梓「………」

さわこ「………あ!そうだ」

梓「何ですか?」

さわこ「瞑想なんてどうかしら?」

梓「…瞑想?」

さわこ「そう、瞑想。もしかしたら何かわかるかも」

瞑想、梓はいつか授業で聞いたことがあったような気がした

梓「どうやるんですか?」

さわこ「うんとね、まずこうしてアグラをかいて、そして両手はおへそのあたりに置く」
さわこは自ら実践して説明する

梓「そして…どうするんですか?」

さわこ「うん、この状態で目を閉じる。そして集中力を高めて物事を考える。これが瞑想よ」

梓「へぇ…」

さわこ「何よぉ、随分疑わしそうな目で見て。とりあえずあなたもやってみなさい」

梓「はぁ…」

梓は言われるがままに瞑想のポーズをとる。そして目をそっと閉じた

さわこ「そう、そのまま集中するのよ」

梓「はい……」

梓「………」

さわこ「…じゃあね梓ちゃん。答え、見つかるといいわね」

スッ

梓「………」

―――――――――
――――
―――――――――
梓「……………」

梓「……………」

集中力が高まってきているのを感じる。最初は慣れなかったが、1ヶ月ほど経つと大分慣れてきていた

梓「……………」

梓「……………」

尚も梓は瞑想を続ける。端から見れば彼女はとても異様な雰囲気を醸し出していた。

梓「……………」

梓「……………」

―1千年後―

梓「……………」

紬「梓ちゃん♪美味しいお菓子があるわよ♪」

梓「……………」

紬「………梓ちゃん?」

梓「……………」

菫「せ、先輩!お姉ちゃんに反応してあげてください!」

梓「……………」

菫「先輩……」

紬「…いいのよ菫、梓ちゃんは今集中してるのよ。だから私たちが邪魔しちゃ駄目、行きましょ」

菫「う、うん……」

梓「……………」

凄まじい集中力だ。最早誰の声も届いていなかった。梓は空間との一体化を目指していた

―――――――――
そしてさらに月日は流れた。ここにきてとうとう一万年という膨大な時間が経過した。

梓「……………」

梓は無我の境地に達していた。誰も近づくことを許さない、そんなオーラを放っている

梓「……………」

梓「………!!!」

パッ

梓は長年閉じていた目をいきなり見開いた。久しぶりに開いた目はとても恐ろしく、狂気を感じさせている。

梓「…………あっ」

梓「ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!」

梓は突然思いっきり叫ぶ。その雄叫びは空間のずっとずっと奥まで響き渡りそうなくらい大きなものだった

梓「ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」

梓「あああぁぁぁ………」

ひとしきり叫んだあとに数秒間黙りこんだ。そして梓は異常な行動に出る

梓「………あうっ…」

梓「………ううぅ!!!痛いっ!!!」

ズリズリズリズリ

梓は突然自分の足を思いっきり、かきむしり始めた

梓「……うああああああああ!!!痛いいいいいい!!!」

ズリズリズリズリ

梓「……あうっ!…………痛いよぉ……」

梓「………ウグ……ううう…」

ズリズリズリズリ

ひたすら太ももあたりをかきむしっている。意図は分からない

―3日後―

ブチッブチッ

梓「…ひぐっ!………ああああぁぁぁ………」

ズリズリズリズリ

肉がえぐれている。それでも梓はかきむしっており、血管や神経の切れる音が微かに響く

ブチッブチッ

梓「………ぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」

ズリズリズリズリ

梓はあまりの激痛に失神しそうだった。目が完全にイッてしまっている

ブチッブチッ

梓「……あ………ああぁ………」

ズリズリズリズリ

―2週間後―

梓「………」

梓は最早動くことのない自分の両足を見つめている。2週間かけて両足を切断した

梓「………」

梓は無言だ。再び魂のない脱け殻のようになっている

直「…せ、先輩!なななな何やってるんですか!?」

梓「………」

直「先輩っ!!?」

梓「………えへへ」

直「!?」

梓「あは、あはははは」

梓は笑っている。その様子は自分を完全に失ってようにも見えた

直「………」

直は言葉を失っていた。いやむしろ梓が喋らせなかった

梓「あははははは」

直「先輩っ!しっかりしてください!」

梓「……えへっ…………えへへへ」

直の呼びかけにもまともに反応しない

直「………」

梓「……くくく………くくっ……」

イカレタ目で直を見つめている

直「……ひ、ひいっ!」

スッ

直は恐怖を感じとうとうその場から消えてしまった

梓「………くくく………けけけ」

梓は不適な笑みを浮かべ続けていた


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