65 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:27:46.05 ID:jhabFmV8o




6人でアイスを食べながらDVDを見ている。


『あんたがそういったんでしょぉ!』

『いやいやいやいや、わたしじゃないですよぉ』


夏叔母「「 あっはっはっは!! 」」

風子「クスクス」

姫子「……」


3人は笑っている。

ローカルバラエティ番組なんだけど、なぜか風子も知っているみたいだ。
風子曰く、旅番組なんだけどディレクターと出演者のやりとりが面白い。とか……。
初めて見るから笑いどころが掴めず、ただ見つめるだけになる。


冬「おいしぃ~」

母「これ、どこで買ってきたの?」

姫子「……」


おいしそうに食べる仕草は変わってない。
こっちはこっちで、テレビ画面すら見ていなかった。

うん、このアイスはおいしい。


明日の朝9時に釧路駅に到着しなければならない。
朝ごはんを食べて移動になるけど。さて、その後どうなるのかな。

予定は未定だった。


――…


夏「はー、面白かったー」

叔母「久しぶりに見たけど、やっぱり面白いわぁ」

風子「このシリーズ初めて見ました」

叔母「あら、そうなの。内地は情報が遅いのね」

夏「これ録画したやつなんで、DVD化されてないんですよねー」

風子「そうなんだぁ」

姫子「……」


エンディング曲がいいな、と思った。

隣で冬が寝ている。時計の針は9時を指していた。

66 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:29:17.67 ID:jhabFmV8o



冬「……すー」

姫子「……」

夏「冬ねぇ、起きてー」


夏が冬を揺する。疲れているのかな……。


冬「んー……?」

夏「寝るならちゃんと歯を磨かないと、それに風呂はどうすんの」

冬「入るよー……」

叔母「おっと、もうこんな時間か」

母「お湯沸いているから入っちゃって~」

叔母「あら……仕事早いわね」

夏「姫子さんたちから先に入ってください」

風子「いいの?」

夏「どうぞどうぞ。冬ねぇ、こんなだし」

冬「うー……ん……」

姫子「それじゃ遠慮なく」



歯を磨き終えてお風呂に入る。


ジャーー

姫子「……」


温かいシャワーを浴びていると少しずつ眠気が襲ってくる。やっぱり疲れているみたいだ……。


風子「姫ちゃん、眠たそうだね」

姫子「もう少し船に揺られていたら、酔っていたかも」

風子「海荒れていなくてよかったね」

姫子「ホントに……って、風子は疲れてないの?」

風子「なんだかんだで、寝て過ごしていたからかな」

姫子「……なるほど」


風子が湯船に浸かりながら話しかける。体を洗いながらわたしは返事をする。
寝ていたら酔わないものなのかな……?


お風呂から上がって、風子と並んで居間に着くとすでに布団が敷かれていた。


姫子「4つ……?」


―――――


風子「……?」


お風呂から上がって、姫ちゃんと並んで居間に着くと布団が4つ並んで敷かれていた。不思議に思う。
あ、冬ちゃんたちもここで寝るんだね。


67 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:30:31.52 ID:jhabFmV8o




冬「あ、どうでしたか湯加減は」

風子「さっぱりできてよかったよ」

夏「あ、飲み物用意しますね」

姫子「ありがとう」


台所へトントンと跳ねていく夏ちゃん。
気が利くいい子です。


冬「ドライヤーはこっちで使ってください」

風子「……うん、ありがとう。お母さん達は?」

冬「掛け布団を取りに、上にいますよ」

姫子「そっか……」

夏「姫子さん、ふぅちゃんさん、こっちに置いておきますから」

風子「うん」

夏「冬ねぇ、入るよー」

冬「うんー。それではー」


二人でトントンと跳ねていく。
仲のいい姉妹。この光景が嬉しい。


姫子「先に使っていい?」

風子「うん、どうぞ」

姫子「お先」

風子「……」


最初は一緒にお風呂に入ることへの抵抗があった。
そんなの気にしていたら、キャンプなんて出来ない。
恥ずかしいと思うから恥ずかしくなるんだよね。


叔母「お、もう敷いたんだねー。仕事早いね双子はー」

母「夏たちがいないわ」

風子「お風呂に入っています」

母「そうですか……では」


そういってお風呂に向かっていくお母さん。
3人で入るスペースはあるから、問題はないと思う。……うん。

68 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:32:21.68 ID:jhabFmV8o




叔母「夏ったら、むぎ茶なんか出しちゃってー」

風子「……」


テーブルに用意されたコップを見てつぶやく叔母さん。
冷蔵庫を開けてアルコール入りむぎ茶を取り出す。


叔母「どう?」

風子「……」


心が揺れる。でも、明日が早いので、我慢。


風子「朝早いので、お気持ちだけいただきます」

叔母「そう、残念ねー……」


バタンと冷蔵庫の扉が閉まる。
叔母さんと一緒に晩酌をすることなんてもうないんだろうな。
そう感じたら、少しだけ寂しくなった。一緒に過ごしたのはたった数時間なのに。


姫子「風子、ドライヤー空いたよ」

風子「うん」

叔母「姫子さんに話があるんだけど……」

姫子「は、はい……」


なんだろう……。
気になるけど、髪を乾かすという決められた役をこなさなくてはいけない。
話を聞きたいから残る。なんて理由では許されないみたいに思った。


カチッ

ブォォオオオオ

熱風がかかる。寸前に叔母さんの声が聞こえた。
あの二人のことなんだけど、と……。

なんとなく分かってしまった。その話の続きを。


冬ちゃんは命を落としそうになったことがある。
病院のベッドの中、夏ちゃんが居眠りをしている隣で。

それは高校に入ってすぐのこと。

69 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:33:40.35 ID:jhabFmV8o




風子「……っ」


体が弱くて、入退院を繰り返していた冬ちゃん。
小学校の卒業式。中学校の入学式、卒業式。高校の入学式。
これらの人生の節目を冬ちゃんは体験していなかった。

夏ちゃんはそれに心を痛めていた。どうしてそれはあたしじゃないのか、と。
一命を取り留めた冬ちゃんに、夏ちゃんは接し方を忘れてしまった。

姫ちゃんの行動があって、今の二人がある。
クラスの友人たちも二人を通じて深く繋がることが出来た。

それは辛くも眩しい想い出。忘れられない高校三年、秋の出来事だった。

だんだん目頭が熱くなっていく。


風子「あつっ」


慌ててドライヤーを放す。あの時間を思い出してボンヤリしていたみたい。
おかげで涙をこぼさずにすんだけど。

髪も乾いていたのでリビングに向かう。私もむぎ茶をいただこうかな。


叔母「……そっか」

姫子「はい……」

風子「……」


話は終わったみたい。
姫ちゃんの隣の椅子に座る。


叔母「……」

姫子「……」

風子「……」


目の前のビール缶を優しくなでている。
色々な事を考えているんだろうな。
優しい表情をしている。


叔母「姉さんの気持ちも分かるんだ~」

姫子「……お母さんの事ですよね」

叔母「うん~」

風子「……」

叔母「私も二次の母だからさ」

風子「!」

姫子「えっ!?」

叔母「ん?」

風子「……」

姫子「い、いえ……」

叔母「なにに驚いたの?」

姫子「えっと……」


焦ってるね、姫ちゃん。
お母さんと叔母さんの雰囲気はまるで違うから、私もビックリした。失礼かな。

70 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:35:05.94 ID:jhabFmV8o



叔母「……」

姫子「今日はどちらへ?」

叔母「あぁ、野朗どもは母の実家に居るよ。今日は女の子が来るからね、追い出してやったさ」

姫子「そう…ですか……」

風子「……」


まだ動いてくれない時計をそっとなでる。


風子「叔母さんの実家は近くに?」

叔母「そうだよ、苫小牧に住んでいたからね」

風子「そうですかぁ。なんだか悪いことしてしまいましたね」

叔母「気にしないでいいよぉ。週末だし、まだガキだから遠出すんのが好きなんだよ。
   母も喜んでくれるから、丁度いいってね」

風子「いいな……」

姫子「……」


掌でそっと包む。
こうやったら動いてくれるような気がしたから。




――リン。




叔母「そうだ、学園祭はどう過ごしたのかね」

風子「?」

姫子「叔母さんに学園祭までのことを話したんだよ。話の流れでね」

風子「そっか……」



しばらく三人で話をした。
私が見た学園祭、クラスの出し物、冬ちゃんのお化け屋敷、ソフト部の仮装喫茶、
体育館での演奏、各部が出展した露店、などを。

冬ちゃんたちがお風呂から上がってくるまで、あの時間を振り返って……。






『怒られても知らないからね』

『うん』

『干渉しすぎなんだよ、いつもいつも』

『ごめんね、ダニー』





71 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:36:20.56 ID:jhabFmV8o



姫ちゃんが明日の確認をする。


姫子「明日の朝なんですけど、シャワー借りていいですか?」

叔母「いいけど……?」

姫子「ジョギングをしておこうと思って」

母「そうなの、頑張るのね~」

姫子「体を動かしていた方が後々楽なんです」

夏「いいですね、あたしも行きます」

姫子「久しぶりに一緒に走ろうか」

夏「はいー!」

冬「あ、あぁ……」

風子「……」

叔母「いいよぉー、好きに使ってちょうだい」

姫子「ありがとうございます」


冬ちゃんも行きたそうだけど、大人しくしていてもらう。
まだハードな運動はしてはいけないと聞いたから。


台所と居間を仕切り戸で隔てる。
戸を閉めていると叔母さんが声をかけてきた。


叔母「気をつけてね。二人のことくれぐれもよろしく」

風子「?」

姫子「?」

母「朝早くに出かけるらしいから、ここで挨拶するのよ」

風子「え、あ……! お、お世話になりました」

姫子「お世話になりました」


慌てて頭を下げる。
ここでお別れなんだと思うと動揺してしまう。


夏「叔母さん、ありがとね」

冬「ありがとうございました」

叔母「ううん。また、いらっしゃいね」

冬夏「「 うん! 」」

叔母「縁があったらまた会いましょう、それじゃおやすみー」

母「おやすみ~」

風子「……おやすみなさい」

姫子「……」


72 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:37:56.28 ID:jhabFmV8o



二人は二階へ上っていった。

一緒にご飯を食べて、アイスを食べて、DVDを鑑賞して、話をして。
短い時間がさらに凝縮されたように感じたひと時だった。


風子「……」

夏「何時に起きます?」

姫子「5時がいいかな」

夏「そうですね」

冬「目覚まし時計オッケー」


冬ちゃんが指差し確認をしている。
夏ちゃんがケータイのアラーム設定をしている。
姫ちゃんは布団を被って目を瞑っている。早い。


私は腕時計を外し――

チッチッチッチ


風子「あ……」


動いている。
時計の針は3時を指していた。


姫子「」スヤスヤ

夏「照明消しますよーって、姫子さんはやっ!」

冬「」スヤスヤ

夏「ふぅちゃんさん?」

風子「あ、うん……」

夏「消しますよ?」

風子「うん、いいよー」

夏「それじゃ、おやすみなさーい」

風子「おやすみー……」



まだ動いてくれる時間が嬉しい。

まだ止まらないで欲しい。

おやすみ、みんな。



二日目終了


75 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/18(水) 20:51:36.72 ID:NyxJEUCoo




三日目



姫子「ふぅこぉー、わたしのケータイ、電源落としておいてー」

風子「はぁーぃ」

冬「」スヤスヤ


冬ちゃんを起こさないように、ヒソヒソ声で言葉を交わす。
私のケータイも落としておこう。アラームが鳴って起こしては悪いからね。

服を着替えて玄関へ向かうと夏ちゃんが待っていた。


夏「さ、行きましょう」

姫子「うん」

風子「……」


玄関の扉を開くと冷たい空気に触れる。


道路に出る私たち。
チュンチュンと電信柱の上にいる数匹のスズメ達が鳴いていた。
こういう風景はどこも一緒なのかな。


姫子「……」

風子「……」

夏「?」


太陽がすでに昇っていた、それも結構な高さだよね。


夏「あぁ、明石市より結構東にあるんで、ある意味時差ボケってやつですかね」

姫子「な、なるほど」

風子「時間を間違えているわけじゃないんだよね」

夏「そうですよ、日本は全国的に朝の5時を迎えました」


ストレッチしながら話す夏ちゃん。
それじゃ、日本の最西端では今太陽が昇り始めているのかな。
なんてことを考えながら体を解す。


夏「それではしゅっぱーつ!」

姫子「釧路の町を走るなんてね、面白いよ」

夏「そうですね~」

風子「……っ」


三人で駆け出す。

私はっ、文化系なんですっ。



76 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/18(水) 20:53:32.51 ID:NyxJEUCoo




3kmくらいの地点で休憩。

なんだけどっ、二人の姿が小さいっ。


風子「はぁっ、っはぁ……!」


休んでいる二人にようやく追いついた……。


風子「っ……はぁ……」

夏「今日はいつもの半分ですか」

姫子「うん。早起きと体を慣らしておくのが目的だから」

夏「そうですかぁ」

姫子「夏も走ってたりするの?」

夏「体がなまってきたなぁと感じた時だけですね、最近は」

姫子「そっか」

風子「すぅ……はぁ……」


さすが運動部だね、爽やかな雰囲気を身に纏っているよ……。


夏「ふぅちゃんさんも足はやいですね」

風子「そ、そう?」

姫子「風子は根性あるよ」

風子「お、おかげさまで」


意味も無く気取ってみせる。
姫ちゃんたちとトレーニングするのは好きだから、苦じゃないんだよ。


夏「そんじゃ、ラス1です。行きましょう!」

姫子「うん」

風子「よ、よし」


三人で同時に駆け出す。

追いかけるのがっ、大変だけどねっ。


77 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/18(水) 20:55:08.74 ID:NyxJEUCoo




――…


風子「はぁ……はぁ……、はぁ……」

夏「んしょっ……とぉ」

姫子「……」


私がゆっくりと息を整えている間に二人はクールダウンをしていた。
私も真似て柔軟体操を始める。

知らない土地を走るのは新鮮で面白かったな。夏ちゃんがいなかったら迷子になっていたでしょう。


夏「そんじゃ、早く風呂に入って洗濯機を回しましょう」

姫子「そうだね。乾燥機もあるの?」

夏「ありますよー」

風子「それは助かった」


洗いっぱなしで置いていけないよね。






――…


お風呂に入り軽く汗を流す。その間に洗濯機を回しておく。

お風呂から出ると同時に洗濯が終わっていたので、そのまま乾燥機へ放り込む。


風子「これでよし、と」


居間に移動して、夏ちゃんが用意してくれたむぎ茶を飲む。


風子「……ふぅ」


体が潤っていくのを感じる。おいしい。

朝起きてすぐに時間を調整した時計は6時半を指していた。
冬ちゃんはまだ寝ている。かわいい。


冬「」スヤスヤ

姫子「6時半ね……」

風子「ふぁあ……、どうしよっか……」

夏「朝の番組もアレですからねぇ……」


テレビに向かってつぶやく夏ちゃん。
全国ネットのワイドショーが流れている。よく知っている顔だけど、今はいいかな。


78 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/18(水) 20:56:52.00 ID:NyxJEUCoo




冬「」スヤスヤ

風子「よいしょ……」

姫子「寝るの?」

風子「横になるだけだよ」

姫子「ふーん……」

夏「……」

風子「……」


テレビが色んな人を映していく。
司会者、解説者、最近有名になった人、俳優に、歌手に、影響を受けて応援している人。
あ、この子って新作映画にも出るよね。贔屓にしていますよ。


夏「この子、女優に転身したのかな」

姫子「そうみたいね」

風子「トップアイドルだったのにね」


ゆっくりと時間が流れていく。

メガネを外し、安全な場所へ置く。
そして、目を瞑り、まどろみの中へ溺れていく……。

ちょっとだけおやすみ。


―――――


寝ちゃった。
横になったから眠る気だとは思っていたけどね。

冬に寄り添って眠る風子。妹のように可愛がっているから、そっとしておこう。
2、30分の仮眠を取る時間はある。

ソファに深く座ってテレビを眺める。だけど、興味は外へ向いていた。


79 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/18(水) 20:58:06.79 ID:NyxJEUCoo




夏「あと1時間ちょっとですから、少しだけのんびりしますか」

姫子「そうだねー……」


30分で支度して、30分で移動。9時に到着できる……。


…………

……



遠くで母さんの呼ぶ声がする……。

母さんじゃなくて……。

冬たちのお母さんの声だ。


姫子「!」

母「もう9時なんだけど……」

姫子「えっ!?」


時計を確認すると8時54分。6分前を指していた。

まずいマズイ不味い!


姫子「冬っ、夏っ! 風子!」

風子「んー……」

夏「なにぃー……?」

冬「」スヤスヤ

母「冬が時計を止めちゃったのね……」


冬の右手が目覚まし時計を押さえていた。寝ぼけて止めたまま二度寝したんだ。

お風呂から上がった後に用意した服を着る。
お母さんが用意してくれた鏡を見る。


姫子「二度寝して寝過ごすなんて……!」

母「ごめんね、私ものんびりしちゃって~」

姫子「いえ……」

母「ほら、冬もちゃんと起きなさい」

冬「うん……、ふぅさん?」

風子「うん……?」


寝ぼけ合っている。




姫子「グッド・ラック」 7