澪と律の愛の部屋

澪「なんで、こんなにも次々と私たちになじみの深い人たちが死んでいくんだ」

律「澪……」

澪「なぁ、律。お前は私を置いて先に逝くなんてことはないよな……」

律「当たり前だろ!」

律「私たちは、いつまでもこやって二人で」

澪「ああっ! 律っ!!」

律「澪! みおっっ!!」


 ヘコヘコ パコパコ クチュクチュ 



澪「あふっ!」ハァハァ

律「ああっ! みーーーおーーーー!!!!」カクカク

澪「ちょっとタンマ! 律」

律「ど、どうした?」

澪「なんだか……苦しくなってきちゃって……」

律「あ、ああ、そっか。ちょっといつもより飛ばし過ぎたかもな」

澪「うん」ハヘハヘ


 prrrrrrrrrrrr…… 


律「あ、ちょっとごめん。電話……ムギからだ」

律「もしもし?」

律「えっ……」

澪「どうしたの?」

律「唯が……」

澪「?」

律「唯が死んだって」




紬「唯ちゃん……」シクシク

律「ムギ!」

澪「なんで……どうして唯まで!」

紬「あっ……りっちゃん、澪ちゃん」

律「まさか、唯もあのテクノブレイクで?」

紬「ううん。違うの」

澪「だったら……」

紬「唯ちゃんは……自分の部屋で……」

紬「自分の部屋で首を吊って死んでいたって……」

澪「そ、そんな!」

紬「遺書にはテクノブレイクの真実を知ってしまったって書かれていたらしいの」

律「テクノブレイクの真実?」

紬「ええ、最近テレビのワイドショーでこの連続死亡事故が取り沙汰されているでしょう」

澪「あ、ああ……。知り合いってわけで私たちも何度かリポーターに付きまとわれたよな」

律「あんなカメラの前でなんてしゃべれる訳ないってのに……」

紬「そうなの。唯ちゃんも実の妹と幼馴染だから何度もしつこく付きまとわれていたわ」

紬「私の家の者に警護をさせていたから大丈夫だとは思ってたんだけど……」

澪「リポーターが唯にテクノブレイクの真実をしゃべったって訳か?」

紬「いいえ、違うの。テレビでは亡くなった人のプライバシーを尊重してそのテクノブレイクで
  死んだってことは伏せて伝えられているんだけど……」 

紬「憎きはゴシップ好きな週刊誌の記者よ」

紬「いつまでも家の中にいるのも体に悪いと思って
  唯ちゃんもたまには買い物に行きたいって言ってたし 
  だから、必要最低限のSPをつけて唯ちゃんに買い物に行ってもらったの」 

紬「そこをそのハイエナのような記者に狙われた……」

紬「買い物客を装って唯ちゃんに近づき、テクノブレイクで妹さんを亡くされた気分はって聞いてきたのよ」

紬「唯ちゃんは『テクノブレイクって何ですか?』って聞いちゃったの」

紬「その記者は洗いざらいテクノブレイクが何であるか唯ちゃんに語ったの」

紬「きっとそれを知った唯ちゃんは辛さのあまり自殺しちゃったのね……」

澪「いったい、唯が自殺するほどの理由ってなんだったんだ?」

律「テクノブレイクってそんなに……」

紬「ええ、テクノブレイクの真実は……オナニーのし過ぎ!!」

律「……」

澪「……」




紬の部屋

「紬おばあちゃま」

紬「ん? どうしたの?」

「紬おばあちゃまはずっと元気だよね?」

紬「どうしてそんなことを聞くの?」

「……おばあちゃまのお友達が沢山亡くなられたって聞いたから」

紬「うふふ。大丈夫よ。おばあちゃまはそんな簡単に死なないわ」

「本当!?」

紬「ええ約束するわ」

「うん!」

紬「だって……私は若い頃から鍛えているから……」

「?」

紬「澪ちゃんとりっちゃんも、同じように、二人でずっと仲良く鍛えあってるだろうし……」




人の噂も七十五日
あれだけワイドショーを賑わせた話題も時の経過と共に人々の記憶の中から消え去って行く

唯が自殺をする切っ掛けを作った週刊誌は少数が流通したものの
琴吹家の力で発禁処分を受け多くの人の目に触れることはなかった

しかし、ここにその少数出回った号を入手することに成功した
早速中身を見てみようと思う


『自慰狂いの老婆たち、その壮絶な最期!!』

○○県の桜ヶ丘で次々と70を超える老婆の変死体が発見された事件
いや、これは心不全であると警察から発表された
死因はテクノブレイク

テクノブレイクとはようするに自慰のし過ぎで死に至るものである
最初の犠牲者は平沢 憂(72)
結婚歴は無く、ずっと不出来な姉を献身的に支え続けた
どうやら、彼女は姉に対して姉妹を超えた感情を抱き続けていたようである
そのために自分を捨てて姉に尽くし続けたらしい

そんな妹の唯一の趣味が姉を想い夜な夜な自慰をすること
近所の人によると週に一度はおかしな声が聞こえてきたという話しである

他の犠牲者の真鍋 和(73) 中野 梓(72)の二人も同じような状況で死に至ったと推測される
ちなみに同じ時期に亡くなったJさん(72)も同じ理由で亡くなったと思われていたが
Jさん(72)はテクノブレイクで死亡したのではなく階段から落ちて死亡したことをここに明記しておく

いずれのテクノブレイクの犠牲者も結婚歴は無く子供や孫など面倒を見て貰える身寄りが無い
おそらく寂しさから、高齢であるにも関わらず自慰行為という簡単に快楽を得られる選択をしたのだろうか?

もはや日本の人口の50%以上が60歳以上という超高齢化社会
この問題は我々一人一人が考えていかなければならないものではないだろうか?


最後に、当雑誌記者が遺族の方への取材を強行したことで
不可抗力とはいえ、自殺へと追い込んだことに対し深くお詫びと哀悼の意を捧げる

おしまい


最終更新:2012年09月23日 00:53