後編!



唯「……本当?りっちゃん。」

律「わからん。でも試して見る価値はありそうだ。

  和の話は全部覚えているが、一言も、自分が死んだなんていってねー。

  この痘瘡はメイクじゃなさそうだが、

  そもそも、録画の時点でウイルスを打ったのかも疑わしい

  それに和の話を信じる根拠なんて何一つないんだ。

  強いていえば、現実にこんな目に合わされるほどの、権力が和か誰かにあるというだけ。

  生きてここでにやにや私達の狼狽具合を観察している悪趣味野郎だと和のことを思いたくはないけどな」

ムギ「でも、どうやって……」

律「こうやるんだ」ボキ


和(無茶するわね。中指をひしゃげさせるなんて。かなり痛かったわよ)


澪「や、やっぱり死んでるよ……どう見ても……」

律「うーん」ごそごそ

澪「なに和の体をまさぐってるんだ、律!」

律「怪しいものは持ってないな。」

紬「……もし和ちゃんが生きていたら……」

梓「調べる価値はありますね。」


紬「ちょっとりっちゃん。瞼を開かせてもらえないかしら?」

律「……ああ。」

紬「えい」ピカ

紬「……瞳孔が収縮した……生きてるわ、

  これ、生きてる……信じられない、嘘よ……和ちゃんが……」

梓「……和先輩。もうネタは上がってるんです。寝たふりを止めて起きて下さい」

律「問題がいくつかある。

  その一。和に意識はあるのか?呼吸も浅いし、脈もほとんどない。

  そのニ。これは本当に和か?

  そっくりさんを置いて、本人はどこかでここの様子を見ているんじゃないか?」

梓「私達を惑わそうと?この悪魔め!」ドシュ


律「ま、待て梓。殺しちゃまずい。これが本当に和だったら、いろいろ聞くべき事がある」

唯「ね、和ちゃん。起きてよ。みんな。これは和ちゃんだよ。

  顔は腫れ上がってひどい事になってるけど、私にはわかる。

  これは和ちゃんだ。

  本当の事を話してよ。私達、友達でしょ。」

律「……起きる気配がないな。起きなきゃ指を全部折る。それから目を刳り抜く。どうだ?起きろ」


和(そんな脅しで起きる訳ないじゃない。つまらないわよ。)


律「……」ボキ

和「……」

律「痛いだろ?」ボキ ボキ ……

梓「先輩。私にもやらせて下さい」ボキ ボキ

梓「こいつ、人間じゃないです!私達を、こんな目にあわせて……」ボキ

梓「はあ、はあ。」


和(……人間よ、私も。でも、今までのやり取りで分かった。本当に恐るべきは……)



律「ちっ。じゃあ、目を刳り抜く。最後の忠告だ。起きろ、和」


和(両目くらいあげるわ。私だって、覚悟を決めてるのよ)


律「梓、やるか?」

梓「え……何もそこまで……」

紬(りっちゃん……)



私は、和の眼窩に指を差し込み、目玉を片方ちぎりだした律に、恐怖した。
律は正しい。それはわかる。この状況で、なんら間違えた事はしていない。
ただ、寒気が私の背筋を襲った。
和の残った目を刳り抜いているとき、和がかすかに口から声を漏らした。和の体は震えていた。
律はそれに気がついているのだろうか?私達4人はその光景を呆然と見つめていた。



律「おい。やっぱりこいつ、意識がある。

  視神経をちぎった時、声を漏らしたぜ。それに今、息遣いが荒くなってきているな。」

唯「……りっちゃん、もう止めて……和ちゃんが……かわいそう……」

律「唯。ずれたこと言うな。生き残るためだ。目がなくても、尋問できる。

  でも、これで起きないなら、ちょっと方法を変える必要もあるな」


和(さすがに痛いわね。……信じられない。目をつぶされるのがこんなに痛くて、不安になるなんて

  でも私の勝ちよ。……ここまでは。ちょっとは面白くなってきたわ。)

和『……結局爆弾は起爆させなかったのね。うれしいわ。これでもっとゲームを楽しめる。』


澪(このタイミングで放送か……)

律「保身のためか、和。これで尋問は中断だ。ちくしょう。」

紬(本当に保身のためなら、きっと目を潰される直前で放送を流していたでしょうね……

  和ちゃんがコントロールしていないのか、それとも目を失ってもいいと思っていたから?

  後者なら……)


和『でもなんであなた達、爆弾を爆発させなかったの?

  そう。きっと気がついたのね。この飛行機には、一般の人も乗っているって。

  何一つ悪いことをしたことのない人間はいないと思うけど

  法律を遵守し、真面目に生きている会社員、まだ2児の子を育てる母親、純真無垢な幼児……

  この飛行機にはそんな無実な人間がたくさん乗っている。

  その人達の事を考えて、自爆しなかったの?

  ……誰がその事に気がついたのかしら?

  他人の事を一番思いやるムギかしら。

  そんなムギに、秀才のどかの、哲学教室~』


梓「ふざけてるです……」


和『ムギ。あなたは列車の運転手。

  今日もおひさまぽかぽか暖かい日。でも、大変な事が起きるの……

  ムギの運転する列車が、制御不能に陥ったの。ブレーキは効かない。

  列車は猛スピードで、踏切へと向かう。

  そこは、通学する子どもや、通勤中のサラリーマンでごった返している。

  どうしようもない状態に、ムギは目をつむる。でも、ムギは気がついた。

  目の前の分岐を切り替えれば、列車は脱線するけれども、子供たちは救える。

  たくさんの人達を救える。なぜか、乗客は今日に限って4人しかいない。

  さあ、どうする?

  分岐を切り替えれば自分と乗客4人は確実に死ぬだろうが、たくさんの命を救える。

  分岐を切り替えなければ、自分も車にぶつかって死ぬ可能性がある、そして多数の人間の死は確実である。

  そしてムギは選んだの。多数の人間の死を……

  ムギ。あなたは正しいわ。……功利主義者の私から見てもね。』


紬「……なにこれ……」




和『さて。ここで次のゲームよ。ちょっと画面が変わるわ。』


和『見える?ここはあなた達が先ほどまでいたエコノミークラス。

  乗客の皆さんは、すやすや休んでいるわね。羨ましいでしょ。さて、ここでアナウンス』


『ピンポーン

  おやすみのところ大変失礼いたします。機長です。

  ただいま、当機は機体トラブルのため、緊急事態に陥りました。

  酸素マスクを下ろしましたので、早急にご利用下さいませ。

  なお、使用方法のわからない方は、お近くのアテンダントまで……』


律「……和……おまえ……本当に人間じゃねえ」


紬(……今度は何を……さっき爆発させておけばよかったと思えるような、残酷な選択を私達に迫るの?)


和『みんなは安心して。このファーストクラスは安心・安全。

  だって、何のトラブルも発生していないんですもの。

  ほら、機内は大パニック。でも、何もないというわけじゃないのよ。

  これからエコノミークラスの空気を抜くの』


唯「和ちゃん!!もう止めて!許して!私が何でもするから!」


和『……次の金庫はB2。番号は11074。ヒ・ト・デ・ナ・シ。と覚えてちょうだい。

  さあ、5分後には空気を抜くわよ。急いで!金庫を開けたら次の選択』


律「急げ!」

唯「1、1、0、7、4。開いた!え?なにこれ。工具箱……ペンチに、ノミ、キリにトンカチ……」



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