ぴんぽんぱんぽーん


和『授業中に失礼します……
  生徒会より緊急全校放送をおこないます……』


佐「!?」

風子「この声、真鍋さん」

佐「緊急全校放送って……一体何を」

ざわざわ


和『……この放送は澪ファンクラブに関することです』


佐「なっ」

和『えー……私が話してもいいのですが……
  やはり澪ファンクラブのことなので……
  ここは秋山さんに……お願いします』


澪『こんにちは、秋山澪です……』


「えっ、秋山さん?」
「秋山さんってここにいるじゃない」
「もしかしてニセモノ?」
「え、どっちが?」


風子「ちっ……」


澪『わ、私はここに……
  澪ファンクラブの解散を宣言します!!』


佐「な……なんですって!?」

風子「馬鹿な……なぜっ」


「えええ、ファンクラブ解散!?」
「どういうことー?」
「普通の女の子に戻りたいの?」
「そんなー、私の生きがいがー」
「えっ、じゃあ学校でビクビクしなくて済む?」
「もう狩りも粛清もなくなるのか?」
「ええー、会員番号ゾロ目なのにー」

ざわざわ


澪『みなさんもご存じと思いますが……
  澪ファンクラブは逆らう人たちを暴力的な手段で弾圧していました……
  表に出ていること以外にも……
  トラックで轢いたり……屋上から突き落としたりとか……
  冗談では済まないくらいのことまでやっていたんです……
  私はそんなことする人達に応援されても嬉しくありません……』


「なんですって、そんな酷いことが!?」
「バレー部の豊崎さんが屋上から落ちて骨折したのも?」
「そう言われれば秋山さんの気持ちを考えていなかったかも」
「嘘よ、全部秋山さんのためなのよ!」
「そうよそうよ、ねえ佐々木さん? そうよね!?」


佐「そう、全部秋山さんのためにやってきたことよ」

佐「……きっと秋山さんは
  真鍋さんやARCHの連中にいらないことを吹きこまれてしまったのね……
  みんなも知っているでしょうけど、秋山さんはとっても純真で、純粋で、
  人を疑うことを知らない天使のようなお方だから」


「そうよ!秋山さんは敵の口車に乗せられただけよ!」
「私たちのやってることが間違っているわけない!」
「秋山さんのために反体制者を潰してきたんですもの!」
「秋山さんを騙した反体制者め!許せないわ!」
「それにしても、なんで真鍋さんが私たちを裏切ったの!?」


佐「真鍋さんも反体制者と内通していたんでしょうね……
  見抜けなかった私の責任だわ……ごめんなさい」


「佐々木さんが謝ることないわ!」
「そうよ、悪いのは全部反体制者だもの!」
「真鍋さんも敵よ!ぶっとばすのよ!」


佐「そうね、みんなの手で秋山さんを取り戻しましょう!
  秋山さんがトップに君臨してこそこの桜が丘高校に恒久の反映と平和が訪れるのよ!」


「「おーっ!」」


風子(秋山さんの放送で揺らぎかけたファンクラブを
   一瞬で纏め上げた……恐るべき手腕だわ)

佐「私は他のクラスのファンクラブ会員を見てくるわ。
  高橋さんは放送室に行って放送を阻止するのよ!」

風子「はい!」


和『秋山さん、ありがとう……
  次はARCHの副代表、佐藤アカネさんに登場していただきます……』

佐藤『ARCH副代表、佐藤アカネです……』


佐「ちっ、ARCHまで味方につけたのか。
  授業中も見張りをつけておくべきだったわね」


佐藤『みなさん、ARCHは腐敗した権力と戦ってきました。
   それは澪ファンクラブという名前でした。
   しかし、私たちの敵が澪ファンクラブなのではありません。
   澪ファンクラブの権力を私利私欲のために使い
   みなさんを苦しめる人たちが私たちの敵なのです。
   今、秋山さんの手によって澪ファンクラブが解散されました。
   それでもなお澪ファンクラブにしがみつくような人たちは
   秋山さんのことを好きでもなんでもない、
   ただ権力をその手から離したくないだけなのです。
   ARCHの隊員のみんな、今こそ蜂起の時です!
   愚かなる権力者たちを打ち倒すのは、今しかありません!』


「倒せるのか?澪ファンクラブを?」
「馬鹿な、佐藤さんは吹奏楽部大逆事件を忘れたか」
「でもやるなら今しかない」
「無駄だ、またやられるだけだ」
「やってみなければわからないだろう」


佐藤『ARCHのみなさん、いえ、
   澪ファンクラブの力に屈してきた皆さん、共に戦ってください。
   放送はここでいったん終わりますが、まだ放送しなければならないことは残っています。
   だから、放送室に来て、私たちを守ってください』




再び放送室。

佐藤「ふう……」

和「ありがとう。名演説だったわ、佐藤さん」

姫子「でも、これでファンクラブのヤツらが動き出しちゃうわよ」

和「そうね。梓ちゃんが早く学校にきて、
  ファンクラブの連中に捕まらないように
  放送室まで出生証明書を届けてくれればいいのだけど」

唯「あずにゃんが来てから放送始めればよかったのに」

和「バカね、もし昼休みになっても来なかったら
  地下壕にあなたたちがいないことがバレちゃうでしょ。
  そしたらファンクラブ総出で探し出すに決まってるわ。
  そうなると放送どころじゃない」

唯「あ、そっか」

和「撃てる弾は全部撃っておくべきなのよ。
  これでARCHの人たちも私たちと一緒に戦ってくれるだろうし、
  梓ちゃんが来るまでの時間稼ぎもできるわ」


風子「そこまでよ、真鍋さん」

和「た、高橋さん!」

放送室の外には高橋風子とその部下たちがずらり。


風子「よくも私たちを裏切ってくれたわね?
   まさか秋山さんやARCHまで引きこむとは思わなかったわ」

和「……あなたこそ、よくもまあのこのこと
  ここにやって来たわね。
  さっきの放送を聞いていたでしょう?
  ここにはすぐARCHの人たちが駆けつけてくるのよ」

風子「来るわけがないでしょう。
   ARCHは吹奏楽部大逆事件のせいですっかり士気を失ってる。
   未だに澪ファンクラブ打倒を叫んでいるのなんて、
   そこの佐藤アカネさんと無能なリーダーくらいだわ」

佐藤「エリは無能なんかじゃないわ」

風子「ふーん、あの偽物作戦の時うろたえるばかりで
   あなたたちを見捨てて逃げるだけだったリーダーが無能じゃないって?
   面白いことを言ってくれるわね」

佐藤「……」

風子「あなたたちはもう終わりよ。
   無駄なクーデターなんてやめて、
   さっさとおとなしく降伏を……」


「う、うわああああ!」
「ぎゃあああああああ!」


風子「なっ……何!?」


ARCH「澪ファンクラブを倒せー!」
ARCH「桜が丘高校は私たちのもんだー!」
ARCH「独裁者をぶっとばせー!」


ファンクラブ「ひいい、反体制者だ!」
ファンクラブ「無理だ、数が違いすぎる!」
ファンクラブ「やらせはせんぞー!」


風子「馬鹿な、ARCHの連中が……!?」

佐藤「ARCHは士気が……なんだっけ?」

風子「ちっっ!
   何をやってるの、早く反体制者をとらえなさい!」


ファンクラブ「ムリです、ヤツらの兵力はこちらの2倍!」
ファンクラブ「このままでは負けてしまいます、撤退しましょう!」


風子「くっ……!!」


ARCHの活躍によって
放送室を取り囲んでいたファンクラブ会員は
あっという間に取り押さえられたのであった。

佐藤「みんな、ありがとう……
   私たちのために、立ち上がってくれて」

ARCH「佐藤さんのためじゃありません、みんなのためですよ」
ARCH「そうです、桜が丘高校のために戦ったんです」


唯「いやーよかったよかった」

姫子「あとは出生証明書が届けば私たちの勝ちね。
   ところでまだ来ないのかしら」

唯「遅いよね。

紬「和ちゃん、携帯貸して」

和「はい」

紬「あっ、梓ちゃん!? 今どこ?」


梓『え? 律先輩の病院ですけど』


紬「なんでまだそこなのよ!
  早く出生証明書を持ってきてって言ったでしょ!?」


梓『あ、罠じゃなかったんですか?』

紬「違うわよ、緊急事態よ緊急事態!」

梓『緊急事態らしいですけど、エリ先輩どうします?』

エリ『うーん……』


佐藤「罠な訳ないでしょうが! 早く学校に来なさい!」


エリ『あ、アカネ?』


佐藤「聞こえないの?
   みんな澪ファンクラブを倒すために戦ってるのよ。
   あなたARCHのリーダーでしょう!?
   あなたがそこでダラダラしててどーするのよっ」


ARCH「澪ファンクラブを潰せー!」
ARCH「負けるわけにはいかないのよー!」
ARCH「自由をこの手に!」
ARCH「私たちの学校生活を取り戻ーす!」


エリ『み、みんな……』


佐藤「何もしてないのはあなたひとりだけよ!!
   早く来なさい、リーダー!」


エリ『わ、分かった!
   ぐずぐずしててごめん、すぐいくよ!』


佐藤「おう!」

唯「熱いねアカネちゃん」

佐藤「エリは一回くじけちゃったら
   これくらい熱く炊きつけてやらないと復活しないからねっ」

紬「これで出生証明書が届くわね。
  なんだか余裕で勝てそうねー」

和「そうかしら」

唯「大丈夫だよ、ARCHの人たちも一緒に戦ってくれるし。
  澪ファンクラブなんてちょちょいのちょいやでー」

和「甘く見ないほうがいいわよ、澪ファンクラブを。
  私が言うのもなんだけど」


風子「そうよ、真鍋さんの言うとおり」

和「高橋さん?」

風子「あなたたち、地下壕から抜けだしてきたんでしょう?
   じゃあ見たんじゃないの? 地下壕に何があったかを」

唯「地下壕に……? 何かあったっけ」

紬「うーん……」

姫子「特に心当たりはないけど」

澪「あっ」

唯「澪ちゃん、知ってるの?」

澪「確か……武器庫っていうのが」

唯「ぶ、武器庫!?」

佐藤「ま、まずいわね」

和「あったっけ、そんなの」



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