あっという間に形成が逆転した。
地下壕の武器庫から武器を持ち出し、武装したファンクラブ連中に
丸腰のARCHメンバーは逃げ惑うばかりであった。
校内の至る所で反体制者狩りが行われ、
ARCHメンバーたちは次々としょっぴかれていった。


ファンクラブ「秋山さんばんざああああい!」
ファンクラブ「反体制者を一掃しろー!」
ファンクラブ「秋山さんを取り戻せー!」


ARCH「ひいい、こりゃたまらん!」
ARCH「こんなの勝てるわけない、逃げろ!」
ARCH「もう終わりだ!結局ファンクラブには勝てないんだ!」


和たちが立てこもっている放送室も
武装集団に取り囲まれてしまった。


風子「あっはっは、もう終わりね、反逆者のみなさん。
   早く降伏したほうが身のためよ?」

佐藤「くそっ……」

唯「澪ちゃん、何とかファンクラブの人たちを説得できない?」

澪「わ、分かった、やってみる……」


澪「ファンクラブのみんな、もうやめてくれ。
  私はこんなこと望んでいないんだよ」


ファンクラブ「秋山さん、ARCHの連中に洗脳されたのね」
ファンクラブ「大丈夫よ秋山さん、どっちが正しいかすぐに分かるわ」
ファンクラブ「秋山さんは私たちがすぐに救い出してみせるわ」


澪「うう、通じない……」

和「梓ちゃんはまだ!? アレさえあれば、逆転できるのに……!」

佐「ふふん、出生証明書があったところで
  あなたたちの負けはもう決しているのよ」

和「佐々木さん……!」

佐「これで分かったでしょう、何人たりとも澪ファンクラブを倒すことはできないと。
  さあみんな、この反体制者共をひっとらえるのよ」

和「くそ……ここまでか」

佐藤「せめてもう少し早く、エリたちが来てくれてれば」

紬「そんな、あ……梓ちゃん……」

澪「梓……」

唯「あずにゃーん!」


「はいーっ!」


一同が声のしたほうへと振り向くと、
たしかにそこには中野梓と瀧エリがいた。

梓「颯爽登場!」

エリ「ごめん、遅れちゃって!」

佐藤「エリ……それに、中野さん」

唯「無事だったんだ!」

紬「良かった……」

梓「ちゃんと出生証明書も持ってきましたよ」

唯「ところでなんでパジャマなの?」

梓「あっ」

風子「馬鹿な……どうやってここまで来た?
   ファンクラブの包囲網を抜けられるはずが……!」

梓「ふん、澪先輩の盗撮写真をばらまいたら
  みんなそっちに釣られてくれましたよ!」

エリ「楽勝だったね」

澪「なんでそんなもん持ってんだ」

佐「ええい、役立たずどもめ……」

佐「お前たち、あの二人から出生証明書を奪うのよ!
  そうすればこの馬鹿げたクーデターも終わるわ!」


佐々木の命令に従って
武器を持ったファンクラブの会員たちが梓とエリに襲いかかってくる。


梓「ふっ、こっちにはまだ澪先輩の写真が……あれっない」

エリ「ええっ!?」

ファンクラブ「うおおおおおおおおお!」

梓「ひいいいいい!」

エリ「いやああああああ!」

唯「あ、あずにゃああああん!」


純「ふっ……待たせたわね!」

梓「じゅ、純!?」

純「ARCHの特攻隊長、ちぢれ毛の純とは私のことよ!
  くらえ、天覇流秘奥義・純情ボンバー!!」

ファンクラブ「ぎゃあああああああ!」

梓「ありがとう、純!」


  純の出番 おわり



純の勇気ある行動によって
ファンクラブの戦闘員たちは一掃されたのであった。
悔しそうに歯ぎしりをする佐々木と風子を尻目に
放送室に入っていく梓とエリ。


梓「すみません、遅れてしまって」

和「いえ、いいのよ。来てくれて嬉しいわ」

エリ「ごめん、リーダーの私が真っ先に来るべきだったのに」

佐藤「気にしないで。もう大丈夫だから」

梓「和先輩、どうぞ。これが澪先輩の出生証明書です」

和「ありがたく頂戴するわ。
  いいわね、澪。今からこれを公表するけど」

澪「ああ……
  それで全部終わらせられるんだな。
  覚悟は出来てるよ」

和「ええ、じゃあ」


和は校内放送のマイクに向かって話しかける。


和「みなさん、教室にあるテレビを点けてください……
  唯、カメラの用意をして」

唯「はいはい」

佐「やめろ! やめなさい!
  秋山さん、あなた何をやってるか分かってるの!?
  この天下をここで終わらせるつもり?」

澪「……」

佐「この高校は私たちのものなのよ!
  いや……こんな高校だけじゃない、
  ファンクラブの勢力を広めていけば
  高校の外でももっと多くの会員を手に入れられるわ!
  そうなればあなただって……!」

澪「もういい、もういいんだ。
  そういうのやっぱり間違ってるよ……」

佐「間違ってることなんてあるものですか、
  私があなたのために今までどれだけ尽くしてきたか分かってるの?
  その恩を無下にしてあなたは……」

和「澪、カメラの準備ができたわ」

澪「ああ」

佐「待ちなさい! 考え直すのよ、
  今ならまだ間に合うわ、秋山さん!!」

和「放送の邪魔だから黙ってて」

佐「うるさい!」


カメラの前に立つ澪。


和「いいわよ、もう回ってるわ。
  学校中に生中継されてるわよ」

澪「分かった……ゴホン。
  えっと、こんにちは、秋山澪です」

佐「やめなさい!」

澪「実は私、今までみなさんに隠してきたことがあります。
  黙っていても誰からも咎められることではないけれど……
  私は私を応援してくれた全ての人の為にこれを明らかにしたい」

佐「秋山さん、それ以上はダメよ!」

澪「見てください、これを。私の出生証明書です」ぴらり

佐「やめなさいってば!」

澪「見ていただければ分かるとおり……
  私は在日朝鮮人なんです!!!」

佐「やめろおおおおおお!」

澪「秋山澪は通名で、本名はチェ・サンジュといいます。
  繰り返します、私は在日、在日なんです!
  在日朝鮮人なんですよおおおおおおおお!」


校内の至る所で悲鳴と悲嘆の声が上がった。


「ば、馬鹿な……秋山さんが在日だったなんて!」
「私たちはこれまで……何のために……」
「嘘だ、秋山さんが在日……うわあああああ!!」
「は、ははは、はははっ、こんなことって……」


澪ファンクラブ会員は完全に戦意を喪失。
武器を捨て、地面に膝を付き、涙を流す会員たちを
ARCHメンバーが次々と捕まえていった。
ファンクラブの会員たちはまったく抵抗しなかった。

放送室にも澪ファンクラブ壊滅の報が入り、
それを聞いた佐々木はがくりとうなだれた。


和「これで本当におしまいね、佐々木さん」

佐「くぅっ……
  こんな……こんなにもあっさり崩れるなんて……
  私の天下が……権力が……」

梓「いいかげんにしてください!」

佐「!?」

梓「あなたは権力者でもなんでもない……
  無関係な人々や、私の大事な先輩を傷つけた……
  ただの犯罪者です」

佐「っ……」


佐「嘘だ、嘘だ……私の……」

風子「もう終わりね、佐々木さん。
   あなたについていった私が馬鹿だった」

佐「いや、まだ大丈夫よ!
  あなたがもう一度秋山さんになればいい!
  そうすればいくらでも澪ファンクラブはよみがえるわ!!」

風子「もう無理よ。
   きっと何度蘇っても澪ファンクラブは潰される」

佐「そんなことやってみなけりゃ……!」

風子「私たちは負けたのよ」

佐「た、高橋さんっ!」

ARCH「澪ファンクラブ幹部の高橋さん、佐々木さん。ARCH本部へと連行します」

高橋「ええ、構わないわ」

佐「いやだ……いやだぁっ!」


こうして澪ファンクラブは滅び、
桜が丘高校に平和な日常が戻ったのであった。
ARCHメンバーによって捕らえられたファンクラブ会員は
そのほとんどが反省を認められて釈放。
佐々木曜子を始めとする澪ファンクラブの幹部たちは
無期限の謹慎処分を言い渡された。

和は澪ファンクラブの暴力行動に参加していなかったこと、
そして佐々木たちの排除に尽力したことを受けて処罰は免れた。
しかし今回の騒動の責任をとって和は生徒会長を辞任。
副会長がそのまま会長に昇進すると見られたが
全校生徒から今回の活躍を買って
ARCHリーダーの瀧エリを後任にすべきだとの声が上がり
エリが生徒会長に就任した。


副会長「では新生徒会長の瀧エリさん、
    所信表明演説をお願いします!」

エリ「はい! 私が生徒会長になったからには、
   まず学校中の自動販売機にコーラを充実させます!
   それから毎月1度はクラス対抗バレーボール大会を!
   さらには各教室にひとつは仏像を設置して……」


「ふざけるなー!」
「今すぐやめろー!」
「このクソ会長ー!」
「真鍋さん帰ってこーい!」


エリ「あれー!?」

佐藤「だめだこりゃ……」

姫子「エリらしいといえばらしいけど」



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