澪「口答えか?梓」


梓「えっ」

澪「私はこのケーキを誰が食べるか決める方法として今ジャンケンを提案した」

澪「でも梓は嫌だと言った」

澪「口答えだよな?」

梓「あ…いや…その…」

律「お…おいおい澪。どうしたんだよいきなりそんな突っかかって…」

紬「ほ、ほら、梓ちゃんも悪気があったわけじゃないんだし…ね?」

唯「澪ちゃん落ち着いて!」

澪「いや、こういうことは今のうちにきっちりしておくべきだ。それと私は冷静だ」

梓「あ…う…」

澪「私は最も公平な方法としてジャンケンを提案したつもりだった」

澪「誰だってケーキは欲しい。おいしいからな」

澪「だから公平性は大事だ。公平を期すためにはジャンケン以上の方法はない。わかるな?梓」

澪「でも梓は「嫌です」と言った」

澪「しかも「自分がジャンケン弱いから」という身勝手な理由で、だ」

澪「 そもそもジャンケンに強い弱いなんてあるのか?
  グーチョキパーの三択。グーはチョキに勝ち、チョキはパーに勝ち、パーはグーに勝つ三竦みの関係。
  プレイヤーはそれぞれ好きな手を「ジャン!ケン!」の合図で同時に出す。
  ほとんど運で勝負が決まるじゃないか。
  確かに、相手の握りを瞬時に見たり統計学的に相手の出す手をある程度予想して自分の手を決めることもできる。
  一概に運ゲーとは言えないかもしれない。でもよく考えてみろ。
  この中にそんな動体視力を持った奴や戦略を駆使できるような奴がいるか?
  それもたかだかケーキのために。おっと、私は別にケーキを食べたくないわけじゃないしケーキを粗末なものとも思ってないからな。
  まぁさすがの梓も揚げ足取りするところまで堕ちてないと私は思ってるけどな。
  私が言いたいのは、この5人でのジャンケンに強いも弱いもないって事だ。
  ホームセンターに行った時の事を思い出してみろ。荷物持ちジャンケンで梓は負け通しだったか?
  違うだろ?むしろ律や唯の方が負けてたじゃないか。
  なぁ梓、お前は何を以てジャンケン弱いって言ったんだ?「私は運が悪い」とでも思ってるならそれこそ間違いだ。
  そんなものは気の持ちようだ。
  梓、お前はケーキを我が物にせんと思うあまり、適当な理由をこしらえて運で勝敗が決まるジャンケンを避けて自分が有利な勝負方法にさせようとしたんじゃないか?
  それこそ不公平だろ。
  もう一度言うぞ。ケーキは誰だって欲しい。梓だけが欲しいわけじゃないんだ。自分の事しか考えない奴とバンドなんてできない。
  どうだ梓?私の言ってることがわかるか? 」

梓「う、ぅあ…あ…」



律「は、はいはいストップストップ!もういいだろ澪?梓も反省してるみたいだしさ!」

梓「ご…ごへんなさい…」ポロポロ

澪「…まぁ私もちょっと大人気なかったな。で、梓。ジャンケンが嫌ならどうやってケーキ食べる人を決めるんだ?」

梓「そ、それは…」グスッ

澪「どうした?泣いてちゃわからないぞ?」

梓「…考えてなかったです」

澪「 考えてない?今考えてないって言ったのか?
  つまり梓は代案もなく「嫌です」と言って私のジャンケン案に反対したのか?
  代案のない反対意見なんてただの駄々じゃないか。お前本当に高校生か?
  私も一人っ子だけどそこまでワガママじゃないぞ。どれだけ甘やかされて育ってきたんだ?
  いいか梓。学校というのは社会の縮図、社会に出てそんな独り善がりは許されないぞ。
  私達は梓のパパでもマ…お父さんでもお母さんでもないんだ。
  あらあら梓ちゃんジャンケン弱いのねかわいいわねじゃあ梓ちゃんにケーキあげるね、とはいかないぞ。
  先輩って言うのは会社で言う上司だ。
  お前は上司に反対意見を言うとき自分のワガママでどうにかしてもらえるとでも思ってるのか?
  そんな奴はどこでも相手にされないぞ。ちゃんと考えてから発言しろ 」

梓「う、うぁ…」



唯「ま、まぁまぁ澪ちゃん!じゃあこれで決めようよ!指ちっち!」

紬「そ、そうね、そうしよう!」

律「これなら梓もいいだろ?な?」

梓「はい…すみません…」グスッ

澪「ちょっと待て。
   指ちっち…指スマとかいっせーのとか呼ばれてるそれがジャンケンより公平と言えるのか?
  いっせーの!のかけ声と同時に数字を言い、全員が親指を立てるもしくは立てないという選択をして、立った指と数字が同じだったらアガリ。
  どう考えてもジャンケンより不公平じゃないか。
  だってそうだろ。このゲームは指を上げたかどうか微妙な判定になる時が多々あるし、不意打ちで数字を言って誰も指を立てない状況を作ることもできる。
  これはジャンケンの戦略や統計と違って誰でもできる。律とか得意そうだしな。
  そもそも誰から始めるか決めるのはジャンケンだろ?ジャンケンで最初の番になった人が明らかに有利じゃないか。
  だったら最初からジャンケンで全て決めればいい。指ちっちなんて無駄じゃないか。
  それとも単に指ちっちしたいだけか?それなら勝手にやってればいい。
  でもここは軽音部だ。指ちっち部じゃない。やりたいなら指ちっち部でも作ってやれ。今ここでそんな遊びはいらない 」

梓「う…ぁ…ぅ…」



澪「どうした梓?指ちっち部作りにいけよ」

梓「あぐ…ぅあ…」ポロポロ

紬「み、澪ちゃんちょっと言い過ぎじゃないかな…。梓ちゃん泣いちゃってるよ…?」

澪「泣いてる?」

澪「 泣いてるからなんだ?泣いてたら許されるのか?
  梓はここにいるみんなより自分を優先してワガママでケーキを自分のものにしようとしてたんだぞ?
  ムギがみんなのために好意で持ってきてくれてる愛のあるケーキを梓は我欲で汚したんだ。
  梓が今流してる涙は錆だ。身から出た錆だ。私には梓の涙が透明には見えない。
  くすんだ赤茶色に見えるよ。
  泣いたら許されるなんてそれこそパ…お父さんお母さんじゃないか。
  そうやってみんなが梓を甘やかすからワガママが増長するんじゃないのか?
  梓は今泣いてるけどここで甘やかして梓を基準に物事を決めたら今後梓は泣けばどうにでもなると勘違いしてしまうぞ。
  いいのかそれで?それが梓のためになるのか?先輩としてそれでいいのか? 」

紬「う…ぁ…」


梓「す、すみませんでした!ジャンケンでいいです!ジャンケンでいいですから…」ポロポロ

澪「別に私はジャンケンを強制したいわけじゃないよ。ジャンケンが公平だと思ってるだけで、もっと公平な決め方があるならそれでいいよ」

梓「な、無いです!ジャンケンが一番公平です!ジャンケンにしましょう!」

澪「本当にそうか?」

梓「えっ?」

澪「 いいか、ジャンケンなんて結局は運任せ。一見公平に見えるけどそれは大きなミステイク。
  最も公平な決め方は議論だ。議論以上に公平なものはない。
  納得いくまで議論を尽くせば誰もが不満なく物事を決められる。
  国連が決を取るときにジャンケンをするか?裁判の判決をジャンケンで決めるか?
  ジャンケンは議論を放棄して闇雲に結論を出すための方法でしかない。
  梓、私はさっき「よく考えてから意見しろ」と言った。
  でも梓は何も考えず安易にジャンケンの見せかけの公平性に流されてしまった。
  何も進歩してないじゃないか。お前それで将来やっていけるのか?
  会社の会議でもジャンケンで全て済ますつもりなのか? 」

梓「ぐぉ…あぐぅぅ…」



澪「まぁこの場でケーキを誰がとるか決める議論をしたところで日が暮れるのは目に見えてるからな。ジャンケンでいいと思うぞ」

律「よ、よーしジャンケンな!唯もムギもジャンケンでいいよな!?」

唯紬「う、うん!」

律「よーしそれじゃあ…ジャーンケ」

澪「ちょっと待って」

律「ん?」

澪「 ジャンケンで勝った人がケーキを取るのか負けた人が取るのか、それとも勝った人上位何人かで分けるのかまだ決めてないだろ。
  もし勝った人が総取りと思っているならそれは安直な先入観だ。
  そんないい加減に物事を決めるのはよくない。
  もし総取り方式でやるとして、最初に二人がパー、三人がグーを出したとしよう。
  パーの二人で決戦ジャンケンをすることになるけど、そこで負けたほうはどうだ?
  グーを出した他の三人より決戦ジャンケンで負けた人の方が期待が大きい分精神的なダメージは相当なものじゃないか?
  律、お前はそれに耐えられるのか?その覚悟があるのか?
  総取りとはそういうことだ。一人だけが得をし、他の四人は惨めな思いをする。
  民主主義は多勢が得をしなければいけないのに、それでいいのか律は?
  部長としてよく考えろよ 」

律「おご…ぉ…ぁ…」



唯「も、もうやめようよ!みんなで喧嘩してまでケーキなんて食べたくないよ!」

澪「……」

唯「やだよ…。ケーキってもっと楽しいものでしょ…?みんなを幸せにしてくれるものでしょ…?」

澪「唯、私はみんなが納得できるようにだな…」

唯「で、でもみんな悲しい顔してるもん!こんなの私たちのティータイムじゃないよ…」

律「唯…」

唯「 だってさ、ムギちゃんは私達のために、私達が楽しく放課後を過ごせるようにってケーキを持ってきてくれてるんだよ?
  それなのにこんな風に争ってたらほん…ほん…ほんみてんとう…?じゃん!
  おかしいよこんなの。お菓子だけに。
  私もケーキは好きだし食べたいけどこんな思いをするくらいならいらないよ。ごめんねムギちゃん。
  私はみんなと楽しく過ごせればそれでいいんだよ。
  それ以上のケーキはないよ。
  あーでもやっぱケーキ食べたい。あーくそおいしそうだなぁ。
  つーか喋ってるうちに上のイチゴかぴかぴになってきてんじゃんどうなってんのこれ。
  ていうかイチゴのこの表面のツブツブなんなのこれ。そもそも赤すぎだろイチゴあーマジ赤いイチゴ真っ赤こええー 」

澪「あ…ぅ…あぁ…」



律「よ、よくわかんないけどもうジャンケンで勝った人がケーキ総取り!それでいいだろ!部長の決定!」

澪「…わかったよ」

唯紬「はーい…」

梓「すみませんでした…。私のせいでこんなことに…」

澪「…いや、私こそムキになりすぎちゃったよ。ごめんな梓」

梓「澪先輩…」

澪「もし私が勝ったら梓にケーキあげるから…」

梓「そんな…いえ…もうその気持ちだけで十分です…」

紬「良かったわぁ。仲直りしたみたい!」

唯「めでたしめでたしだね~」

律「へへっ!そんじゃいくぞー!」

律「ジャーン!ケーン!」






梓「エロ本何冊」






澪「あ?なんだ梓?」