澪宅

澪「……わ」

澪「私は何をやってるんだ!?」

澪「せっかくおじさんからもうやめようって切り出してくれたのに」

澪「電話番号とアドレスも消してくれるって言ってくれたのに」

澪「……」

澪「やっぱり楽しんでたんだな、私」

澪「最初はただ怖くて、だけどあの2人への嫉妬で自棄になってたのかも」

澪「それから気が付いたらFF4が楽しくて、カインの行く末が知りたくなって。RPGって独特の期待感があるんだよな」

澪「おじさんは毎日仕事ばっかりで、話し相手がいなくて少し寂しい思いをしていただけで、いい人だったし。『しょうきにもどった』だって……ふふ」

澪「男の、それもかなり年上の人とあんなにスラスラ話せるようになるなんて思わなかった」

澪「律が知ったらビックリするな」

澪「おじさん……」




――――

ラブホ前

おじさん「……やあ」

澪「……はい」

おじさん「それじゃあ行こうか、ラストダンジョンへ」

澪「はい!」



ラブホ内

おじさん「今日は長期戦になると思ってご飯買って来たんだ。お寿司」

澪「わぁ」

おじさん「色々種類あるけど澪ちゃん何食べる?」

澪(何だか気持ちが落ち着かない。口に何か入れたいけどお腹はあんまり空いてない。ひとまず……)

澪「ガリで」



おじさん「さて、ここからラストダンジョンな訳だけど。ここには強い武具が隠されているけど敵も相当強い」

澪「はい、気を付けていきましょう」

澪(おじさんの言った通り敵はかなり強い。それにラストダンジョンだけあって道程も長い)

澪(でも今まで培ってきたおじさんとのコンビネーションやゲームのノウハウで何とか最深部に辿り着く事が出来た)

おじさん「多分もうすぐラスボスが出てくる。澪ちゃん、本当に帰らなくて大丈夫なのかい?」

澪「あ、はい、友達の家に泊まるって言ってあるので」

おじさん「そうか……じゃあ行こう」

澪「はい」


澪(最初は王に逆らえない臆病な暗黒騎士だったセシルが、やがてバロン国に反旗を翻して)

澪(ゴルベーザを倒すために自分を乗り越えてパラディンになって、地上の世界から地底、さらには月へ行くなんて)

澪(そこで出会った月の民フースーヤに聞かされる衝撃の事実。そしてゴルベーザすらも操られていただけだった)

澪(ゴルベーザも正気に戻って、フースーヤと共にラスボスを倒しに行ったけど……)

澪(FF4……まさかこんなにスケールの大きな話になるなんて)

おじさん「いた! 奴が諸悪の根源、ラスボスの『ゼムス』だ!」

澪「あいつが……あっ、ゴルベーザ! フースーヤもいる!」

澪(……フースーヤって髭が長くてなんだかモップみたい)

おじさん「彼らが一足先にゼムスと戦うんだ」

澪「頑張れっ!」

フースーヤ「もう一息じゃ、パワーを※メテオに」



※メテオ:封印されし伝説の黒魔法。おいぼれが使うと死ぬ。


ゴルベーザ「いいですとも!」

おじさん「いいですとも!!」

澪「!? いっ、いいですとも////」

●Wメテオ

澪「おおおお!? 強い!」

おじさん「うわー懐かしいややっぱり」

澪「勝った!?」

おじさん「いや……ここからが本当の戦いだよ」

澪「っ! ゼムスが変身して『ゼロムス』に……!」

澪「ああ……ゴルベーザ達が負けた」

おじさん「僕達の出番だよ!」

澪「はい!」




――――

澪「……か、勝った」

おじさん「やった!」

澪「勝ったーーーー!」

おじさん「勝ててよかったよ」

ゼロムス「……我は滅びぬ……生あるものに……邪悪な……心が……ある限り……グ……ズ……ギャアアアム!!!!」

おじさん「邪悪な心……」

澪「……」

フースーヤ「邪悪な心は消えはしない……どんなものでも、聖なる心と邪悪な心を持っている」

フースーヤ「しかし、邪悪な心がある限り、聖なる心もまた存在する」

フースーヤ「ゼムスの邪悪に向かったそなたらが、聖なる心を持っていたように……」

澪「……」うるうる

おじさん「……」うるうる



――――

おじさん「セシルも最後にゴルベーザと和解出来てよかった」

澪「う゛ん……よ゛がったよぉ……」ポロポロ

おじさん「ここからは確かキャラ達のその後が描かれるはず」

澪「あっ! セシルとローザ、結婚するんだ。それにバロンの国王になってる! ……カインは、どうするんだろう」

カイン「セシル……ローザ……今の俺には、お前達を祝福する事は出来ん……」

カイン「技を磨き、父を超える竜騎士となった時には、バロンに……戻れそうな気がする……それまでは……」

澪「カイン……」ポロポロ

おじさん「カイン……」ポロポロ



――――





澪「うっく……ぐすっ……カイン……」

澪「うぇ……っ……」

澪「……」

澪「……zzz」

おじさん「……」



――――

澪「ん……あえ?」

澪「ここどこ……あ」

澪「おじさん?」

澪「おじさーん?」

澪「……いない」

私が目を覚ますとおじさんの姿は無かった。


澪「あれ……封筒が置いてある」

中を覗くとお金と紙が入っていた。
紙にはどこかまるっこい字でおじさんの言葉が書かれている。



澪ちゃんへ
おじさんは しょうきに もどった のでもう澪ちゃんと会う事もないでしょう
FF4を遊んで昔の事を思い出して、今の自分を恥じる事が出来ました。カインの様に
貴重な夏休みを使わせてしまってごめんなさい
おじさんに言われてもあれだと思うけど、受験頑張って下さい
それと、澪ちゃんは貰いたくないかもしれないけれど、僕のけじめを同封しておきます
迷惑だったらごめんなさい。必要なければ捨てて下さい
今まで遊んでくれてありがとう。楽しかったです



澪「おじ、さん……」



――――

THE AFTER



あれから半年後。
私は無事大学に合格する事が出来た。
あんな事があったけれど、勉強のいい息抜きになっていたのかもしれない。
律とも仲直り出来た。というよりあいつは初めから気にしていなかったみたいだけれど。
それで改めて3人で遊ぼうとして、結局5人で遊んだり……。

そういえば夏によく通ったあのホテルなんだけど、私が行かなくなってからすぐに潰れてしまった。
元々古い建物だったし、後々調べたらああいう所でゲーム機を貸し出すのはよくないらしい。
おまけに高校生が頻繁に出入りしていたし。
正確な原因は分からないけれどどの道こうなっていたんじゃないかな。

そしてあれっきりおじさんとは連絡を取っていない。


今にして思えば私も正気を失っていた。
あんな異質な関係に段々慣れていって、最後の日は自分から誘うなんて……。
あの日、下着を選んでいた事は記憶の底に一生封印しておきたい。
もしこれから先に似たような事が起こっても今の私ならきっぱりと断れるはずだ。

おじさんがけじめとして置いて行ったお金。
渡された時はどうする事も出来なくてずっとしまいこんでいた。
最近ようやくその一部を使わせてもらう事にしたんだ。



律「よーっす。遊びに来たー」

澪「おお」

律「何してたの?」

澪「ゲーム」

律「へえー珍しい。てかPSPじゃん。どしたのそれ」

澪「受験も終わったし、学校に行かない日も増えたから買ったんだ」

律「んで何のゲームやってんの?」

澪「ファイナルファンタジーIV コンプリートコレクション」

澪「FF4とその続編、さらにこのふたつの時代を繋ぐシナリオが収録されてるんだぞ。カインのその後がな――」

律「……ハマったの?」

澪「んー……まあな」

澪「律もやってみる? きっとハマると思うぞ♪」



END