54 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:09:12.52 ID:jhabFmV8o




冬「それじゃ、わたし達は家に入りましょうか。ふぅさん」

風子「うん。重くない?」

冬「これくらい余裕ですよ~」

風子「よかった。ありがとう」


冬ちゃんは体が弱くて、小学校の頃から入退院を繰り返していた。
今ではすっかり元気になったので、旅行にもよく行くみたい。

よかった、本当に。


ガチャッ

冬ちゃんが玄関の扉を開けようとしている。だけど、ドアノブが回転しない。


冬「?」

風子「……?」



ガチャガチャッ

さっきと同じように回らないみたい。どうしたんだろう。


風子「???」

『冬ねぇ?』

冬「夏?」

『待って、あたしが開けるから』

冬「うん」

風子「なるほど」


扉の外側と内側の両方から同時にドアノブを回していたみたい。それなら回転しないよね。
双子の成せる技を間近で観察できて嬉しい。


ガチャ

夏「ひさしぶりです、ふぅちゃんさん!」

風子「うん。久しぶりだね」

夏「一年振りですねー……」

冬「夏、中に入りたいんだけど」

夏「はいはい。あれ、姫子さんは?」

風子「お母さんと買出しにいったよ」

夏「なんだ、バイクの音がしたから到着したと思ったのに」

風子「再会はお預けだね」

夏「そうですね~。あ、荷物持ちますよ」

風子「ありがとう」


冬ちゃんと双子の妹、斉藤夏ちゃん。
姫ちゃんと同じソフト部員で仲の良い先輩後輩の関係。冬ちゃんと同じく1年振りの再会。


55 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:11:56.17 ID:jhabFmV8o




夏「さあ、どうぞ」

風子「お邪魔します」


差し出されたスリッパを履く。やっぱり他人のお家は緊張するな。



「あら、いらっしゃい」

風子「初めまして。高橋風子と申します」

「初めまして。この子達の叔母をやっています」

風子「押し掛けてしまって申し訳ありません」

叔母「いいんですよ。……こんな家だから硬くする必要もないわよ。
   飲み物もっていかせるから居間に座ってて、むぎ茶でいいかな」

風子「はい。ありがとうございます」


遠慮をさせないように言葉を使い分けてくれた。気さくな人みたいだね、夏ちゃんと似た雰囲気。


冬「よいしょ、よいしょ」


叔母さんの隣で忙しそうにしている冬ちゃん。


夏「あたし達は座ってましょう」


夏ちゃんに促されて歩を進める。広くて大きいお家だなぁ……。


夏「ふぅちゃんさん、適当に座ってください」

風子「うん」


ちょっと緊張するけど、暖かい雰囲気のこのお家が好きになってしまった。
夏ちゃんの実家にも訪ねたことがあるけど、ここと同じ印象だったな。
ご両親も優しくて、冬ちゃん、夏ちゃんをとても大切に想っていて。

あたたかくて……。


夏「新聞読みますか? テレビ見ますか? 地方のニュース番組って面白いですよ」

冬「夏、ふぅさんは疲れているんだから、大人しくしてなきゃ」

夏「はいはい。あたしはうるさいですよー」

風子「ふふ」

冬「すいません。夏ってば……」

風子「ううん。ニュースが面白いの?」

夏「ローカル番組って、地元のお店とか紹介するじゃないですか」

冬「住んでいる人には変わり映えしない内容でも、他所から来た人は新鮮なんですね」

風子「なるほどなるほど」

夏「それじゃテレビで」

ピッ


テレビに知らないレポーターが映る。誰ですか、あなたは。
慣れた進行手順からみてベテランさんみたいだけど。

……うん、新鮮だな。

56 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:13:34.20 ID:jhabFmV8o




冬「どうぞ。お菓子もありますよ」

風子「ありがとう」

夏「……」


夏ちゃんは私の隣に座って、お菓子に手を伸ばしている。
差し出されたむぎ茶を口にして、少しだけ緊張が解れていくのを実感する。


夏「もぐもぐ」

冬「……」

風子「……」


『見てくださいよ、このカジカ!』

『ごついですねー』

『見てくれが悪いものほど美味なんですよー!』

『わぁーおいしそうー!』


魚を紹介するレポーターと、スタジオでコメントする司会者のやりとり。
三人並んでテレビを見ている。

なんだか、和むな。


冬「明日、行きましょう」

風子「もちろん」

夏「……」ピッピッピ


明日の朝ごはんは釧路港で勝手丼を食べる予定。
テレビで紹介している魚の刺身がおいしそうだから期待が膨らんでいく。とても楽しみになってきた。

夏ちゃんは携帯電話を操作している。メールかな。


北海道に到着したのは4時半。今の時間は……。えっと……。
動いていない時計を確認して、お洒落な壁掛け時計に視線を向ける。針は5時14分を指していた。

まだ動いてくれない。もう動いてくれないのかな。



叔母「そろそろ帰ってくると思うんだけどね」

風子「……」


時計を気にしている私に答えてくれた叔母さん。
姫ちゃんの帰りを待っていると思われたみたい。


叔母「冬と夏は準備できているの?」

冬「はい」

夏「うん」

風子「……」


冬ちゃんと夏ちゃんもこの旅に参加する。

姫ちゃんとわたしが計画しているところへ二人が乗ってきた形になる。
元々一緒に周ろうと思っていたから、順序が逆になっただけ。なんだけどね。

計5人で道東から道北を周ることになる。

57 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:15:39.67 ID:jhabFmV8o




叔母「おばさんも、もう少~し若かったら参加できたんだけどねぇ」

夏「えー、まだ……。うん、ざんねーん」

叔母「夏ちゃんの晩御飯はもやしとキャベツだけね」

夏「あぁ、ごめんなさい」

冬「ちゃんと否定しなきゃだめだよ、夏」

叔母「冬ちゃんもねー」

冬「あぁ、ごめんなさい」

風子「クスクス」


いいなぁ。暖かい空気がここにある。


ガチャ


私が和んでいると、玄関の扉が開いた。姫ちゃんとお母さんが帰ってきたみたい。

お迎えにいってみよう。

居間を後にして玄関へ向かう。夏ちゃん、冬ちゃん、私。


母「ただいま~」

冬「おかえりなさい。荷物持つよ」

母「ありがとう」

夏「お久しぶりです、姫子さん!」

姫子「う、うん……。久しぶりだね、夏……」

夏「あぁ、母さん……加減を知らないから……」

母「楽しかったわ~」


冬ちゃんが台所へ荷物を届ける。夏ちゃんが呆れ顔をしている。
お母さんと姫ちゃんの表情がまるで違う。予想は当たっていたみたい。


風子「おかえり」


姫ちゃんを迎え入れる。


―――――


風子に迎えられる。


姫子「ただいま……」

風子「大丈夫?」

姫子「まぁ、うん」

夏「すぐ晩御飯ですから、居間で待っていましょう」


夏がわたし達を促して進んでいく。
隣で興味深そうに訊ねてくる風子。

58 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:16:53.35 ID:jhabFmV8o



風子「お母さんの運転、どうだったの?」

姫子「まぁ、うん」


凄かった。ハンドルさばきが、ギアチェンジが、スピードが、運転が。

お腹が空いているから、余計ダメージが大きいのかもしれない。
船の疲れが押し寄せてきたみたい。とにかく座りたかった。

台所で忙しそうにしている冬とお母さんと、叔母さん……かな。
挨拶をしておかなくては。


姫子「初めまして、立花姫子と言います。ご厚意に甘えることになりました。
   よろしくお願いします」

風子「……」


風子と並んで挨拶をする。


母「いいのよ~、我が家だと思ってゆっくりしていってね~」

叔母「アンタの家じゃないでしょ」

冬「夏、これを持っていって」

夏「うん」


軽く流されてしまった。けど、ありがたいな。
こんな風に受け入れてくれたらこっちも気が楽になる。


風子「なにか手伝えることはありませんか」

叔母「んー、そうね。野菜を洗ってもらおうかな」

風子「はい」

母「あら」

叔母「こっちは三人でやるから、アンタは居間で休んでてよ」

冬「うん」

母「あらー……」


お母さんが追い出さる形になってしまった……。

二人で居間に進むと、夏がテレビのチャンネルを変えていた。
忙しなく切り替わる画面にちょっと興味を引かれる。どんな番組をやっているのかな。


夏「あ、姫子さん、ソーダでいいですよね。どうぞ」

姫子「うん。ありがとう」


ありがたい。疲れているときはこれがおいしいから好きなんだよね。
冬が気を利かせてくれたのかな。

口に含むと炭酸が弾ける。おいしい。


夏「おかしもどうぞ」

姫子「……ありがと」

母「……」

59 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:18:33.12 ID:jhabFmV8o



部活帰りによく一緒に飲んでいたから、夏が隣にいると懐かしく感じる。
高校時代を思い出せるようで、なんだか嬉しい。

お母さんが夏を眺めながらニコニコしている。


夏「なに?」

母「お父さんにも気を使ってあげたらいいのに」

夏「気が向いたらね」

姫子「……」

母「二人がお家から出て行ったもんだから、寂しいみたいよ?」

夏「だから、気が向いたらね!」

姫子「……」


親子のやりとりを聞きながらソーダを飲む。
しゅわしゅわーとした喉越しが疲れを取ってくれるようで、楽になれる。


姫子「……ふぅ」


少しだけ元気になれたみたいだ。風子は疲れがないのかな。

気になって、台所に目を向ける。


姫子「あ……」

風子「?」


ホットプレートを持ってきた風子と目が合う。
なんだろう、丸い形で鉄板の真ん中が盛り上がっている。焼肉をするのかな。

ネットでみたことがあったけど…、なんだっけ。


冬「ジンギスカン鍋ですよ」

姫子「あぁ……それだ」

風子「よいしょっと」

叔母「夏~!」

夏「はいはーい」

母「……」


叔母さんに呼ばれて台所へ跳んでいく夏。

風子と冬が支度を進めている中、わたしとお母さんはジッと座っていた。
動作がテキパキとしていて、手の出しようが無い。大人しくしていよう。

60 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:19:40.06 ID:jhabFmV8o



夏と叔母さんがお肉を持ってきた。あれが羊の肉なんだ……見るのは初めて。

切られた肉なんて見分けがつかないけど。


冬「ヘルシーだから、女性にも優しい肉なんですよ」

風子「そうなんだぁ」

母「何年ぶりかしら」

叔母「私はいつでも食べられるんだけどね」

姫子「夏達は?」

夏「去年食べて以来ですよ、大学の新歓でごちそうになったんで」

姫子「へぇ……」


旭川の大学でも楽しそうに暮らしているみたいだ。
その表情からそれが伝わってきた。

冬がホットプレートの電源を入れる。
夏と風子がラム肉と野菜を鉄板の上に乗せる。


ジュゥー ジュー

次第に焼ける音が聞こえてくる。匂いが食欲をそそる。
うぅ、お腹空いた……。



母「今日の疲れはこれで取ってしまって、明日から頑張れるようゆっくり休まないとね」

姫子「……」

風子「……」

夏「冬ねぇもだからね」

冬「うん。食べる」

叔母「あ、私のご飯が無い」


恵まれているなと思った。
遠い空の下で、先輩後輩という繋がりでしかなかったわたし達。

時間が経ってもここまでしてくれる人がいる。


叔母「みんな揃ってるよね」

母「うん、ご飯とタレ、豚汁っと……」

夏「早く、いただきますしようよ」

冬「……」

風子「……」

姫子「夏、お腹空いてるの?」

夏「うん、お昼ご飯あんまり食べてなかったから」


一緒だ。
わたし達もあまり食べていないから、この匂いにお腹が騒いでいるような感覚になっている。


61 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:20:55.61 ID:jhabFmV8o




母「いただきまーす」

夏「いただきます!」

冬「いただきます」

風子「……いただきます」

姫子「いただきます」

叔母「どうぞ、召し上がれ」

夏「うまーい」

冬「このタレって叔母さんの自家製なんですよ」

姫子「へぇ……」


鉄板から肉と野菜をとってタレに入れる。そのまま口に入れて、噛み締める。
えごまの香りが口の中に広がった。


姫子「おいしい……」

風子「おいしいです」

叔母「よかったよかった」

夏「うまーい」

母「夏はそればっかりねぇ」

冬「もぐもぐ」


クセが無く柔らかくておいしい。牛肉とも豚肉とも違う食感が新鮮でいいな。

北海道での最初の食事がこんな風景なのは幸運なことなんだろう。

船旅の疲れなんてすぐに癒せそうだ。


食卓を囲んで色んな話をした。
高校在学中のこと、夏とソフト部で活動していたこと、冬がマネージャーとして入部してきたこと。
部活帰りに寄り道したこと、クラスの友達のこと、いままでのこと、これからのこと。



叔母「車の予約は大丈夫なの?」

冬「はい、ちゃんと取れているから問題ないよ」

叔母「ふーん、用意周到なのね」

夏「キャンピングカーがいいのにぃ」

風子「……」

母「あら、テントの用意していたじゃないの。まだそんなこと言ってるのね」

冬「レンタルでも高いよ」

姫子「……」



冬の言う通りキャンピングカーは高い。
設備が整っているから楽ではあるけれど、それでは旅の醍醐味も半減してしまう。

風子と黙って食事を進める。

62 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:22:29.79 ID:jhabFmV8o




冬「不自由さを工夫と手間を掛けて、自由に楽しむのが醍醐味なんだよ」

夏「分かってるって。言ってみただけだっての」


冬が夏を言い聞かせる。わたし達が卒業する間際によくみた構図だった。


叔母「女の子なのに苦労するほうを選ぶのねぇ」

母「楽しいみたいだから、それでいいんじゃないかしら」

風子「……」

姫子「……」


お母さんの言葉に頷く風子。
確かに楽しそうだ。何度かキャンプの経験があるから実際に楽しいのも知っている。

高校三年生の秋、木々が紅く色付き始める頃にクラスの友人達とキャンプをした。
何にでも楽しそうに取り組む友人達の成長に驚き、感銘を受けたのを思い出す。

キャンプ場であの人とも出会い、心に触れた。忘れられない出会い。


よくよく考えてみると、女性がキャンプを楽しむなんて……。


叔母「叔母さんはそれだけが心配なの、大丈夫なの?」

夏「だいじょーぶだって」

風子「姫子さんと一緒に護身術を学んでいます」

冬「柔道のですか?」

母「お友達に柔道の強い方がいるって聞いていたわね」

姫子「はい。その友人から学んでいます、けど柔道じゃないですよ。
   テレビとかで紹介しているような形なので、投げたりはしません」

冬「そうなんですかぁ」

風子「体力をつけるためにね、一緒に練習したりしてるよ」

夏「すごいなぁ、あたしもなにか続ければよかったな」

姫子「練習量が桁違いだからついていけないけどね。夏はソフトを辞めたの?」

夏「一応サークルに入ってますけど、適当って感じですよ」

姫子「……そっか」


少し退屈そうな表情をみせた、そんな顔を初めて見たから驚く。


63 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:24:00.21 ID:jhabFmV8o




楽しい食卓は終わりを迎える。


冬「ごちそうさま~。おなかいっぱい」

夏「おいしかったー。タレがおいしかったよ、叔母さん」

叔母「ありがと。当然だけどね」

風子「ごちそうさまでした」

姫子「おいしかった……」

母「お粗末さまでした~」


用意された食材が綺麗になくなっていた。おいしかったから当然だと思う。
さっそく北海道名物を食べることができてとても満足。風子も同じみたいだ。


叔母「よいしょっ」

姫子「あ、わたし洗います」


空っぽになった食器を片付けるため立ち上がった叔母さんに申し出る。
他人を台所に入れるのはさすがに嫌かもしれない。
だけど、それくらいはさせて欲しかった。


叔母「そう、よろしくね」

母「女手があると楽ね~」


させてくれるのがありがたい。
初日から甘えっぱなしでは、この先に待ち受ける不便さに屈してしまいそうだから。



ゴシゴシ

風子「この鉄板って、面白い構造なんだね」

姫子「煙が出ないようになっているって」

風子「叔母さんが言っていたね」

姫子「北海道は食材が豊富だね」

風子「……うん」

姫子「食べ過ぎたかも……」

風子「…………うん」

姫子「……」


二人並んで食器を洗う。

いくらジンギスカンがヘルシーとはいっても、結構な量を食べた気がする。
これから食べる頻度が高くなるから少し怖くなる。
それが頭をよぎって沈黙していると後ろから声がかかった。


冬「洗い終わった食器ありますか?」

姫子「これだよ」

風子「……」

冬「分かりました。えーっと布巾は……」

風子「どうしよっか……」

姫子「気をつければいいんじゃないかな……」

64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(沖縄県) 2012/04/16(月) 21:26:25.28 ID:jhabFmV8o



食材が豊富だから、食べるのを止めたくはない。むしろ食べたい。
食べすぎが良くないと、わたしは判断した。


冬「おいしいアイスクリームがあるんですよ~、後で食べましょうね」

風子「……」

姫子「……」


食器を拭きながら、天使のような声で悪魔の囁きをする女の子。
自然と風子と目が合って、頷き合う。


風子姫子「「 いただきます 」」

冬「?」


――…


夏「これでよしっと」

風子「4人でやるとはやいね」

冬「そうですね、少し楽しかったです」

姫子「……」


夏が最後のお皿を棚に片付けて仕事は終わり。
滅多に無い時間だからわたしも楽しかった。

冬を残して居間に移動するとテレビは天気予報を伝えていた。
わたしと風子は凝視する。


『東部のお天気はご覧のとおりです』

女性アナウンサーの後に北海道の東部分が映し出される。太陽マークが並んでいた。
よかった。と、胸をなでおろす。

いつも見ている地形じゃなかったので、違和感があった。


叔母「晴れみたいね」

母「気温も安定しているから問題ないみたいね~」

風子「よかった」

姫子「……」

夏「どうしたんですか?」

姫子「明日の天気晴れみたいだよ」

夏「北海道は梅雨がないですからね」


そういってテーブルの横に座る。ずっとそこに座っているから夏の定位置みたいだ。
居場所っていうのかな……、なんだか可笑しい。

時計を見ると7時を回っていた。
夕陽をみようと窓に寄って西の空を眺める。そこは茜色に染まっていた。

昨日のこの時間は船の上だったな、明日はどこでこの空を見ているのかなと考える。
風子が隣に並ぶ。


風子「おいしかったね……」

姫子「…………うん」


まったく違うことを考えていた。


姫子「グッド・ラック」 6