律「……どうする?」

紬「いっ……ぐす……いや……いやっ……やだよ、りっちゃん。私達のうち誰かが欠けるのは……」

梓「ムギ先輩に……賛成です……」

澪「で、でも。最後のワクチンって……多分これを逃したら……私たちは……」

唯「澪ちゃん!なら、みんなが一人の為に死んでもいいって言うの!」

澪「ひっ。そんなつもりじゃ……」

梓「……論外です……え、え……でも、死ぬんですか?このままだと私は……」

唯「あずにゃん。泣かないで」


律「和!質問だ!最後に言ったよな?"客席"。客席があるって……この飛行機に客が他にいるのか?」


和『……律。……この飛行機はあなた達が乗ったヒューストン発成田行で間違い無いわ。

  あなた達だけ眠らせて、このファーストクラスに案内したけど。』


澪(和。この質問も想定の範囲内ってことか。)

梓「つ、つまり。この飛行機の中には、無実な一般人もたくさん……」

律「たぶん。

  ほとんど私達と同じ、こんな人間にあるまじき行為が行われているなんて知らずに乗った客ばかりだと思う。

  当然、中には協力者がいるんだろうが。パイロット、アテンダントあたりは……」

澪「で、でも。私達がこれを注射しなかったら和はどうするつもりなんだろう?」

紬「……わからないわ。でも、こんな大掛かりな仕掛けで、これだけってのはあり得ないと思う」

律「ああ。ゲーム、ロールプレイングゲーム、選択。

  これらの言葉を多用していることから、まだ何か用意しているはず。

  少し待てば、きっと別の選択がまた提示されるんだろ。吐き気を催す、下卑た選択を」

唯「ねえ、みんな!他の席の下にもたくさん金庫があるよ。

  たぶん、これらを使ってこれから選択していくんじゃない?」

梓「……間違いありませんね。和のクソッタレ。」ゲシゲシ

澪「じゃあ、このワクチンは保留か」

梓「ねえ!澪先輩!さっきから何なんですか!

  ワクチン、ワクチンワクチン、って。4本は毒なんですよ!死ぬんですよ!

  誰かが、死ぬんですよ!」

澪「で、でも。一番初めに注射した人が生きていれば、残りは毒だってわかる……」

梓「それじゃあ、最初の人だけしか助からないじゃないですか!

  私たちは全員で帰るんです!そんなに打ちたきゃ澪先輩だけ打てばいいじゃない!」

紬「まあまあまあまあまあまあまあ」

澪「(7回言ったー!)梓!このやろう!私はそんなつもりは……」

梓「じゃあ、どんなつもり……」バシン

梓「あっ……律先輩……ぶった……」


律「少し黙れ、梓。」

律「澪も感情的になるな。梓。生き残るためにはいろいろな意見が必要だ

  最後になっても道が見いだせなければ、この注射を打つのは当然選択肢の一つだ。

  ……本当にこの中にワクチンがあるかも疑わしい。なんたって、番号がみなごろしだ。

  しかし、この中に本当に毒が入っているのかも疑わしい。

  だが、今は待つべき時だ。次の和の提案を待とう。」

唯「そうだよ、喧嘩はダメだよふたりとも。今はみんなで力を合わせる時」

梓「……すみませんでした、澪先輩」ドゲザ

澪「私も言い過ぎた。ごめん」

紬(さすがりっちゃん。でも大丈夫かしら。

  さすがに梓ちゃんも神経をすり減らしてイライラしているようね。

  澪ちゃんも、目先の利益ばかり。今もまだ、注射器の方を物欲しそうに見ている。

  私は……何が出来るのかしら?)




30分後!

和『……結局ワクチンは打たないのね。信じていたわ。あなた達の団結力。

  そりゃ当然よね。1人だけ生き残って4人が死ぬなんて選択……

  並の神経じゃ、元気に日本に帰っても、まともな人生歩めそうもないものね。

  でも、唯か澪は打ちたがってたんじゃない?利己的な性格よね、ふたりとも。

  ……それに澪は怖がり屋。自分が死んでもいいから早く楽になりたい。

  澪の場合は、生き残りたいんじゃなくて、早く死んじゃいたいから注射器を打ちたがったんじゃない?

  どうかしら?合っているかしら?

  よく人は間違えるのよ。死ねば楽になれるって。

  ちょっと苦しいことがあると耐え切れず、その先にある果報を待ち切れない。

  澪。よく考えてみて。あなたが死んで、生き残った人は誰でも心を痛めるわよ。壊れちゃうほどにね。

  ……唯は利己的かつ楽天家。きっと1/5なら自分が死なないって考えたんじゃないかしら?

  さすがにこの状況でそれほど人生を楽観視しているとは、幼なじみとして信じたくないんだけど。

  打たなくて良かったわね。きっとこの場面で死ぬのは唯だったわよ。』


全てを見透かしたように話す和に、私たちはもう操られているのではないだろうか。



律「案じるな、澪。みんな。ありゃ、録画だ。

  たくさんとって、あらゆるパターンに対応できるようにしているんだろう。」

紬「そうよ。どこかに協力者がいて、私達の会話を聞き、ビデオを流している……」

この時、私の中に恐るべき疑念が湧いたが、私は必死にその悪魔に蓋をした。

今の私に出来ることは信じることだけだ。


和『死の誘惑に30分も耐えたみんなに私からのプレゼント

  席はC4。番号は42731。シ・ニ・ナ・サ・イ

  何か質問があれば、受け付けるわよ』


唯「和ちゃん。全員が助かる方法ってあるの?

  それに生き残って日本に帰れば警察に訴えるよ。今すぐ止めて。」


和『……唯。

  ……通報しても無駄。

  やってきた警察も感染するわよ?

  それに、誰が信じるの?まあ、気がついた頃には遅いんだけどね。

  誰も止められないわ。それで警察に助けてもらえると思っているの?』


澪(なんて悪趣味な奴だったんだ、和は!画面の中で笑ってやがる。恐怖に震える私達を見て!)

律「悪魔に耳を傾けるな」

梓「……ありました、金庫。開けますか?」

紬「ええ。絶対みんなでまた……」ガチャン

唯「なにこれ……信じられない……」

金庫の中にあったのは爆弾だった。


Composition 4 ―高性能プラスチック爆弾 取り扱い注意―


律「な、なんだこれ」


和『どう?私からのプレゼント。あ、安心して。

  よっぽどの衝撃を与えない限り、爆発しないから。まあ、人間の力じゃ無理。

  そこに画面が付いているでしょ?全員の掌紋による承認を必要とするの。

  つまり、5人全員で爆発させたいと思わない限り爆発しないわ。

  え?爆発させたい訳ない?まあ、じっくり意味を考えてちょうだい。

  ひょっとしたら、全員一緒に天国にいける可能性が存在するかもしれないから……』


澪「し、質問!ば、爆発したら……どうなる?」


和『……澪。

  ……今回用意した爆弾はアメリカ軍を始め、

  世界中の軍でスタンダードの高性能プラスチック爆弾通称C-4。

  TNT換算で1キロトンだけど、まず死ねるから安心して。

  だって、この飛行機は大破しちゃうから。事後処理がテロで扱えるからとっても楽よ。

  さあ、何か質問は?』


律も沈黙している。間違いない。和はかつての和じゃない。悪の権化だ。

だって、こんなにも弱い私たちにこんな甘い飴を突きつけるなんて



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