629 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/09/30(日) 14:02:22.84 ID:WmJAPMKKo



梓「エレナさんといえば、小麦さんなんですけど」

律「?」

梓「今年の7月に全国区の放送でレポートしてましたよ」

律「マジで!?」

紬「凄いわね、小麦さん」

梓「ですよね、澪さん」

澪「うん。明るいニュースを明るく伝えていた」

律「小麦も……頑張ってんだな……」

澪「……」

唯「おぉ~、あずにゃんのドレス姿可愛いよ!」

梓「あ!」

風子「クラスの何人かは映ってるよ」

律「披露宴の写真か?」

澪「ごめん、行けなくて」

紬「ごめんね」

英子「ううん。しょうがないよ」

風子「英子ちゃんのウェディング姿、綺麗だったよ」

唯「このカメラには映ってないの?」

英子「うん、私が撮ったから。無いよ」

律「マテ、私ら4人出席できなかった披露宴に、なぜ梓が出席してんだよ?」

梓「軽音部の代表ですよ」


さも当然のように。


律「そうか、うん。ありがとな」

梓「いえいえ」


最初は遠慮がちだったけど、私が強く誘ったので出席することになった。

とても印象に残った披露宴。

梓ちゃんと一緒に、唯さん、澪ちゃん、りっちゃん、むぎさんの4人が居てくれるような気がしたから。

630 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/09/30(日) 14:02:52.14 ID:WmJAPMKKo



よしみ「遅れてごめんね~」

風子「あ、ううん。まだ始まってないよ」

ちずる「よかった~って! 律さんだ!?」

律「さっきからみんな同じリアクションだな! 私は珍獣か!」

澪「今までの同窓会、参加してないの、律だけだぞ」

律「え!?」

ちずる「久しぶり~、みんな元気してた?」

紬「もちろん♪」

澪「ちずるも元気そうでなによりだ」

ちずる「懐かしいなぁ~」

夏香「これで全員かな? さ、入って入って~」

よしみ「全員集まったんだ? 同窓会でこんなに集まったの初めてじゃない?」

夏香「かもね~」

ちずる「あ、未知子ー!」


三人は中へ。


律「いい加減に入ろうぜ」

風子「その前に、言っておきたいことがあります」

澪「?」

紬「なぁに?」

唯「おぉー、この人が旦那さんだね!」

英子「う、うん……」

澪「うーん、いいなぁ……」

梓「姫ちゃんさんの正装姿、カッコイイですよ」

唯「ほんとだ、かっこいいよ!」

梓「すっきりとしたデザインで、スマートに着こなしていますから、絵になるんですよね」

唯「ホントだ、横にいるあずにゃんが背伸びをした子どもに見えるよ!」

梓「私に失礼ですよ!」

律「そこの二人、静かにしてくれ」

唯「?」

風子「澪ちゃん、演奏をしてくれる曲は、姫ちゃんの為……だよね?」

澪「一応そうだけど……?」


その姫ちゃんが居ないことをどう伝えるべきかな。

631 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/09/30(日) 14:03:22.09 ID:WmJAPMKKo



梓「風子さん、ナニカ隠してますよね」

風子「……隠してはいないよ」

唯「あずにゃんやい」

梓「なんですか?」

唯「姫ちゃんには、姫ちゃんさんと呼び風ちゃんには、風子さんと呼ぶ理由をお聞かせ願えないかい?」

梓「?」

紬「そうね、高校のときは、ふぅちゃんさんと呼んでいたわ」

梓「……えっと」

英子「唯さんたちと同じくらい、尊敬しているから、かな?」

梓「ち、違いますよ! 英子さん、変なことを……!」

風子「そっか……嬉しい」

梓「違うって言いましたよ!?」

紬「あずさちゃんのアパートで集まっているって聞いたわ」

梓「う……!」

律「ほぉ~、へぇ~」

澪「……いいな、そういうの」

唯「むふふ」

梓「にゃ、にゃー!!」

ゴウト「ニャ!?」


少し離れた場所で寝ていたゴウトちゃんが起きた。


よしみ「風子さ~ん」

風子「どうしたの?」

よしみ「姫子の姿がみえないんだけど」

風子「え、えっとね……」


よしみさんは姫ちゃんと仲が良かったよね。

だけど、演奏をしてくれる軽音部の前で言ってもいいものか、迷っちゃうな。


紬「まだ来てないのね」

澪「遅れてるのか」

律「じゃあ、本人が来る前に練習がてら、ティータイムの曲を演奏しとくか」

唯「そだね~」

梓「な、なにから演奏しましょう!」


梓ちゃんがワクワクしている。

早く言わないと。

632 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/09/30(日) 14:04:09.87 ID:WmJAPMKKo



風子「えっと……ね、姫ちゃんは旅に出ました」

よしみ「え、いつ?」

風子「さっき、ね」

よしみ「ということは、来ないの?」

風子「来たけど、帰ったということ……」

澪梓律唯「「「「 えぇーッ!? 」」」」


激震が走る。


紬「まぁ…。姫ちゃん居ないのね……」

澪「ど、どこへ行ったんだ?」

風子「誰も知ることの無い明日へ」

律「深いなっ!」

梓「冗談はいいですから、どこへ行ったんですか?」

風子「北へ。」

よしみ「き、北?」

英子「……」



英子ちゃんが探るように見つめてくる。

しょうがないよね。


英子「信代さん達が言うには、ブーケが関係あるとか……」

紬「ウェディングブーケ?」

風子「うん。英子ちゃんから、姫ちゃんに渡ったブーケ」

律「……ってことは、次の幸せは姫子ってことか?」

唯「おぉ!」

梓「いえ、英子さんは最初、ブーケを風子さんに渡しましたよ」

紬「手渡しで?」

英子「うん」

梓「そのブーケを、靴紐が解けているから持ってて、と姫ちゃんさんにブーケを渡したんです」

律「……」

梓「そして、そのまま姫ちゃんさんが受け取る形になりました」


そうです。
私は姫ちゃんにブーケを渡しました。

633 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/09/30(日) 14:04:44.87 ID:WmJAPMKKo



律「正装してたんだろ? 靴紐なわけないじゃん」

梓「そこは風子さんの罠です」

澪「それって……有効なのか……?」

風子「多分」

梓「いい加減ですね……」

律「……で、そのブーケと北へ。向かった姫子となんの関係があるんだよ」

風子「新婦のブーケを渡すと言うことは次の幸せ、次の結婚を示すということ」

紬「そ、それって、もしかして」


目を輝かせながら私に詰め寄るむぎさん。


風子「うん。姫ちゃんは将来の結婚相手――」

紬「……あ」

「おい」

風子「ひっ!?」


後ろから、右肩を鷲づかみにされて心臓が跳ね上がった。


「それ以上、言うな」

風子「は、はいっ」


肩に痛みを感じつつ、振り向いた先には――


風子「姫……ちゃん……!?」

姫子「絶対に、言わないでよ。風子、歪曲させるでしょ」

風子「……どうして」

姫子「船を調べてみたら、あの航路は明後日の出港で廃線だって。
   ……いい機会だから、それに乗っていくよ」

風子「……」

姫子「相棒と一緒に、あの続きを……ね」

風子「……そっか」


あの時と同じ航路。
それが一番いいね。


姫子「直接、面接の辞退を伝えに行きたかったのもあってさ」

風子「……うん」

澪「そういうことか……」

姫子「……まぁ、ね」

澪「そっか! よかった! な、律!」

律「いでっ! 何のことか分からねえよ! 痛いから叩くな!」


これで、3年2組の生徒、全員がそろった。

634 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/09/30(日) 14:05:57.27 ID:WmJAPMKKo



紬「船?」

姫子「えっと……、もう一度北海道に行くことにした……だけの話」

唯「いいな、北海道~、でっかいどう!」

梓「そればっかりですね、唯さんは」

紬「姫ちゃん、北海道はどうだった?」

姫子「……うん、…………良かったよ」

風子「……」

澪「……」

律「?」

紬「いい、旅をしてきたのね」

姫子「……どうかな。正直に言うと、キツかったけどね」

紬「いい旅をしてきた人の顔を見れば分かるわ」

姫子「そうなんだ」

紬「なんてね。うふふ」

姫子「ふふ、なにそれ」


姫ちゃんの表情に、期待と不安と、とても嬉しそうなイロが映し出される。

その理由を知っているのは私だけ。

その表情を目を細めてみているのは澪ちゃんと梓ちゃん。


紬「あずさちゃん」

梓「なんですか?」

紬「ウィンタージャーニー」

梓「……北ですよね?」

紬「どうかしら」

梓「行きましょう!」


二人はそれだけでお互いの意思を理解していた。


風子「ど、どこへ?」

紬「北海道に、年末になるかしら~」

澪「く、来るのか、むぎ?」

紬「えぇ、雪国へ行くわ」

姫子「え、北海道に行くの?」

律「なんで困ってるんだよ?」

姫子「わたしも行きたいかな、って」

紬「行きましょう?」

風子「そのまま年末まで北海道にいるといいよ」

姫子「……」

635 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/09/30(日) 14:06:39.26 ID:WmJAPMKKo



澪「利尻島はどうかな」

梓「いいですね。……あれ? 夏と冬の約束の場所でしたよね」

風子「そうだよ」

紬「じゃあ、その二人も呼びましょう」

澪「正夢だ……!」


話がどんどん膨らんでいく。

私たちは少し退がり、距離を置く。


夏香「旅行の話に華を咲かせるのはいいんだけどさ、みんな中で待っているんだけど」

英子「ふふ、集まって話すことは今までのことじゃなく、これからの事なんだね」

風子「うん。いいね、そういうの」

姫子「…………うん」

よしみ「ふーん、そんなことがあったんだー」

姫子「う……」


抑揚の無いよしみさんの声が姫ちゃんに突き刺さる。


よしみ「ぜんぜんしらなかったよー」

姫子「ひ、人に話すようなことでもないかなって」


私も知らないところで姫ちゃんがあんな風に傷ついていたら……と思うと哀しい。

何かできないかと思い悩んでいたと思う。


よしみ「そういう人がいるって、初耳だったなぁー」

姫子「だ、だからそんなんじゃないって」


よしみさんも、何も聞かずに隣にいてくれていた。


よしみ「つめたいなー、立花さんは」

姫子「……あ、……その……、ね?」


フォローを求めて私に視線を向ける。


風子「冷たいよねー、立花姫子さんはー」

姫子「ちょっと、風子……!」

風子「?」

姫子「不思議そうな顔しないでよ……」


軽く溜息が漏れる。


636 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/09/30(日) 14:07:14.69 ID:WmJAPMKKo



風子「ちゃんと言葉で伝えた方がいいよ。信代さんにも、和さんにも」

姫子「……うん。それはそうなんだけど」

よしみ「……」

姫子「帰ってきてから話すつもりだったから、さ」


私から視線を外し、少し遠くを視るような目になる。

あの人のことを想っているのだろう。


姫子「わたしに何ができるのか分からないけど、独りでいるのなら、ちゃんと伝えたい――」



姫子「――人とつながることの大切さを」



姫子「だけど、それをちゃんと伝えられるか不安だから……」

風子「帰ってきた時に、私たちを頼るの?」

姫子「……」

よしみ「……」

風子「私たちは保険じゃないよ」


酷い言葉をかける。


風子「そんな甘えじゃ、あの人に伝えられない」

よしみ「……」

姫子「ふふっ、そうだね」


目を閉じて、風に吹かれたように、穏やかな笑みを零す。


姫子「あの時の自分を越えられるか、少し自信がなかったみたい」

風子「弱気になっていたね」

姫子「ありがと、風子。そのまま行かなくて正解だったよ」

風子「そんなことないと思うけど」

よしみ「……はぁ、敵わないなぁ」

姫子「ん……?」

よしみ「なんでもない。北海道で何があったのか、教えてよ、姫子」

姫子「分かった」

風子「続きは、中で。……どうぞ~」


ドアを開いて中に入るよう促す。

637 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/09/30(日) 14:07:43.53 ID:WmJAPMKKo



姫子「結構集まってるね」

風子「話しづらかったらマイク使っていいからね」

姫子「使わないから。……情けない話なんだからさ、無意味に広めようとしないでよ」

風子「今日は姫ちゃんの為に集まったんだよ?」

姫子「え……そうなの?」

風子「ウソ」

姫子「あのね……」

よしみ「あはは、ほらほら」


よしみさんが姫ちゃんの背中を押して入っていく。


律「姫子!」

姫子「な、なに?」


りっちゃんが姫ちゃんの肩に手を置く。


律「鈴、持ってるだろ? 貸してくれないか」

姫子「……うん、いいけど。……?」


私が姫ちゃんの話をしたと思われている。けど、何も言っていない。
どうして鈴を持っているって分かったのだろう。


―― チリン。

  ――。

律「少し話を聞かせてくれ」

姫子「うん。いいけど、何が聞きたいの?」

律「違う、姫子じゃないんだ」

姫子「???」

律「あ、なんでもない。演奏楽しみにしてろよな!」

姫子「……うん」

風子「世界を旅してて、日本語をある程度忘れちゃってるから。気にしないで」

姫子「分かった……」

律「そうそう。ニホンゴワカリマセ~ン……って、こらっ」


訝しげな表情を残しつつ、姫ちゃんとよしみさんは入っていった。


律「姫子も、分かった、ってなんだよ……」

澪「間違ってはいないだろ。ノリツッコミにキレがなかったからな」

風子「そうだね」

律「……」


澪ちゃんも中へと入っていく。

638 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/09/30(日) 14:08:13.79 ID:WmJAPMKKo



梓「風子さん、年末ですけど、予定を空けることできますか?」

風子「……今年のだよね?」

梓「来年の年末の話をしてどうするんですか」

風子「えーっと……」


瀬織さんとの約束があるから、どうしよう。


風子「少し、難しいかな」

梓「……そうですか。一緒に北海道へ行きたいので考えておいてくださいね」

風子「うん。あ、姫ちゃんが北海道の話をしてくれるみたいだよ」

梓「それって……もしかして」

風子「そう。そういうこと」

梓「どこですか?」

風子「ほら、和さんがいるところ」

梓「行ってきます」


小走りに跳んで行った。

梓ちゃんも姫ちゃんを気にかけていたから、聞いて欲しい。


瀬織「私との約束なんて、あまり重要じゃないでしょ?」

風子「……」

瀬織「後で時枝町の場所、教えてあげる。気が向いた時でいいから、何時でも来てよ」

風子「お邪魔じゃなかったら……」

瀬織「できるだけ早めにね。変わってないからって引かれるからね」

風子「?」


変わらないから引かれるって、どういう意味だろう?


律「あんた、人じゃねえな」

瀬織「分かる?」

律「まぁな」

ゴウト「ニャー」

瀬織「……」

律「?」


瀬織さんがりっちゃんをじっくりと見つめている。

639 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/09/30(日) 14:09:03.96 ID:WmJAPMKKo



瀬織「長居しすぎたかな……」

風子「瀬織さん……?」

瀬織「それで、なに? 私を祓うの?」

律「いや、私は祓い屋じゃないから。ちょっと興味があるから話を聞かせて欲しいだけだ」

瀬織「そう……。話が話だったら、奥の手を使わせてもらうけど、いい?」

律「……!」

ゴウト「……!」


瀬織さんの静かな声がこの場の空気を張り詰めていく。
りっちゃんとゴウトちゃんが身構えている。


風子「奥の手……?」

瀬織「全力で逃げる」

律「ビックリさせんなよ! こっちに来い!」

瀬織「はいはい」


りっちゃんが主導権を握っているのはどうしてかな。
瀬織さんとゴウトちゃんを連れて隅の方へ歩いていく。
その途中で紬さんと英子ちゃんとなっちゃんが話をしていた。


紬「お世話になっているお姉さまがいてね、その方とルームシェアで暮らしていたの」

夏香「すごいね、紬さんは」

英子「これからは、日本で暮らすの?」

紬「うん。そうするわ」

風子「お話の途中で悪いんだけど、そろそろ時間だから入ってくれるかな」

夏香「あ……うん。分かった」

英子「よかったね、ふぅ」


ふぅ。

昔、英子ちゃんから呼ばれた私のあだ名。


風子「よかった……?」

夏香「英子とね、話をしていたんだよ。風子は変わらないね、って」

風子「!」

英子「小さい頃から一緒だったけど、中学は離れ離れになって、高校でも大人しくなった風子だったけど」


……。


英子「ふぅは、いつまで経っても、ふぅのままだね」

夏香「――うん」


言葉が出ない。


紬「……」


とても綺麗な微笑で私をみつめる彼女。


姫子「グッド・ラック」 49