澪「え」

律「なんだ、ワナビって」

澪「どこで聞いたの」

律「2ちゃん」

澪「そうか」

澪「ワナビっていうのはな」

澪「クズだ」

律「そうか」

澪「ついでに言うと作家志望を指す言葉でもある」

律「へぇ」

澪「律には関係ない言葉だ」

律「関係ある」

澪「え」

律「私はこう見えても作家志望なんだ」

澪「へぇ」

律「お前が小学生のころ作文で入賞したことがあるだろう」

澪「ある」

律「全校生徒の前で音読したな」

澪「した」

律「私はその時思ったんだ」

律「この程度で入賞できるのなら私でも入賞できると」

澪「あー」

律「そう考えると、児童書を読んでもライトノベルを読んでも゛この程度゛と思えてしまってだな……」

澪「分かった、もう言わなくて良い」

澪「お前はワナビだ」

律「うむ」

澪「それじゃあ今までに何かしたのか」

律「何かって?」

澪「新人賞に応募してみるとか」

律「していない」

澪「小説は書いているのか?」

律「それは、これから書こうと思っている」

澪「そうか」

律「自分で言うのもなんだけど結構面白い話なんだ」

澪「そうか」

澪「頑張れ」

律「生温かい目で見るな」

澪「そんな目してるか」

律「してる」

澪「それはすまん、まぁ私も昔はいわゆるワナビだったから」

律「まぁそうだろうとは思ってた」

澪「もう諦めたけど。一次落ちばっかり」

律「ふーん」

律「応募した作品ちょっと見せてよ」

澪「よし、じゃあ帰りに私の家に寄ってくれ」

律「ところで澪は何部に入るんだ」

澪「軽音部だよ」

律「文芸部じゃないのか」

澪「文芸部なんかクズの巣窟だよ」

律「そうなのか」

澪「そうだよ」

律「じゃあ私も軽音部にするか、澪は文芸部に入ると思ってたから迷ってたんだけど」

澪「文芸部なんかクズの巣窟だよ」

律「そっか」

律「軽音部で楽しくやっていけると良いな」

澪「うん」


○澪の自室

澪「このノートPCの中にある」

律「え」

澪「ん?」

律「メールかなんかでくれよ」

澪「これネットに繋いでないんだ、ここで直に読んでくれ」

律「えー」

澪「欲しかったらフラッシュメモリに移すから」

澪「とりあえず読んでくれ」

律「あー、まぁそうだな」

澪「それじゃあ私はその辺でマンガ読んでるから」

律「分かった」

律「これか」カチャカチャ

「キラキラプリンセス」.txt 118KB

律「どれ」カチ

律「おー」

律「すんげぇ文量」

律「とりあえず読んでみるか」

律「……」

律「……」

律「……」

律「つまんねぇな」

澪「だろ」

律「うお! あ、すまん」

澪「良いよ、本当につまらないから」

律「いや、自分で言うなよ」

澪「自分で書いててつまらないからしょうがない」

律「えー」

澪「このキラキラプリンセスも脳内妄想の時はすごく面白く思えたんだけどさ」

澪「文章に書き起こすとビックリするほどつまらない」

律「そっか」

澪「映像で思い描いて話を作るから、文章にすると表現能力が乏しくてダメダメなんだ」

律「あー、私もそうなんだけど」

澪「じゃあつまらないかもな」

律「……」

律「まぁ、とりあえず書いてみるよ」

澪「そうか、キラキラプリンセスはデータで欲しいか?」

律「いや、いらない」

澪「だろうな」

律「じゃあ、もう今日は帰るよ」

澪「なんだ、用が済んだらポイか」

律「は?」

澪「なんでもない」


一ヶ月後

澪「執筆は進んでますか律先生」

律「執筆?」

澪「はい、作家志望だと仰っていたので」

律「ああ」

律「無理無理、私が小説なんて書けるわけがない」

澪「だよな」

律「なんかさ、勘違いしてた」

澪「勘違い?」

律「文章って誰でも書けるじゃん」

澪「うん」

律「数行のメールなんて2、3分で書けたりするじゃん」

澪「うん」

律「そのメールで数行2、3分の作業をさ、何十行何百行って続けたら小説になると思ってたんだ」

澪「それは」

律「違うよな、全然違うよ」

律「なんかさ、私ってダメ人間だろ?」

澪「うん」

律「そんな私の唯一の能力かもって思ったんだよ小説っていうのは」

澪「なんでそう思ったんだよ」

律「なんでもなにもバカだからさ、バカなんだよ私」

澪「バカじゃないよ」

律「いやバカだ。少なくとも゛この程度゛と馬鹿にした人たちよりバカ」

澪「……」

律「とりあえず今回の件に関しては私がバカだったという点が再認識できたという結果で終わりにしたい」

澪「そうか」

律「おしまい」