翌土曜日

律「そんな訳で今私の家では梓と聡が二人きりでギターの練習をしているのです!」

澪「うわー…練習だけかな?おじさんとおばさんは?」

律「もち!出かけてます!」

紬「なんか…青春ねー!」

澪「…私たちも枯れるには早い…まだ早いはずだぞ!」

唯「でもりっちゃん。
  私もギターやってるんだから私が教えても良かったんじゃない?」

律「唯は…何も分かってないのか?
  いや、それは置いとくとしても、
  もし仮に唯が初心者に教えるとしたらまず、何をどう教える?」

唯「そうだなー…
  実際に演奏してギュイーンギュギュン!チュイーン!ってやるんだよ!…って。
  分かりやすいでしょ?」

律「いや、何言ってるか分かんないから」




律「あれ、梓?今帰り?」

梓「律先輩は今お帰りですか?」

律「うん。
  聡は…実際のところ、どう?」

梓「やっぱり気になります?
  なかなか悪くないですよ。
  律先輩の弟さんにしてはすごく真面目だし。」

律(ふんふん。何か聞き捨てならないことを言われた気がするが
  聡は真面目…なのかは分からないがなかなかの好印象みたいだな)

梓「私の言ったこともちゃんと理解してくれるし」

律(何だ、聡の奴、いきなり尻に敷かれてるのか?
  まぁ、梓はいい奴だから心配するほどのこともないかもしれないが)

梓「来週も一緒に練習することになったんですけど、
  教えるのが楽しみです。」

律(来週も会いに来るって!なんだこれは!?うまくいきすぎてるんじゃないのか!?)



それからしばらく、梓は時間を見つけてはうちに来て
聡の練習に付き合ってくれました。

時には練習を早く切り上げて一緒に楽器店に出かけたり、
お礼と言って食事に出かけたりもしてるようです。

え?なんでそんなこと知っているかですって?
もちろん尾行た(つけた)からに決まってるじゃないか!



梓「今日は、これくらいにしておこうか?
  来週までにこの本のこことここ、練習しておいて。」

聡「はい。
  俺…なんか、どんどん好きになってきてる気がします。」

梓「え…?(ドキッ」

聡「この間の合宿の時まで、バンドなんて全然興味なかったのに、
  今では、すごく、ギターが好きになってるんです。
  少しずつ、自分のやりたい音が出せるようになってくるのが楽しくて…」

梓「あ…そうだよね。
  楽器って、自分が出来るようになってくると…凄く面白くなってくるからね。」

聡「これも、全部梓さんのおかげです。
  本当にいつもいつもありがとうございます。」 



律「おーう、梓!
  今終わりか?」

梓「律先輩に唯先輩!
  学校で補習だったんですか?」

唯「そうだよ~」

律「でも、別に赤点という訳じゃないぞ!
  私学受験生を対象にした受験用の補習だからな!」

梓「別にそんなこと疑ってないですよ~」



なんか最近は、ギターの練習をするのも楽しいけど

…梓さんと一緒にいられることも楽しい…いや、うれしい…って感じかな…?

なんかよくわかんないや…

でも、早く来週にならないかなぁ

今梓さん帰ったばかりなのに…

早く会いたいな…



ん…?

これは携帯電話…父さん母さん、姉ちゃんのとは違う…

もちろん俺のとも…

いや、分かってるんだけどね。

これ、梓さんのだよね。

うん。梓さんが忘れ物をしたのを再確認してみただけ。

で…携帯電話がないと困るだろうから、俺は忘れ物を届けないといけないんじゃないかと思う。

忘れ物届けるだけだし、追いかけてっていいよね?

忘れ物届けるだけだし…




律「で、聡とはどうなんだ?
  どこまでいった?」

梓(どこ?)「はい。今日はピックを使った奏法を少し…」

律「いや、そういうことじゃなくて…
  その…AとかBとか…そういう…」

梓「A?B?なんですかそれ?
  いや、コードならもうちゃんと教えてますから大体大丈夫ですよ。」

律「だー!いや!そういうことじゃなくてね!」

梓「はい?」

唯「だから~
  …聡くんと、チューとか、そういうのはもうしたのかな…ってぇ~…ねぇ」

梓「は?」

律「唯!お前意外に恥ずかしい奴だな!
  そんなストレートな事聞くなよ!!ww」

唯「りっちゃんも意外に照れ屋さんだから!あんな言い方じゃわかんないんだよ!ww」

梓「あの…何言ってるんです?」

律「いや、だから、男と女が付き合ってたら、
  そういうことになるのはおかしいことじゃないから!
  後輩や弟に先を越されるのは悔しいとか、そういうのはさておき、
  二人の関係がどうなってるのか気になる訳だ!」

唯「もーりっちゃんーww」

梓「いや…別に私たち付き合ってる訳じゃないですから…」

唯「別に隠さなくっても良いんだよ、あずにゃん♪
  聡くんのお姉ちゃんは公認だし、二人ならお似合いだよ!」



聡(梓さん、駅の方に向かってるはずだよな…
  走れば間に合うかな…?
  電車が出る前に声かけないと…)



梓「聡くんが練習熱心で教え甲斐があるから教えに来てるだけで、別にそんなつもりはないです。」

唯「でもでも!好きでもないなら毎週会いに行ったり、なかなかできないよ?」



聡(あ、あそこにいるのは梓さん!姉ちゃんと唯さんと話してる!)



梓「いい加減にしてください!
  私そんなつもりないですから!!」

唯「そんな照れなくてもいいって~♪
  はっきり言っちゃいなよ!あずにゃんも聡くんのこと好きだって!」



聡(追いついた!唯さんが足止めしてくれたおかげで!
  これで少し話もできるかも…)
  「あず…」

梓「いい加減にしてください!唯先輩!!
  私本当に聡くんのこと好きだとかそんなこと全然思ってないですから!
  大体聡くん中学生じゃないですか!
  中学生を好きになるとか、付き合うとかそんなの私考えたことないです!!」

聡「……さ…さん…」

梓唯律「!?」

聡「いや、大丈夫っす…
  俺、あの…あ、忘れ物…梓さん、携帯忘れたんで…
  届けに来ただけですから…
  別に、すぐ帰るから…大丈夫…っす…」

梓「あの…ありがとう…これは…その…」

聡「本当に大丈夫だから!
  俺、中学生だし、まだ全然子供だし!
  気にしてないっすから!!」
 (携帯を押しつけダッシュで反転家に向かって駆け出す)


律「あいつ…!!
  悪い、唯!私は聡を追っかけるから梓を頼む!!」

唯「え…あ、うん!!」

梓「………」



その夜、聡はご飯の時間になっても一回も姿を現さなかった。

翌朝も、部屋から出てくることはなかった。

夜になってようやく部屋から出てきた聡は目が真っ赤でずっと泣いてたんじゃないかと思えた。

私には何もしてやれない。

でも、私にも責任の一端はあるんだし、聡が声をかけてきたら全部受けとめよう。

今、聡の為にしてやれることを全部してやろう。


聡「姉ちゃん…これってさ…」

律「お前は今、恋をしてるんだ。

  梓のことを好きになってたんだ。

  恋愛は…初めてか?」

聡「うん…

  これが人を好きになるってことだったんだ…

  なんで…なんで…うぅ…」

結局その夜も聡は一晩中泣きあかしたみたいだ。

一晩中嗚咽が私の部屋にも聞こえてきたから…





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