唯「大変だよ、みんな!」

唯「み、澪ちゃん起きて!」ユッサユッサ

澪「うーん、むにゃむにゃ……あれ、もう着いたの?」

唯「澪ちゃん、なんか変なんだよ」

澪「ふぁぁぁ、あれ?ここは?飛行機の中だけど…」

紬「…うーん、まだ東京に着かないのかしら~って、ここは……ファーストクラス?」キョロキョロ

澪(あれ?いつの間にか移動している……照明が抑えられていてちょっと薄暗いけど……)


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


澪(飛行機……空を飛んでいる……窓の外はまだ暗い……

  ロンドンから飛び立ってどのくらい経ったんだろう)

律「Zzz」

梓「スピースピー」

唯「あずにゃん!寝てる場合じゃないよ!早く起きて」

梓「あ、おはようございます、唯先輩……昨日は激しかったですね…ってあれ?」

唯「あずにゃん……」

澪「律、起きろ!」

律「ん?もう着いたの?まだ暗いけど」

紬「なんか変な匂いがするわ」

唯「だれもいないんだよ、この機内!私達だけしか……

  それにいつの間にか広くて高そうな場所にいるし」

律「ここはファーストクラスなのか……気持ちいシート…もっと寝てたい」

紬「ねえ!なんか変よ、この飛行機!」


『ピーンポーン 

 おやすみのところ失礼します。

 当機はロンドン発成田行、現在当機はロシア連邦ウラル山脈上空を平常通り飛行しております

 目的地の天気は晴れ、このまま行きますと8時間後の現地時間午前11時に目的地に到着いたします

 目的地到着までのフライトをお楽しみ下さいませ

 Ladys and gentlemen…』


唯「なんか怖いよ…誰もいないんだよ……私達の他に…」

律「おーい!だれかー!」

澪「ホントだ。誰もいない。」

梓「でもいつの間にエコノミーから移動してきたんでしょうか?疲れてすぐ寝ちゃったので…」

澪「わからない……でも飛行機は飛び続けているようだし、アナウンスも正常だ……」

律「おい!あそこの席に誰かいるぞ!」

紬(何だろう、この胸騒ぎ……夢にしては……夢にしてはおかしい)



律「ねえ!そこのあなた……ってぬおー!」

澪「どうした律!」

律「ちょ、ちょっと…冗談だろ?和か…これは……おい…」

澪「い、いやぁぁぁ!!」

唯「の、和ちゃん!!え……なにこれ……」

紬「ちょっと、落ち着きましょう!

  みんな!添乗員さん!ちょっと、来て、なにこれ!し、死んでる……」


梓(私は死体というものを初めて見た

  桜高校の制服を来た女性は紛れも無く和先輩だった

  力なくシートに座り、トレードマークの赤い縁のメガネをかけている

  なぜここに和先輩が?どうしてCAはやって来ない?何事もないように飛び続ける飛行機

  かなり特徴的な死体だった。手から顔まで…赤黒い湿疹が吹き出している

  律先輩がいくら揺すっても反応しない。ゾンビを嫌でも連想させる

  密室殺人?

  唯先輩が駆け出し、他のエリアへつながる通路のドアをいくら叩いても、それは固く閉じられたまま

  澪先輩が叫び、ムギ先輩が非常ボタンを連打する

  息を殺してみんな待っても、誰もやってこない

  私はそのうちに気を失う……最後に聞いたのは、律先輩の言葉だった)



律「どうするんだ、これ……」


梓「……っ、変な夢を……あれ?夢じゃない?」

唯澪律紬「……」

梓(え?こんな先輩方の顔初めて見た……恐怖で歪んでいる)

梓(まだ飛行機の中だ……あれ?和先輩が死んでたんだっけ

  でも、大きな画面に和先輩が映し出されているよ)


和『……みんな目を覚ましたようなので、放送を続けさせてもらうわ

  お久しぶりね、桜高等学校元生徒会長の真鍋和です

  この放送は録画なので、一方向コミュニケーションになるけど、ごめんなさい

  ロンドンは楽しかった?私も行きたかったわ……

  でもこうしてあなた達と一緒に桜ヶ丘に帰れて幸せよ』


和は白い壁の前でニュースキャスターのように淡々と話す。

そこにある和とは別人のように、顔は精気に満ちている。


和『もう私は見つけたかしら……A4席に座っているのが私……

  ちょっと毒を打ってね…ああなっちゃったの

  ほら?注射痕が見える?今はまだ大丈夫だけど……

  で、私、あなた達とゲームをしたいの

  舞台は用意されているのよ。

  あなた達はロールプレイングゲームの主人公一行のように選択していけばいいだけ

  安心してちょうだい。生きて日本に帰るのは簡単だから。

  ただそこで8時間何もせずに休んでいるだけでいいの

  でもせっかくのゲームなんだから、楽しむのも悪くないんじゃないかしら』


澪「ゲーム!これがゲーム!!私達を拉致・監禁しておいて!!ふざけるな、和!」

紬「落ち着きましょう、澪ちゃん」

律「……」


ムギは震えながら諌め、律はじっとどこかを見つめる。


和『何から説明しようかしら……

  ルールからかしら。

  ルールは簡単。あまり暴れないことね。

  あなた達には幾つか道具が与えられるけど、それを使って

  ドアを壊して助けを求める…そんな興ざめな事しないでね。

  さあ、何か質問ある?』


澪「わ、私達を家にかえせ!」


和『……澪。……何もしなければ日本に帰れるわ。

  さあ、他に質問は?』


律「ルールは他に無いのか?」


和『……律。……ルールは簡単。あまり暴れないことね。

  あなた達には幾つか道具が与えられるけど、それを使って

  ドアを壊して助けを求める…そんな興ざめな事しないでね。

  さあ、他に質問は?』


機械的に同じことを繰り返す和。一分の狂いもないのだから、これは本当に録画なのだろう。


和『……あなた達はゲームの主人公のように、英雄になる事もできるの。

  律。ブルース・ウィリスのようなヒーローに憧れた事はない?

  さあ、あなた達は人類を守るヒーローになるのよ!

  それとも、史上最悪の殺人者になる?

  南アメリカを侵略したコルテス、ユダヤを殺したヒトラー、

  20世紀最高の独裁者スターリン、そして核を振りかざしたルーズベルト……

  何もしなければ、あなた達は歴史に名を刻みつける……最悪の殺人者として』


みんな絶句する。和は嬉しそうに話し続ける。


和『……説明が必要なようね。

  ほら。そこにいる私、ひどい事になっているでしょ?毒を打ったのよ。

  天然痘ウイルス。知らなければ説明してあげる。

  知っている?』


梓「な、何の冗談ですかこれ……」

澪「わからない。和!答えろ!何のつもりだ!」

紬「……澪ちゃん。何のつもりかわからないけど、和ちゃんはここにいて、あそこで話しているのは……」


和は画面の中で沈黙している。どうやら私達の答えを待っているようだ。



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