唯「まっしろ…」
紬「冬だから」
唯「はぁーーっ」
紬「あんまり白くならないね」
唯「…うん。やっぱりムギちゃんのほうが暖かいんだね」
紬「そうかもしれないね」
唯「ねぇ、ムギちゃん。私の手、温めてくれる?」
紬「はぁーーーーっ」
唯「あはは。ムギちゃん。息じゃ流石に暖かくならないよ」
紬「えっ。なら、どうすれば」
唯「こうするんだよ…」
紬「あっ」
唯「こうやって手をつなぐだけであったかあったかだよ」
紬「…うん」
唯「でも手の甲が冷えちゃうね。そうだポケットの中に入れちゃおっか」
紬「ポケットの中に?」
唯「うん」
紬「唯ちゃんの左手を私の右ポケットに」
唯「ムギちゃんの左手を私の右ポケットに」
紬「…ちょっと恥ずかしいね」
唯「うん。でもとってあったかい」
紬「そうね。とってもあったかいわ」
唯「でも、顔が少し寒いね」
紬「…そうだね」
唯「はーーっ」
紬「唯ちゃん?」
唯「ちょっとぐらいはあったかくなるかなって…」
紬「はーっ」
唯「はーーっ」
紬「はーーっ」
唯「すー、はーーーっ」
紬「すー、はーーーっ」
唯「すーー、はーーーーっ」
紬「すーー、はーーーーっ」
唯「すーーーーごほっごほっ」
紬「唯ちゃん!」
唯「…大丈夫。ちょっとむせただけだから」
紬「大丈夫ならいいんだけど」
唯「ムギちゃんは心配症だね…」
紬「でも、少しあったかくなったね」
唯「呼吸ってお腹の筋肉を使うからかな?」
紬「そうかもしれない」
唯「…あっ」
紬「どうしたの?」
唯「私の息くさくなかった?」
紬「ちょっと甘かったかも」
唯「ほんとう?」
紬「ほんのすこしカカオの匂いもしたかも」
唯「てぃーたいむにちょこれーと食べたからかな」
紬「たぶんね。それで…」
唯「うん?」
紬「私の息はどうだった?」
唯「ムギちゃんの息は、ちょっと変わってるんだよ」
紬「えっ」
唯「ムギちゃんの息を吸うと思い出すんだ。あの時のこと」
紬「あの時のことって?」
唯「初めて…したときのことだよ」
紬「唯ちゃん…」
唯「したいな」
紬「…」
唯「してもいいかな?」
紬「…」
唯「それではいただきます」
紬「…」
唯「そろそろ帰ろっか」
紬「そうだね」
唯「ちょっと名残惜しいね」
紬「片方の手は離さないと」
唯「両手を繋いだままは歩けないから」
紬「でも、離したくない」
唯「私も離したくないよ」
紬「じゃあ離さない」
唯「…ムギちゃん?」
紬「こうやってずっと手を繋いでいれば死ぬまで一緒にいられるから」
唯「こんな寒いところにいたら本当に死んじゃうよ」
紬「死んじゃうね」
唯「ムギちゃんは死にたいの?」
紬「唯ちゃんと離れるぐらいなら死んだほうがいい」
唯「ムギちゃん、重い女だって言われたことある?」
紬「はじめて」
唯「ムギちゃんは、私にだけ重い女だね」
紬「うん。私は唯ちゃんだけだから」
唯「りっちゃんは?」
紬「いらない」
唯「みおちゃんは?」
紬「いらない」
唯「中野梓は?」
紬「いらない」
唯「本当に?」
紬「うん…」
唯「ムギちゃん、嘘つきって言われたことあるでしょ?
紬「ないよ」
唯「ムギちゃんは、私にだけ嘘つきだね」
紬「私には唯ちゃんだけだから」
唯「信じてもいいのかな?」
紬「信じなくてもいいよ」
唯「えっ」
紬「どうでもいいから、二人で冷たくなって死んじゃおう」
唯「むぎちゃん…本気?」
紬「唯ちゃんは私と死ぬの嫌?」
唯「どうだろう」
紬「わからないんだ?」
唯「うん」
紬「そっかぁ」
唯「…やっぱり嫌かな」
紬「どうして?」
唯「手の暖かさが分からなくなっちゃうよ」
紬「私の?」
唯「ムギちゃんの」
紬「それなら、仕方ないね」
唯「ムギちゃんの左手離すね」
紬「唯ちゃんの右手を離すよ」
唯「寂しいね」
紬「でも、もう片方の手はあたたかい」
唯「でも、もう片方の手は冷えちゃうね」
紬「なら、あたためないといけないね」
唯「どうやって?」
紬「すーーー、はーーーーっ」
唯「あはは。それじゃあんまりあったかくならないよ」
紬「すーーー、はーーーーっ」
唯「それに私の手しかあたたかくならないよ」
紬「すーーー、はーーーーっ」
唯「…だけど、ありがとう」
紬「すーーー、はーーーっ」
唯「いつの日か私があたためてあげるから」
紬「すーーー、はーーーっ」
唯「心まで全部だよ。だから待っててねムギちゃん」
紬「すーーー、はーーーっ」
おわる。
最終更新:2013年02月14日 15:36